研究部門の業績

先端ネットワーク環境研究部門
Advanced Networked Environment Division


1.部門スタッフ

教授 村田正幸
略歴:1982年3月 大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1984年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程物理系専攻修了。同年4月 日本アイ・ビー・エム株式会社入社、同東京基礎研究所を経て、1987年9月 大阪大学大型計算機センター助手、1989年2月 大阪大学基礎工学部助手、1991年8月 大阪大学基礎工学部講師、1992年12月 大阪大学基礎工学部(改組により、現在、大阪大学大学院基礎工学研究科)助教授、1999年4月 大阪大学大学院基礎工学研究科教授、2000年4月より、大阪大学サイバーメディアセンター先端ネットワーク環境研究部門教授。大阪大学大学院情報科学研究科の発足に伴い、2002年4月より、同研究科兼任。IEEE、ACM、The Internet Society、SPIE、電子情報通信学会、情報処理学会各会員。1988年工学博士(大阪大学)。

助教授 長谷川剛
略歴:1995年3月 大阪大学基礎工学部情報工学科退学。1997年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程修了。1997年6月 大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程退学。同年7月 大阪大学経済学部助手。1998年4月 大阪大学大学院経済学研究科助手。2000年7月 大阪大学サイバーメディアセンター先端ネットワーク環境研究部門助手。2002年1月大阪大学サイバーメディアセンター助教授。大阪大学大学院情報科学研究科の発足に伴い、2002年4月より、同研究科兼任。現在に至る。電子情報通信学会、The Internet Society各会員。2000年博士(工学)。

2.教育および教育研究支援業績

[1] 全学共通教育機構において開講されている以下の科目を分担した。
  1. 情報処理教育科目「情報倫理と社会」
  2. 基礎セミナー「情報通信のしくみ」
    (以上、村田)
[2] 基礎工学部情報科学科において開講されている以下の科目を担当した。
  1. プログラミングB(学部)
    (以上、村田)
  2. 情報科学演習C(学部)
  3. プログラミングC(学部)
  4. 基礎工学PBL(情報科学)(学部)
    (以上、長谷川)
[3] 大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻において開講されている以下の科目を担当した。
  1. ギガビットネットワーク
  2. 超高速ネットワーク構成論
    (以上、村田、長谷川)
  3. 情報ネットワーク学演習II
    (以上、長谷川)
[4] 基礎工学部情報工学科PBL委員会委員長として、PBL科目(1年生、2年生)の企画運営に携わった。(村田)

[5] 大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻において開講された演習科目「情報ネットワーク学演習I」の、ネットワークプロセッサを用いた授業内容に関して、以下の国際会議・シンポジウムにおいて発表を行った。
(1) Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Research and educational activities using IXP1200 at Osaka University,” in Proceedings of IXA University Program Workshop (Invited), June 2002.

(2) Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Postgraduate coursework program using network processors at Osaka University,” in Proceedings of the 1st AEARU Network Education Workshop (Invited), November 2002.

(3) Go Hasegawa and Masayuki Murata, “NWP Design Lab. for Experiencing Network Processors,” First Symposium on New Information Technologies for Building a Networked Symbiosis Environment, March 2003.
(以上、長谷川、村田)

(4) 2002年電子情報通信学会ソサイエティ大会 パネル討論「大学・大学院における情報通信教育と研究:産業界との連携」パネラ, “大阪大学大学院情報科学研究科における情報ネットワーク教育の取り組み,” September 11, 2002.
(以上、村田)

3.研究概要:次世代インターネットの実現に向けた技術課題

本章では、先端ネットワーク環境研究部門における今年度の研究概要を述べるために、次世代ネットワークにおける技術課題をまとめる。そのために、まず3.1節ではこれまでのネットワークアーキテクチャの問題をIntServ、DiffServを例にとって考察する。研究内容の詳細については、次章において順次紹介していく。
 なお、3.1節の議論は、
(1) 村田正幸, “インターネットにおける通信品質とその制御,” 日本オペレーションズ・リサーチ誌, Vol. 48, No.3, March 2003.
に詳細にまとめられている。また、ネットワークインフラストラクチャとしてのフォトニックネットワークの今後のあり方に関する議論は以下でもなされている。

(2) 村田正幸, “フォトニックインターネットの展望,” 電子情報通信学会光スイッチング研究会 招待講演, December 16, 2002.

(3) 村田正幸, “光バーストスイッチングに未来はあるか,” 2003年電子情報通信学会総合大会 パネル討論「光バーストスイッチング」, March 19, 2003.

3.1 これまでのネットワークアーキテクチャの問題点

ここでは、これまでのネットワークアーキテクチャに関する技術開発の問題点を考えるために、IntServ、DiffServを例にとって考察する。

3.1.1 IntServの問題点

 もともとインターネットにおいては、ネットワーク層プロトコルであるIPが経路到達性(reachability)を保証し、エンドホスト間のトランスポート層プロトコル (TCP) による再送制御によってはじめてパケットを失うことなく送受信できる。ネットワーク内、すなわち、IPにおいてはQoSを保証するという考え方はなく、IPはベストエフォートサービスであるといわれるゆえんでもある。一方、IntServでは、ネットワークのマルチメディア化、すなわち、従来のデータ系サービスに加えて、実時間系サービス(音声、動画像)をも提供することを企図した。実時間系サービスを提供しようとすれば、QoS保証の考え方が必要になる。ただし、ここで言うQoS保証とは、例えば、エンドホスト間に設定されたコネクションに対して、64Kbpsの帯域や50msec以内のエンド間遅延を絶対的に保証することを意味する。実時間系音声会話を従来の電話網における電話サービスと同じように実現しようとすれば、ネットワーク内においてコネクションごとに資源を確保する必要がある [1]。すなわち、エンド間コネクションが経由する経路上の各回線において一定の帯域を確保しなければならない。いったん帯域が確保されれば、エンド間遅延の保証も可能になる [3]。
 すなわち、IntServアーキテクチャは、回線交換のしくみをインターネットに持ち込もうとしたものであった。しかし、いくつかの重要な問題点が指摘され、実用には至っていない。代表的な問題はスケーラビリティに関する問題である。インターネットにおいてスケーラビリティは重要な概念であり、将来的な拡張性を常に確保しておく必要がある。
(1) コネクション数に関するスケーラビリティ
各ルータでWFQなどのパケットスケジューリング方式を動作させるには、送受信IPアドレス、ポート番号の組による各コネクションの識別、および、コネクションごとのパケット処理が必要となる。

(2) ホップ数に関する問題
RSVPを用いるには、エンドホスト間の経路上のすべてのルータがRSVPシグナリングを処理できなければならない。ネットワーク規模が大きくなればなるほど、その処理オーバーヘッドは増大する。

(3) ディプロイメント(deployment)に関する問題
エンドホスト間の経路上のすべてのルータがIntServアーキテクチャを提供していないと、コネクションに対するQoS保証が実現できず、アーキテクチャ自体が破綻する。このような仮定を、運用されているネットワークに対して置くことの問題は明らかである。

 また、IntServアーキテクチャを実現するためにはネットワーク資源の管理が必要になる。すなわち、各ルータにおいてアクティブなコネクションに関する情報を維持する必要がある。これは、いったんルータに故障が発生した場合の障害回復手続きが煩雑なものになることを意味する。RSVPにおいては、電話網における帯域確保の方法とは異なり、ソフトステート (soft state) による帯域確保を行っている。すなわち、定期間隔時間ごとに帯域確保の制御メッセージを流し、制御メッセージがない場合にはルータは帯域を解放することによって、システムの耐故障性の向上に注意が払われている。しかし、その場合でも、ネットワーク内にステート情報は残る。そもそもインターネットが発展してきた理由には、その分散志向、単純な構成と制御、その結果としての低コスト化指向にあり、IntServのようなアーキテクチャをインターネットに導入すること自体に矛盾がある。

3.1.2 DiffServの問題点

 IntServアーキテクチャにおける問題点の克服を試みたのがDiffServ (Differentiated Services)である [6]。DiffServでは、IntServのようにQoSを保証するという考え方はあきらめ、QoSの差別化が意図された。例えば、パケット単位の優先権制御をルータに導入すれば、高い優先権を与えられたパケットは、低い優先権を与えられたパケットより、確実に速く転送される。DiffServアーキテクチャの標準化が急がれた背景には、インターネットの商用サービス化によるところも大きい。すなわち、インターネット接続サービス提供者 (ISP) は、ベストエフォートネットワークに対する単なる接続サービスだけでなく、そのQoSに対して他のISP業者との差別化を図る必要があった。そのため、実現困難なIntServよりも、QoSに関して不十分であってもより実現が容易なDiffServに期待が集まった。
 DiffServにおいては、まず、コネクション数に関するスケーラビリティの問題に対応するため、コネクションの集合に対してクラスという概念を導入し、クラスごとにQoSが異なるような制御を施す。そのために、IPパケットのヘッダ部のTOS (Type of Service) フィールドをDSCP (Differentiated Services CodePoint) フィールドと読み替え、DSCPフィールドの値によって異なるQoSサービスを適用する。具体的には、ネットワークの入口に位置するルータ(エッジルータ)がDSCPの値をクラスごとに設定し、ネットワーク内部の各ルータはクラスごとに異なるサービスを施すようなパケットスケジューリングを行う。なお、TOSフィールドはIPv4でもともと規定されていたが、実際には用いられていなかったフィールドである。IPv6の場合には、トラヒッククラスフィールドを読み替える。
 エッジルータがDSCPをどのように設定するかはネットワーク管理ポリシーによって決定される。すなわち、シグナリングプロトコルは不要で、ISPがあらかじめ決定しておくものである。ネットワーク内ルータはそれぞれ単独にパケットスケジューリングを動作させればよいので、コネクションごとのネットワーク資源の管理が不要になる。各ルータでは個別フローに関する情報を維持する必要はない。その代わりに、個別パケットがその処理に関する情報をDSCPフィールドによって運んでくる。それぞれのルータはその情報に従ってパケットスケジューリングを行う。これをPHB (Per Hop Behavior) と呼ぶ。その結果、エンドホスト間の経路上の少なくともひとつのルータにこの機構を導入すれば、それだけ分の品質の差別化は可能になる。
 DiffServの特徴をまとめると以下のようになる。
(1) シグナリングプロトコルは不要で、各ルータはコネクションごとの情報を維持する必要はない。従って、IntServと比較してスケーラビリティを有する。

(2) ルータは、DSCPフィールドに従ってPHBを適用する。そのため、IPアドレスの識別以外にDSCPフィールドに関する処理も必要になるが、DSCPフィールドはIPヘッダ内にあるので、高速処理も可能である。
 ルータにおいてPHBをいかに実現するかは標準では規定されていないが、上記サービスを実現するために各ルータに具体的なパケットスケジューリング方式を実装する必要がある。簡単な例としては、HOL (Head of Line) 優先権処理が挙げられる。バッファ内にクラス1 のパケットが蓄積されていれば、必ずそのパケットからサービスする。クラス1のパケットがない時のみクラス2のパケットをサービスするというものである。このしくみを利用すれば、クラス1とクラス2の差別化が可能になる。ただし、これはあくまでネットワーク側の論理である。クラス1に属するユーザが経験する品質がクラス2のそれより良いということが、果たしてクラス1のユーザにわかるだろうか? 高いクラスのユーザは、低いクラスのユーザより良いサービスを受けているということがわからなければ納得しないだろう。これがDiffServにおける根本的な問題である。優先権制御については、これまでも多くのネットワークにおいて提案がなされてきた。例えば、LANのアクセス制御(CSMA/CD方式、トークンリング方式)などである。しかし、それらが必ずしも成功していないことが、このような制御の限界を物語っている。
先に述べたWRR方式をクラス単位に適用すれば、クラスごとに帯域を割り当てることも可能になる。すなわち、コネクションごとの品質を保証するしくみは困難であるが、クラスに対して帯域を確保することは可能である。そのためには、DiffServにおいてどのようなポリシーに従ってネットワークを運用していくかを管理する必要がある。DiffServにおいてはエッジルータがDSCPを指定するが、例えば無制限にすべてのエッジルータがプレミアムサービスを指定すれば、DiffServの論理はただちに破綻する。破綻しないためには、エッジルータにおいて各サービスの割合をあらかじめ決定しておく必要がある。DiffServでは、ドメイン内での資源管理を行うサーバを帯域ブローカ (Bandwidth Broker) と呼んでいる。DiffServドメイン内の帯域管理は、集中的に行わなければならない。また、それゆえに、ドメインをまたがったQoS差別化を実現しようとすれば、ドメイン間の連携が必要になる。これがSLA (Service Level Agreement) の考え方である。しかし、これらも、本来のインターネットの考え方とは異なるものである。

3.2 次世代ネットワークアーキテクチャの実現に向けた課題

インターネットがこれまで発展してきた経緯を考えると、その分散性は重要な特徴であり、End-to-End Argumentと呼ばれるエンド間通信の原理は特に重要である。すなわち、
(1) ネットワークは特定のアプリケーションに基づいて、あるいは、特定のアプリケーションのサポートを目的として構築してはならない

(2) エンドノードで実現できる機能はそのノードに任せ、関係するステート情報はそのノードにおいてのみ維持すべきである

というものである。従って、通信機能はできるだけエンドノードにおいて実現すべきで、ネットワークはビットを運ぶことに徹すべきである、というものである。もちろん現実にすべてこのとおりというものではないが、基本的なアーキテクチャの原理として維持することが必要で、これらによって予測不可能なアプリケーションやサービスの出現に対応可能な、発展性のあるネットワークが構築できる。
 このような観点に基づけば、IntServやDiffServのようにQoSに関する積極的な制御はやめて、ネットワーク技術の進展にあわせつつ、ネットワーク資源を常に余分に配するという考え方が成立しうる。そうすれば、通信品質保証はされなくとも、ある程度のレベルの品質は提供される。実際、通信技術の発展により、ボトルネックはエンドホストに移行しつつあり、コネクションレベルでのQoS保証という考え方は捨てる、そのかわり、ネットワーク資源がボトルネックにならないように常に回線増強に心がける、という考え方が成立する。その場合に鍵となるのは、トラヒック計測技術と輻輳制御である。すなわち、トラヒック計測技術によって現状のQoSを同定し、必要ならネットワーク資源増強のアラートとする。また、いったんネットワーク資源が与えられたときに、QoSを最大化するために輻輳制御を用いる。
 以上のように、今後は、ネットワーク側の通信品質の保証や差別化を前提とするのではなく、エンドホストがネットワークの状態に適応しつつ、かつ、アプリケーションの特性に応じてよりQoSを高める機構がより重要となると考えられる。ストリーミング技術などはまさしくその例である。また、モバイルネットワークやP2P (Peer-to-Peer)ネットワークにおいてはネットワーク資源(回線や情報源)そのものの移動、変動もありうる。すなわち、IntServ、DiffServ、MPLSなどのようにそれらが半固定化されているような状況が想定し得ないネットワークが出現しつつある。すなわち、今後のネットワーク研究に重要なキーワードとして、スケーラビリティ、モビリティであり、そのための鍵となる技術がエンドホストの適応性 (adaptability)である。

課題1:実時間マルチメディアQoS保証の実現

これまで実時間系QoS保証の実現については、RSVP (Resource Reservation Protocol)に基づく帯域予約のしくみが提案されてきた。しかし、一方でスケーラビリティの問題(コネクション数の増大に対してルータにおけるパケットスケジューリングアルゴリズムの複雑さが増すこと、地域的な拡がりに対してシグナリングトラヒックが増すこと)も指摘されている。おそらく、これらの問題により、RSVPベースのネットワークは限られた範囲で、高機能サービスが必要な場合にのみ導入され、運用されていくことになろう。一方、実時間アプリケーションを、RSVPを利用せずに動作させる場合は、積極的な輻輳制御が必要になる。すなわち、エンドホストが輻輳制御を行うという現状のインターネットの基本理念を受け継いでいくためには、実時間トラヒックもTCPと同様の輻輳制御を行い、ネットワーク輻輳による破綻を防がねばならない。そのようなしくみの積極的な導入が今後必要である。また、動画像などのストリーミングサービスにおいては、ウェブシステムで広く用いられているプロキシ技術が、サービスの可用性、応答性を高めるために有効であると考えられる。プロキシを利用することにより、ネットワークやサーバへの負荷を軽減や分散も可能になる。
(関連研究については4.1節参照)

