研究部門の業績

応用情報システム研究部門
Applied Information Systems Division


1. 部門スタッフ

教授 下條 真司
略歴:1981年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1983年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士前期過程修了、1986年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士後期課程修了。1986年4月大阪大学基礎工学部助手、1989年2月大阪大学大型計算機センター講師、1991年4月大阪大学大型計算機センター助教授、1998年大阪大学大型計算機センター教授、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用システム研究部門教授。情報処理学会、電子情報通信学会、ACM、IEEE、ソフトウェア科学会各会員。

助教授 馬場 健一
略歴:1990年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1992年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士前期過程修了、1992年9月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士後期課程退学。1992年10月大阪大学情報処理教育センター助手、1997年4月高知工科大学工学部電子・光システム工学科講師、1998年12月大阪大学大型計算機センター助教授、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助教授。1995年3月大阪大学博士(工学)取得。電子情報通信学会会員。

講師 野川 裕記
略歴:1990年3月大阪大学医学部医学科卒業。1990年7月大阪大学医学部付属病院研修医、1991年7月国立呉病院研修医。1997年3月大阪大学大学院医学研究科博士課程内科専攻終了。1997年4月札幌医科大学医学部助手。1999年6月札幌医科大学医学部講師、2000年8月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門講師。電子情報通信学会、情報処理学会、日本セキュリティ・マネジメント学会各会員。

講師 春本 要
略歴:1992年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1994年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻情報工学分野博士前期課程修了。1994年4月大阪大学工学部情報システム工学科助手、1999年11月大阪大学大型計算機センター講師、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門講師となり、現在に至る。IEEE、電子情報通信学会、情報処理学会各会員。

助手 東田 学
略歴:1989年3月東京工業大学理学部数学科卒業、1991年3月東京工業大学大学院理工学研究科数学専攻修士課程修了、1997年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士課程修了。1994年大阪大学大型計算機センター助手、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助手。

助手 秋山 豊和
略歴:1997年3月大阪大学工学部情報システム工学科卒業、1999年3月大阪大学大学院工学研究科情報システム工学専攻博士前期課程修了。2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助手となり、現在に至る。博士(工学)(2003年9月、大阪大学)。IEEE、電子情報通信学会、情報処理学会各会員。

教務職員 加藤 精一
略歴:1997年3月東京大学工学部計数工学科卒業、1999年3月東京大学大学院理学系研究科天文学専攻修士課程修了、2002年3月東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程修了。2002年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム部門教務職員。博士(理学)(2002年3月、東京大学)。日本天文学会会員。

