業務及び研究の報告

応用情報システム研究部門
Applied Information Systems Division


1.部門スタッフ

教授 下條真司
略歴:1981年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1983年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士前期課程修了、1986年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士後期課程修了。1986年4月大阪大学基礎工学部助手、1989年2月大阪大学大型計算機センター講師、1991年4月大阪大学大型計算機センター助教授、1998年4月大阪大学大型計算機センター教授、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門教授。情報処理学会、電子情報通信学会、ACM、IEEE、ソフトウェア科学会各会員。

助教授 馬場健一
略歴:1990年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1992年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士前期課程修了、1992年9月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士後期課程退学。1992年10月大阪大学情報処理教育センター助手、1997年4月高知工科大学工学部電子・光システム工学科講師、1998年12月大阪大学大型計算機センター助教授、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助教授。1995年3月大阪大学博士(工学)取得。電子情報通信学会会員。

講師 野川裕記
略歴:1990年3月大阪大学医学部医学科卒業。1990年7月大阪大学医学部附属病院研修医、1991年7月国立呉病院研修医。1997年3月大阪大学大学院医学研究科博士課程内科専攻修了。1997年4月札幌医科大学医学部助手。1999年6月札幌医科大学医学部講師、2000年8月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門講師。IEEE、電子情報通信学会各会員。

講師 春本要
略歴:1992年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1994年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻情報工学分野博士前期課程修了。1994年4月大阪大学工学部情報システム工学科助手、1999年11月大阪大学大型計算機センター講師、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門講師となり、現在に至る。IEEE、電子情報通信学会、情報処理学会各会員。

助手 東田学
略歴:1989年3月東京工業大学理学部数学科卒業、1991年3月東京工業大学大学院理工学研究科数学専攻修士課程修了、1997年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士課程修了。1994年4月大阪大学大型計算機センター助手、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助手。

助手 秋山豊和
略歴:1997年3月大阪大学工学部情報システム工学科卒業、1999年3月大阪大学大学院工学研究科博士前期課程修了、2000年3月大阪大学大学院工学研究科博士後期課程退学。2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助手。現在に至る。電子情報通信学会、情報処理学会、IEEE各会員。

2.教育および教育研究支援活動

本研究部門はこれまで旧大型計算機センターの中核的サービスであるスーパーコンピューティングサービス、汎用コンピューティングサービス、ネットワークサービスの企画立案、運営を担ってきた。これらは、学内外の研究活動を支援する重要な責務であるとともに、最先端の研究開発力を駆使した応用情報システムの実践的な研究であるとも位置付けられる。2001年1月には世界最大級の新スーパーコンピュータシステムであるSX-5を導入し、運用を開始した。2001年11月にセキュリティを強化し、高速化を行った大阪大学総合情報通信システム(ODINS)第4期を導入し、現在システム構築を進めている。また、2001年9月より電子図書館システムを新たに導入し、さらに、汎用コンピュータシステムを更新し2002年3月末より運用を開始した。これらのシステムにより、新年度に向けて新たなサービスを提供していく。
 今後は、サイバーメディアセンターの他の関連研究部門と協力しながらこれらのサービスを行っていく。

2.1 スーパーコンピュータシステム

2001年1月5日より、新スーパーコンピュータ・システムSX-5/128M8の運用を開始した。本システムは、NEC SX-5/16Af (160GFLOPS, 主記憶128GB) 8ノードから構成され、本センターに設置した6ノード(写真1, 2)を64Gbpsの専用クロスバースイッチIXSで相互接続している。残る2ノードは、本システムの共同運用を行っているレーザー核融合研究センターおよび核物理研究センターにそれぞれ1ノードずつを設置し(写真3, 4)、HiPPIおよびGigabit Ethernetにて相互接続している。
 本システムは、Linpackベンチマークにてベクトル型スーパーコンピュータとしては初めて1TFLOPSを超える実効性能 (1,192GFLOPS) を達成し、2001年11月付けの “TOP500 Supercomputer List” (http://www.top500.org/) でも依然として12位にランク付けされている。また、IDCが2001年11月13日付けで発表したレポート “Supercomputer Performance Rankings Based on New Standard Test:
The IDC Balanced Rating'' では、より広範なベンチマーク試験に基づくランク付けを行っているが、PSCのTerascale、ASCI Whiteに継ぐ第3位の能力を有するスーパーコンピュータ・システムとして高く評価されている。
 本システムは、稼働開始直後から活発に利用されており、本センター設置分の6ノードの利用率 (稼働時のユーザによるプロセッサ利用率) は、通年で75%を越えており、大規模な並列システムとしては他に例のない高い利用率である。ベクトル型プロセッサとして単体プロセッサ性能が高く、プログラムの高性能化に際して並列化による効率低下が少ないことが主要因である。また、従量課金からフェアシェア型の定額課金への制度変更したことが、さらに高い利用率に貢献しており、前システムまでに見られた夏場の閑散期のような極端な利用率の落ち込みは見られなくなった。運用実績の詳細は、本年報の記事「スーパーコンピュータシステムSX-5/128/M8のフェアシェアスケジューラによる運用」を参照頂きたい。
 近年、多様に異なるアーキテクチャを持つ計算機(ベクトルコンピュータ、スカラー並列コンピュータ等)をネットワークで接続して使用する広域分散並列処理、いわゆるグリッドが提唱されている。
 本研究部門では、1996年からグリッドコンピューティングに関する研究を行っている。本年度は、レーザー核融合研究センターとの共同によりプラズマ粒子シミュレーションの開発を始めた。具体的には、グリッド環境実現のためのデファクトスタンダードなソフトウェアであるGlobusをSX-5に移植することによりグリッドコンピューティング環境を実現し、シミュレーションに要する計算時間を大幅に短縮することを目指した。核融合研究センターに設置されたSX-5からサイバーメディアセンター本館のSX-5のノード間でジョブ投入実験までが成功している。次年度は、シミュレーションによる実証ベースの実験が本格化する予定であり、性能評価によってグリッド環境のチューニングを行う予定である。
 さらに、本年度は北大、東北大、東大、京大、名大、阪大、九大の大型計算機センターおよび学術情報センターを10Gbpsの超高速ネットワークであるSuperSINETによって接続し、導通試験を完了した。また、米国カリフォルニア州のSDSC (Sandiego Supercomputing Center)、シンガポールのiHPC (Institute of High Performance Computing)との情報交換も積極的に行っている。来年度には超高速ネットワークを柱としたスーパーコンピュータグリッドが整備され、さまざまなシミュレーション実験などが開始される予定であり、その可能性に各方面からの期待が高まっている。
写真1:本センター設置のノード #0, #1, #2 写真3:レーザー核融合研究センター設置のノード#6
写真2:本センター設置のノード #3, #4, #5 >写真4:核物理研究センター設置のノード #7

2.2 汎用コンピュータシステム

HP社製の演算サーバExemplar V2500を中心としたシステムから、2002年3月25日にシステム更新を行い、Intel社のItaniumプロセッサを搭載した日本電気社製Express5800/1160Xaをアプリケーションサーバとするシステムの運用を開始した。今回の更新では、学術情報データベースをはじめとする情報コンテンツが研究者にとってますます重要度を増している現状を鑑み、アプリケーションサーバによる高速なアプリケーション利用環境の提供とともに、情報コンテンツの効果的な提供にも重点をおいたシステムとするため、個人化情報提供システムの導入、学術情報データベースの導入などが特徴となっている。更新システムの詳細については、本年報の記事「新汎用コンピュータシステムの概要」を参照頂きたい。