課題2:バックボーンの高速化

次世代インターネットのインフラがWDM (Wavelength Division Multiplexing)ベースになることに疑問の余地はないが、その実現形態については今後、十分な検討が必要である。現状のようにIPルータ間をWDMで接続する場合、回線容量はWDMの波長分まちがいなく増大できるが、それはボトルネックが回線からIPルータに移行することを示しているに過ぎない。今後はIP over WDMネットワークに適したネットワーク形態を明らかにしていく必要があろう。また、IPネットワーク、WDMネットワークそれぞれが有する機能をいかに分担していくかも重要な課題である。例えば、ネットワークの高信頼化を実現するために、IPの持つ経路制御、WDMのプロテクション制御を有機的に結合していく必要がある。さらに、IPパケットのスイッチング能力を高めるためには、IPパケットをそのまま光領域で扱うフォトニックパケットスイッチが将来的には有望であると考えられる。しかし、その場合には、パケットバッファをいかに実現するかがフォトニックパケットスイッチ成功の鍵を握っていると考えられる。すなわち、バッファ構成手法や、FDL (Fiber Delay Line)の限界を補うパケットスイッチ構成手法などを確立していく必要がある。さらに、今後特に重要となるのは、制御プレーンの光化である。現状では、データプレーンの光化の議論は進んでいるが、その制御の複雑性、パケットを基本単位とした実時間性についての研究はほとんど進んでいないのが現状である。
(関連研究については4.6、4.7節参照)

課題3:パケット転送能力の高速化・高機能化

インターネットの急速な普及と、マルチメディアアプリケーションの増加により、より高速なパケット転送技術が要求されている。特に、光通信技術の導入が進めば、ボトルネックが回線からルータに移行するのは明らかである。ルータにおけるパケット転送能力を高めるためには、ルーティングテーブル検索技術向上の他、マルチプロセッサによる処理の最適化などを考慮した新しいパケット転送技術が必要となる。また、ネットワークの高度化に伴い、単なるレイヤ3スイッチングだけでなく、フローごとの識別とそれぞれのフローに適したパケット転送を行うレイヤ4スイッチング、さらにはより高位の処理を行うパケット転送がルータに要求されるようになる。また、IPv6のエニーキャスト機能を真に有効なものにするためには、ネットワーク内におけるエニーキャストパケットのルーティング機能が重要となるが、ルータのサポートをいかに実現するかについては未だ明らかになっていない。
(関連研究については4.4節参照)

課題4:プロトコルの高速化

従来、プロトコルの高速化に関しては、プロトコル処理のハードウェア化やパラレル化、軽量プロトコルの実現、エラー制御と輻輳制御の分離などが盛んに議論されてきた。しかし、インターネットの普及により、独自プロトコルはもはや通用しない。すなわち、TCPの性能をいかに向上させるかが今後の課題になる。重要な点は、プロトコルマイグレーションをいかに確保するかである。例えば、HighSpeed TCPは新しいTCP版としてその性能は確かに向上しているが、現状で多く普及しているTCP Reno版と混在している場合にはその公平性に問題がある。今後のプロトコルの高速化における議論では、単に従来のTCP版に比較して性能が向上しているかどうかではなく、プロトコルの混在下での振舞いやプロトコルマイグレーションをいかに確保するかが重要であろう。
(関連研究については4.2、4.3節参照)

課題5:エンドホストの高速化

これまでのネットワークにおいては回線ボトルネック、あるいはルータボトルネックが問題となっていたが、それらは上記の課題を解決することによって回避できるであろう。しかし、ユーザに対する高品質な通信サービスを提供するためには、エンドホストの高速化も不可欠である。エンドホストの高速化は古くて新しい問題である。実際、これまでもエンドホストの高速化が試みられてきたが、TCP/IPネットワークにおけるエンドホストの高速化として新たに捉える必要がある。例えば、Webサーバからのドキュメントダウンロードの例では、サーバ処理時間がすでに20%程度以上を占めるようになってきており、その割合は今後ますます増加する傾向にある。すなわち、エンドホスト、特にサーバの高速化は重要な課題である。さらに、現状では、ドキュメントダウンロード時間の短縮化を図るものとしてプロキシ技術が導入されているが、そこに負荷が集中する傾向にある。プロキシサーバの高速化も今後の重要な課題である。
(関連研究については4.3節参照)

課題6:ネットワーク機能の再配分

これまでインターネットは、エンドホストによるプロトコル処理により、自律分散的なネットワーク制御を実現してきた。しかし、現在TCPにより実現されている輻輳制御は、本来ネットワーク制御機能であり、そのような役割分担が輻輳制御の高機能化を阻害しているとも言える。従って、今後、輻輳制御のネットワークにおけるサポートをいかに実現していくかが重要な課題のひとつであると言えよう。実際、REDなどのAQM (Active Queue Management)、ECN (Explicit Congestion Notification) などもこのような流れの一環として見ることができ、ネットワーク機能としてルータにおいてその実現が考えられている。ただし、過度のネットワーク制御はインターネットの自律分散というメリットをなくすため、その点を含めた検討が今後、重要である。
(関連研究については4.2、4.3節参照)

課題7:公平な通信サービスの実現

帯域をいかに公平に分配するかは、パケット交換ネットワークにおけるもっとも重要な機能のひとつである。しかし、残念ながら、TCPの輻輳制御のしくみは少なくとも短期的に見れば公平とはいえない。すなわち、いったんウィンドウサイズを下げるとなかなか大きくならないといった問題が発生する。特にRTTや回線容量の異なるユーザ間では本質的に不公平性を内包しており、そのためにはネットワークルータによる公平性向上のしくみが不可欠である。新しいプロトコルの導入の際には、既存のプロトコルとの共存への配慮が不可欠である。また、実時間系アプリケーションとデータ系アプリケーションの共存のためには、それぞれの転送プロトコルの仕組みを考えつつ、上位層の通信品質への影響を考える必要がある。また、そもそも、TCP自体の輻輳制御機構についても、理論的なアプローチに基づいて新たな機構設計をそろそろ考える時期に来ていると考えられる。
(関連研究については4.1、4.3節参照)

課題8:新しいネットワーク設計論の確立

電話網においては、ネットワークプロビジョニングに関する枠組みはすでに確立されている。これは、まず、目標呼損率から必要な回線容量を算出し、トラヒック測定によって、必要であれば回線増強を行うというフィードバックループによるものである。ただし、電話網の場合、(1)呼損率がユーザ品質として直結していること、(2)安定した成長のもとで過去の統計データによる将来予測が可能であること、(3)アーラン呼損式という基本的理論があること、(4)品質測定を行うことがすなわち呼損率を測ることであり、それは容易であること、などの理由により、パケット交換ネットワークと比較してQoS保証が容易であった。一方、インターネットにおいては、(1)ネットワーク観測によって得られる測定データはパケット単位のものであるため、それがユーザQoSと直結しないこと、(2)インターネットの急激な成長によりトラヒック予測が困難であること、(3)アーラン呼損式に対応する基礎理論が存在しないこと、などにより、ネットワークプロビジョニングの方法論が確立されていない。ネットワークトラヒック測定から統計分析、回線容量設計というフィードバックループを前提とした、新しいネットワーク設計論の確立が急務である。
(関連研究については4.5節参照)

課題9:パケット交換ネットワークにおける基礎理論の確立

これまで長らく、パケット交換ネットワークの設計手法としてM/M/1パラダイム(待ち行列理論)が用いられてきた。しかしながら、待ち行列理論によって明らかになるのはルータにおけるパケット待ち時間や棄却率などである。しかし、データ系のQoSはルータにおけるパケット待ち時間では決してない。アーラン呼損式(すなわち、電話網)では呼損率が得られるが、これはユーザレベルQoSに直結した指標であり、それがアーラン呼損式に基づいた電話網のネットワーク設計を有効なものにしてきた。一方、パケット交換ネットワークにおいては、ルータでのパケットの振る舞いはTCP、すなわち、フィードバック系システムが上位レベルにあることを前提に考慮しなければならず、それがインターネットにおける待ち行列理論の適用を無意味なものにしている。また、ユーザレベルQoS項目としてパケットレベルの遅延や棄却率ではなく、アプリケーションレベルの性能指標が重要である。そのため、パケット交換ネットワークにおける基礎理論の再度の構築が必須である。その場合、TCPがフィードバックシステムであることを考えると、制御理論を適用した安定性、収束性に関する議論が有望である。
(関連研究については4.2節参照)

課題10:有線・無線統合網におけるデータ通信サービスの実現

無線ネットワーク技術と有線ネットワーク技術はおのおの独自の発展を遂げてきた。しかし、近年の無線技術の進展に伴って、無線ネットワークをラストホップとして、無線/有線ネットワークをいかにシームレスに統合するかが重要な課題になっている。そのため、まずは無線/有線を統合したシームレス通信を実現するためのネットワーク設計論の確立が急務の課題であろう。また、インターネットの発展に伴って、無線ネットワークにおけるデータ通信の実現方式もさらなる検討が必要になっている。また、基地局の存在を前提とせず、すべてのホストがルータ機能も併せ持つアドホックネットワークについては、新しいサービスを創出できる可能性を持つが、その経路制御機能、輻輳制御機能、ネットワーク資源発見機能などすべてに渡って従来の手法を見直す必要がある。
(関連研究については4.8参照)

課題11:仮想ネットワークと実ネットワークのインタラクション

現在、実ネットワーク上に仮想的なネットワークを構築する技術については、さまざまなサービスに関してさまざまな角度から検討されている。例えば、CDN (Contents Delivery Network)、GMPLS技術、P2Pネットワーク、Mobile IP、アドホックネットワークなどが例として挙げられる。それぞれの仮想ネットワークは、その目的に応じて最適化をはかる必要があるが、現状ではそのような考え方に基づいた仮想ネットワーク構築はなされていない。おそらく最適な仮想ネットワークを構築するには、実ネットワークの資源(アドレス、回線容量、ルーティング能力など)に関する情報をどこまで詳細にどのようにして取り入れるかが鍵になると考えられる。今後、仮想ネットワークの考え方は、新しいサービスを実現する際には必須の技術となると考えられ、そのフレームワークを構築していく必要がある。
(関連研究については、4.1節、4.4節、4.5節、4.8節参照)

4.2002年度研究業績

本研究グループでは、以下の7つの研究課題を設定し、それぞれの研究課題ごとに研究を進めてきた。 以下、各研究テーマにおける本年度の研究成果を述べる。

4.1 マルチメディアQoSアーキテクチャ

アクセス回線容量の広帯域化、コンピュータの高性能化は目覚しく、一般家庭においてもライブ中継や音楽・映像配信といった分散型マルチメディアアプリケーションの利用が盛んになってきている。しかしながら、現状のインターネットは通信路を提供するだけで通信品質に対して何の保証も行わないため、受信・観賞可能なマルチメディアデータの品質は利用者の要求を十分満足するものではない。分散型マルチメディアアプリケーションに対してユーザの望む通信品質(QoS)を保証するためには、ユーザの要求に基づいて高品質なマルチメディアデータを効率よく効果的にユーザに提供するメカニズムが必要不可欠である。本研究テーマでは、同時に多数のユーザがサービスに参加する、実時間動画像マルチキャストと動画像ストリーミングを対象に、ネットワーク負荷やクライアントシステムの性能などに応じてユーザごとに様々に異なるQoS要求を満足することのできる、QoSアーキテクチャの確立を目指す。

4.1.1. アクティブネットワークによる実時間動画像マルチキャスト

実時間動画像マルチキャスト通信においては、それぞれのユーザのネットワーク接続形態、介在するネットワークの負荷状態、クライアントシステムの構成・能力がさまざまに異なるため、それぞれのユーザが快適に受信、復号、再生、鑑賞することのできる動画像品質(レート)が異なる。本研究では、ユーザやネットワーク管理者によって動的かつ柔軟にネットワークの振る舞いを変更することのできるアクティブネットワーク技術を用い、すべてのユーザの品質要求を満たしつつ効率的な実時間動画像マルチキャストを実現するためのフレームワークを提案している。アクティブノードと呼ばれる網内の高機能ノードで動画像品質調整を行い、これを根とするマルチキャストグループを階層的に組み合わせることにより、多数のクライアントの様々な要求品質にあった動画像をマルチキャスト配信する。
 本研究では、階層構造をなすネットワークを対象に、アクティブノードが、スタブ・ネットワークの負荷状態や配送される動画像に対するユーザの要求品質などに基づいて、マルチキャストグループを分割、統合、移動することにより、適切なマルチキャストグループを動的に構成する制御手法を提案した。シミュレーション評価により、スタブ・ネットワーク内のアクティブノードによる自律分散的な制御により、クライアントを適切なマルチキャストグループに収容し、要求品質に応じた動画像をマルチキャスト配信できることを示した。

[関連発表論文]
(1) Hector Akamine, Naoki Wakamiya and Hideo Miyahara, “Congestion-adaptive video multicast in an active network,” 電子情報通信学会技術研究報告 (NS2002-59), pp. 27-30, June 2002.

(2) 若宮直紀, 宮原秀夫, “アクティブネットワーク技術を利用した実時間動画像マルチキャスト,” 電子情報通信学会技術研究報告(アクティブネットワーク技術と応用事件研究会), pp. 11-16, March 2002.

(3) 吉田剛, “実時間動画像マルチキャストにおける動的なマルチキャストグループ再構成手法,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2003.


4.1.2 動画像ストリーミングのためのプロキシキャッシング(日立製作所との共同研究)

動画像、音声などのストリーム型マルチメディアデータのクライアントにおける一時蓄積、逐次再生を前提とした、ストリーミングサービスにおいては、ウェブシステムで広く用いられているプロキシ技術が、サービスの可用性、応答性を高めるために有効であると考えられる。また、プロキシを利用することにより、ネットワークやサーバへの負荷を軽減、分散することができる。さらに、プロキシに動画像品質調整機能を導入することにより、クライアントごと、また、時間によって様々に異なる要求品質を効率よく満たすことができると考えられる。
 そこで、本研究では、動画像ストリーミングサービスのための動画像品質調整可能なプロキシキャッシュサーバにおけるプロキシキャッシングアルゴリズムを提案した。提案アルゴリズムでは、動画像ストリームをブロックと呼ばれる固まりに分割し、ブロックを単位として転送、蓄積、加工することで、キャッシュバッファの有効利用および効率的なデータ転送を図る。また、ストリーム型メディアではデータの参照順が予測可能であることを利用し、空き帯域を利用したデータの先読み、キャッシュバッファ内データの掃き出しを行う。さらに、複数のプロキシキャッシュサーバが連携し、動画像データを交換することでより効率のよい動画像ストリーミングサービスを実現するメカニズムについても検討した。実データを用いたシミュレーションにより、必要となるバッファサイズ、再生開始までの待ち時間、再生中の停止時間、帯域の利用効率などにおいて、提案手法が高い性能を示すことを明らかにした。また、提案アルゴリズムを用いた動画像ストリーミングシステムをMPEG-2、MPEG-4のそれぞれを対象に構築し、実証実験により、ネットワークの負荷状態などに従って変化する要求品質に応じた動画像データを、継続的にストリーミング配信可能であり、提案アルゴリズムが実用的であることを示した。さらに、よりスケーラブルな動画像ストリーミングシステムの実現を目指し、P2P型通信アーキテクチャにおける動画像ストリーミング技術の検討にも着手した。P2P型動画像ストリーミングでは、動画像ストリーミングサービスに参加している個々のピアをプロキシキャッシュサーバとみなし、ピア間通信により所望の動画像データを検索、取得、再生することで動画像ストリーミングを実現する。

[関連発表論文]
(1) Masahiro Sasabe, Yoshiaki Taniguchi, Naoki Wakamiya, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Proxy caching mechanisms with quality adjustment for video streaming services,” to appear in IEICE Transactions on Communications, Special Issue on Content Delivery Networks, January 2003.

(2) Masahiro Sasabe, Yoshiaki Taniguchi, Naoki Wakamiya, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Implementation and evaluation of proxy caching mechanisms with video quality adjustment,” in Proceedings of The 2002 International Technical Conference On Circuits/Systems, Computers and Communications (ITC-CSCC 2002), (Phuket), vol. 1, pp. 121-124, July 2002.

(3) Naoki Wakamiya, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Video streaming systems with cooperative caching mechanisms,” in Proceedings of SPIE International Symposium ITCom 2002, (Boston), pp. 305-314, July-August 2002.

(4) Naoki Wakamiya, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “On proxy-caching mechanisms for cooperative video streaming in heterogeneous environment,” in Proceedings of IFIP/IEEE International Conference on Management of Multimedia Networks and Services 2002, (Santa Barbara), vol. LNC2496, pp. 127-139, October 2002.

(5) 谷口義明, 笹部昌弘, 若宮直紀, 村田正幸, 宮原秀夫, “動画像品質調整機能を組み込んだプロキシキャッシングシステムの実装と評価,” 電子情報通信学会技術研究報告 (CQ2002-72), pp. 41-46, July 2002.