2. 教育および教育研究支援業績

 本研究部門において事業部門と連携して実施している教育研究支援活動について本年度の成果を報告する。

2.1  スーパーコンピュータシステム

 2001年1月5日より運用を開始したスーパーコンピュータ・システムSX-5/128M8は、導入後3年を経過し4年目を迎えた。
 本年度7月、導入以来初めて、システム運用ソフトウェアのバージョンアップを行なった。オペレーティングシステムのメジャー・バージョンアップとともに、ジョブ実行管理システムであるNQS (Network Queueing System) およびERS (Enhanced Resource Scheduler)のメジャー・バージョンアップとそれに伴うシステム構成変更を含む大がかりな作業となった (なおコンパイラの最新版への更新やバグフィックスは適宜行なっている)。
 ジョブ実行管理システムNQS+ERSは、これまではスーパーコンピュータ本体で分散稼働していた。このような分散型の資源管理方式は革新的な取り組みであったが、高性能コンピュータシステムにおいてはノードの負荷が高まった際に資源管理システムの過負荷によってサービスがストールするという障害要因となっていた。このため、システム運用ソフトウェアの更新に伴って、新たにフロントエンドを設け、外部集中型のコンベンショナルな資源管理方式への移行を行うこととなった。
 前システムまでは本センター内のノード毎に遂行できた更新作業であるが、本システムでは、共同運用を行っているレーザー核融合研究センター (ILE) と核物理研究所 (RCNP) に設置されているノードおよび、本センター内に設置されている6ノードに対して、ノード間の役割分担の依存関係を見極めながら、足掛け3週間、段階的な更新作業を行なうこととなった。事前に十分な検討を行ったつもりではあったが、何分我々にも未経験の大規模な更新作業であり、様々なトラブルが発生し、利用者各位に多大な迷惑をおかけしたことをこの場を借りてお詫びしたい。
 本システムよりも遥かに大規模な地球シミュレータが安定稼働しており、また、本システム以降に導入された同規模の東北大学情報シナジーセンターのSX-7も安定して稼働している中、本システムのシステム運用ソフトウェア更新が困難を究めた理由は、フェアシェアスケジューラによってマルチノードシステムを自律的に負荷分散運用するフレームワークを先進的に採り入れていることによる。このフレームワークに対して、更に昨今のグリッドウェアと親和性を持たせたのが本作業のもうひとつの成果である。例えば、新しいNQSは、グリッド・コンピューティングを意識して、NQSはPOSIX準拠 (POSIX.15およびIEEE1003.2d)となり、デファクトスタンダードであるPBSと操作性およびスクリプトの記述とも互換インターフェースになった。
 システム更新以降、様々なバグフィックスに追われながら、なんとか更新前の安定性を取り戻すに至った。改めて利用者各位の忍耐強いご協力に感謝したい。稼働率および利用率は前年と同等の75%前後に回復している。運用実績の詳細は、本年報の記事「スーパーコンピュータシステムSX-5/128/M8のフェアシェアスケジューラによる運用 (2003年度版)」を参照頂きたい。
 さて、本システムは、Linpackベンチマークにてベクトル型スーパーコンピュータとしては初めて1TFLOPSを超える実効性能 (1,192GFLOPS) を達成した画期的なシステムであるが、このシステムをあと3年維持することは、利用者各位の研究活動に遅滞を招かないだろうか。
 昨年、本システムと同様のアーキテクチャを持つ地球シミュレータ (http://www.es.jamstec.go.jp/) が稼働し、Linpackベンチマークにて35.86TFLOPSという、この分野での先進性を自認してきた米国にとってスプートニクショック以来の技術的屈辱と例えられる飛び抜けたベンチマーク性能を達成したことで、絶対性能としては随分見劣りするものとなっている (地球シミュレータは、実シミュレーションでも10TFLOPSを越える性能を実現している)。2003年11月付けの“TOP500 Supercomputer List” (http://www.top500.org/) において、導入年の12位、昨年の34位からさらに88位にまで後退したものの、100位以内に踏みとどまり面目を保った。国内に目を向けると、圧倒的実効性能で一位を保持した地球シミュレータ、宇宙航空研究開発機構 (旧、航空宇宙技術研究所)の富士通製HPC2500、東京大学の日立製SR8000、核融合科学研究所のNEC SX-7が本システムの上位に位置付けられているのみで (東北大学のSX-7は、分散運用を前提としているためか登録されていない)、このリストから鑑みれば依然として競争力を保っていることになる。一方で、このTOP500リストの形骸化の指摘は久しいが、本年、バージニア工科大のPowerMac G5を1,100台クラスタ結合したシステムが、米国の数ある国家プロジェクトを退けて3位にランクインしたことで、関係者のほとんどがこのリストと現実の演算性能との乖離に目を覚ましたことを特筆しておこう。
 来年度からは、次期システム検討委員会が組織され後継システムの調達手続きが始まる。教育研究機関に所属する研究者に供する共同利用システムとして、形骸化したTOP500リストに拘泥することなく、新たな指標を示すシステムを目指さなくてはならない。それと同時に、独立行政法人化後の共同利用システムのあり方の模索、特に民間利用への供し方も考慮されなくてはならないだろう。パソコンやワークステーションをクラスタ化、そしてグローバル・リソース化するグリッドウェアの開発整備も著しいが、教育研究機関が共同利用に供する程には熟成されていない。また、適用可能な研究分野も非常に限られている。なにより、利用者が容易に性能を引き出すまでにはこなれていない。本システムの運用実績とグリッドに対する研究成果を生かし、利用者にとって魅力ある後継システム選定に留まらず、新しい高性能大規模計算システム環境の提案を行うことになろう。

2.2 汎用コンピュータシステム

 更新後2年目にあたる2003年度は、汎用コンピュータシステムの中核サービスであるアプリケーションサーバ(NEC Express/1160Xa, 4CPU)の利用負担金を改正し、基本負担額のみで無制限に利用可能とした。これにより、分子化学アプリケーションGaussian98、構造解析アプリケーションMSC.Marcの利用を中心に、昨年度よりも利用率が向上した。今後は、Gaussian98の並列化対応などにより、さらにアプリケーションサーバの利用価値を向上させる予定である。
 また、懸案であった電子メールの送受信におけるパスワード保護に関して、2004年5月6日より、パスワードが保護されないPOPによるアクセスを禁止し、APOPによるアクセスのみを許可するよう運用方針を変更する予定である。