2.3 大阪大学総合情報通信システム

大阪大学総合情報通信システム(ODINS; Osaka Daigaku Information Network System)は、大阪大学内のキャンパスネットワークの名称であり、サイバーメディアセンターがODINS事務室とともに、設計、管理、運用を行っている。
 ODINSは、1994年の第1期整備、1996年の第2期整備、1998年の第3期整備を経て、ATMスイッチをバックボーンとするネットワークを構築し、2000年の時点で16000台以上の端末が接続されている。
 ODINSの広帯域化およびセキュリティ強化のための予算が2000年度(平成12年度)第1次補正予算において認められたため、2001年度は第4期整備を行い、ギガビットスイッチおよび高速ルータをバックボーンとするネットワークを構築した。
ODINS第4期整備(ODINS4)の設計にあたっては、以下の3点、1)ギガビットスイッチをバックボーンとすること、2)ルータを集約し管理の負荷を低下させること、3)ユーザが容易に新しいネットワークへ移行できること、を重視し、これらがODINS4の特徴となっている。
 ルータの集約にあたっては、セキュリティ上の要請から、ODINS4ではパケットフィルタリングを高速に行えるルータを導入した。ただし、今年度は諸事情によりパケットフィルタリングを用いたファイアーウォールを構築できなかったので、来年度はパケットフィルタリングを行い、セキュリティの高いネットワークを構築する予定である。
 セキュリティの実情について調査するために、2001年12月にODINSの一部のホストに対してセキュリティ監査を行った。その結果、早急に対処が必要なホストが数多く発見され、セキュリティ強化の必要性を裏付けるものであった。
 一方、大阪大学では、ODINSの適正な運用および管理を図るため、大阪大学総合情報通信システム運用本部規程を策定し、2001年4月1日から施行している。この規程が施行される前は、全学および各部局のODINS管理はボランティアワークとしての位置付けであったが、この規程により、ODINS管理が正式な業務として認められた(図1)。大阪大学総合情報通信システム運用本部規程では、運用本部と部局ネットワーク運用管理委員会を規程しており、運用本部は全学運用管理者ガイドラインおよび全学利用者ガイドラインを策定し、部局ネットワーク運用管理委員会は部局運用管理者ガイドラインおよび部局利用者ガイドラインを策定した。このガイドラインは、各種の全国的なガイドラインとの整合性を図るべく、随時、見直しを行う予定である。
 また、科学技術振興調整費による「セキュア・ネットワーク人材育成プログラム」を通じた管理運営要員の育成、社会への技術移転を行っている(後述)。

図1:ODINS運用本部組織体制

2.4 電子図書館システム

本研究部門では本学附属図書館との連携のもとで図書館の電子化を推進するためのシステムの企画等を行っている。図書館の電子化は、コンピュータ関連技術やインターネット関連技術の進展に伴って近年ますます重要視されてきており、大阪大学附属図書館でもすでに電子ジャーナルや各種データベースの提供、大阪大学の源流と言われる懐徳堂の貴重資料の電子化などが行われている。
 今年度は、本学附属図書館の協力のもと、2000年度(平成12年度)補正予算による「電子図書館システム」の導入を進め、2001年9月より運用を開始している。このシステムでは、図書館においてもテキストや画像、動画(ビデオ)などのマルチメディア形式にディジタル化された資料や文献の提供が、教育・研究活動を支える基盤としてますます重要になってくるとの考えから、次のようなサブシステムを導入した。
   1.資料電子化システム
   2.マルチメディア端末(11台)
   3.情報コンセントシステム
   4.衛星放送受信・配信システム
 これらのサブシステムのうち、マルチメディア端末はこれまで本館に20台設置されていたが、さらに本館に5台、生命科学図書館に3台、吹田分館に3台を設置した。また、情報コンセントシステムもこれらの3館すべてに設置し、教職員や学生が個人所有するPCをインターネットに接続し利用できる環境を構築した。衛星放送受信・配信システムは6チャンネルまでの放送受信に対応しており、受信した放送番組は附属図書館に設置されたマルチメディア端末や、学内LAN (ODINS)に接続された学内の端末からRealPlayerを用いてリアルタイムに視聴することができる。
 さらに、2002年3月に運用を開始した新汎用コンピュータシステムにおいても電子図書館機能の充実を進め、Web of Science、SciFinder Scholor、CrossFire、INSPECをはじめとする学術情報データベースの導入による研究環境の充実、マルチメディア端末の増設、セキュリティの強化などを行った(学内公開中のDBに関しては、http://www.library~/dl/を参照)。

2.5 阪大TV

図2:阪大TVホームページ
サイバーメディアセンターでは、ODINS3期整備として導入された「マルチメディア講義システム」を利用して、大阪大学における講義、講演などのコンテンツのインターネットにむけた配信、蓄積を行うために、「阪大TV」を創設した(図2)。
 阪大TVの活動として、2001年4月にコンベンションセンターで行われた、学生国際交流イベントのコンサートをインターネットに向けてライブ配信を行った。また、この様子をコンテンツとして蓄積し、8月に立ち上げたHPで公開した。この他にも、大阪大学創立70周年記念式典や、学生国際交流イベント、キャンパスビデオなど、十数点のコンテンツが蓄積・公開されており、現在までに約2万件のアクセスがあった。
 また、各部局で開催されている研究会などのライブ配信も行っており、その度にNewsとしてTOPページで紹介している。2001年9月に行われた「パネル討論会」のライブ配信では、300件以上の視聴があった。
 以下は、阪大TVの2001年度各月アクセス件数の実績である。 (単位:件数)
8月 9月 10月 11月 12月
3,621 2,892 2,293 2,150 1,469
1月 2月 3月
2,246 2,150 2,861 19,682

2.6 バイオグリッド基盤システム

科学はIT(情報通信技術)を基盤として大きく変わる可能性がある。ゲノム情報科学や金融工学に見られるように従来科学にITを適応することによって、科学を驚異的に進展させることができる。
ことに米国のバイオサイエンス分野においては、コンピュータ技術の積極的な活用、産官学の連携強化によるネットワーク化の推進、開発された技術を基盤とするベンチャービジネスの創業などの相乗効果により、国際競争力の優位性を築きあげてきた。
 一方、わが国では、関係機関のネットワーク化、大学等高等研究機関における研究成果の利用促進、ならびに研究成果を利用したベンチャービジネスの創業といった分野において、すでに欧米から大きく遅れを取っている。たとえば、現在、バイオインフォマティクスという言葉に代表される生物情報分野の重要性が叫ばれているが、わが国においては、バイオサイエンス分野への情報関係の技術者の参入が圧倒的に少ないことが大きな問題となっている。
 米国ではSDSC (San Diego Supercomputing Center) のようなスーパーコンピュータセンターが中心となって、このような学際的な研究が進められようとしている。そこで、大阪大学およびその周辺の関連研究機関が世界的にリードしている医学、生物分野に特化したIT応用研究を推進するため、高度な計算機資源とネットワーク資源が集約されている本サイバーメディアセンターを核として、ITの当該分野における応用技術の集約を行うことを目的にバイオグリッドプロジェクトを現在進めている。
 近年、多様に異なるアーキテクチャを持つ計算機(ベクトルコンピュータ、スカラー並列コンピュータ等)をネットワークで接続して使用する広域分散並列処理、いわゆるグリッドが提唱されている。しかし、電子顕微鏡などの科学機器を含めて考えると、グリッドは単なる異機種並列分散処理ではなく、観測に基づくデータの収集、解析・処理、そして分析という科学の工程を分散した装置や計算機を高速のネットワークで接続することで効率的に行うという科学の方法論そのものの再構築である。 バイオグリッドプロジェクトでは今後のペタフロップス計算機は複数の高機能計算機をつなげたグリッド型になるとの考えの下、複数の異なるアーキテクチャの計算機群を整備した(図3)。また、それと平行して、広く国立研究機関や民間企業・研究機関等との共同研究を通じ、競争の激しい当該分野においてスピードの速い技術開発を行うとともに、開発された応用技術のビジネス化を含めた展開を行っていくような新しい研究開発システムを構築する。これと並行して非定期に学内外、産官学のメンバーによる研究会を開催している。
図3:バイオグリット基盤システム

2.7 データグリッド基盤システム

ナノテクノロジーやバイオテクノロジーなどの分野において、コンピュータで解析を行ったデータの可視化によるさらなる分析は重要であると考えられる。2001年度(平成13年度)の第2次補正予算において、CG映像を立体表示可能なデバイスおよびデータを記録するための大規模記憶装置としてデータグリッド基盤システムを整備する予定である(図4)。スーパーコンピュータによるデータの解析結果をより分かりやすく提示可能にするとともに、3次元映像を用いたマルチメディアコンテンツを作成可能なシステムとする。
2.8. 教育活動
本部門は工学研究科情報システム工学専攻にて応用情報システム工学講座を兼任しており、学部、大学院の学生の研究指導を行うとともに、下記の講義を担当した。
図4:データグリット基盤システム