(6) Masahiro Sasabe, “Scalable method for Continuous media streaming on peer-to-peer net-works,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

4.1.3 アクティブネットワーク技術を用いた動画像品質調整

実時間で動画像データを生成、転送し、多数のクライアントが受信、再生する実時間動画像動マルチキャストアプリケーションにおいて、低遅延で途切れのない動画像再生を実現するためには、動画像レートがそれぞれのクライアントの利用可能な帯域に収まるよう、ネットワークの負荷状態に基づいて動画像品質を調整しなければならない。しかしながら、単一のサーバが、個々のクライアントの通信状態を観測し、様々に異なる品質の動画像データを同時に生成、配信するのは困難である。
 そこで、本研究では、アクティブネットワーク技術を利用し、高度なパケット処理可能な高機能ノードであるアクティブノードに動画像品質調整機能を導入することにより、サーバに負荷をかけることなく網内の適切な位置で下流のクライアントの通信状態に応じた動的な動画像品質調整を行うシステムの研究、開発を行った。パケット処理に適したアーキテクチャを有する市販のネットワークプロセッサである、Intel IXP-1200を対象に、アクティブノードを構成するための諸機能のプロセッサ配置や機能間通信メカニズム、さらにパケット単位の動画像品質調整を行うための動画像データのパケット化手法について検討した。実システムを用いた実証実験により、制御パケットにより指定された目標レートにあわせて動画像データをパケット単位で品質調整可能であることを示した。また、動画像品質調整の最大スループットが2 Mbps程度であり、ユーザデータを加工するような高度なパケット処理のためには現状のIXP-1200ではプロセッサの処理能力が不足していることを明らかにした。


[関連発表論文]
(1) Tatsuya Yamada, Naoki Wakamiya, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Implementation and evaluation of video-quality adjustment for heterogeneous video multicast,” in Proceedings of The 8th Asia-Pacific Conference on Communications (APCC 2002), (Bandung), pp. 454-457, September 2002.

(2) 山田達也, 若宮直紀, 村田正幸, 宮原秀夫, “実時間動画像マルチキャストのための動画像品質調整機構の実装と評価,” 電子情報通信学会技術研究報告 (NS2002-60), pp. 31-34, June 2002.

(3) 山田達也, 若宮直紀, 村田正幸, 宮原秀夫, “実時間動画像マルチキャストのためのアクティブ動画像品質調整ノードの実装と評価,” 電子情報通信学会技術研究報告, March 2003.

(4) Tatsuya Yamada, “Design, implementation, and evaluation of active video-quality adjustment method for heterogeneous video multicast,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

4.2 ネットワークにおけるフィードバックメカニズムの解明に関する研究

ネットワークの高速化、効率化の中心技術となるのが輻輳制御である。旧来の電話交換網における輻輳制御では、アーラン呼損式を核とするトラヒック理論がその理論的な支柱となってきた。一方、インターネットに代表されるコンピュータネットワークにおいては、待ち行列理論が古くから輻輳制御設計を解決するものとされてきた。しかしながら、インターネットにおいては、エンド間トランスポート層プロトコルであるTCPがネットワークの輻輳制御の役割も担っている。TCPは基本的にフィードバックメカニズムに基づくものであり、従来の待ち行列理論に代表されるマルコフ理論が意味をなさないのは自明である。本研究テーマでは、そのような考え方に基づき、ネットワークの輻輳制御の解明を目指した研究を進めている。

4.2.1 トランスポート層プロトコルのフィードバックメカニズムに関する研究

パケット交換ネットワークにおいて、データ転送系のサービスを効率的に収容するためには、フィードバック型の輻輳制御が不可欠である。フィードバック型の輻輳制御では、ネットワークからのフィードバック情報に応じて、送信側ホストからのトラヒック流入量を動的に制御する。これにより、ネットワーク内部でのパケット棄却を防ぐとともに、網資源の有効利用が可能となる。現在、広く普及している TCP/IPネットワークでは、フィードバック型の輻輳制御として、ウィンドウ型のフロー制御方式であるTCPが用いられている。現在のインターネットでは、トラヒックの大部分がTCPによって転送されている。これまで、TCPの性能を解析した研究は数多く存在するが、その大部分はネットワークにおけるパケット棄却率を一定と仮定し、定常状態におけるTCPの特性を解析している。我々はこれまで、流体近似法および待ち行列理論を組み合わせることにより、ネットワーク全体を単一のフィードバックシステムとしてモデル化する手法を提案した。ただし、そこでは、すべてのTCPコネクションの伝搬遅延が等しいという、単純なネットワークを対象にしていた。
そこで本研究では、この解析手法を拡張することにより、TCPの定常特性および過渡特性を解析した。まず、定常状態における、各TCPコネクションのスループットおよびパケット棄却率、ボトルネックルータにおける平均待ち行列長を導出した。さらに、制御理論を適用することにより、TCPの過渡特性を解析した。これにより、TCPのコネクション数や伝搬遅延時間などが、TCPの過渡特性にどのような局所的な影響を与えるかを明らかにした。その結果、帯域遅延積がTCPの安定性や過渡特性を大きく左右すること、TCPのコネクション数やバックグラウンドトラヒック量が増えるにつれ、ネットワークがより安定することを明らかにした。

[関連発表論文]
(1) Hiroyuki Hisamatu, Hiroyuki Ohsaki and Masayuki Murata, “Steady state and transient behavior analyses of TCP connections considering interactions between TCP connections and network,” in Proceedings of International Symposium on Applications and the Internet (SAINT-2003), pp. 309-316, January 2003.

(2) Hiroyuki Hisamatsu, Hiroyuki Ohsaki and Masayuki Murata, “Steady state analysis of TCP connections with different propagation delays,” 電子情報通信学会ソサイエティ大会, September 2002.

(3) 久松潤之, 大崎博之, 村田正幸, “伝播遅延時間の異なる複数のTCPコネクションを考慮したTCPの定常状態解析,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-97), pp. 41-46, October 2002.

4.2.2 ネットワーク層プロトコルのフィードバックメカニズムに関する研究

近年、エンド-エンド間で動作するTCPの輻輳制御機構をゲートウェイにおいて補助する、アクティブキュー管理機構に関する研究が活発に行われている。本研究では、アクティブキュー管理機構に関して、 (1) REDゲートウェイの過渡特性解析、(2) REDのパケット棄却方式が定常特性・過渡特性に与える影響の解析、(3) 多変量解析を用いたアクティブキュー管理機構の性能評価、(4) 複数のルータが協調動作するアクティブキュー管理機構の設計、という4つの点からさまざまな検討を行った。
 REDゲートウェイに関する研究は非常に多いが、REDゲートウェイの定常特性に着目した研究がほとんどであり、過渡特性を評価した研究はほとんどない。我々はこれまで、TCPコネクション数の変動を考慮した、REDゲートウェイの過渡特性解析を行なった。しかし、そこでは一時的なTCPコネクションの変動のみを対象としており、一般的なTCPコネクション数の変動に対する過渡特性は明らかにされていない。そこで本研究では、まず、そこでの解析手法を応用することにより、さまざまなTCPコネクション数の変動に対する、REDゲートウェイの過渡特性を解析した。具体的には、制御理論で広く利用されている伝達関数を用いて、時間領域ではなく、周波数領域において解析を行った。さらに、いくつかのシミュレーション実験により、本研究で提案する過渡特性解析の妥当性を検証した。
 REDルータでは、平均キュー長(バッファ内パケット数)に対して線型な確率で到着するパケットを棄却する。しかし、パケットを棄却する確率が、平均キュー長に対して線型な確率でよいかどうかについては、これまで十分な検討が行われていない。そこで本研究では、次に、パケット棄却率を決定する関数が、凹型、線型、凸型の3種類の場合を考え、定常状態におけるそれぞれのアクティブキュー管理機構の性能を評価した。その結果、パケット棄却率を決定する関数が凹型の場合に、アクティブキュー管理機構の安定性が向上し、ネットワークの変動に対してよりロバストとなることを示した。
 一般に、アクティブキュー管理機構の問題点は、その有効性が制御パラメータの設定に大きく依存するという点にある。しかし、これまでは、アクティブキュー管理機構の制御パラメータ設定に関して、体系的な方法が存在しなかった。そこで本研究では、多変量解析手法を用いることにより、膨大な数のシミュレーション結果を統計的に処理し、REDルータの制御パラメータがその性能にどのような影響を与えるかを定量的に明らかにした。さらに、ここで提案する解析手法を、代表的な3種類のアクティブキュー管理機構GRED (Gentle-RED)、DRED (Dynamic-RED)、SRED (Stabilized RED))に適用し、制御パラメータが、その性能にどのような影響を与えるかを定量的に明らかにした。
 近年、さまざまなアクティブキュー管理機構の提案が活発に行われているが、その大部分は単一のルータを対象として設計されており、ネットワーク中の複数のルータを対象としたアクティブキュー管理機構は十分検討されていない。特に、ネットワーク中に複数のルータが存在する、一般的なネットワークトポロジの場合、TCPはMax-Min公平性をみたさないことが知られている。これは、TCPのスループットは、エンド-エンド間の伝搬遅延やホップ数が小さいコネクションほど有利になるためである。そこで本研究では、最後に、ネットワーク中に複数のルータが存在する、一般的なネットワークを対象とし、複数のルータが協調動作するアクティブキュー管理機構を設計した。これにより、TCPコネクション間の公平性が改善できることを示した。

[関連発表論文]
(1) Motohisa Kisimoto, Hiroyuki Ohsaki and Masayuki Murata, “On transient behavior analysis of random early detection gateway using a control theoretic approach,” in Proceedings of the IEEE Control Systems Society Conference on Control Applications (CCA/CACSD 2002), pp. 1144-1149, September 2002.

(2) Tomoya Eguchi, Hiroyuki Ohsaki and Masayuki Murata, “Multivariate analysis for performance evaluation of active queue management mechanisms in the Internet,” in Proceedings of SPIE’s International Symposium on the Convergence of Information Technologies and Communications (ITCom 2002), pp. 144-153, July 2002.

(3) Tomoya Eguchi, Hiroyuki Ohsaki and Masayuki Murata, “On control parameters tuning for active queue management mechanisms using multivariate analysis,” in Proceedings of International Symposium on Applications and the Internet (SAINT-2003), pp. 120-127, January 2003.

(4) 江口智也, 大崎博之, 村田正幸, “多変量解析を用いたアクティブキュー管理機構の性能評価に関する検討,” 電子情報通信学会技術研究報告 (NS2002-25), pp. 37-40, April 2002.

(5) 江口智也, 大崎博之, 村田正幸, “多変量解析を用いたアクティブキュー管理機構の制御パラメータ設定に関する考察,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-52), pp. 61-66, July 2002.

(6) 岸本統久, 大崎博之, 村田正幸, “ネットワークの変動に対してロバストとなるアクティブキュー管理機構のパケット棄却方式に関する検討, 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-51), pp. 54-60, July 2002.

(7) 江口智也,大崎博之, 村田正幸, “複数のルータが協調動作するアクティブキュー管理機構の設計と性能評価,” 電子情報通信学会技術研究報告 (発表予定), March 2003.

4.2.3 インターネットのエンド間遅延特性のモデル化に関する研究

インターネットにおける、エンド・エンド間のパケット伝送遅延特性を知ることは重要である。これは、(1) パケット伝送遅延特性がリアルタイムサービスのQoS(サービス品質)に直接影響を与えること、また、(2) リアルタイムおよび非リアルタイムアプリケーションに対して、効率的な輻輳制御機構の設計が可能になること、などによる。本研究では、インターネットのパケット伝送遅延特性をモデル化する、新しい手法を提案した。提案手法の中心となるアイディアは、ある送信側ホストからみたネットワーク全体をブラックボックスとして扱い、パケット伝送遅延特性を、制御工学の分野で広く用いられているシステム同定理論を用いてモデル化するというものである。システム同定に用いる入出力データとして、一定のサンプリング周期ごとに測定した、送信側ホストからのパケット送信レート、およびラウンドトリップ時間の平均値を用いることにより、モデル精度が向上できること示した。LAN環境およびWAN環境で実際に測定した入出力データを用いてモデル化を行い、ラウンドトリップ時間の変動がどの程度正確にモデル化できるかを明らかにした。その結果、LAN環境では、ほぼ正確にラウンドトリップ時間の変動をモデルできることを示した。また、WAN環境では、ボトルネックリンクが少数のユーザで共有されている場合、ラウンドトリップ時間の変動をうまくモデル化できることを示した。
 さらに本研究では、システム同定によって得られた、インターネットにおけるパケット伝送遅延時間のモデルに対して古典制御理論を適用することにより、ラウンドトリップ時間にもとづくレート制御方式を設計した。ラウンドトリップ時間が一定となるように、送信側ホストからのパケット送出レートを動的に制御することにより、ネットワーク内でのパケット棄却を防ぐことともに、エンド-エンド間での効率的な通信を実現した。いくつかのシミュレーション実験により、設計したレート制御方式の有効性を定量的に評価した。

[関連発表論文]
(1) Hiroyuki Ohsaki, Mitsushige Morita and Masayuki Murata, “Measurement-based modeling of Internet round-trip time dynamics using system identification,” in Proceedings of the Second IFIP-TC6 Networking Conference (NETORKING 2002), May 2002

(2) Mitsushige Morita, Hiroyuki Ohsaki, and Masayuki Murata, “Designing a delay-based adaptive congestion control mechanism using control theory and system identification for TCP/IP networks,” in Proceedings of SPIE's International Symposium on the Convergence of Information Technologies and Communications (ITCom 2002), June 2002.

4.3 高速トランスポートアーキテクチャに関する研究

エンドホスト間でデータ系トラヒックを高速に、かつ効率よく転送するための中心技術がトランスポートプロトコルである。特に、近年のネットワークの高速化に伴い、エンドホストにおけるプロトコル処理によるボトルネックも重要な問題となってきている。さらに、ネットワークが拡がりをみせるにつれ、サービスの公平性も重要な課題となってきている。これらの問題は、高速ネットワークにおける輻輳制御と密接な関連を持ち、高速かつ公平なサービスは、単にネットワークの輻輳制御だけでなく、エンドホストの処理能力向上も考慮しつつ、統合化アーキテクチャを構築することによってはじめて実現される。本研究テーマでは、それらの点を考慮した研究に取り組んでいる。また、CDN (Contents Distribution Network)やデータグリッドなどの、IPネットワーク上において特定のサービスを提供するためのオーバーレイネットワークにおけるトランスポートアーキテクチャに関する研究も行っている。

4.3.1 インターネットサーバにおけるスケーラブルな資源割当方式に関する研究

これまでネットワークの高速化に関する研究の多くは、ネットワークにボトルネックがあり、データの送受信を行うエンドホストはボトルネックではないと考えられてきた。そのため、エンドホストの高速化に関する研究はほとんど行われてきていない。しかし、WDM技術等の向上によって現在のネットワーク帯域は増大してきているため、図に示すように多くのTCPコネクションを同時に扱わなければならない非常に繁忙なWebサーバやWebプロキシサーバでは、サーバ資源の管理を行わなければ性能が著しく低下する。この問題を解決するために我々はこれまでに、Webサーバにおける動的な資源管理方式を提案してきた。この方式は、各TCPコネクションのデータ転送速度を向上させることを目的とした送信ソケットバッファの動的割り当て方式、および高速データ転送時のエンドホストにおける通信処理を軽減することを目的としたメモリコピー回避方式からなる。これらの方式をシミュレーションおよび実装実験を用いた評価を行い、提案方式の有効性を確認した。しかし、現在のネットワークにおいてはWebプロキシサーバを介したWebドキュメント転送も多く存在する。また、Webプロキシサーバは一般にISP (インターネットサービスプロバイダ)によって設置されることが多く、Webサーバ間のコネクションとクライアント間のコネクションを収容しなければならないため、Webプロキシサーバにおいて効率的なサーバ資源の管理を行わなければ、Webサーバの性能およびネットワークの帯域が十分にある状況においてWebプロキシサーバがデータ転送のボトルネックとなる状況が発生すると考えられる。
 そこで本研究では、Webプロキシサーバのための新しい資源管理方式の提案を行う。本提案方式は、受信ソケットバッファの動的割り当て方式、およびコネクション管理方式からなる。受信ソケットバッファの動的割り当て方式は、受信ソケットバッファの占有率を観測し、その占有率に基づいた受信ソケットバッファの割り当てを行う方式である。コネクション管理方式は、TCPコネクションを保持することによるサーバ資源不足によって新規TCPコネクションを収容することができなくなる問題を回避するために、サーバ資源が不足するとデータ転送を行っていないコネクションを切断し、割り当てた資源を解放する方式である。本論文ではさらに提案方式をシミュレーションおよび実装実験を通して有効性を確認し、その結果提案方式を用いることでWebプロキシサーバの性能を最大50%向上させ、ドキュメント転送時間を約2/3に短縮できることを確認している。

[関連発表論文]
(1) Go Hasegawa, Tatsuhiko Terai, Takuya Okamoto and Masayuki Murata, “Scalable resource management for high-performance Web servers,” submitted to International Journal of Communication Systems, November 2002.

(2) Takuya Okamoto, Tatsuhiko Terai, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “A resource/connection management scheme for HTTP proxy servers,” in Proceedings of IFIP/TC6 Networking 2002, pp. 252-263, May 2002.

(3) Takuya Okamoto, Kazuhiro Azuma, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Design, implementation and evaluation of resource management system for Internet servers,” submitted to ACM SIGCOMM 2003, January 2003.