2.3 大阪大学総合情報通信システム

 大阪大学総合情報通信システム(ODINS; Osaka Daigaku Information Network System)は、大阪大学内のキャンパスネットワークの名称であり、サイバーメディアセンターがODINS事務室とともに、設計、管理、運用を行っている。
 ODINSは、1994年の第1期整備、1996年の第2期整備、1998年の第3期整備を経て、ATMスイッチをバックボーンとするネットワークを構築し、2000年の時点で16,000台以上の端末が接続されている。さらに、2001年度には第4期整備を行い、ギガビットスイッチおよび高速ルータをバックボーンとするネットワークを構築した。すでに、多くの部局においてATMバックボーンからODINS第4期のギガビットバックボーンへの移行を完了している。
 近年、ネットワークにおけるインシデント(コンピュータセキュリティに関係する人為的事象で、意図的および偶発的なもの)が増加しており、大学においても組織的な対応を迫られている。このような状況の中において、大学においても、情報セキュリティポリシーを策定し、セキュリティポリシーに基づいたネットワーク運用を行う必要性が高まっている。
 大阪大学においては、すでに「ODINS運用原則とセグメント分けポリシー」を策定し、実務に供している。さらに、社会情勢の変化に対応して、学内ネットワークにおける安全性と利便性のバランスを取るために、柔軟にポリシー変更を行っている。
 このセグメント分けポリシーの下では、学内の計算機をセキュリティレベルの異なるセグメントに分割し、それぞれのセグメントに対して、高速ルータへのパケットフィルタリング設定を行うことになる。2004年2月現在、吹田キャンパス127セグメントのうち81セグメントが(63%)、豊中キャンパス61セグメントにうち22セグメント(36%)がパケットフィルタリングの配下になっている。
 また、ウイルスチェッカーの運用を本格的に始めており、すでに複数の部局に対してメールのウイルスチェックを行っている。今後、ウイルスチェックを行う部局を拡大し、最終的には、ODINSから出るあるいはODINSに入ってくるすべてのメールに対してウイルスチェックを行う体制を目指している。
 今年度においては、以上のようにキャンパスネットワークのセキュリティ強度をさらに高めつつあり、より安全で快適なキャンパスネットワークを目指している。また、科学技術振興調整費による「セキュア・ネットワーク人材育成プログラム」を通じた管理運営要員の育成、社会への技術移転を行っている(後述)。

2.4  バイオグリッド基盤システム

 バイオグリッド基盤システムは2002年3月に整備されて以降、2002年5月末からスタートした文部科学省ITプログラム「スーパーコンピュータネットワークの構築」(バイオグリッド・プロジェクト)の研究開発基盤として運用されてきた。
 グリッドシステム1は、クラスタ用の専用ネットワークインターフェース Myrinet により高速かつ低遅延に密結合した典型的な計算グリッドシステムである。グリッドシステム2は、複数の FastEthernetによって多点結合したクラスタ・システムであり、柔軟なサブシステムの分割や、トランキング結合による高大域データ交換が可能である。グリッドシステム3は、古典的な共有メモリ型サーバ・システムであり、大規模データベース検索において汎用性能を提供する。グリッドシステム4は、クラスタ型ファイルサーバであり、トータル15TBのネットワーク・ストレージを提供する。
 今年度は、新たにバイオグリッド・プロジェクトのグリッド基盤グループが中心となり、NECシステムテクノロジー社のサポートを得て運用体制を整備した。サイバーメディアセンター豊中教育研究棟の新設時に、グリッドシステム2およびグリッドシステム3が新棟に移設され、グリッドシステム1およびグリッドシステム4は、従来どおりサイバーメディアセンター吹田本館にて運用されている。このため、ファイルシステム(グリッドシステム4)アクセス用のプライベートネットワークが、ODINSを経由したキャンパスまたがりのネットワークに変更されている。これに伴いODINS基幹ネットワークのトラブルによる影響が懸念されるが、これに対応すべく、ODINSからのネットワークトラブルに関する連絡体制も別途整備した。また、ヘルプデスクシステムを導入し、運用に関わるチーム同士のシームレスな連携を可能にした。
 表 1~表 3に本年度実施したシステム更新作業のリストを示す。

表 1 本年度のシステム更新作業リス ト
(グリッドシステム1)
  • Intel Fortran Compiler 7.0 → 7.1 バージョンアップ
  • Intel C++ Compiler 7.0 → 7.1 バージョンアップ
  • Intel Math Kernel Library 5.1 → 6.0 バージョンアップ
  • J2SE SDK 1.4.1_02 インストール
  • MPICH 1.2.4 インストール
  • MPICH 1.2.4 → 1.2.5 バージョンアップ
  • Condor 6.4.7 インストール 