3.研究活動

コンピュータの高性能化、低価格化やインターネット等ネットワークのますますの広域・大規模化に対応するため、コンピュータとネットワークのシームレスな統合を目指したネットワークコン
ピューティング技術について、主としてコンピュータ間通信の超高速化技術、ブロードバンド時代に必須であるQoS (Quality of Service)技術、広域分散でのコンピューティングアーキテクチャ(GRID)とその応用など、その実現技術の開発を研究している。研究は大学内に留まらず、UCSDとの超高圧電子顕微鏡の遠隔制御、本学医学研究科とのMEG解析など、常に国内外の他大学、他学科、企業との共同研究という形で行われている。具体的には次に掲げるテーマをベースに研究を進めている。

(1) グリッドコンピューティングの研究

複数の超高速計算機を高速ネットワークで接続することでこれまで行えなかった大規模計算が行えるようになる。このような環境を海外の複数拠点と構築し、広域高速ネットワークを通じた実験、またそのさまざまな応用を行う。

(2) QoSを考慮したネットワーク・アーキテクチャの研究

要求されるサービス品質(QoS)やネットワークの利用状況に応じてマルチメディア通信を行うためのネットワーク・アーキテクチャの提案、評価、ならびに構築を行う。

(3) インターネット・セキュリティの研究

インターネット・コマースなどの応用分野が広がるにつれて、インターネット利用者のセキュリティを守ることがますます重要になってきている。暗号理論ではなく、実用的なインターネット・セキュリティアーキテクチャの実現を目指し、ソフトウェアの設計・開発を行う。

 これらの研究テーマをベースとして、具体的に次のような研究を行っている。 以下、2001年度の研究を中心に、それらについて述べる。

3.1 メタコンピューティングを用いたMEG実時間処理システムの開発

情報システムを実際に応用し、社会に役立つシステムを構築していくのが本研究部門の役割である。本研究部門では、高齢化社会に備え、メタコンピューティングを用いて脳機能の解明および脳機能異常の早期発見を可能にするシステムを目指して研究を行っている。具体的には、MEG (MagnetoEncephaloGraphy、脳磁図)の実時間処理システムを開発している。MEGは、神経細胞の電気的活動により生じる磁場をとらえるもので、非侵襲的であり、しかも、時間分解能および空間分解能が高いという利点を持っている。そのため、MEGは、てんかんなどの脳機能異常の早期診断に対する検査手法として、近年、注目されている。しかしながら、MEG解析の問題点は大きく3点あり、データが多いこと、解析時間がかかること、ノイズが多いこと、である。特に、データが多く解析時間がかかることについては、医師がインターアクティブに解析を行う必要があるため、膨大なパラメータースタディを実時間で行うことが要求される。そこで、本研究部門では、メタコンピューティングを用いてMEGの信号処理を実時間で処理できるシステムを構築するべく研究を進めている。さらに、各種の信号処理技法を用いて、MEGの中に含まれるノイズを軽減する方法についても研究を行っている。
 

3.1.1 メタコンピューティングを用いた並列処理

MEG解析に必要な膨大なパラメータースタディを実時間で処理するためには、処理能力の高い計算機が必要である。幸いにもMEG解析に使われる信号処理手法は局所性が高く、並列演算スキームに親和性が高い。そこで、複数の計算機を用いてあたかも1台の計算機のように演算できるメタコンピューティングパラダイムを用いることにより、計算時間を短縮できるのではないかと考えた。
本研究部門では、Globusというメタコンピューティングスキームを用いて、並列演算システムを実際に構築することで、MMEG解析における計算時間の短縮を確認した。さらに、医師がインターアクティブに解析を行えるようなGUIを開発し、システムの応答が満足できるものであることを示した。

図5: 脳機能解析アルゴリズム

3.1.2 独立成分分析を用いたノイズ除去

MEGの観測波形は複数の異なる波形成分が混合したものである。また、これらは同時に多部位から出現する。独立成分分析により、観測された混合波形を統計的に独立した成分に分離することが可能である。分離された成分は脳内で出現する原信号と考えることができる。
 また、MEGは脳表面から発する微弱な磁場を検出するため、MEG信号にはどうしてもノイズが混入する。そのため、MEG解析においてはノイズが混入した信号を処理することとなり、不必要な信号処理を行うことも多い。そこで、MEG信号のなかから必要な信号のみを取り出す手法として、独立成分分析に注目し研究を行っている。すなわち、独立成分分析を前処理として行うことにより、より効率的な信号処理を目指すものである。
 本研究では、独立成分分析のMEG解析への応用の妥当性および有効性を示した。

[関連発表論文]
  1. Yuko Mizuno-Matsumoto, Toshiki Yoshimine, Yasuo Nii, Amami Kato, Masaaki Taniguchi, Jung K. Lee, Tae S. Ko, Susumu Date, Shin-ichi Tamura, Shinji Shimojo, Kazuhiro Shinosaki, Tsuyoshi Inouye and Masatoshi Takeda, “Landau-Kleffner syndrome: localization of epileptogenic lesion using wavelet-crosscorrelation analysis”, Epilepsy and Behavior, vol. 2, no. 3, pp. 288-294, June 2001.
  2. 鵜飼聡, 篠崎和弘, 石井良平, 小川朝生, 水野(松本)由子, 井上健, 平吹度夫, 吉峰俊樹, S.E. Robinson, 武田雅俊, “MEGによる言語の脳機能局在の可視化-空間フィルタ法による解析-”, 臨床脳波, vol. 43, no. 7, pp. 430-435, 2001.
  3. Yuko Mizuno-Matsumoto, Masatsugu Ishijima, Kazuhiro Shinosaki, Takshi Nishikawa, Satoshi Ukai, Yoshitaka Ikejiri, Yoshitsugu Nakagawa, Ryohei Ishii, Hiromasa Tokunaga, Shin-ichi Tamura, Susumu Date, Tsuyoshi Inouye, Shinji Shimojo and Masatoshi Takeda, “Transient Global Amnesia (TGA) in an MEG study”, Brain Topography, vol. 13, no. 4, pp. 269-274, November 2001.
  4. Susumu Date, Yuko Mizuno-Matsumoto, Youki Kadobayashi and Shinji Shimojo, “An MEG data analysis system using Grid technology”, 情報処理学会論文誌, vol. 42, no. 12, pp. 2952-2962, December 2001.
  5. Yuko Mizuno-Matsumoto, Gholam K. Motamedi, W. Robert S. Webber and Ronald P. Lesser, “Wavelet-crosscorrelation analysis can help predict whether bursts of pulse stimulation will terminate afterdischarges”, Clin. Neurophysiol., Vol. 113, No. 1, pp. 33-42, January 2002.
  6. Yuko Mizuno-Matsumoto, Susumu Date, Takeshi Kaishima, Kengo Hara, Kazuhiro Shinosaki, Shin-ichi Tamura and Shinji Shimojo, “The development of a high performance computing for MEG data using an Independent Component Analysis on Globus” in Proceedings of The International Conference on Bioinformatics 2002 (CDROM), February, 2002.
  7. 水野(松本)由子, R. P. Lesser, R. S. Webber, G. K. Motamedi, 篠先和弘, 鵜飼聡, 石井良平, 井上健, 伊達進, 下條真司, 武田雅俊, “てんかんの皮質脳波における電気刺激を用いた異常波抑制の状態変化の定量化”, 第97 回日本精神神経学会総会, vol. 103, no. 10, p. 851, May 2001.
  8. 鵜飼聡, 篠崎和弘, 石井良平, 梅田幹人, 川口俊介, 山本雅清, 小川朝生, 水野(松本)由子, 井上健, 武田雅俊, 吉峰俊樹, Robinson SE, “Stroop 課題時の皮質活動の時間的推移とその加齢性変化のMEG 研究”, 第97回日本精神神経学会総会, May 2001.
  9. 石井良平, 篠崎和弘, 鵜飼聡, 山本忍, 小川朝生, 川口俊介, 山本雅清, 水野(松本)由子, 井上健, 武田雅俊, “幻聴出現時の脳磁図の解析第2報―発作間欠時に幻聴体験を有するてんかん患者の1症例―”, 第97回日本精神神経学会総会, May 2001.
  10. 甲斐島武, 水野(松本)由子, 伊達進, 篠崎和弘, 下條真司, “独立成分分析を用いた脳磁図のための高速解析システムの構築”, 電子情報通信学会技術報告医用画像研究会(MI2001-37), vol. 101, no. 310, pp. 13-20, September 2001.
  11. 伊達進, “An application of Grid technology to medical data analysis”, 第3 回創造的研究のための大規模データマネージメント研究会(招待講演), October 2001.
  12. Susumu Date, “Telemedicine work bench for evaluation of brain function on GRID: I. Engineering aspect (Invited Talk)”, in The Seminar on Grid: The infrastructure on the Internet, November 2001.
  13. Yuko Mizuno-Matsumoto, “Telemedicine work bench for evaluation of brain function on GRID: II. Medical aspect (Invited Talk)”, in The Seminar on Grid: The infrastructure on the Internet, November 2001.
  14. 水野(松本)由子, “バイオグリッドの脳機能診断システムへの応用(招待講演)”, IPAB(並列生物情報処理イニシアティブ)シンポジウム2001, November 2001.
  15. 水野(松本)由子, 伊達進, 篠崎和弘, 下條真司, “遠隔医療を用いた脳機能診断システムの開発”, 大阪城南女子短期大学研究紀要, vol. 35, pp. 59-61, 2001.
  16. 水野(松本)由子, “脳の発達と可塑性”, 平成12 年度大阪市大学開放講座「幼児教育大学」大阪市教育委員会, pp. 131-137, 2001.
  17. 水野(松本)由子, “臨床神経生理学および医用工学分野における4次元大脳機能地図の作成とてんかんを含む疾患脳の機能評価への応用に関する研究”, 第13巻, てんかん治療研究振興財団, 2001.
  18. Susumu Date, “A Study on Application of Grid Computing to Medical Data Analysis”, PhD thesis, Graduate School of Engineering, Osaka University, February 2002.