(4) 岡本卓也, 長谷川剛, 村田正幸, “WebプロキシサーバにおけるTCP受信バッファの動的割り当て手法,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-92), pp. 13-18, October 2002.

(5) Takuya Okamoto, “Design, implementation and evaluation of resource management system for Internet servers,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

4.3.2 サービスオーバーレイネットワークにおけるインラインネットワーク計測技術に関する研究

近年のネットワークサービスの多様化に伴い、サービスオリエンテッドなネットワーク(サービスオーバーレイネットワーク)が拡がりつつある。例えば、ピア同士の直接的な通信を実現するP2Pネットワーク、ネットワーク上での分散計算環境を提供するグリッドネットワーク、図に示す、コンテンツ配信を目的としたContents Delivery Network (CDN)、IPネットワーク上に仮想網を構築するIP-VPNなどである。これらのネットワークは、IPネットワークを下位層ネットワークとして、特定のサービスを提供する上位層ネットワークととらえることができる。したがって、これらのネットワークにおいてサービス品質を向上させるためには、下位層ネットワークであるIPネットワークを与条件として、サービス提供のためのコネクション設定要求が発生した時に、利用可能な下位層ネットワーク資源量を適切に把握することが重要である。しかし、既存の利用可能帯域計測方式は、計測に長い時間がかかる、多くの計測用のパケットを用いるため外部トラヒックに与える影響が大きいなどの特徴を持つ。サービスオーバーレイネットワークにおいては、常に最新の利用可能なネットワーク資源量をネットワーク内の他のトラヒックに悪影響を与えることなく取得することが重要であり、そのため既存の方式をそのまま適用することはできない。

 そこで本研究では、サービスを提供しているエンドホスト間のTCPコネクションを直接用いて、データ転送中に得られる情報からエンドホスト間の利用可能帯域を随時推測するインラインネットワーク計測方式の提案を行う。この方式により、計測用のパケットをネットワーク内に送出することなく計測を行うことができるため、計測負荷を最小限に抑えることができる。そのために本年度における研究では、まずTCPコネクションによるインライン計測の際に問題となる点を明らかにし、それを解決するために、少ない計測パケット数で計測の初期段階から利用可能帯域の計測結果を導出することのできる、利用可能帯域の計測方式を提案している。シミュレーションによる提案方式の評価の結果、従来方式と比較して、計測のために1度に送信するパケット数を大幅に減少させ、約20個のパケット送信で利用可能帯域を許容範囲内の誤差で算出することができることを明らかにしている。さらに、提案した利用可能帯域の計測方法を、データ転送中のTCPコネクションを用いて行うインラインネットワーク計測方式に関しても検討を行っている。

[関連発表論文]
(1) Cao Le Thanh Man, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Inline network measurement mechanism for service overlay networks,” submitted to IEEE Bandwidth Management Workshop X, (Ontario), January 2003.

(2) Cao Le Thanh Man, 長谷川剛, 村田正幸, “サービスオーバーレイネットワークのためのインラインネットワーク計測に関する一検討,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN03-176), pp. 53-58, January 2003.

(3) Cao Le Thanh Man, 長谷川剛, 村田正幸, “アクティブTCPコネクションを用いたインラインネットワーク計測,” 電子情報通信学会総合大会 (発表予定), March 2003.

4.3.3 超高速データ転送を実現するTCPの輻輳制御方式に関する研究

例えば、近年注目されているデータグリッドネットワーク、ストレージエリアネットワーク等においては、エンド端末が1 Gbpsクラスの帯域を持つ高速ネットワークに直接接続され、データの取得・送出、データベースの更新、遠隔バックアップ等において、ギガバイトからテラバイト級のデータを高速に転送することが要求される。このような高速データ転送を行う場合に、現在のインターネットにおいて標準的に用いられているTCP Renoバージョンを用いると、大きなリンク帯域を十分使う程度のスループットを得ることができないという問題が指摘されている。この問題を解決するための一つの方法として、TCP Renoの輻輳制御方式を改変し、高いスループットを得ることができるHighSpeed TCPと呼ばれる方式が提案されているが、その性質はこれまで明らかになっておらず、特に従来のTCP Renoバージョンとの公平性に関しては考慮されていない。
 そこで本研究では、HighSpeed TCPコネクションが従来のTCP Renoコネクションと同じリンクを共有する場合の、スループットおよび公平性に関して、数学的解析手法およびコンピュータ上のシミュレーションを用いて考察している。その結果、HighSpeed TCPは従来のTCP Renoに比べて非常に高いスループットを得ることができるが、システム条件によっては大量のパケット廃棄によってスループットが著しく低下し、リンク帯域を十分使う程度のスループットを得ることができない場合があること、また、従来のTCP Renoと同じリンクを共有する場合、TCP Renoを用いたコネクションのスループットを大幅に低下させるため、両者の間の公平性を維持することができない等の問題点を持つことを明らかにしている。さらに本研究では、解析によって明らかになったHighSpeed TCPが持つ問題点を解決し、高いスループットを得るとともに、TCP Renoコネクションとの公平性を改善するTCPの輻輳制御方式の提案を行っている。提案方式の有効性はシミュレーションによって評価を行い、提案方式によって、従来のTCP Renoコネクション公平性を大幅に改善し、HighSpeed TCPに比べて最大で約50%のスループット向上を実現できることを示している。

[関連発表論文]
(1) Koichi Tokuda, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Performance analysis of HighSpeed TCP and its improvement for high throughput and fairness against TCP Reno connections,” submitted to IEEE High Speed Network Workshop 2003 (HSN ’03), (San Francisco), March 2003.

(2) 徳田航一, 長谷川剛, 村田正幸, “HighSpeed TCP の性能評価とその性能改善方式の提案,” 電子情報通信学会情報ネットワーク研究会 (発表予定), March 2003.

(3) Koichi Tokuda, “On congestion control mechanism of high-speed TCP,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

4.3.4 公平性に着目したREDルータの解析的評価と性能改善に関する研究

ボトルネックルータにおけるTCPコネクション間の不公平性を改善するための一つの方法として、RED (Random Early Detection)ルータを用いることが有効であると言われている。そこで本研究では、特にフロー間の公平性に着目し、REDルータの評価を数学的解析手法により行い、その結果、パラメータ設定が適切な場合はREDの公平性はTDに対して優れているが、パラメータ設定が不適切な時にはREDの性能がTDよりも劣化する場合があることを明らかにしている。また、REDのパラメータをルータの輻輳状況に応じて動的に変化させ、ネットワーク状況の変化に対応する動的パラメータ設定方式であるdt-RED (RED with dynamic threshold control) 方式を提案し、性能評価を行っている。さらに、遅延時間やリンク帯域等の環境が同じ場合でも、TCPコネクションが転送するデータサイズの違いによってスループットに不公平性が発生することを指摘し、それを改善する手法として、ルータにおいて転送データサイズを推測し、推測結果に基づいて転送データサイズに応じてREDにおけるパケット廃棄率を変化させるhash-RED方式を提案し、その有効性をシミュレーションによって明らかにしている。

[関連発表論文]
(1) Go Hasegawa, Kouichi Tokuda and Masayuki Murata, “Analysis and improvement of fairness among many TCP connections sharing Tail-Drop and RED routers,” in Proceedings of INET 2002, June 2002.

(2) Koichi Tokuda, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Analysis and improvement of fairness among TCP connections transmitting differently sized data,” submitted to Journal of High Speed Networks, January 2003.

(3) Koichi Tokuda, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Analysis and improvement of the fairness between long-lived and short-lived TCP connections,” in Proceedings of IEEE Seventh International Workshop on Protocols For High-Speed Networks (PfHSN 2002), (Berlin), pp. 33-40, April 2002.

(4) Koichi Tokuda, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “TCP throughput analysis with variable packet loss probability for improving fairness among long/short-lived TCP connections,” in Proceedings of IEEE CQR 2002, (Okinawa), pp. 145-149, May 2002.

4.3.5 ネットワークプロセッサを用いたTCPプロキシ機構の実装とその評価に関する研究

近年のインターネットの発達、ユーザの爆発的な増加にともない、インターネット上で提供されるサービスは多様化している。それらの中には、エンド端末間のスープット、データ転送遅延時間、パケット廃棄率などに関して高いネットワーク品質を要求す
るサービスもあるが、現在のインターネットはベストエフォート型であり、ネットワーク内での通信品
質が保証されないため、送受信エンド端末間でTCPやアプリケーションによる通信品質の制御を行っても、アプリケーションの要求を完全に満たすことはできない。この問題を解決するためのIP層における品質制御技術として、IntServやDiffServが挙げられるが、スケーラビリティ、導入コストなどに多くの問題を抱えている。一方、アプリケーション層における品質制御技術に関しても多くの研究が行われ、実ネットワークにおいて運用がされているものもある。しかし、これらの技術はそれぞれのアプリケーションに特化した制御が必要であり、パラメータ設定が難しいという問題がある。
 そこで我々の研究グループでは、IPネットワークにおいてはルーティング、パケット到達性などの必要最低限の機能のみを提供し、品質制御はトランスポート層において行う、レイヤ4オーバーレイネットワークに関する研究を行っている。レイヤ4オーバーレイネットワークにおいては、エンド端末間に設定されるTCPコネクションをネットワーク内で図に示すように分割し、それぞれのコネクションにおいてネットワーク環境、要求されるサービスに応じた制御を行うことで、高品質なサービスを提供することができる。本研究においては、レイヤ4オーバーレイネットワークにおいて必要となる基本的な機能である、TCPコネクションをネットワーク内の
ノードにおいて分割・中継する機能(TCPプロキシ機構)をPCルータおよびネットワークプロセッサを用いて実装し、その性能や処理遅延に関する評価を行っている。評価の結果、TCPコネクションの分割・中継処理においてもっとも大きな性能上のボトルネックになるのはメモリアクセス処理であることを明らかにしている。また、計測結果と解析結果の比較を行うことによって解析結果の妥当性を評価している。さらに、PCルータ上の実装とネットワークプロセッサ上の実装の性能比較を行い、ネットワークプロセッサを用いることの有用性や特徴、および将来の高速ネットワークプロセッサシステムにおけるTCPプロキシ機構の性能などに関する議論を行っている。その結果、今後登場する高速なネットワークプロセッサを用いることによって、ある程度高速なネットワーク上においてもTCPプロキシ機構を提供できることを明らかにしている。

[関連発表論文]
(1) 松浦陽亮, “TCPプロキシ機構のネットワークプロセッサ上での実装と評価,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2003.

4.4 高速アドレス検索およびパケット識別の性能評価手法に関する研究

特にネットワーク回線の高速化に伴い、ルータにおける処理ボトルネックが緊急を要する解決課題のひとつになっている。一方で、ネットワークサービスの多様化に伴って、単純なパケットフォワーディングの高速化にとどまらず、多種多様なサービスを考慮したパケット処理がルータに要求されるようになっている。本研究テーマでは、サービスの多様化に追随しうる高速パケットスイッチングアーキテクチャに関する研究に取り組んでいる。

4.4.1 IPルータにおけるアドレス検索アルゴリズムの性能評価手法(NTTネットワークサービスシステム研究所との共同研究)
インターネットトラヒックの急速な伸びにより、より高速なデータ転送技術が要求されている。ネットワーク全体の性能向上を考えた場合、回線容量を増やすだけでなく、ルータ、特にアドレス検索処理の高速化が必須である。近年、従来の検索手法に替わる新しい高速検索アルゴリズムが提案されているが、しかし、それらの性能予測に関しては、実トラヒックの特性に関して十分な分析がなされていないため、非常に限られた条件下の性能のみが示されている。ルータ、特にフロー特性による影響を受けやすいレイヤ3やレイヤ4スイッチの場合、現実的な性能を予測するためには、実際のトラヒックについて考慮する必要がある。
 そこで本研究では、インターネットトラヒックの統計的分析にもとづくアドレス検索アルゴリズムの性能予測手法を提案した。提案手法を既存のアドレス検索アルゴリズムの性能評価に適用し、シミュレーションを行うことによって、より正確な性能予測が可能となった。

[関連発表論文]
(1) Ryo Kawabe, Shingo Ata, Masayuki Murata, Masanori Uga, Kohei Shiomoto and Naoaki Yamanaka, “On performance prediction of ad-dress lookup algorithms of IP routers through simulation and analysis techniques,” in Proceedings of International Conference on Communication (ICC) 2002, (New York), vol. 4, pp. 2146-2151, April 2002

(2) Ryo Kawabe, Shingo Ata, Masayuki Murata, Masanori Uga, Kohei Shiomoto and Naoaki Yamanaka, “Performance prediction method for IP lookup algorithms,” in Proceedings of 2002 Workshop on High Performance Switching and Routing (HPSR), (Kobe), pp. 111-115, May 2002.

(3) Ryo Kawabe, Shingo Ata and Masayuki Murata, “Performance prediction method for address lookup algorithms based on statistical traffic analysis,” submitted to Journal of High Speed Networks, March 2002.

4.4.2 DDoS防御アルゴリズムの性能評価に関する研究(NTT未来ねっと研究所との共同研究)

近年頻繁に見られるようになったサービス拒否 (DoS: Denial of Service) 攻撃は、インターネット上に存在する特定のサイトに対して大量のパケットを送りつけることでそのサイトで提供されているサービスを利用できなくする、もしくはそのサービスの品質を著しく低下させるような行為を指す。DoS 攻撃は近年多様化・分散化し、その威力は増すばかりである。その中でも分散化した攻撃は特に DDoS (Distributed DoS) 攻撃と呼ばれており、現存するプロトコルに則ったものであるため、その効果的な防御策が確立されていない。
 現在、DDoS 攻撃を防御する様々なアルゴリズムが検討されているが、実際にアルゴリズムの有効性を確かめるためには、設計者が想定していない様々な性質のトラヒックに対して正しく動作することを検証する必要がある。本研究では、TCP SYN Flood という近年最も多く見られる DoS 攻撃を防御するアルゴリズムを検討するため、実際のトラヒック計測にもとづく DDoS 攻撃トラヒックの疑似生成を行った。さらに、得られた攻撃トラヒックに防御アルゴリズムを適用したシミュレーションにより、アルゴリズムの有効性を評価した。

[関連発表論文]
(1) 中山圭, “DDoS攻撃トラヒックのモデル化および防御アルゴリズムへの適用とその評価,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2003

4.4.3 IPv6 ネットワークにおけるエニーキャスト通信実現のためのプロトコル設計と実装(NECとの共同研究)

インターネットの普及によって、インターネット接続端末数は爆発的に増加し、その結果既存のIPv4 のアドレスでは、すべての端末に IP アドレスを設定できないという、アドレス枯渇問題が現実となりつつある。この問題を解決する次世代の IPv6 について、現在標準化が活発になされている。IPv6 は、IPv4 のアドレス枯渇問題を解決するだけでなく、IPv4 では存在しない新しい機能についても多く提案および標準化が行われている。しかしながら、これらの機能を実現するためには、数多くの解決すべき技術課題が存在する。本研究テーマでは、IPv6 ネットワークを実現するために必要とされるこれらの技術課題について取り組み、解決法を示すことを目標としている。
 本研究では特に、IPv6 の新しい機能のひとつであるエニーキャストルーティングを対象とした。エニーキャストアドレスとは、複数の端末に対して同一のアドレスを割り当てる技術であり、クライアント側は複数存在する同一アドレスのサーバから、適切なサーバに対して通信することが可能となる。しかし、現在エニーキャストアドレスの機能はほとんど利用されていないのが実状である。この原因として、エニーキャスト通信に必要となる多くの機能がいまだ定義されていないことがあげられる。本年度は、(1) エニーキャストアドレスを TCP で利用可能にする、(2) 異なるネットワークにエニーキャストアドレスが分散する場合のルーティングプロトコルを設計することに取り組んできた。

[関連発表論文]
(1) Satoshi Doi, Shingo Ata, Hiroshi Kitamura, and Masayuki Murata, “IPv6 Anycast Functionality/Terminology Definition,” Internet Draft, draft-doi-ipv6-anycast-func-term-00.txt, February 2003.

エニーキャストアドレス解決のためのプロトコル設計と実装

エニーキャストアドレスを用いた通信では、同一エニーキャストアドレスに対するパケットは必ずしも同一ホストに到達するとは限らない。したがって、エニーキャストアドレスを直接 TCP などのプロトコルで利用することはできない。このような場合、通信開始前にあらかじめエニーキャストアドレスをユニキャストアドレスに変換(エニーキャストアドレス解決)すれば、同一ホストへの到達性が確保され、TCP 接続を行うことができる。本研究では、エニーキャストアドレス解決の手順を定義し、エニーキャストアドレスを用いた通信においても、実際の通信時にはユニキャストアドレスを用いることで、TCP 通信を実現する機構を提案した。さらに、このメカニズムをSOCKS などで用いられる動的ライブラリの手法を用いて実装し、すべてのアプリケーションがソースコードの修正をすることなくシームレスにエニーキャスト・ユニキャスト通信が行える環境を実現した。

[関連発表論文]
(1) 土居聡, 阿多信吾, 北村浩, 村田正幸, 宮原秀夫, “IPv6ネットワークにおけるエニーキャスト通信実現のためのプロトコル設計と実装,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-1), vol. 102, pp. 1-6, May 2002

(2) 土居聡, 阿多信吾, 北村浩, 村田正幸, 宮原秀夫, “IPv6ネットワークにおけるエニーキャスト通信実現のためのプロトコル設計と実装,” ITRC第11回研究会, July 2002

(3) Shingo Ata, Hiroshi Kitamura and Masayuki Murata, “A protocol for anycast address resolving,” Internet Draft draft-ata-ipv6-anycast-resolving-00.txt, June 2002.