表 2 本年度のシステム更新作業リスト
(グリッドシステム2)
  • SCore 5.2.0 → 5.4.0 バージョンアップ
  • Intel Fortran Compiler 7.0 → 7.1 バージョンアップ
  • Intel C++ Compiler 7.0 → 7.1 バージョンアップ
  • Intel Math Kernel Library 5.1 → 6.0 バージョンアップ
  • J2SE SDK 1.4.1_02 インストール
  • MPICH 1.2.4 インストール
  • MPICH 1.2.4 → 1.2.5 バージョンアップ
  • Perl 5.6.1 → 5.8.0 バージョンアップ
  • GSI-SFS 0.0.6a インストール
  • Condor 6.4.7 インストール
  • Open PBS 2.3.16 インストール
  • 新規マスタノード導入

表 3 本年度のシステム更新作業リスト
(グリッドシステム3)
  • BLAST 2.2.6 インストール
  • ClustalW 1.83 インストール
  • BioPerl 1.4 インストール

 利用者からのグリッドシステム2に対する様々な要求に応えるため、グリッドシステム2に新規マスタノードを導入した。旧マスタノードではSCore(BLASTで利用)およびGlobus 2.0(GUIDEで利用)が利用可能である。一方、新マスタノードではOpen PBSおよびGlobus 2.2.4が利用可能であり、対外協力として外部のプロジェクトにプロセッサ資源を提供する等、より柔軟なグリッドシステム2の運用が可能になっている。
 本報告書執筆時(2004年3月)、今後のさらなるシステム安定化を目的としたグリッドシステム1,2,4のOSのバージョンアップを予定しており、次期採用OSの選定を進めている段階である。また、グリッドシステム3については、バイオアプリケーションのバージョンアップを適宜実施する。その他のグリッドシステム1およびグリッドシステム2のシステム更新作業リストを表 4に示す。
 
表 4 今後のシステム更新作業リスト
(グリッドシステム1およびグリッドシステム2)
  • SCore 5.4.0 → 5.6.1 バージョンアップ
  • Intel Fortran Compiler 7.1 → 8.0 バージョンアップ
  • Intel C++ Compiler 7.1 → 8.0 バージョンアップ
  • Intel Math Kernel Library 6.0 → 7.0 バージョンアップ

 表 5に2003年度のグリッドシステムの稼働率を示す。なお、集計の対象期間は2003年4月1日から2004年2月29日までの335日間である。

表 5 2003年度のグリッドシステムの稼働率
(集計対象期間:335日間)
計画停止日数 障害
日数
稼動率
グリッドシステム1 21 39 82.1
グリッドシステム2 33 37 79.1
グリッドシステム3 7 17 92.8
グリッドシステム4 21 24 86.6

 グリッドシステム3の稼働率が他のシステムよりもやや高い。これは、NIS/NFSサーバであるグリッドシステム4のサービス停止が、グリッドシステム3のメインユーザ(データグリッドグループ:グリッドシステム3上にローカルアカウントを持つ)には影響がないことから、通常の稼動状態として日数をカウントされたためである。
 グリッドシステム1の計算ノード、および、グリッドシステム2の計算ノードの負荷状況をリアルタイムで監視するため、クラスタ監視システムganglia(図 1)を導入した。監視情報はユーザに公開されている。
 上述した基盤システムを用いた共同研究・連携が2003年度数多く実施された。本節では、そのうちいくつかを簡単に紹介する。それ以外の活動についても、本報告書他節で紹介されているので、そちらを参照されたい。
図1 ganglia

2.5 データグリッドシステム

 データグリッドシステムは4面スクリーンを備えた立体視表示システムであるCAVEシステム、および、12TBのストレージを備えた高性能グラフィック処理サーバOnyx300により構成される。本研究部門では、大阪大学超高圧電子顕微鏡センターでの研究開発を支援するため、大規模ストレージにおけるデータ管理および大規模画像データ解析のための基盤システムの開発、提供に取り組んでいる。これまでに、Onyx300上にSDSC (San Diego Supercomputing Center) で開発されたデータ共有システムSRB (Storage Resource Broker) を導入し、超高圧電子顕微鏡に新規設置した高精細CCDカメラから取得した画像を自動的にSRBにアップロードする機能を実装した。これにより超高圧電子顕微鏡の遠隔操作システムからCCDカメラを利用できるようになった。また、アップロードした画像データを容易に再利用するため、Webベースのデータ管理システムDGSkyを導入した。DGSkyではファイル一括登録などのファイル管理機能以外に、遠隔サイトから可視化機能を利用するためのソフトウェアであるVizserverと連携して、画像データのボリュームレンダリング結果を提示する機能も備えている。図 2にDGSkyの利用イメージを示す。今後はさらに、バックプロジェクション、セグメンテーションといった画像解析に必要となる一連の画像処理機能を追加していく必要がある。また汎用的に利用可能なシステムとして拡張していく必要がある。