3.1.3 広域分散環境におけるセキュリティ機能

 Globus Toolkitを用いることで、ローカルに大規模な計算リソースを持たないサイトでも、高速な計算環境を構築することができる。しかし、Globus Toolkitでは、広域分散計算に参加するユーザおよびホストの認証をおこなうのみで計算対象となるデータの保護は考慮されていない。このためGlobusでは、プライバシーに関わるデータを扱うのが困難である。
 そこで本研究では、広域分散計算上で取り扱うデータの安全性を確保するため、Globus Toolkitにおける暗号化環境を構築する。具体的には、IPv6システム上に、IP層での暗号化環境を提供するIPsec、IKE ( Internet Key Exchanger)を用いて実現する。

3.2 Diffservに基づいたインターネットの通信品質制御アーキテクチャの構成法に関する研究

 インターネットにおける通信品質(QoS)の改善には、ベストエフォートのままでもネットワークのキャパシティを増大させることにより現実的なQoSが実現可能とするオーバープロビジョニングと呼ばれるアプローチがあるが、専用線や電話など回線ベースのネットワークとの完全な統合を図るには何らかのQoS制御が必要と言われている。QoS制御のための機構として、RSVPやMPLSなどの様々な技術が開発されているが、スケーラビリティの観点からDiffservと呼ばれるパケット転送制御方式が有望である。Diffservでは、ネットワークの入口で対象となるパケットに印を付け(DSCPのマーキング)、各ルータはその印を見て、帯域制限や廃棄制御、優先制御などのトラフィック制御を行うとする仕組みであるが、ルータにどのようなトラフィック制御を設定するかなど、Diffservの使い方については明らかになっていない。本課題では、Diffservを用いてQoS制御を行うために必要な機能の特定と、その実現法を明らかにすることを目的とする。

課金構造を考慮したQoS機能を有するネットワークに関する研究

 これまでに行ってきた、QoSの予約サービスにおけるドメイン間のネットワーク資源売買モデルの検討に加えて、VoIP (Voice over IP )などマルチメディアの即時サービスにおけるビジネスモデルを検討した。とくに課金の形態について、定額制に限りなく近い従量制料金体系になるとの結論を得た。その結果を踏まえて、QoSをサービスとして提供する際にネットワークに必要となる機能の要求条件を導出し、その必要機能を網羅的にリストアップした。その必要機能の関連性や相互関係を分析することによって、最終的に6つの網機能コンポーネントにまとめ、全体的な機能構成モデルを考案した。考案した機能構成モデルの妥当性を検証するため、実験室内に実験用ネットワークを構築し、既製品や試作ソフトウェアを組み合わせながら、考案したQoSアーキテクチャのプロトタイプを構成した。プロトタイピングの結果、利便性の高いユーザインタフェースの実現やマルチベンダ環境における所期の動作を確認できたが、網の障害への対処など更なる開発が必要であることが判明した。今後はプロトタイプがサポートするルータ機種やプロトコルの拡大を進め実用性を向上させると共に、本プロトタイプを実ネットワークに適用して広域実験を行い、さらなるアーキテクチャの改良を図る予定である。

[関連発表論文]
  1. 細川裕司, 八木輝, 吉田幹, 馬場健一, 下條真司, “多段ドメインにまたがる帯域確保の迅速化手法の提案”, 第10回ITRC 総会・研究会, October 2001.
  2. 八木輝, 細川裕司, 馬場健一, 下條真司, “QoS サーバの品質フィードバック機能”, 電子情報通信学会技術研究報告(IA2001-41), pp. 163-170, November 2001.

3.3 適応型マルチメディア・コンテンツ配送技術に関する研究

3.3.1 WWWコンテンツの配送順序制御に関する研究

WWWで提供されるページは、HTML文書及びページに埋め込まれる静止画像やアニメーション画像をはじめとする多数のインラインオブジェクトから構成される。これらのインラインオブジェクトは、クライアントがHTMLファイルを解析した後にサーバに対して順次リクエストが出されるが、そのリクエストの順序は規定されていないため、ユーザにとって重要でないオブジェクトが先に配送されてしまうといったことが発生する。コンテンツを提供する側にとっても、例えば製品の画像を他の画像よりも先に配信して注目してもらいたいといった要求が考えられるが、そのような配送順序を制御する仕組みはこれまで提案されていなかった。本研究では、そのようなWWWページ中のインラインオブジェクトの配送順序を制御する仕組みとして、配送順序を記述するための言語を提案し、その記述に従ったインラインオブジェクトの配送が可能なプロトコルHTSP (Hypertext Streaming Protocol)を提案している。提案している仕組みを利用すれば、インラインオブジェクトの配送順序を直列配送と並列配送を組み合わせて柔軟に制御することが可能になり、ユーザの待ち時間の短縮が図れる。
 本年度は、提案している配送順序制御機構をキャッシングプロキシが介在する環境に拡張し、プロキシキャッシュの内容に依存してクライアントへのインラインオブジェクトの配送順序を動的に変更することにより、効果的にWWWコンテンツを配送する手法を提案した。さらに、配送順序をユーザの嗜好等を記述したプロファイルに基づいて決定するユーザ適応型配送順序制御機構に拡張し、ユーザの嗜好に合わせた順序でインラインオブジェクトを配送する機構を提案した(図6)。
図6:ユーザ適応型コンテンツ配送

[関連発表論文]
  1. 藤本拓, 中野賢, 春本要, 西尾章治郎, “キャッシングプロキシにおける配送順序変更手法の理論的性能解析, ”情報処理学会第63回全国大会講演論文集(3), pp. 319-320, September 2001.
  2. 中野賢, 春本要, 下條真司, 西尾章治郎, “キャッシングプロキシを考慮したインラインオブジェクトの配送順序制御機構,” 情報処理学会論文誌, Vol. 43, No. 1, pp. 101-111, January 2002.
  3. Tadashi Nakano, Kaname Harumoto, Shinji Shimojo and Shojiro Nishio, “User Adaptive Content Delivery Mechanism on the World Wide Web,” in Proceedings of the 2002 ACM Symposium on Applied Computing (SAC2002), pp. 1140-1146, March 2002.
  4. Hiroshi Fujimoto, Tadashi Nakano, Kaname Harumoto and Shojiro Nishio, “Response Order Rearrangement on a Caching Proxy for Reducing WWW Latency,” in Proceedings of the 2002 ACM Symposium on Applied Computing (SAC2002), pp. 845-851, March 2002.
  5. Hiroshi Fujimoto, Tadashi Nakano, Kaname Harumoto and Shojiro Nishio, “Response Order Rearrangement on a Caching Proxy for Reducing WWW Latency,” in Proceedings of 17th ACM Symposium on Applied Computing.
  6. 福村真哉, 中野賢, 春本要, 下條真司, 西尾章治郎, “マルチメディア・コンテンツ配送のための配送順序決定支援ツール,” 情報処理学会論文誌, Vol. 43, No. 4, April 2002, 掲載予定.