(4) Satoshi Doi, Shingo Ata, Hiroshi Kitamura, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Protocol Design for Anycast Communication in IPv6 Network,” submitted to IEEE PACRIM 2003, March 2003.

エニーキャストルーティングプロトコルの設計

エニーキャスト通信を使えば、複数のサーバの中から最適なサーバと自動的に通信可能となる。しかし、この最適なサーバ選択を実現するには、新たなルーティングプロトコルのサポートが必要となるため、現状では利用できない。本研究では、ネットワーク上の任意の場所にエニーキャストサーバが存在する場合に必要となる、ルーティングプロトコルの設計を行った。その特徴としては、(1) エニーキャストネットワークへの段階的な移行、(2) 到達性の確保(少なくとも一つのホストに必ず到達する)、(3) スケーラビリティの確保、(4) より少ない修正、があげられる。本研究では、特にエニーキャスト通信とマルチキャスト通信との類似性を元に、既存のインターネットへの適用性を考慮した新たなエニーキャストルーティングプロトコルを提案した。

[関連発表論文]
(1) 土居聡, 阿多信吾, 北村浩, 村田正幸, 宮原秀夫, “IPv6ネットワークにおけるエニーキャストルーティングプロトコルの設計,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-175), vol. 102, pp. 47-52, January 2003.

4.5 インターネットのトラヒック特性とその応用に関する研究

インターネットにおいて品質の高いサービスを提供するためには、ネットワーク特性を十分に把握した上で、それに基づいたアプリケーション制御、アプリケーションシステム設計が必要になる。特に、従来のネットワーク設計手法論が単一キャリアを前提にした、閉じたものであったのに対して、インターネットにおいてはオープンな環境における設計が必要になっている。本研究テーマでは、このような考察に基づいて研究テーマに取り組んでいる。

4.5.1 インターネットの遅延特性とリアルタイムアプリケーションへの応用

インターネットアプリケーションにおける重要な通信品質特性としてパケット転送遅延が挙げられる。実際に、TCPやストリーミングアプリケーションにおいて通信品質を考慮した転送を行うには、パケット転送遅延時間の予測が必要であり、特にパケットロスを検知するためには、遅延分布のすその部分の特性を明らかにすることが重要となる。本研究では、まず測定ツールを用いてパケット転送遅延を測定し確率分布関数による分布のモデル化を行った。統計分析においては、特に分布のすその部分に着目し、時間帯による遅延特性の変化や確率分布のパラメータ推定のモデル化における精度も明らかにし、その結果、パレート分布が遅延分布のモデルとして最適であることを示した。さらに、統計分析の結果をストリーミングアプリケーションに適用し、ユーザの要求する通信品質を実現できるプレイアウト制御アルゴリズムを提案した。また、数値結果により提案アルゴリズムの有効性を示している。

[関連発表論文]
(1) Kouhei Fujimoto, Shingo Ata and Masayuki Murata, “Adaptive playout buffer algorithm for enhancing perceived quality of streaming applications,” in Proceedings of IEEE GLOBECOM 2002, (Taipei), November 2002

(2) Kouhei Fujimoto, Shingo Ata and Masayuki Murata, “Adaptive playout buffer algorithm for enhancing perceived quality of streaming applications,” submitted to Telecommunication Systems Journal, December 2002.

4.5.2 ピア・ツー・ピアサービスにおける検索性能向上のためのレプリケーション配置手法

近年、ピア・ツー・ピア (P2P) モデルによる多くのサービスが提供されている。P2P では、サービスに参加するホストはピアと呼ばれ、ピアが相互に接続して論理ネットワークを形成する。サービスの問い合わせや応答は論理ネットワークを通じて行われるため、論理ネットワークが安定して構成されることが重要となる。しかし、ピア同士により構成されるネットワークでは、ピアの参加や離脱によってその安定性が大きく変化する。このため、P2P では論理ネットワークの安定したサービス提供を考えることが重要となる。このような論理ネットワークの安定性向上に対して、レプリケーションと呼ばれる手法が提案されている。しかし、本来レプリケーションの効果は論理ネットワークのトポロジーに大きく依存するが、そのようなトポロジーを考慮したレプリケーション手法は考えられていない。特に、インターネットや P2P 論理ネットワークのトポロジーは、これまでの研究によりべき乗則に依存することが明らかとなっており、レプリケーションにもこれらの影響を考慮する必要がある。
 本研究では、論理ネットワークのトポロジー、特にべき乗則がレプリケーションに及ぼす影響をまず明らかにした。シミュレーションにより、隣接接続数の多いピアでは接続数の少ないピアの4倍の頻度でレプリカが作成され、さらに作成されたレプリカについては接続数の多いピアのレプリカが少ないピアの5倍の頻度で参照されていることが明らかとなった。これらの結果をもとに、べき乗則を考慮したレプリカ作成および検索を行う手法を新たに提案した。シミュレーションによる評価の結果、提案手法は従来手法の 60% の検索時間を実現し、検索性能を大幅に向上させることが分かった。

[関連発表論文]
(1) 後藤嘉宏, 阿多信吾, 村田正幸, “P2P ネットワークにおけるサービス安定性向上のためのレプリケーション配置手法,” 電子情報通信学会技術研究報告 (NS2002-152), vol. 102, pp. 25-28, October 2002.

(2) Yoshihiro Gotoh, Shingo Ata and Masayuki Murata, “Replication methods for enhancing search performance in peer-to-peer services on power-law logical networks,” submitted to ITCom 2003, February 2003.

(3) Yoshihiro Gotoh, “Replication methods for enhancing search performance in peer-to-peer ser-vices,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

4.6 フォトニックパケットスイッチアーキテクチャに関する研究

パケットをそのまま光領域でスイッチングやフォワーディングを行うフォトニックパケットスイッチは、高速インターネットのためのインフラストラクチャを構成する重要な要素技術である。フォトニックパケットスイッチでは、スイッチ内の1つの出力線に対して同時に複数のフォトニックパケットが出力される場合に発生するパケットの競合によるパケット損失が問題となる。従来の電気領域におけるスイッチでは、RAM (Random Access Memory) を利用した蓄積交換技術によってパケット出力の時間的調整が可能となり、パケットの競合を容易に解決することができた。しかしながら、フォトニックパケットスイッチに関しては光領域におけるRAMは実用化されていないため、別のアプローチを考えることが必要となる。
 これを解決する手法として、光ファイバによる遅延線(FDL; Fiber Delay Line) を光バッファとして用いることによってパケットの競合を時間的に解決する光バッファリング(optical buffering)による手法、WDM における波長変換技術を利用して競合するパケットを別の波長に変換して同時に出力することを可能とする波長変換による手法などが研究されてきた。
 本研究では、高速なパケットスイッチング・フォ
ワーディングを可能とするフォトニックパケットスイッチの構成技術を明らかにし、特に遅延線バッ
ファの効率的な利用法に関する研究を進めている。なお、本章、および、次章における研究テーマのターゲットを図に示す。


4.6.1 フォトニックパケットスイッチにおけるファイバ遅延線を用いた光バッファの構成に関する研究(大阪大学大学院工学研究科北山研究室との共同研究)

本研究では、フォトニックラベル処理に基づいたパケットスイッチ構成を対象とし、スイッチ構成として実用化の難しい光論理デバイスによる複雑な制御を不要にするため、簡単に構成できる遅延線を用いたバッファ付き2×2基本スイッチ及びそれらを組み合わせたセルフルーティング可能な多段スイッチを考える。また、基本的な性能を測るため、固定長パケットを取り扱うものとする。基本スイッチ及びそのパケットスケジューリングアルゴリズムはすでに提案されているが、パケットが到着しない場合にも実パケットと同様にバッファに空パケットを挿入して制御するなど、バッファの効率的な利用が図られていない。また、多段スイッチ構成とした場合の解析及び性能評価は行われていない。
 そこで、バッファの効率的な利用が可能なスケジューリングアルゴリズムを提案し、有効性を示した。しかしながら、バッファの状態数が多くなり、大規模なバッファにおいての評価が難しいという問題点があるため、このアルゴリズムをさらに改良し、少ない状態数でバッファの有効利用を図ることのできる手法を提案した。2×2バッファスイッチ、およびそれらを組み合わせた多段スイッチにおいて性能を調べ、さらに、多段スイッチにおいて競合解決の方法としてディフレクションルーティングを用いた場合の性能評価、実現コストを考慮した検討も併せて行った。その結果、提案方式はより効率的なバッファ利用が図ることができ、パケット棄却率、平均待ち時間どちらの特性も従来方式より改善できることを示した。

[関連発表論文]
(1) Ken-ichi Baba, Ryuusuke Takemori, Masayuki Murata, and Ken-ichi Kitayama, “A packet scheduling algorithm for the 2×2 photonic packet switch with FDL buffers,” in Proceedings of 28th European Conference on Optical Communication 2002, vol.3, no.8.5.3, September 2002.

4.6.2 ファイバ遅延線を用いた光バッファのためのパケットスケジューリングに関する研究(大阪大学大学院工学研究科北山研究室との共同研究)

本研究では、仮想的にバッファサイズを拡大できるWDM技術に基づいたFDLを用いた、可変長パケットを扱う同期型フォトニックパケットスイッチの性能を明らかにした。すなわち、スイッチに対する入力としてWDMによって多重化されたパケットを扱い、スイッチング時におけるオーバーヘッドを低減するためにスイッチ内部において一定のタイムスロット間隔での同期をとり、パケットスイッチングを行うものとする。また、フォトニックパケットスイッチ内での競合に対しては、光バッファリングおよび波長変換を用いて解決することとする。ここでは、光バッファの利用方法によって2つのアーキテクチャを考える。つまり、スイッチ内のすべての出力線にスイッチングされるパケットを1つのFDLバッファで共有して蓄積する共有バッファ型、および各出力線ごとに設けられたそれぞれのFDLバッファに蓄積する出力バッファ型の2つのアーキテクチャを対象として、シミュレーションによる性能評価を行った。その結果、共有バッファ型アーキテクチャは、ネットワークの負荷が低い場合において、出力バッファ型アーキテクチャの1/入出力本数のFDLでも良い性能を示すことがわかった。逆に、出力バッファ型アーキテクチャは出力線ごとにFDLバッファを設置するため、ネットワークの負荷が高い場合においても共有バッファ型に比べ、パケット棄却を抑えたスイッチングが可能となることがわかった。
 次に、共有バッファ型スイッチでは負荷が高い場合にその性能が大きく低下することから、その問題を解決するために、パケット間空き領域低減手法を提案した。その結果、高負荷時においても安定した性能を示すことを明らかにした。さらに、パケットスケジューリングアルゴリズムのハードウェアでの実現性を考慮した上で、その動作シミュレーションを行うことにより、処理遅延時間の観点からその評価を行った。その結果、スケジューリングの際に扱う波長数が処理遅延時間に大きな影響を与えることを明らかにした。

[関連発表論文]
(1) 山口貴詩, 馬場健一, 村田正幸, 北山研一, “フォトニックパケットスイッチにおけるパケット間空き領域の低減を考慮したスケジューリングアルゴリズム,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-35), vol.102, no.213, pp.13-16, July 2002.

(2) Takashi Yamaguchi, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Packet scheduling for WDM fiber delay line buffers in photonic packet switches,” in Proceedings of SPIE OptiComm2002, Vol.4874, pp.262-273, July 2002.

(3) Takashi Yamaguchi, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Scheduling algorithm with consideration to void space reduction in photonic packet switch,” submitted to IEICE Transactions on Communications, March 2003.

(4) Takashi Yamaguchi, “On packet scheduling algorithm for WDM-based photonic packet switch with fiber delay line buffers,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.


4.6.3 品質差別化機能を有するフォトニックパケットスイッチアーキテクチャに関する研究(独立行政法人通信総合研究所との共同研究)

光パケットスイッチ実現のためには、光伝送の高速性を活かす高速パケット競合制御と優先制御機能を持つことが望ましい。本研究では、これらの制御の実現を目指したバッファ管理手法である部分上書きバッファ共有方式 (PBSO)を提案している。PBSO は単一キューに基づいた方式で、その計算量はO(p) である(pは廃棄レベル数)。光パケットスイッチにおいて PBSOを実現するための光バッファ構成も示した。シミュレーションによって、PBSO方式はDiffServ AF (Assured Forwarding)の異なる廃棄レベルのパケット転送機能を提供すること、および、各廃棄レベルのパケット棄却率を改善し、バッファ使用効率も改善することを示した。

[関連発表論文]
(1) 原井 洋明、村田 正幸, “DiffServを実現するための光パケットスイッチにおけるバッファ管理法の性能解析,” 電子情報通信学会 情報ネットワーク研究会, July 2002.

(2) Hiroaki Harai and Masayuki Murata, “Performance analysis of prioritized buffer management in photonic packet switches for diffserv assured forwarding,” in Proceedings of Opticomm 2002: Optical Networking and Communications, 29 July - 1 August 2002.

(3) Hiroaki Harai and Masayuki Murata, “Photonic Buffer Architecture to Support Prioritized Buffer Management for Asynchronously Arriving Variable-Length Packets,” in Proceedings of The 7th IFIP Working Conference on Optical Network Design and Modeling (ONDM 2003), (Budapest), pp. 93-112, February 2003.

(4) Hiroaki Harai and Masayuki Murata, “Optical Fiber-Delay-Line Buffer Management in Output-Buffered Photonic Packet Switch to Support Service Differentiation,” submitted to IEEE Journals on Selected Areas in Communications, February 2003.

4.7 フォトニックネットワークアーキテクチャに関する研究

近年の光伝送技術の発展には目覚しいものがあり、WDM(波長分割多重)技術によってネットワークの回線容量は爆発的に増大してきた。しかし、光伝送技術とネットワーキング技術はおのおの別個の歴史を持ち、インターネットに適した光通信技術の適用形態については明らかになっていないのが現状である。短期的には、高性能・高信頼光パスネットワークがその中心技術になると考えられ、その点に着目した研究を行っている。

4.7.1 フォトニックインターネットにおける論理トポロジー設計手法に関する研究

次世代インターネットの基盤ネットワークとして、WDM技術に基づいたIP over WDMネットワークが有望視されている。このようなIP over WDMネットワークのアーキテクチャの一つとして物理トポロジー上に光パスを設定することで論理トポロジーを構築し、その上でIPパケットを転送するアーキテクチャが考えられている。従来の論理トポロジー設計手法では、光ファイバで多重される波長数は一定であるとしていた。しかし、波長の多重数が大きい場合には、光ファイバに光ファイバ増幅器を導入しておく必要がある。IP over WDMネットワークを対象とし、光ファイバに導入される光ファイバ増幅器を考慮した、発見的手法に基づく論理トポロジー設計手法を提案している。提案アルゴリズムを論理トポロジー上での平均遅延時間、スループットおよび必要となる光ファイバ増幅器の数を比較し、設計された論理トポロジーに必要となる光ファイバ増幅器の数が減少することを示した。また、波長の多重数と1波長当たりの伝送帯域の積が一定であるとした上で、波長の多重数の違いがネットワークの性能におよぼす影響を明らかにし、その結果、波長の多重数を上げると収容可能なトラヒック量が増加することがわかった。

[関連発表論文]
(1) Yukinobu Fukushima, Shin’ichi Arakawa, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Design of logical topology for minimizing the number of fiber amplifiers,” submitted to IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology, August 2002.

4.7.2. フォトニックインターネットにおける高信頼化に関する研究

WDM技術によってネットワークの伝送容量が増大するにともなって、ネットワーク機器において障害が発生した時のデータ損失量も大きくなる。そのため、障害からの復旧手法としてWDM層でのプロテクション方式が考えられている。プロテクション方式では障害発生時にあらかじめ決められたバックアップパス上にトラヒックを流して障害復旧を行う。しかし、従来のプロテクション方式に関する研究では、信頼性に関する品質(QoR: Quality of Reliability)に関する研究はほとんど行われていない。本研究では、障害発生時からバックアップパスへ切り替わるまでの時間、すなわち、障害復旧に必要となる時間をQoRとして規定した。さらに、QoRの要求を考慮した論理トポロジー設計手法を提案し、提案手法を用いた場合に必要となる波長数を明らかにした。

[関連発表論文]
(1) Shin’ichi Arakawa and Masayuki Murata, “Reliability issues in IP over photonic networks,” Quality and Reliability of Large Scale Telecom Systems ? Case Studies: Olympic Games, John Wiley & Son, December 2002.