3.3.2 WWWコンテンツの個人化手法に関する研究

WWWで提供されるページ群は、ほとんどが固定的なリンク構造で全体が構成されている。そのため、ユーザごとに多様なナビゲーションパターンがあるにも関わらず、WWWサイトのリンク構造は一つしかなく、ユーザによってはリンクを辿るという動作を何度も繰り返さなければならない状況がある。例えば、あるコンピュータメーカーのWWWサイトにおいて製品の仕様を比較検討したいユーザは、製品一覧のページから製品Aの概要が書かれたメインページ、製品Aの仕様のページと辿り、製品一覧のページに戻ったあと製品B、製品Cと同じ動作を繰り返す必要がある。
 そこで、ユーザのページ視聴履歴からナビゲーションパターンを検出し、それに基づいてページの構成ならびにリンク構造を動的に変更して提示する手法を提案した。この手法を用いれば、上記のユーザは何度か同じパターンの動作を繰り返すことにより、製品の概要と仕様が同一ページ内に提示されるようになり、リンクを辿る動作の回数を減らすことが可能になる。
 この手法は、最終的には大阪大学の源流とされる懐徳堂の貴重資料をディジタル化したコンテンツに対して適用する予定である。

[関連発表論文]
  1. 福村真哉, 中野賢, 春本要, 下條真司, 西尾章治郎, “視聴履歴に基づくディジタルコンテンツの個人化された提示手法,” 電子情報通信学会第13回データ工学ワークショップ論文集, Web掲載, March 2002.

3.4 データベース移動を用いた分散データベースシステムの構築に関する研究

広域分散データベースシステムの高速化
近年、ATM(Asynchronous Transfer Mode: 非同期転送モード)方式を中心としてネットワーク技術が急速に発展し、それに伴ってデータ通信に用いることのできるネットワークの帯域幅も急速に拡大している。従来の分散データベースシステムでは、転送するデータ量の削減が性能向上の重要な要因であったため、データベースを特定のサイトに固定し、処理依頼と処理結果のメッセージ交換によって処理を行っていた。これに対して、広帯域ネットワークを利用すればデータベース全体の転送も短時間で行えるため、データベースを移動してそれに対する処理をローカルに行うことで通信の回数を減らすことが可能となる。そこで、我々の研究グループではこのようなデータベース自体を移動してトランザクション処理を行う手法(データベース移動)を提案し、さらに、移動機能を有する分散データベースシステムを提案している。本研究では、これらの提案に基づき、実環境におけるデータベース移動の実現について議論し、データベース移動機能を有する分散データベースシステムの構築を行った。
 これまでに構築したシステムでは、データベース移動とデータベース操作の同時実行制御を行っていなかったため、移動中のデータベースに対するデータベース操作をサポートしていなかった。しかし、データベース移動がある期間データベースを専有する処理であることを考慮すると、移動中のデータベースに対するデータベース操作のサポートは処理スループット向上のために重要と考えられる。そこで本研究では、データベース移動に対する同時実行制御機構を設計し、既に構築したプロトタイプシステム上に実装した。
 同時実行制御機構は、通常の2相施錠規約で用いるデータベース単位の読出し施錠および書込み施錠に、データベース移動のための移動施錠の概念を新たに加えることで実現した。読出し施錠、書込み施錠と移動施錠の両立性について3方式を考案し、それらをプロトタイプシステムに実装した。さらに、実測評価によって実装した3方式の性能を比較した。評価結果より、提案方式によって処理性能が向上できることが分かった。

[関連発表論文]
  1. 秋山豊和, 酒井仁, 原隆浩, 西尾章治郎: データベース移動に基づく分散データベースシステムにおける並行処理制御機構, 情報処理学会論文誌:データベース, Vol. 43, No. SIG2(TOD13), pp. 158-167, March. 2002.
  2. Toyokazu Akiyama, Shinobu Sakai, Akimichi Umigai, Takahiro Hara, Masahiko Tsukamoto and Shojiro Nishio, “Design and implementation of db-man α: Does database migration work well in a real environment?”, in Proceedings of Thirteenth Australasian Database Conference (ADC2002 to appear), January 2002.

3.5 フォトニックネットワークアーキテクチャに関する研究

近年の光伝送技術の発展には目覚しいものがあり、波長分割多重技術や光時分割多重技術などに、よってネットワークの回線容量は爆発的に増大してきた。しかし、光伝送技術とネットワーキング技術はおのおの別個の歴史を持ち、インターネットに適した光通信技術の適用形態については明らかになっていないのが現状である。短期的には、高性能光パスネットワークがその中心技術になると考えられ、その点に着目した研究を行っている。さらに長期的な解としては、フォトニックネットワーク独自の通信技術も十分に考えられる。これらの点を鑑みて、それぞれの研究テーマに取り組んでいる。

3.5.1 光圧縮技術を用いたフォトニックネットワークにおけるパス設計手法

近年、OTDM方式に光パルスの圧縮/伸長技術を適用し、数Gbpsから100Gbpsの伝送容量を提供する高速な光リングネットワークによるMAN (Metropolitan Area Network) を構築することが可能になりつつある。また、WDM技術を併用することにより、各リンク上に複数コネクションを同時に設定し、さらに広帯域を利用することが考えられる。しかしながら、リングに接続している各ノードのパケット処理能力が劣ると、その広帯域性を十分に有効利用できない場合もある。そこで、本研究では、接続されたノード間のすべてのトラフィックを収容する場合を考え、対象とするリングネットワークにおける最大性能を理論的に解析し、次に、任意のトラフィック要求と波長数に適応できるパス設定アルゴリズムを提案してその評価を行った。
 その上で、リング型ネットワークにおいては、故障が発生した場合の影響が大きいことから、信頼性の高いネットワークの構築が重要とされる。そこで本研究では、光パルス圧縮/伸長技術に基づく光圧縮TDM方式を用いたリングネットワークの耐故障性を考慮した設計手法を提案した。具体的には、4つのパス/リンク切断時の対処手法を提案し、それぞれのリングネットワークに接続された全ノード間のパスを設定するのに必要となるスロット、フレーム数の理論的下値を導出した。それによって、各種パラメータがフレーム数、スロット数に与える影響を明らかにすることができた。次に、信頼性を考慮したパス設定アルゴリズムを提案し、各耐故障処理手法における最適な結果を達成するパラメータ領域が存在することを示している。

[関連発表論文]
  1. Ken-ichi Baba, Takashi Yamaguchi, Kazuhiro Gokyuu and Masayuki Murata, “A path accommodation method for reliable ring networks with optical compression TDM,” International Journal of Communication Systems, Vol. 15, No 2-3, pp. 221-237, March 2002.

3.5.2 フォトニックパケットスイッチアーキテクチャに関する研究

 フォトニックパケットスイッチでは、スイッチ内の1つの出力線に対して同時に複数のフォトニックパケットが出力される場合に発生するパケットの競合によるパケット損失が問題となる。従来の電気領域におけるスイッチでは、RAM (Random Access Memory) を利用した蓄積交換(store-and-forward) 技術によりパケット出力の時間的調整が可能となり、パケットの競合を容易に解決することができる。しかしながら、フォトニックパケットスイッチに関しては光領域におけるRAM がまだ実用化されていないため、別のアプローチを考えることが必要となる。
 これを解決する手法として、光ファイバによる遅延線(FDL; Fiber Delay Line) を用いてそれを光バッファとしてパケットの競合を時間的に解決する光バッファリング(optical buffering)による手法、WDM における波長変換技術を利用して競合するパケットを別の波長に変換して同時に出力することを可能とする波長変換(wavelength conversion) による手法などが研究されている。
 光バッファリングによる手法では、並列に配置した長さの異なる複数の遅延線によってFDL バッファを構成した場合、挿入する遅延線を選択することによりパケットごとの蓄積時間を設定することができる。電気領域における蓄積交換との違いは、メモリのランダムアクセスができない点にあり、このことが光領域におけるバッファリングを複雑にする要因となる。波長変換による手法では競合の対象となるパケットを波長変換器によって波長変換をすることによりパケットの競合の問題を解決する。波長変換はコストが大きくなるという欠点があるが、優れた性能を示すことが知られている。
 まず、フォトニックラベル処理に基づいたパケットスイッチ構成を対象とし、スイッチ構成として実用化の難しい光論理デバイスによる複雑な制御を不要にするため、簡単に構成できる遅延線を用いたバッファ付き2×2基本スイッチ及びそれらを組み合わせたセルフルーティング可能な多段スイッチを考える。また、基本的な性能を測るため、固定長パケットを取り扱うものとする。2×2基本スイッチ及びそのパケットスケジューリングアルゴリズムはすでに提案されているが、パケットが到着しない場合にも実パケットと同様にバッファに空パケットを挿入して制御するなど、バッファの効率的な利用が図られていない。また、多段スイッチ構成とした場合の解析及び性能評価は行われていない。
 そこで、バッファの効率的な利用が可能なスケジューリングアルゴリズムを提案し、有効性を示した。しかしながら、バッファの状態数が多くなり、大規模なバッファにおいての評価が難しいという問題点があるため、このアルゴリズムをさらに改良し、少ない状態数でバッファの有効利用を図ることのできる手法を提案した。2×2バッファスイッチ、およびそれらを組み合わせた多段スイッチにおいて性能を調べ、さらに、多段スイッチにおいて競合解決の方法としてディフレクションルーティングを用いた場合の性能評価、実現コストを考慮した検討も併せて行った。その結果、提案方式はより効率的なバッファ利用が図ることができ、パケット棄却率、平均待ち時間どちらの特性も従来方式より改善できることを示した。
次に、WDM ネットワークにおいて、仮想的にバッファサイズを拡大できるWDM-FDL を用いた、可変長パケットを扱う同期型フォトニックパケットスイッチの性能を調べた。すなわち、スイッチに対する入力としてWDMによって多重化されたパケットを扱い、スイッチング時におけるオーバーヘッドを低減するためにスイッチ内部において一定のタイムスロット間隔での同期をとり、パケットスイッチングを行うものとする。また、フォトニックパケットスイッチ内での競合に対しては、光バッファリングおよび波長変換を用いて解決することとする。ここでは、光バッファの利用方法によって2つのアーキテクチャを考える。つまり、スイッチ内のすべての出力線にスイッチングされるパケットを1つのFDL バッファで共有して蓄積する共有バッファ型、および各出力線ごとに設けられたそれぞれのFDLバッファに蓄積する出力バッファ型の2つのアーキテクチャを対象として、シミュレーションによる性能評価を行った。その結果、共有バッファ型アーキテクチャは、ネットワークの負荷が低い場合において、出力バッファ型アーキテクチャの1/入出力本数のFDL でも良い性能を示すことがわかった。逆に、出力バッファ型アーキテクチャは出力線ごとにFDL バッファを設置するため、ネットワークの負荷が高い場合においても共有バッファ型に比べ、パケット棄却を抑えたスイッチングが可能となることがわかった。

[関連発表論文]
  1. 竹森隆介, 馬場健一, 村田正幸, 北山研一, “フォトニックパケットスイッチに最適なバッファ構成手法,” 電子情報通信学会フォトニックネットワークをベースとするインターネット技術研究会 (PNI2001-7), pp. 48-55, July 2001.
  2. 山口貴詩, 馬場健一, 村田正幸, 北山研一, “フォトニックパケットスイッチにおけるWDMファイバ遅延線バッファのためのパケットスケジューリング,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2001-116), pp. 15-22, December 2001.
  3. 竹森隆介, 馬場健一, 村田正幸, 北山研一, “フォトニックパケットスイッチにおける2 × 2バッファスイッチのスケジューリング,” 電子情報通信学会技術研究報告(IA2002-42), Vol. 101, No. 634, pp. 1-8, February 2002.

4.社会貢献活動

4.1 学会活動

4.1.1 国内学会

国内では、電子情報通信学会インターネットアーキテクチャ(IA)研究会、情報処理学会などでの論文発表やパネル討論、講演などを通じて学会への貢献を行っている。また、日本学術振興会インターネット技術第163委員会(Internet Technology Research Committee (ITRC))の運営委員(下條)、電子情報通信学会インターネットアーキテクチャ(IA)研究会の委員長(下條)を勤めている。

4.1.2 国際会議

  1. The Second Kyoto meeting on Digital Cities PC member (下條)
  2. International Conference on Human Society Country General Co-Chair (下條)
  3. JSPS Workshop on Applied Information Technology for Science (JWAITS 2001) PC chair (下條)

4.1.3 招待講演・パネル

  1. 伊達進, “An application of Grid technology to medical data analysis”, 第3 回創造的研究のための大規模データマネージメント研究会(招待講演), October 2001.
  2. 水野(松本)由子, “バイオグリッドの脳機能診断システムへの応用(招待講演)”, IPAB(並列生物情報処理イニシアティブ)シンポジウム2001, November 2001.
  3. Susumu Date, “Telemedicine work bench for evaluation of brain function on GRID: I. Engineering aspect (Invited Talk)”, in The Seminar on Grid: The infrastructure on the Internet, November 2001.
  4. Yuko Mizuno-Matsumoto, “Telemedicine work bench for evaluation of brain function on GRID: II. Medical aspect (Invited Talk)”, in The Seminar on Grid: The infrastructure on the Internet, November 2001.

4.1.4 招待論文

 該当なし

4.1.5 学会表彰

2001年6月 情報通信月間推進協議会
志田林三郎賞(下條) 

4.2 セキュア・ネットワーク構築のための人材育成

2001年度(平成13年度)より文部科学省科学技術振興調整費新興分野人材養成の助成を受け、「セキュア・ネットワーク構築のための人材育成(SecureNetプログラム)」を、ネットワークセキュリティ技術者育成のわが国初の公的機関として立ち上げた。2001年度受講者は13名(修了者12名)であった。このプログラムは、実践的な技術を受講者に習得させるために、ODINSを実践の場として提供している。また、最新の技術動向と研究の情報を提供するために、日本電気株式会社と大阪大学情報系専攻との協力を得て、講義を行っている。
 平成13年度の講義内容は、以下の通り。

4.3 社会人再教育

大阪大学社会人教育講座「情報通信(IT)教育セミナー初心者コース<セキュア・ネットワーク技術>」を開催し、多数の企業より全8回延べ354名のネットワーク管理担当者等が受講した。このセミナーは、「大阪大学中之島センター」の建設に先駆けた社会人教育講座の一環として、大阪商工会議所、社団法人大阪工業会主催、大阪大学サイバーメディアセンター、大学院工学研究科共催、千里国際情報事業財団協力で行ったもので、サイバーメディアセンターの教官が中心となって講師を勤めた。

4.4 地域貢献活動

三田市生涯教育の一環として「三田市IT社会入門セミナーPart3」を、三田市中央公民館にてサイバーメディアセンターの各教官が三田市在住の市民を対象に講演を行った。
12月3日(月) 「こんなに便利なIT社会」 
(細谷行輝)
12月10日(月) 「こんなに危険なIT社会」 
(下條真司)
12月17日(月) 「IT社会について考えよう」
(竹村治雄)

4.5 特許申請

(1) 下條真司、有木康雄、上原邦昭「撮影方向判定装置およびその方法」出願中

4.6 研究プロジェクトへの参画

  1. 文部科学省科学研究費補助金特定領域研究(C)「IT の深化の基盤を拓く情報学研究」A05班「Grid技術を適応した新しい研究手法とデータ管理技術の研究」2001(H13)年度~2005(H17)年度 (下條)
  2. 文部省科学省科学研究費補助金基盤研究(A)(2)「デジタルコンテンツとしての懐徳堂研究」2001(H13)年度~2003(H15)年度(下條、馬場、春本)
  3. 日本学術振興会科学研究費補助金学術創成研究費「人間主体のマルチメディア環境形成のための情報媒体機構の研究」(下條)
  4. 文部科学省科学技術振興調整費先導的研究等の推進 「モバイル環境向けP2P型情報共有基盤の確立」2001(H13)年度~2005(H17)年度(下條、春本)
  5. 文部科学省科学技術振興調整費新興分野人材養成「セキュア・ネットワーク構築のための人材育成プログラム」2001(H13)年度~2005(H17)年度(下條、馬場、野川、秋山)
  6. 通信・放送機構「次世代広帯域ネットワーク利用技術の研究開発プロジェクト(GENESIS)」(下條)
  7. 日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業「マルチメディア・コンテンツの高次処理の研究」1997(H13)年度~2001(H13)年度(下條、春本)
  8. 日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業「高度マルチメディア応用システム構築のための先進的ネットワークアーキテクチャの研究」1997(H9)年度~2001(H13)年度 (下條)
  9. 通信・放送機構 研究開発用ギガビットネットワーク(JGN)プロジェクト (5テーマ)(下條)
  10. 通信・放送機構 平成13年度ギガビットネットワーク利活用研究開発制度「秘匿性・信頼性を保証した広帯域自律分散ストレージシステムの構築」
  11. KDDI株式会社共同研究「次世代IPネットワーク広帯域アプリケーションの伝送と利用に関する研究」2001(H13)年度(下條)
  12. 西日本電信電話株式会社共同研究「超高速ネットワークの伝送に関する研究と調査」2001(H13)年度(下條)