(2) Shin’ichi Arakawa, Junichi Katou and Masayuki Murata, “Design method of logical topologies with quality of reliability in WDM networks,” to appear in Photonic Network Communications, vol. 3, pp. 68-76, May 2003.

4.7.3 フォトニックインターネットにおける設備設計に関する研究 (独立行政法人通信総合研究所との共同研究)

従来提案されてきたWDMネットワークの物理トポロジー設計手法では、将来発生するトラヒック量は既知と仮定して低コストのネットワークを構築している。しかし、実際には、トラヒック量を正確に予測することは困難である。本研究では、将来要求されるトラヒック量が不確定な状況で、収容可能なトラヒック量を最大にするWDMネットワークの設備設計手法を提案している。提案手法では、将来のトラヒック変動を推定し、推定したトラヒックを収容するために必要となるネットワーク設備を配置する。OXCおよび光ファイバを設計する設備の対象とし、ネットワーク設備設計問題をOXC配置問題とファイバ配置問題の部分問題に分けて解いている。提案手法により設計されたネットワークと冗長設計により設計されたネットワークを比較した結果、提案手法により設計したネットワークはすべての光パス設定要求を収容することができたのに対して、同じ数のOXCを導入した冗長設計により設計したネットワークでは二割程度の光パスが収容できないことを明らかにしている。

[関連発表論文]
(1) Yukinobu Fukushima, Hiroaki Harai, Shin’ichi Arakawa, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “A minimum interference routing algorithm for multi-period planning of WDM lightpath networks without traffic prediction,” in Proceedings of 28th European Conference on Optical Communication 2002 (ECOC2002) Technical Digest, September 2002.

(2) 福島行信, 原井洋明, 荒川伸一, 村田正幸, 宮原秀夫, “定期拡張するWDMネットワークにおける不確定な光パス設定要求に対する光パス経路決定アルゴリズム,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-34), pp. 7-12, July 2002.

(3) Yukinobu Fukushima, “Planning and design methods for robust WDM networks subject to traffic changes,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

4.7.4 フォトニックネットワークにおける段階的設計手法に関する研究

これまでの多くの研究では、トラヒック量が既知であるという仮定に基づいた論理トポロジー設計が行われてきた。しかし、インターネットへの適用を考えた場合、そのような仮定は非現実的である。本研究では、IP over WDMネットワークにおいて信頼性を高めつつ、動的に変動するトラヒック要求に対応するために、プライマリ/バックアップ光パスを設定するためのアルゴリズムMRB (Minimum Reconfiguring for Backup lightpaths)を提案している。また、バックアップ光パスは障害発生時にのみ使用されるため、変動するトラヒックを収容するためにバックアップ光パスの再構成することで、より多くのプライマリ光パスを効率的に収容するための最適化問題の定式化を行っている。シミュレーションによって、提案方式の有効性を検証しており、その結果、提案手法がより多くのトラヒックを収容できることを示している。

[関連発表論文]
(1) Shin’ichi Arakawa and Masayuki Murata, “Lightpath management of logical topology with incremental traffic changes for reliable IP over WDM networks,” Optical Network Magazine, vol. 3, pp. 68-76, May 2002.

(2) Shinya Ishida, Shin’ichi Arakawa and Masayuki Murata, “Proposal of procedures to reconfigure logical topologies in reliable WDM-based mesh networks,” in Proceedings of SPIE APOC2002 Optical Networking II, (Shanghai), vol. 4910, pp. 115-125, October 2002.

(3) Shinya Ishida, Shin’ichi Arakawa and Masayuki Murata, “Dynamic reconfiguration of logical topologies in WDM-based mesh networks,” in Proceedings of The 7th IFIP Working Conference on Optical Network Design and Modeling (ONDM 2003), (Budapest), pp. 93-112, February 2003.

(4) 石田晋哉, 荒川伸一, 村田正幸, “高信頼WDMネットワークにおける論理トポロジー再構成アルゴリズムの提案,” 電子情報通信学会技術研究報告 (PS2002-9), pp. 49-54, April 2002.

(5) 荒川伸一, 石田晋哉, 村田正幸, “Management of logical topologies for dynamically changing traffic in reliable IP over WDM networks,” 電子情報通信学会技術研究報告 (DC2002-2), pp. 7-14, April 2002.

(6) Shin’ichi Arakawa, “On the design of effective and reliable IP over WDM networks,” Ph.D thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

4.7.5 超高速光パス設定に関する研究 (大阪大学大学院工学研究科北山研究室との共同研究)

WDM技術を適用したデータ通信方式として、データ発生時に高速に波長を割り当て、データ転送を行う方式が考えられる。この方式は、データ発生時に送受信間に光パスを設定するため、効率的なデータ転送が可能となる。ただし、パス設定が完了してデータ転送が開始するまでの時間によって性能が大きく変わるため、パス設定時間の高速化が必要である。本研究では、波長割当時のオーバーヘッドを極限まで減らすことを目的として、光符号処理を利用したデータ転送方式を提案している。計算機シミュレーションの結果、光符号処理によって高速にバースト転送が可能となると同時に、ブロック率も減少することがわかった。

[関連発表論文]
(1) Ken-ichi Kitayama, Shin’ichi Arakawa, Ikutaro Ogushi and Masayuki Murata, “Ultrafast optical-code based path setup for optical burst switching,” in Proceedings of IEEE LEOS Summer Topicals, July 2002.

(2) Ken-ichi Kitayama, Shin’ichi Arakawa and Masayuki Murata, “Ultrafast optical-domain path setup for optical burst switching using optical-code based header processing,” in Proceedings of 28th European Conference on Communication 2002 (ECOC2002) Technical Digest, September 2002.

(3) Shin’ichi Arakawa, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “One-way reservation scheme using optical code processing for fast data transfer in WDM networks,” in Proceedings of The 7th IFIP Working Conference on Optical Network Design and Modeling (ONDM 2003), (Budapest), pp. 1073-1088, February 2003.

(4) 荒川伸一, 大串幾太郎, 村田正幸, 北山研一, “GMPLSネットワークにおける高速パス設定のための光符号を用いたアーキテクチャの提案,” 電子情報通信学会技術研究報告 (PNI2002-6), pp.26-32, April 2002.

(5) 荒川伸一, 村田正幸, 北山研一, “光符号処理に基づく高速バースト転送手法の検討,” 電子情報通信学会技術研究報告 (PNI2002-19), pp. 43-48, October 2002.

4.7.6  分散型光パス設定方式における経路選択方式に関する研究

WDM技術の利用形態として、データ発生時にオンデマンドで送受信ノード間に波長のチャネル(光パス)を設定し、光パス設定後にデータの転送を行う
方式が考えられている。光パスを設定に関する今までの研究では、アルゴリズムを適用する時点ではネットワーク内の波長の利用状況が正確に把握できるという前提で経路選択アルゴリズムを適用していた。実際には、経路選択アルゴリズムで用いる波長の利用状況に関する情報は、少なくともリンクの伝搬遅延時間だけ遅れて各ノードに到着し、その結果、波長の利用状況の正確さが失われる可能性がある。本研究では、分散環境における動的光パス設定方式を対象とし、リンクの伝搬遅延時間が経路選択アルゴリズムにおよぼす影響を明らかにしている。シミュレーションによる評価の結果、光パスの平均保持時間に対してリンクの伝搬遅延時間が大きい場合には、最小負荷経路選択手法では性能が低下することがわかった。到着率が低い場合には、複数の経路候補から経路を選択する方式による性能向上はほとんど見られず、伝搬遅延時間が最小となる経路を固定で与える方式がわずかに良い性能を示すことがわかった。

[関連発表論文]
(1) 徳隆宏, “光パスネットワークにおける分散型経路制御方式の評価,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2003.

4.7.7 フォトニックグリッド環境における分散計算のためのメモリアクセス手法に関する研究

WDM技術を基盤としてインターネットの高速化を図る、いわゆるIP over WDMネットワークの研究開発が、現在さかんに進められている。また、それを一歩進めてWDM技術以外のさまざまなフォトニック技術を下位レイヤの通信技術としたGMPLSと呼ばれるインターネットのルーティング技術の標準化もIETFで進められている。さらに、フォトニックネットワークの真のIP化を狙って、フォトニック技術に基づいたフォトニックパケットスイッチに関する研究も始められつつある。しかしながら、これらの諸技術は現在のインターネット技術を是としている。すなわち、情報を扱う細粒度としてIPパケットを扱い、ネットワーク上でそれをいかに高速に運ぶかを研究開発の目標としている。そのため、パケット交換技術に基づいたアーキテクチャをとる限り、個々のコネクションに対する高品質通信の実現は非常に難しい。
SANやグリッド計算など新しい応用技術では、高速かつ、高信頼な通信パイプをエンドユーザに提供する必要があり、そのためには、エンドユーザ間に大容量波長パスを設定し、ユーザに提供することが考えられる。すなわち、既設のファイバを利用し、あるいは必要に応じて、ファイバを新たに敷設し、ファイバおよびファイバ内に多重化された波長を最小粒度として情報の交換を行うフォトニックネットワークを構築することによって、超高速かつ高品質な通信パイプをエンドユーザに提供することが可能である。そこで、ネットワークノードや計算機群を光ファイバで接続したフォトニックグリッド上に仮想チャネルをメッシュ状に張ることにより、高速チャネル上での分散計算が可能になる。さらには、フォトニックグリッド上に仮想リングを構成し、リング上にデータを載せることによって、波長を仮想的な共有メモリとすることも可能である。その結果、広域分散システムにおける共有メモリと通信チャネルの区別の必要がなくなり、コンピュータ間の高速なデータ交換が可能になると考えられる。
 本研究では、フォトニックグリッド上に仮想リングを構成した際の共有メモリアクセス方式を提案した。共有メモリとして光リングを構成する場合、従来の共有メモリシステム同様に、共有メモリに対する競合とキャッシュの整合性の問題が生じる。また、長距離ファイバ上に展開する仮想光リングへはアクセスのタイミングや頻度に制約がある。そのため、そのことを十分に考慮したアクセス方式を考え、シミュレーションを用いてその性能を評価した。その結果、広域に分散した計算機群で仮想光リングを用いてデータの共有をはかる場合、メモリアクセスの遅延の影響が大きいことから、制御メッセージの交換の少ない方式が非常に有効であることがわかった。

[関連発表論文]
(1) 中本博久, “フォトニックグリッド環境における分散計算のためのメモリアクセス手法の提案,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2003.

4.8 有線・無線統合化ネットワークアーキテクチャに関する研究

近年の無線技術の進展に伴って、無線ネットワークをラストホップとして、無線/有線ネットワークをいかにシームレスに統合するかが重要な課題になっている。また、モバイル端末からの情報発信や、有線側からモバイル端末へのアクセスが可能な、モバイル環境下におけるP2P (Peer-to-Peer)ネットワークへの関心も高まっている。本研究テーマでは、無線通信を含んださまざまなネットワークを実現するための設計論に主眼においた研究を進めている。まず、インターネットの発展に伴って、無線ネットワークにおけるデータ通信への要求が増していることに着目し、無線環境におけるTCPの性能向上に関する研究を行なっている。また、モバイル環境におけるP2P (Peer-to-Peer) ネットワークを実現するための基本技術として、無線端末が自律分散的にネットワークを構成するアドホックネットワークについても、経路制御やTCPの性能向上手法などの観点から研究を進めている。また、非常に小型で省電力の無線端末と各種のセンサを組み合わせた無線センサネットワークが実用化されてきており、さまざまな応用が考えられている。われわれはセンサネットワーク製品であるクロスボー社のMOTE/MICAを用いて、人間の行動やその環境を把握するためのシステムを構築した。

4.8.1 無線環境下におけるTCPの性能向上に関する研究

本研究では、無線セルラーネットワークにおいて、データリンク層プロトコルと無線回線上での通信誤りの影響を考慮したTCPの性能評価モデルを提案する。このモデルにより評価を行なった結果,データリンク層でのスループットの向上が、必ずしもTCP層のスループットを向上にはつながらないことを明らかにした。そして、データリンク層/TCP層のそれぞれに対する影響を考慮してパラメータを定めることで、TCPスループットを向上できることを示した。また、無線回線上の通信誤りに対してFECとARQを適用した結果、FECの方がARQよりもTCPスループットの劣化に効果があることを明らかにした。また,無線回線の品質に応じて,適切な誤り訂正能力を持つFECを適用することで、さまざまなノイズレベルにおいてTCPスループットが改善されることを示した。
 また、無線端末のTCP層の変更のみでスループットを向上させる方式として、伝送誤りによるパケット損失率がある閾値より大きくなった場合に、ACKの個数を増加させることでACKの損失に対する耐性を高め、TCPスループットを向上させる手法を提案した。本提案方式による効果を解析的手法によって評価し、TCPセグメントそれぞれに対して、ACKパケットを2パケット送信することでTCPスループットが向上することを示した。
さらに、無線回線でのパケット損失を抑えるためにFECが用いられるが、固定的にFECを適用した場合には、刻々と変化する無線回線の状態を反映させることができず、効率が良いとはいえない。そこで本研究では、無線回線における誤り発生を送信ノードに伝達する方式であるELN (Explicit Loss Notification)により、送信側でFECの誤り訂正符号を動的に切りかえる方式を提案した。シミュレーションを用いて、パケット損失の発生状態に応じて、最適なFECの誤り符号を切りかえることによって、性能が向上できることを示した。

[関連発表論文]
(1) 三好昌弘, 菅野正嗣, 村田正幸, “ワイヤレスセルラーネットワークにおける下位層プロトコルの影響を考慮したTCPスループットの性能評価,” 電子情報通信学会論文誌B, vol. J85-B, pp. 732-743, May 2002.

(2) Masahiro Miyoshi, Masashi Sugano and Masayuki Murata, “An acknowledgement control approach for performance improvement of TCP in wireless cellular network environment,” submitted to IEICE Transactions on Communications, June 2002.

(3) 三好昌弘, 菅野正嗣, 村田正幸, “アダプティブFECとELNの組み合わせによるワイヤレスセルラーネットワーク上のTCPの性能向上に関する検討,” 電子情報通信学会技術研究報告 (RCS2002-24), April 2002.

(4) Masahiro Miyoshi, Masashi Sugano and Masayuki Murata, “Improving TCP performance on wireless cellular networks by adaptive FEC combined with explicit loss notification,” IEICE Transactions on Communications, vol. E85-B, pp. 2208-2213, October 2002.

(5) Masahiro Miyoshi, Masashi Sugano and Masayuki Murata, “Performance improvement of TCP on wireless cellular networks by adaptive FEC combined with explicit loss notification,” in Proceedings of IEEE Vehicular Technology Conference 2002 Spring (VTC2002 Spring), May 2002.

(6) Masahiro Miyoshi, “Studies on data transport protocols for wireless cellular networks,” Ph.D thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, June 2002.

4.8.2 アドホックネットワークの性能向上に関する研究(富士電機社との共同研究)

本研究では、まず、アドホックネットワークの製品であるフレキシブル無線ネットワーク(FRN) に着目し、その評価と性能向上を行なった。FRNには、各ホップでパケットの受領確認を行ない、送信に失敗した場合はそのパケットを再送する機構が実装されている。この機構はパケットの到着率を高める効果をもっているが、同時にパケットの複製をまねくことでネットワーク性能を劣化させてしまうことが明らかとなった。そこで、このようなパケット複製の過程を明らかにし、これを考慮した性能向上手法を提案した。提案方式を実装したシミュレーションを通して、提案手法が複製パケットの発生を抑え性能を改善できることを示した。
 また、有線ネットワークとの統合によって、アドホックネットワーク上でのTCPの重要性が増している。本研究で対象としたFRNの上位層としてTCPを適用した場合の特性は明らかではなく、性能改善の余地があると考えられる。そこで、アドホックネットワークにおけるTCPの性能向上手法として提案されているELFN (Explicit Link Failure Notification) 手法をFRNに適用することによって、性能向上を目指した。その際、FRNが保持している経路情報を利用することにより、ELFNをさらに改良することが可能となる。提案手法を実装したシミュレーションにより、FRNにおけるTCPのスループットが向上できることを示した。

[関連発表論文]
(1) Takayuki Yamamoto, Masashi Sugano, Masayuki Murata, Takaaki Hatauchi and Yohei Hosooka, “Performance improvement of an ad hoc network system for wireless data service,” submitted to IEICE Transactions on Communications, January 2003.

(2) 幸太一, 山本貴之, 菅野正嗣, 村田正幸, 宮原秀夫, 畠内孝明, “アドホックネットワークにおける経路情報を利用したTCP性能向上手法の提案,” 電子情報通信学会技術研究報告 (CQ2002-7), pp. 37-42, April 2002.

(3) 幸太一, 山本貴之, 菅野正嗣, 村田正幸, 宮原秀夫, 畠内孝明, “アドホックネットワークにおけるTCP性能向上に関する一考察,” 電子情報通信学会論文誌, vol. J85-B, pp. 2045-2053, December 2002.