4.7 各種審議会への参画

  1. 通信・放送機構情報通信技術に関する国際共同研究助成に係る評価委員会委員(下條)
  2. 通信・放送機構創造的情報通信技術研究開発制度委員会委員(下條)
  1. 社)日本能率協会 Internet&Mobile2000展示企画委員会副委員(下條)
  2. 国際日本文化研究センター情報システム検討委員会委員 (下條)
  3. 財)関西情報センター「行政・地域情報化フォーラム」設立準備委員会委員, 幹事
      (下條)
  4. 財)関西情報センター「行政CIO会議」 「ネットワーク管理者会議」主査(下條)
  5. 通信・放送機構けいはんな情報通信研究開発支援センター公募利用審査委員会委員(下條)
  6. 財)関西情報センター「インフォテック2000」プログラム委員(下條)
  7. 財)九州ヒューマンメディア創造センター九州インターネットプロジェクト幹事(下條)
  8. 財)地方自治情報センター「総合行政ネットワーク構築に関する実証実験」に係る委託事業者提案審査委員会委員(下條)
  9. 社)関西経済連合会「オープンビジネスネットワーク研究委員会」アドバイザー(下條)
  10. 兵庫県IT戦略会議委員(下條)
    (12) 財)関西空港調査会「2期情報システム検討委員会」委員(下條)
  11. 大阪商工会議所「ゲノム情報ハイウェイ」検討会議委員(下條)
  12. 兵庫県情報ハイウェイ構造検討委員会委員 (下條)
  13. 財団法人イメージ情報科学研究所、研究委員会委員(下條)
  14. 基盤技術研究促進センター、技術評価委員会専門委員(馬場)
  15. 日本学術振興会「インターネット技術第163委員会委員」(野川)
  16. 財団法人医療情報システム開発センター、IPv6医療応用検討委員会ワーキンググループ(野川)
  17. 国立情報学研究所、スーパーSINET推進協議会委員(野川)

4.8 研究部門公開

4.8.1 銀杏祭での外部公開

2001年4月30日、5月1日の大学祭にあわせて、研究部門の外部公開を行った。午前11時と午後1時の2回にわたり、サイバーメディアセンターの説明を行ったあとに、スーパコンピュータとネットワーク機器の見学を行った。

4.8.2 SC2001への参加

2001年11月10日から16日に、米国Denverで開催されたスーパーコンピューティングに関する国際会議SC2001にて研究分野での展示発表を行った(写真5)。内容は、Grid環境上での脳磁図を用いた高速脳機能診断システム、IPv6を用いたロバスト制御に基づくリアルタイムDV転送システム、QoSを用いたDV転送の品質向上システムについて、実際のシステム展示および発表を行った。これらの発表は新奇的であるということで、読売新聞に記事として掲載された。また、サイバーメディアセンターのSX-5は、カンファレンスの決めるトップ30に入り、12位の賞を受けた。ちなみに6月時点では8位であった。


写真5 : SC2001での出展

4.9 世界的ネットワーク組織および会議への参加

4.9.1 APAN Meeting

2002年1月23日から25日まで行われたAPAN (Asia-Pacific Advance Network; http://www.apan.net/)の会議に参加し、アジアパシフィック各国のネットワーク状況について情報交換した。
 QoSワーキンググループおよびApbionet分科会に出席し、アジア各国におけるQoSの研究状況およびバイオインフォマティクスの状況について情報交換した。
 QoSワーキンググループでの研究課題は、大きく2つに分けられ、1つは狭帯域回線におけるQoSであり、もう一つは広帯域回線におけるTCPスループットである。特に、TransPAC(日米回線)を用いた研究では、広帯域回線におけるTCPスループットが問題となり、高エネルギー物理学の研究チームからTCPスループットで80Mbpsを出すことが要請されている。また、QoSコントロールについては、Nanyang Univeristy (Singapore) のProf. Leeの研究室からSIBBSの実装が2002年2月にリリースできることが判明した。
 一方、Apbionet分科会では、シンガポールを中心としたバイオインフォマティクスの動向が話題となり、これについて情報交換した。

4.9.2 ApGrid Meeting

ApGridは、アジアパシフィック地域におけるGrid研究のための共同研究組織であり、このコアミーティングが2002年1月25日から26日まで行われた。このApGrid meetingに出席し、アジア各国のGridを用いた研究についての情報交換を行った。

5.2001年度研究発表論文一覧

5.1 著書

  1. Satoshi Ukai, Kazuhiro Shinosaki, Ryohei Ishii, Yuko Mizuno-Matsumoto, Tsuyoshi Inouye, N. Hirabuki, Toshiki Yoshimine, S. E. Robinson and Masaki Takeda, “MEG functional neuroimaging of schizophrenic patients and comparison subjects during word generation”, pp. 39-45, Springer-Verlag Tokyo, 2001.
  2. 村田正幸, 山口英, 塚本昌彦, 塚田晃司, 星徹, 下條真司, 佐藤哲司, 名和小太郎, 篠崎彰彦, 尾家祐二『社会基盤としてのインターネット』岩波講座インターネット, 岩波書店, 2001年9月

5.2 学術論文誌

  1. Yuko Mizuno-Matsumoto, Toshiki Yoshimine, Yasuo Nii, Amami Kato, Masaaki Taniguchi, Jung K. Lee, Tae S. Ko, Susumu Date, Shin-ichi Tamura, Shinji Shimojo, Kazuhiro Shinosaki, Tsuyoshi Inouye and Masatoshi Takeda, “Landau-Kleffner
    syndrome: localization of epileptogenic lesion using wavelet-crosscorrelation analysis”, Epilepsy and Behavior, vol. 2, no. 3, pp. 288-294, June 2001.
  2. 鵜飼聡, 篠崎和弘, 石井良平, 小川朝生, 水野(松本)由子, 井上健, 平吹度夫, 吉峰俊樹, S.E. Robinson, 武田雅俊, “MEGによる言語の脳機能局在の可視化-空間フィルタ法による解析-”, 臨床脳波, vol. 43, no. 7, pp. 430-435, 2001.
  3. Yuko Mizuno-Matsumoto, Masatsugu Ishijima, Kazuhiro Shinosaki, Takshi Nishikawa, Satoshi Ukai, Yoshitaka Ikejiri, Yoshitsugu Nakagawa, Ryohei Ishii, Hiromasa Tokunaga, Shin-ichi Tamura, Susumu Date, Tsuyoshi Inouye, Shinji Shimojo and Masatoshi Takeda, “Transient Global Amnesia (TGA) in an MEG study”, Brain Topography, vol. 13, no. 4, pp. 269-274, November 2001.
  4. Susumu Date, Yuko Mizuno-Matsumoto, Youki Kadobayashi and Shinji Shimojo, “An MEG data analysis system using Grid technology”, 情報処理学会論文誌, vol. 42, no. 12, pp. 2952-2962, December 2001.
  5. Yuko Mizuno-Matsumoto, Gholam K. Motamedi, W. Robert S. Webber and Ronald P. Lesser, “Wavelet-crosscorrelation analysis can help predict whether bursts of pulse stimulation will terminate afterdischarges”, Clin. Neurophysiol., Vol. 113, No. 1, pp. 33-42, January 2002.
  6. 中野賢, 春本要, 下條真司, 西尾章治郎, “キャッシングプロキシを考慮したインラインオブジェ クトの配送順序制御機構”, 情報処理学会論文誌, vol. 43, no. 1, pp. 101-111, January 2002.
  7. Ken-ichi Baba, Takashi Yamaguchi, Kazuhiro Gokyuu and Masayuki Murata, “A path accommodation method for reliable ring networks with optical compression TDM,” International Journal of Communication Systems, Vol. 15, No. 2-3, pp. 221-237, March 2002.
  8. 秋山豊和, 酒井仁, 原隆浩, 西尾章治郎: データベース移動に基づく分散データベースシステムにおける並行処理制御機構, 情報処理学会論文誌:データベース, Vol. 43, No. SIG2(TOD13), pp. 158-167, March 2002.

5.3 国際会議会議録

  1. Toyokazu Akiyama, Shinobu Sakai, Akimichi Umigai, Takahiro Hara, Masahiko Tsukamoto and Shojiro Nishio, “Design and implementation of db-man α: Does database migration work well in a real environment?”, in Proceedings of Thirteenth Australasian Database Conference (ADC2002 to appear), January 2002.
  2. Yuko Mizuno-Matsumoto, Susumu Date, Takeshi Kaishima, Kengo Hara, Kazuhiro Shinosaki, Shin-ichi Tamura and Shinji Shimojo, “The development of a high performance computing for MEG data using an Independent Component Analysis on Globus”, in Proceedings of The International Conference on Bioinformatics 2002 (CDROM), February, 2002.
  3. Tadashi Nakano, Kaname Harumoto, Shinji Shimojo and Shojiro Nishio, “User Adaptive Content Delivery Mechanism on the World Wide Web, ” in Proceedings of the 2002 ACM Symposium on Applied Computing (SAC2002), pp. 1140-1146, March 2002.
  4. Hiroshi Fujimoto, Tadashi Nakano, Kaname Harumoto and Shojiro Nishio, “Response Order Rearrangement on a Caching Proxy for Reducing WWW Latency, ” in Proceedings of the 2002 ACM Symposium on Applied Computing (SAC2002), pp. 845-851, March 2002.

5.4 口頭発表(国内研究会など)

  1. 水野(松本)由子, R. P. Lesser, R. S. Webber, G. K. Motamedi, 篠先和弘, 鵜飼聡, 石井良平, 井上健, 伊達進, 下條真司, 武田雅俊, “てんかんの皮質脳波における電気刺激を用いた異常波抑制の状態変化の定量化”, 第97 回日本精神神経学会総会, vol. 103, no. 10, p. 851, May 2001.
  2. 鵜飼聡, 篠崎和弘, 石井良平, 梅田幹人, 川口俊介, 山本雅清, 小川朝生, 水野(松本)由子, 井上健, 武田雅俊, 吉峰俊樹, Robinson SE, “Stroop 課題時の皮質活動の時間的推移とその加齢性変化のMEG 研究”, 第97回日本精神神経学会総会, May 2001.
  3. 石井良平, 篠崎和弘, 鵜飼聡, 山本忍, 小川朝生, 川口俊介, 山本雅清, 水野(松本)由子, 井上健, 武田雅俊, “幻聴出現時の脳磁図の解析第2報―発作間欠時に幻聴体験を有するてんかん患者の1症例―”, 第97回日本精神神経学会総会, May 2001.
  4. 竹森隆介, 馬場健一, 村田正幸, 北山研一, “フォトニックパケットスイッチに最適なバッファ構成手法”, 電子情報通信学会第1 回フォトニックネットワークをベースとするインターネット技術(PNI) 研究会予稿集(PNI2001-7), pp. 48-55, July 2001.
  5. 秋山豊和, 原隆浩, 西尾章治郎, “位置情報データベースの統合利用に関する一考察”, 情報処理学会研究報告(データベースシステム研究会2001-DBS-125(1)), pp. 209-216, July 2001.
  6. 中村豊, “Live eclipse 2001 におけるWWWサーバ性能解析”, 電子情報通信学会技術研究報告(IA2001-28), vol. 101, no. 176, pp. 41-45, July 2001.
  7. 藤本拓, 中野賢, 春本要, 西尾章治郎, “キャッシングプロキシにおける配送順序変更手法の理論的性能解析”, 情報処理学会第63回全国大会講演論文集(3), pp. 319-320, September 2001.
  8. 甲斐島武, 水野(松本)由子, 伊達進, 篠崎和弘, 下條真司, “独立成分分析を用いた脳磁図のための高速解析システムの構築”, 電子情報通信学会技術報告医用画像研究会(MI2001-37), vol. 101, no. 310, pp. 13-20, September 2001.
  9. 伊達進, “An application of Grid technology to medical data analysis”, 第3回創造的研究のための大規模データマネージメント研究会(招待講演), October 2001.
  10. 細川裕司, 八木輝, 吉田幹, 馬場健一, 下條真司, “多段ドメインにまたがる帯域確保の迅速化手法の提案”, 第10回ITRC 総会・研究会, October 2001
  11. Susumu Date, “Telemedicine work bench for evaluation of brain function on GRID: I. Engineering aspect (Invited Talk)”, in The Seminar on Grid: The infrastructure on the Internet, November 2001.
  12. Yuko Mizuno-Matsumoto, “Telemedicine work bench for evaluation of brain function on GRID: II. Medical aspect (Invited Talk)”, in The Seminar on Grid: The infrastructure on the Internet, November 2001.
  13. 水野(松本)由子, “バイオグリッドの脳機能診断システムへの応用(招待講演)”, IPAB(並列生物情報処理イニシアティブ)シンポジウム2001, November 2001.
  14. 八木輝, 細川裕司, 馬場健一, 下條真司, “QoS サーバの品質フィードバック機能”, 電子情報通信学会技術研究報告(IA2001-41), pp. 163-170, November 2001.
  15. 山口貴詩, 馬場健一, 村田正幸, 北山研一, “フォトニックパケットスイッチにおけるWDMファイバ遅延線バッファのためのパケットスケジューリング”, 電子情報通信学会技術研究報告 (IN01-116), pp. 15-22, December 2001.
  16. 福村真哉, 中野賢, 春本要, 下條真司, 西尾章治郎, "視聴履歴に基づくディジタルコンテンツの個人化された提示手法," 電子情報通信学会第13回データ工学ワークショップ論文集, Web掲載, March 2002.
  17. Yutaka Nakamura, Eiji Kawai, Shinji Shimojo, Suguru Yamaguchi and Hideki Sunahara, “Design and implementation of a kernel monitoring system for network servers”, in The 2002 International Symposium on Applications and the Internet, January 2002.
  18. Yutaka Nakamura, Eiji Kawai, Shinji Shimojo, Suguru Yamaguchi and Hideki Sunahara, “Development of a WWW serve management support system”, in The 2002 International Symposium on Applications and the Internet, January 2002.
  19. 竹森隆介, 馬場健一, 村田正幸, 北山研一, “フォトニックパケットスイッチにおける2×2 バッファスイッチのスケジューリング”, 電子情報通信学会技術研究報告(IA2002-42), Vol. 101, No. 634, pp. 1-8, February 2002.
  20. 水野(松本)由子, 伊達進, 篠崎和弘, 下條真司, “遠隔医療を用いた脳機能診断システムの開発”, 大阪城南女子短期大学研究紀要, vol. 35, pp. 59-61, 2001.
  21. 水野(松本)由子, “脳の発達と可塑性”, 平成12 年度大阪市大学開放講座「幼児教育大学」大阪市教育委員会, pp. 131-137, 2001.
  22. 水野(松本)由子, “臨床神経生理学および医用工学分野における4次元大脳機能地図の作成とてんかんを含む疾患脳の機能評価への応用に関する研究”, 第13巻, てんかん治療研究振興財団, 2001.

5.5 2001年度特別研究報告・修士論文・博士論文

5.5.1 博士論文

  1. Susumu Date, “A Study on Application of Grid Computing to Medical Data Analysis”, PhD thesis, Graduate School of Engineering, Osaka University, February 2002.

5.5.2 修士論文

  1. Yuji Hosokawa, “Efficient bandwidth allocation across multiple diffserv domains by aggregating reserved paths”, Master’s thesis, Graduate School of Engineering, Osaka University, February 2002.

5.5.3 卒業研究報告

  1. 酒井智仁, “グリッド環境におけるセキュアネットワークファイルシステムの設計”, 大阪大学工学部特別研究報告, February 2002.
  2. 前野隆志, “大規模サイトにおけるDNS サーバの運用手法に関する研究”, 大阪大学工学部, 特別研究報告, February 2002.
  3. 本久勝一, “Diffserv におけるドメイン間の予約帯域制御手法の評価”, 大阪大学工学部特別研究報告, February 2002.
  4. 史宏宇, “グリッド環境における相互作用性のある鍵交換機構に関する研究”, 大阪大学工学部特別研究報告, February 2002.