(4) Masashi Sugano and Masayuki Murata, “Performance improvement of TCP on wireless ad hoc network,” to be presented at IEEE Vehicular Technology Conference 2003 Spring (VTC2003 Spring), April 2003.

4.8.3 アドホックネットワークにおける低遅延ルーティングプロトコルに関する研究

従来のアドホックネットワーク上のTCPに関する研究のほとんどは、TCPコネクションは永続的なものであると仮定し、定常状態でのスループットを測定するものであった。しかしながら、Webトラヒックやセンサネットワークの特性を考えると、コネクション時間の短いTCPトラヒックが数多く発生する。このような環境では、ルートの探索やコネクションの確立に必要な時間が占める割合が大きくなり性能に大きな影響を及ぼす。そこで本研究では、生存時間の短いTCPコネクションが多く用いられるアドホックネットワーク環境における性能向上を実現するルーティングプロトコルであるLHR (Low-latency Hybrid Routing protocol) を提案し、その評価を行なった。シミュレーションを通して、LHRは、これまで提案されているいくつかの代表的なルーティングプロトコルよりも短時間でTCPコネクションを確立できる能力があることが確かめられた。また、その結果として、一定時間内に処理できるコネクション数を増やすことができることを示した。

[関連発表論文]
(1) 山本貴之, 菅野正嗣, 村田正幸, “アドホックネットワークにおけるTCPコネクション確立時間を短縮するための低遅延ルーティング手法の提案,” 電子情報通信学会技術研究報告 (RCS2002-6, CQ2002-6), April 2002.

(2) Takayuki Yamamoto, Masashi Sugano and Masayuki Murata, “Low-latency routing for short-lived TCP connections in wireless ad hoc networks,” in Proceedings of CQR 2002, May 2002.

(3) Takayuki Yamamoto, Masashi Sugano and Masayuki Murata, “Routing in ad hoc networks for processing many short-lived TCP connections,” submitted to ANWIRE 1st International Workshop on “Wireless, Mobile & Always Best Connected”, (Glasgow), February 2003.

4.8.4 CDMAセルラーネットワークにおけるソフトハンドオフの影響に関する研究

CDMA方式では、端末が複数の基地局と同時に接続するソフトハンドオフが可能であり、ハードハンドオフのような通信の瞬断を避けるなどの利点がある。その一方で、ソフトハンドオフによる干渉電力の増加や、有線部分の負荷の増大の影響を考慮する必要がある。本研究では、CDMA上でのデータ通信を対象とし、ソフトハンドオフがTCPのスループットに与える影響を明らかにした。シミュレーションにより、ネットワーク負荷などのパラメータに応じて、最適なソフトハンドオフマージンを調べた。また、端末がランダムに移動しハンドオフを繰り返す場合には、ソフトハンドオフによってコネクションの切断を避ける効果があることを示した。

[関連発表論文]
(1) Li Wei Hou, “An integrated evaluation of qualities of wired and wireless channels with consideration of soft handoff in CDMA cellular networks,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

4.8.5 センサネットワークによる人間の行動・環境把握システムの構築に関する研究

非常に小型で省電力の無線ユニットとセンサを結びつけた、アドホックセンサネットワークが開発されている。これらは有線のインフラストラクチャを必要とせず、容易にネットワークを構成できるので、さまざまな利用が考えられている。本研究では、U. C. BerkeleyのSMART DUSTプロジェクトの成果であるMOTE/MICAを利用した人間の行動・環境把握システムを構築する。本システムは、アドホックネットワークの経路情報を用いて、端末を所持した人が建物内のどこにいるかを追跡することができる。また、MICAの温度センサを用いれば、その人がいる環境の気温を知ることができる。さらに、メールシステムと統合することによって、位置や環境の情報からのフィードバックを行なうことも可能とした。

[関連発表論文]
(1) Kovempairoj Decha, “アドホック無線センサネットワークによる人間の行動・環境把握システムの構築,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2003.

5.社会貢献に関する業績

5.1 教育面における社会貢献

(1)鳥取環境大学「ネットワークI」「ネットワークⅡ」非常勤講師
(2)日本技術者教育認定機構 (JABEE) 審査への審査委員としての参加
  (以上、村田)

5.2 研究面における社会貢献

5.2.1 学会活動

5.2.2 学会等講演

5.2.3 特許
(1) 原井洋明, 村田正幸「パケットスイッチにおける優先パケット転送を実現するバッファ管理方式、および、光パケットスイッチへの実装方式」(出願中)

(2) 原井洋明、福島行信、荒川伸一、村田正幸、宮原秀夫、「多期間にわたる光ネットワーク構成方式」 (出願中)

(3) 上岡功司、野田文雄、若宮直紀、村田正幸、「ストリーミングサービス方法」(出願中)

5.2.4 標準化活動

(1) Shingo Ata, Hiroshi Kitamura and Masayuki Murata, “A protocol for anycast address resolving,” Internet Draft draft-ata-ipv6-anycast-resolving-00.txt, June 2002.

(2) Satoshi Doi, Shingo Ata, Hiroshi Kitamura, and Masayuki Murata, “IPv6 Anycast Functionality/Terminology Definition,” Internet Draft, draft-doi-ipv6-anycast-func-term-00.txt, February 2003.

5.2.5 企業研修講師

(1) NECユニバーシティ第45期基幹技術研修講師「インターネットにおけるトラヒックエンジニアリングの最新研究動向と今後の課題」, March 14, 2003.

5.2.6 プロジェクト研究への参画


(1) 通信・放送機構 委託研究 「光バーストスイッチングを用いたフォトニックネットワーク技術の研究開発」(平成13~17年度)分担」

(2) 通信放送機構 創造的情報通信技術研究開発推進制度 「高速・高品質・高機能インターネットのためのフォトニックルータの研究開発」(平成13~17年度)分担

(3) 文部科学省 科学技術振興調整費 先導的研究等の推進 「モバイル環境向P2P型情報共有基盤の確立」(平成13~15年度)分担

(4) 文部科学省 科学技術振興調整費 新興分野人材育成 「セキュア・ネットワーク構築のための人材育成」(平成13~15年度)分担

(5) 文部科学省 科学研究費補助金 特定領域研究(2) 「Grid技術を適応した新しい研究手法とデータ管理技術の研究」(平成13~15年度)分担

(6) 文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(B)(2) 「高速・高品質データ転送機構を具備した高性能エンドシステムアーキテクチャの研究」(平成13~14年度)代表

(7) 総務省 戦略的情報通信研究開発推進制度 特定領域重点型研究開発 「ユビキタスインターネットのための高位レイヤスイッチング技術の研究開発」(平成14~16年度)代表

(8) 文部科学省 科学技術振興調整費 産学官共同研究の効果的な推進 「サイバーソサイエティを実現する仮想網技術」(平成 14 ~16年度)分担

(9) 文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(A)(1) 「フォトニックインターネットを実現する柔構造ネットワークインフラストラクチャの構築」(平成14~16年度)分担

(10) 文部科学省 21世紀COEプログラム 「ネットワーク共生環境を築く情報技術の創出」(平成 14 ~18年度)分担
(以上、村田)

(1) 通信・放送機構 創造的情報通信技術研究開発推進制度 「インターネットにおける多ユーザ間の公平性に関する研究」(平成13~15年度) 代表

(2) 文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(B)(2) 「高速・高品質データ転送機構を具備した高性能エンドシステムアーキテクチャの研究」(平成13~14年度)分担

(3) 総務省 戦略的情報通信研究開発推進制度 特定領域重点型研究開発 「ユビキタスインターネットのための高位レイヤスイッチング技術の研究開発」(平成14~16年度)分担
(以上、長谷川)

6.2002年度のトピック

(1) 電子情報通信学会コミュニケーションソサイエティが世界に向けて新たに発刊した英語誌 IEICE Global News Letter, Vol.1, No.1に国内大学の研究室紹介の第1号として村田研究室が紹
介された。

(2) IPv6におけるエニーキャストルーティングに関する研究が2003年2月6日付日経産業新聞に紹介された。

(3) APT (Asia-Pacific Telecomunity)の支援によって、パキスタン・イスラム共和国の研究機関Post-Graduate Institute of Telecommunication and Informaticsとの研究交流プログラムが開始された。本年度は、パキスタンから2名の教員が研究室に来訪、長谷川助教授がパキスタンを訪れ、研究交流が行われた。

2002年度研究発表論文一覧

著書
(1) Shin’ichi Arakawa and Masayuki Murata, “Reliability issues in IP over photonic networks,” Quality and Reliability of Large Scale Telecom Systems ? Case Studies: Olympic Games, John Wiley & Son, December 2002.

学術論文誌
(2) Shin’ichi Arakawa and Masayuki Murata, “Lightpath management of logical topology with incremental traffic changes for reliable IP over WDM networks,” Optical Network Magazine, vol. 3, pp. 68-76, May 2002.

(3) Doo Seop Eom, Heyung Sub Lee, Masashi Sugano, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Improving TCP handoff performance in mobile IP based networks,” Computer Communications, vol. 25, pp. 635-646, May 2002.

(4) 三好昌弘, 菅野正嗣, 村田正幸, “ワイヤレスセルラーネットワークにおける下位層プロトコルの影響を考慮したTCPスループットの性能評価,” 電子情報通信学会論文誌B, vol. J85-B, pp. 732-743, May 2002.

(5) Masahiro Miyoshi, Masashi Sugano and Masayuki Murata, “Improving TCP performance on wireless cellular networks by adaptive FEC combined with explicit loss notification,” IEICE Transactions on Communications, vol. E85-B, pp. 2208-2213, October 2002.

(6) 幸太一, 山本貴之, 菅野正嗣, 村田正幸, 宮原秀夫, 畠内孝明, “アドホックネットワークにおけるTCP性能向上に関する一考察,” 電子情報通信学会論文誌, vol. J85-B, pp. 2045-2053, December 2002.

(7) Masahiro Sasabe, Yoshiaki Taniguchi, Naoki Wakamiya, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Proxy caching mechanisms with quality adjustment for video streaming services,” to appear in IEICE Transactions on Communications, Special Issue on Content Delivery Networks, January 2003.

(8) Shin’ichi Arakawa, Junichi Katou and Masayuki Murata, “Design method of logical topologies with quality of reliability in WDM networks,” to appear in Photonic Network Communications, vol. 3, pp. 68-76, May 2003.

(9) Ryo Kawabe, Shingo Ata and Masayuki Murata, “Performance prediction method for address lookup algorithms based on statistical traffic analysis,” submitted to Journal of High Speed Networks, March 2002.

(10) Masahiro Miyoshi, Masashi Sugano and Masayuki Murata, “An acknowledgement control approach for performance improvement of TCP in wireless cellular network environment,” submitted to IEICE Transactions on Communications, June 2002.

(11) Yukinobu Fukushima, Shin’ichi Arakawa, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Design of logical topology for minimizing the number of fiber amplifiers,” submitted to IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology, August 2002.

(12) Go Hasegawa, Tatsuhiko Terai, Takuya Okamoto and Masayuki Murata, “Scalable resource management for high-performance Web servers,” submitted to International Journal of Communication Systems, November 2002.

(13) Kazumine Matoba, Shingo Ata and Masayuki Murata, “Capacity dimensioning based on traffic measurement in the internet,” submitted to Telecommunication Systems journal, December 2002.

(14) Kouhei Fujimoto, Shingo Ata and Masayuki Murata, “Adaptive playout buffer algorithm for enhancing perceived quality of streaming applications,” submitted to Telecommunication Systems journal, December 2002.

(15) Koichi Tokuda, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Analysis and improvement of fairness among TCP connections transmitting differently sized data,” submitted to Journal of High Speed Networks, January 2003.

(16) Takayuki Yamamoto, Masashi Sugano, Masayuki Murata, Takaaki Hatauchi and Yohei Hosooka, “Performance improvement of an ad hoc network system for wireless data service,” submitted to IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences, January 2003.

(17) Takashi Yamaguchi, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Scheduling algorithm with consideration to void space reduction in photonic packet switch,” submitted to IEICE Transactions on Communications, vol. E86-B, August 2003.

(18) Shin’ichi Arakawa, Junichi Katou and Masayuki Murata, “A design method for logical topologies with stable packet routing in IP over WDM networks,” submitted to IEICE Transactions on Communications, November 2003.

(19) Hiroaki Harai and Masayuki Murata, “Optical Fiber-Delay-Line Buffer Management in Output-Buffered Photonic Packet Switch to Support Service Differentiation,” submitted to IEEE Journals on Selected Areas in Communications, February 2003.

国際会議会議録
(20) Ryo Kawabe, Shingo Ata, Masayuki Murata, Masanori Uga, Kohei Shiomoto and Naoaki Yamanaka, “On performance prediction of address lookup algorithms of IP routers through simulation and analysis techniques,” in Proceedings of International Conference on Communication (ICC) 2002, (New York), vol. 4, pp. 2146-2151, April 2002.

(21) Hideyuki Shimonishi, Ichinoshin Maki, Tsutomu Murase and Masayuki Murata, “Dynamic fair bandwidth allocation for diffserv classes,” in Proceedings of IEEE International Conference on Communications 2002 (ICC 2002), April 2002.

(22) Koichi Tokuda, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Analysis and improvement of the fairness between long-lived and short-lived TCP connections,” in Proceedings of IEEE Seventh International Workshop on Protocols For High-Speed Networks (PfHSN 2002), (Berlin), pp. 33-40, April 2002.

(23) Hiroyuki Ohsaki, Mitsushige Morita and Masayuki Murata, “Measurement-based modeling of Internet round-trip time dynamics using system identification,” in Proceedings of the Second IFIP-TC6 Networking Conference (NETORKING 2002), May 2002.

(24) Takuya Okamoto, Tatsuhiko Terai, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “A resource/connection management scheme for HTTP proxy servers,” in Proceedings of IFIP/TC6 Networking 2002, pp. 252-263, May 2002.

(25) Ryo Kawabe, Shingo Ata, Masayuki Murata, Masanori Uga, Kohei Shiomoto and Naoaki Yamanaka, “Performance prediction method for IP lookup algorithms,” in Proceedings of 2002 Workshop on High Performance Switching and Routing (HPSR), (Kobe), pp. 111-115, May 2002.

(26) Koichi Tokuda, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “TCP throughput analysis with variable packet loss probability for improving fairness among long/short-lived TCP connections,” in Proceedings of IEEE CQR 2002, (Okinawa), pp. 145-149, May 2002.

(27) Koichi Tokuda, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Analysis and improvement of the fairness between long-lived and short-lived TCP connections,” in Proceedings of Seventh International Workshop on Protocols for High Speed Networks (PfHSN 2002), May 2002.

(28) Masahiro Miyoshi, Masashi Sugano and Masayuki Murata, “Performance improvement of TCP on wireless cellular networks by adaptive FEC combined with explicit loss notification,” in Proceedings of IEEE Vehicular Technology Conference 2002 Spring (VTC2002 Spring), May 2002.

(29) Takayuki Yamamoto, Masashi Sugano and Masayuki Murata, “Low-latency routing for short-lived TCP connections in wireless ad hoc networks,” in Proceedings of CQR 2002, May 2002.

(30) Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Ultrafast photonic label switch for asynchronous packets of variable length,” in Proceedings of IEEE INFOCOM 2002, June 2002.

(31) Go Hasegawa, Kouichi Tokuda and Masayuki Murata, “Analysis and improvement of fairness among many TCP connections sharing Tail-Drop and RED routers,” in Proceedings of INET 2002, June 2002.

(32) Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Research and educational activities using IXP1200 at Osaka University,” in Proceedings of IXA University Program Workshop (Invited), June 2002.

(33) Tomoya Eguchi, Hiroyuki Ohsaki and Masayuki Murata, “Multivariate analysis for performance evaluation of active queue management mechanisms in the Internet,” in Proceedings of SPIE’s International Symposium on the Convergence of Information Technologies and Communications (ITCom 2002), pp. 144-153, July 2002.

(34) Mitsushige Morita, Hiroyuki Ohsaki, and Masayuki Murata, “Designing a delay-based adaptive congestion control mechanism using control theory and system identification for TCP/IP networks,” in Proceedings of SPIE's International Symposium on the Convergence of Information Technologies and Communications (ITCom 2002), July 2002.

(35) Ken-ichi Kitayama, Shin’ichi Arakawa and Masayuki Murata, “Ultrafast optical-code based path setup for optical burst switching,” in Proceedings of IEEE LEOS Summer Topicals, July 2002.

(36) Masahiro Sasabe, Yoshiaki Taniguchi, Naoki Wakamiya, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Implementation and evaluation of proxy caching mechanisms with video quality adjustment,” in Proceedings of The 2002 International Technical Conference On Circuits/Systems, Computers and Communications (ITC-CSCC 2002), (Phuket), vol. 1, pp. 121-124, July 2002.

(37) Takashi Yamaguchi, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Packet scheduling for WDM fiber delay line buffers in photonic packet switches,” in Proceedings of SPIE Opticomm2002, pp. 262-273, July 2002.

(38) Hiroaki Harai and Masayuki Murata, “Performance analysis of prioritized buffer management in photonic packet switches for diffserv assured forwarding,” in Proceedings of Opticomm 2002: Optical Networking and Communications, 29 July - 1 August 2002.

(39) Naoki Wakamiya, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Video streaming systems with cooperative caching mechanisms,” in Proceedings of SPIE International Symposium ITCom 2002, (Boston), pp. 305-314, July-August 2002.

(40) Naoki Wakamiya, Taketo Yamashita, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Integrated resource allocation scheme for real-time video multicast,” in Proceedings of IEEE GLOBECOM 2002, (Taipei), August 2002.

(41) Motohisa Kisimoto, Hiroyuki Ohsaki and Masayuki Murata, “On transient behavior analysis of random early detection gateway using a control theoretic approach,” in Proceedings of the IEEE Control Systems Society Conference on Control Applications (CCA/CACSD 2002), pp. 1144-1149, September 2002.

(42) Ken-ichi Kitayama, Shin’ichi Arakawa and Masayuki Murata, “Ultrafast optical-domain path setup for optical burst switching using optical-code based header processing,” in Proceedings of 28th European Conference on Communication 2002 (ECOC2002) Technical Digest, September 2002.

(43) Ken-ichi Baba, Ryuusuke Takemori, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “A packet scheduling algorithm for the 2x2 photonic packet switch with FDL buffers,” in Proceedings of 28th European Conference on Optical Communication 2002 (ECOC2002), vol. 3, September 2002.

(44) Yukinobu Fukushima, Hiroaki Harai, Shin’ichi Arakawa, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “A minimum interference routing algorithm for multi-period planning of WDM lightpath networks without traffic prediction,” in Proceedings of 28th European Conference on Optical Communication 2002 (ECOC2002) Technical Digest, September 2002.

(45) Tatsuya Yamada, Naoki Wakamiya, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Implementation and evaluation of video-quality adjustment for heterogeneous video multicast,” in Proceedings of The 8th Asia-Pacific Conference on Communications (APCC 2002), (Bandung), pp. 454-457, September 2002.

(46) Shinya Ishida, Shin’ichi Arakawa and Masayuki Murata, “Proposal of procedures to reconfigure logical topologies in reliable WDM-based mesh networks,” in Proceedings of SPIE APOC2002 Optical Networking II, (Shanghai), vol. 4910, pp. 115-125, October 2002.

(47) Naoki Wakamiya, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “On proxy-caching mechanisms for cooperative video streaming in heterogeneous environment,” in Proceedings of IFIP/IEEE International Conference on Management of Multimedia Networks and Services 2002, (Santa Barbara), vol. LNC2496, pp. 127-139, October 2002.

(48) Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Postgradutate coursework program using network processors at Osaka University,” in Proceedings of The 1st AEARU Network Education Workshop (Invited), November 2002.

(49) Kouhei Fujimoto, Shingo Ata and Masayuki Murata, “Adaptive playout buffer algorithm for enhancing perceived quality of streaming applications,” in Proceedings of IEEE GLOBECOM 2002, (Taipei), November 2002.

(50) Takuya Okamoto, Kazuhiro Azuma, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Design, implementation and evaluation of resource management system for Internet servers,” submitted to ACM SIGCOMM 2003, January 2003.

(51) Tomoya Eguchi, Hiroyuki Ohsaki and Masayuki Murata, “On control parameters tuning for active queue management mechanisms using multivariate analysis,” in Proceedings of International Symposium on Applications and the Internet (SAINT-2003), pp. 120-127, January 2003.

(52) Hiroyuki Hisamatu, Hiroyuki Ohsaki and Masayuki Murata, “Steady state and transient behavior analyses of TCP connections considering interactions between TCP connections and network,” in Proceedings of International Symposium on Applications and the Internet (SAINT-2003), pp. 309-316, January 2003.

(53) Shin’ichi Arakawa, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “One-way reservation scheme using optical code processing for fast data transfer in WDM networks,” in Proceedings of The 7th IFIP Working Conference on Optical Network Design and Modeling (ONDM 2003), (Budapest), pp. 1073-1088, February 2003.

(54) Shinya Ishida, Shin’ichi Arakawa and Masayuki Murata, “Dynamic reconfiguration of logical topologies in WDM-based mesh networks,” in Proceedings of The 7th IFIP Working Conference on Optical Network Design and Modeling (ONDM 2003), (Budapest), pp. 93-112, February 2003.

(55) Hiroaki Harai and Masayuki Murata, “Photonic Buffer Architecture to Support Prioritized Buffer Management for Asynchronously Arriving Variable-Length Packets,” in Proceedings of The 7th IFIP Working Conference on Optical Network Design and Modeling (ONDM 2003), (Budapest), pp. 93-112, February 2003.

(56) Naoki Wakamiya, Masaki Miyabayashi, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “MPEG-4 video transfer with TCP-friendly rate control,” in Proceedings of The 2nd International Workshop on QoS in Multiservice IP Networks (QoS-IP 2003), (Milan), February 2003.

(57) Masayuki Murata, “Establishment of Networked Symbiosis Environment (NSE) Architecture,” First Symposium on New Information Technologies for Building a Networked Symbiosis Environment, March 2003.

(58) Go Hasegawa and Masayuki Murata, “NWP Design Lab. for Experiencing Network Processors,” First Symposium on New Information Technologies for Building a Networked Symbiosis Environment, March 2003.

(59) Koichi Tokuda, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Performance analysis of HighSpeed TCP and its improvement for high throughput and fairness against TCP Reno connections,” to be presented at IEEE High Speed Network Workshop 2003 (HSN ’03), (San Francisco), March 2003.

(60) Masashi Sugano and Masayuki Murata, “Performance improvement of TCP on wireless ad hoc network,” to be presented at IEEE Vehicular Technology Conference 2003 Spring (VTC2003 Spring), April 2003.

(61) Cao Le Thanh Man, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Inline network measurement mechanism for service overlay networks,” to be presented at IEEE Bandwidth Management Workshop X, (Ontario), January 2003.

(62) Ichinoshin Maki, Hideyuki Shimonishi, Tutomu Murase, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Hierarchically aggregated fair queuing (HAFQ) for per-flow fair bandwidth allocation in high speed networks,” to be presented at International Conference of Communications (ICC) 2003, May 2003.

(63) Satoshi Doi, Shingo Ata, Hiroshi Kitamura, Masayuki Murata and Hideo Miyahara, “Protocol Design for Anycast Communication in IPv6 Network,” submitted to IEEE PACRIM 2003, March 2003.

(64) Yoshihiro Gotoh, Shingo Ata and Masayuki Murata, “Replication methods for enhancing search performance in peer-to-peer services on power-law logical networks,” submitted to ITCom 2003, February 2003.

学会誌解説
(65) 村田正幸, “インターネットにおける通信品質とその制御,” 日本オペレーションズ・リサーチ誌, Vol. 48, No.3, March 2003.

口頭発表(国内研究会など)
(66) 荒川伸一, 大串幾太郎, 村田正幸, 北山研一, “GMPLSネットワークにおける高速パス設定のための光符号を用いたアーキテクチャの提案,” 電子情報通信学会技術研究報告 (PNI2002-6), pp.26-32, April 2002.

(67) 荒川伸一, 石田晋哉, 村田正幸, “Management of logical topologies for dynamically changing traffic in reliable IP over WDM networks,” 電子情報通信学会技術研究報告 (DC2002-2), pp. 7-14, April 2002.

(68) 石田晋哉, 荒川伸一, 村田正幸, “高信頼WDMネットワークにおける論理トポロジー再構成アルゴリズムの提案,” 電子情報通信学会技術研究報告 (PS2002-9), pp. 49-54, April 2002.

(69) 江口智也, 大崎博之, 村田正幸, “多変量解析を用いたアクティブキュー管理機構の性能評価に関する検討,” 電子情報通信学会技術研究報告 (NS2002-25), pp. 37-40, April 2002.

(70) 三好昌弘, 菅野正嗣, 村田正幸, “アダプティブFECとELNの組み合わせによるワイヤレスセルラーネットワーク上のTCPの性能向上に関する検討,” 電子情報通信学会技術研究報告 (RCS2002-24), April 2002.

(71) 山本貴之, 菅野正嗣, 村田正幸, “アドホックネットワークにおけるTCPコネクション確立時間を短縮するための低遅延ルーティング手法の提案,” 電子情報通信学会技術研究報告 (RCS2002-6, CQ2002-6), April 2002.
(72) 幸太一, 山本貴之, 菅野正嗣, 村田正幸, 宮原秀夫, 畠内孝明, “アドホックネットワークにおける経路情報を利用したTCP性能向上手法の提案,” 電子情報通信学会技術研究報告 (CQ2002-7), pp. 37-42, April 2002.

(73) 土居聡, 阿多信吾, 北村浩, 村田正幸, 宮原秀夫, “IPv6ネットワークにおけるエニーキャスト通信実現のためのプロトコル設計と実装,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-1), vol. 102, pp. 1-6, May 2002.

(74) Hector Akamine, Naoki Wakamiya and Hideo Miyahara, “Congestion-Adaptive Video Multicast in an Active Network,” 電子情報通信学会技術研究報告 (NS2002-59), pp. 27-30, June 2002.

(75) 山田達也, 若宮直紀, 村田正幸, 宮原秀夫, “実時間動画像マルチキャストのための動画像品質調整機構の実装と評価,” 電子情報通信学会技術研究報告 (NS2002-60), pp. 31-34, June 2002.

(76) 江口智也, 大崎博之, 村田正幸, “多変量解析を用いたアクティブキュー管理機構の制御パラメータ設定に関する考察,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-52), pp. 61-66, July 2002.

(77) 原井 洋明、村田 正幸, “DiffServを実現するための光パケットスイッチにおけるバッファ管理法の性能解析,” 電子情報通信学会 情報ネットワーク研究会, July 2002.

(78) 岸本統久, 大崎博之, 村田正幸, “ネットワークの変動に対してロバストとなるアクティブキュー管理機構のパケット棄却方式に関する検討, 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-51), pp. 54-60, July 2002.

(79) 谷口義明, 笹部昌弘, 若宮直紀, 村田正幸, 宮原秀夫, “動画像品質調整機能を組み込んだプロキシキャッシングシステムの実装と評価,” 電子情報通信学会技術研究報告 (CQ2002-72), pp. 41-46, July 2002.

(80) 土居聡, 阿多信吾, 北村浩, 村田正幸, 宮原秀夫, “IPv6ネットワークにおけるエニーキャスト通信実現のためのプロトコル設計と実装,” ITRC第11回研究会, July 2002.

(81) 福島行信, 原井洋明, 荒川伸一, 村田正幸, 宮原秀夫, “定期拡張するWDMネットワークにおける不確定な光パス設定要求に対する光パス経路決定アルゴリズム,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-34), pp. 7-12, July 2002.

(82) 山口貴詩, 馬場健一, 村田正幸, 北山研一, “フォトニックパケットスイッチにおけるパケット間空き領域の低減を考慮したスケジューリングアルゴリズム,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-35), pp. 13-18, July 2002.

(83) 福島行信, 原井洋明, 荒川伸一, 村田正幸, 宮原秀夫, “定期拡張するWDMネットワークにおけるファイバ配置問題へ適用可能な光パス経路決定アルゴリズム,” インターネット技術第163委員会 次世代ネットワーク構築のための基盤技術研究分科会ワークショップ (ITRC-NGN 2002), pp. 12-15, August 2002.

(84) Hiroyuki Hisamatsu, Hiroyuki Ohsaki and Masayuki Murata, “Steady state analysis of TCP connections with different propagation delays,” 電子情報通信学会ソサイエティ大会, September 2002.

(85) 荒川伸一, 村田正幸, 北山研一, “光符号処理に基づく高速バースト転送手法の検討,” 電子情報通信学会技術研究報告 (PNI2002-19), pp. 43-48, October 2002.

(86) 岡本卓也, 長谷川剛, 村田正幸, “WebプロキシサーバにおけるTCP受信バッファの動的割り当て手法,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-92), pp. 13-18, October 2002.

(87) 後藤嘉宏, 阿多信吾, 村田正幸, “P2P ネットワークにおけるサービス安定性向上のためのレプリケーション配置手法,” 電子情報通信学会技術研究報告 (NS2002-152), vol. 102, pp. 25-28, October 2002.

(88) 久松潤之, 大崎博之, 村田正幸, “伝播遅延時間の異なる複数のTCPコネクションを考慮したTCPの定常状態解析,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-97), pp. 41-46, October 2002.

(89) 村田正幸, “フォトニックインターネットの展望,” 電子情報通信学会光スイッチング研究会招待講演, December 16, 2002.

(90) 土居聡, 阿多信吾, 北村浩, 村田正幸, 宮原秀夫, “IPv6ネットワークにおけるエニーキャストルーティングプロトコルの設計,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-175), vol. 102, pp. 47-52, January 2003.

(91) Cao Le Thanh Man, 長谷川剛, 村田正幸, “サービスオーバーレイネットワークのためのインラインネットワーク計測に関する一検討,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN03-176), pp. 53-58, January 2003.

(92) 江口智也, 大崎博之, 村田正幸, “複数のルータが協調動作するアクティブキュー管理機構の設計と性能評価,” 電子情報通信学会技術研究報告 (発表予定), March 2003.

(93) 徳田航一, 長谷川剛, 村田正幸, “HighSpeed TCP の性能評価とその性能改善方式の提案,” 電子情報通信学会情報ネットワーク研究会 (発表予定), March 2003.

(94) 山口貴詩, 馬場健一, 村田正幸, 北山研一, “ファイバ遅延線バッファを備えたフォトニックパケットスイッチにおけるパケットスケジューリングアルゴリズム,” 電子情報通信学会技術研究報告, March 2003.

(95) 山田達也, 若宮直紀, 村田正幸, 宮原秀夫, “実時間動画像マルチキャストのためのアクティブ動画像品質調整ノードの実装と評価,” 電子情報通信学会技術研究報告, March 2003.

(96) Cao Le Thanh Man, 長谷川剛, 村田正幸, “アクティブTCPコネクションを用いたインラインネットワーク計測,” 電子情報通信学会総合大会 (発表予定), March 2003.

標準化団体奇書
(97) Shingo Ata, Hiroshi Kitamura and Masayuki Murata, “A protocol for anycast address resolving,” Internet Draft draft-ata-ipv6-anycast-re solving-00.txt, June 2002.

(98) Satoshi Doi, Shingo Ata, Hiroshi Kitamura, and Masayuki Murata, “IPv6 Anycast Functionality/Terminology Definition,” Internet Draft, draft-doi-ipv6-anycast-func-term-00.txt, February 2003.

2002年度特別研究報告・修士論文・博士論文

博士論文
(99) Masahiro Miyoshi, “Studies on data transport protocols for wireless cellular networks,” Ph.D thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, June 2002.

(100) Shin’ichi Arakawa, “On the design of effective and reliable IP over WDM networks,” Ph.D thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

修士論文
(101) Takuya Okamoto, “Design, implementation and evaluation of resource management system for Internet servers,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

(102) Motohisa Kisimoto, “Studies on congestion control mechanisms in the Internet ? AIMD-based window flow control mechanism and active queue management mechanism ?,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

(103) Yoshihiro Gotoh, “Replication methods for enhancing search performance in peer-to-peer services,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

(104) Masahiro Sasabe, “Scalable method for Continuous media streaming on peer-to-peer networks,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

(105) Koichi Tokuda, “On congestion control mechanism of high-speed TCP,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

(106) Hiroyuki Hisamatu, “Analyzing steady state and transient state performance of transmission control protocol in the internet,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

(107) LiWei Hou, “An integrated evaluation of qualities of wired and wireless channels with consideration of soft handoff in CDMA cellular networks,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

(108) Yukinobu Fukushima, “Planning and design methods for robust WDM networks subject to traffic changes,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

(109) Takashi Yamaguchi, “On packet scheduling algorithm for WDM-based photonic packet switch with fiber delay line buffers,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

(110) Tatsuya Yamada, “Design, implementation, and evaluation of active video-quality adjustment method for heterogeneous video multicast,” Master’s thesis, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, February 2003.

卒業研究報告
(111) 徳隆宏, “光パスネットワークにおける分散型経路制御方式の評価,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2003.

(112) 中本博久, “フォトニックグリッド環境における分散計算のためのメモリアクセス手法の提案,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2003.

(113) 中山圭, “DDoS攻撃トラヒックのモデル化および防御アルゴリズムへの適用とその評価,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2003.

(114) 松浦陽亮, “TCPプロキシ機構のネットワークプロセッサ上での実装と評価,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2003.

(115) 吉田剛, “実時間動画像マルチキャストにおける動的なマルチキャストグループ再構成手法,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2003.

(116) Kovempairoj Decha, “アドホック無線センサネットワークによる人間の行動・環境把握システムの構築,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2003.