図 2 DGSky利用イメージ
ログイン画面 ファイル操作画面
ボリュームレンダリング出力結果

2.6 アカウント統合管理システム

 サイバーメディアセンターでは、学内の(公共)施設内外に設置された情報システムを利用するための統一アカウントの導入を計画している。統一アカウントの導入によって、例えば、附属図書館内に設置されたマルチメディア端末、情報コンセント、あるいはサイバーメディアセンター内に設置された各種システムがひとつのログイン名とパスワードの組み合わせで利用することが可能になる。この度、このようなコンセプトのもと、まずはサイバーメディアセンターが提供する情報システムにおいて利用できるアカウント統合管理システムを開発し、2002年3月に導入、運用を開始した(詳しくはセンター報告の記事を参照)。
 統一アカウントシステムは、現在、教育用計算機システム(情報教育システムとCALLシステム)、電子図書館システムのマルチメディア端末と情報コンセント、豊中教育研究棟情報コンセントに対してサービスを提供している。これらの異なるシステムを利用する場合にも、同一のログイン名、パスワードであらゆる情報システムが利用可能となっている。
 現在、サイバーメディアセンター以外の一部の組織、システムでも統一アカウントを利用した運用を実施している(例えば、教官基礎データ収集システム)。今年度は、サイバーメディアセンター以外の組織に対しても依頼を受け、システムの設計や導入に協力した。

(1) 工学部内CALL教室における認証
工学部がCALLや他のソフトウェアを利用するためにWindowsベースの計算機を設置し、そのシステムの認証に統一アカウントを利用するシステムを導入した。このケースでは、サイバーメディアセンターのCALL教室と同様のシステム、およびソフトウェアを含んだ利用形態としたいということで、サイバーメディアセンターのCALLシステムと連携する形で認証サービスを提供している。

(2) 無線LANシステムにおける認証
今年度末にサイバーメディアセンターと工学部で導入した全学用の無線LANシステムに対して認証サービスを提供した。他のサイバーメディアセンターのシステムと同様、無線LANの認証サーバに対してアカウント情報の配信を行っている。ちなみに無線LANの提供範囲は、サイバーメディアセンター豊中教育研究棟、附属図書館本館、工学部生協付近となっている。

(3) 中之島センターのシステム認証
2004年4月に設置される大阪大学中之島センターに導入されるシステムに対して認証サービスを提供する。サイバーメディアセンター内のシステムに対する提供方法と同様のシステムとしている。ただし、アカウント情報を強固に守るため、アカウント情報を配信する中之島センターの認証サーバは、ハードウェアを除き、サイバーメディアセンターが完全に管理するシステムとなっている。

 今後もこのような認証サービスに対する全学の要望に応えていくため、サイバーメディアセンター内に統一アカウントコーディネーションWGを設置し、対応にあたる。アカウント統合管理システムの整備も見据えながら全学に対する認証サービスの提供を行う予定である。
 
 図 3 アカウント統合管理システム

2.7 ポータルシステム

 2002年4月から運用を開始したポータルシステム「CMC Academic Portal」は、学内のWeb系サービスへのポータル機能を提供するものとして学内にも着実に認識されつつある。2003年度には、NetAcademy(マルチメディア型英語学習システム)や教官基礎データシステムへのシングルサインオン機能の提供に加え、2003年5月には本学事務局企画広報室が運用するセミナー/シンポジウム情報登録システムおよび学内BBSシステムへのシングルサインオン機能の提供を開始した。これにより、統一アカウントをもつ教職員が大阪大学公式ホームページで提供される情報の登録をオンラインで行うことが可能になった。また、2003年8月にはキャンパスライセンスソフトウェアStarSuiteのオンラインダウンロード機能の提供を開始し、これまで面倒であった申請から配布までの事務処理を自動化することができた。2003年9月には、附属図書館が提供している電子ジャーナルを容易に利用できるよう、ポータルシステム内に電子ジャーナル一覧のページを設けた。これは、学内で提供される各種サービスの一元化を目指したものである。
 さらに、現在、共通教育機構が中心となって導入を進めているWebアンケートシステムとの連携や、部局における広報活動を支援するフォームベースのオンライン情報登録・配信システムの導入およびポータルシステムとの連携を推進している。
 現在、ポータルシステム「CMC Academic Portal」の位置づけは、依然としてサイバーメディアセンターが提供しているポータルシステムという位置づけであるが、さらなる利便性の向上のためには、大阪大学のポータルシステムという位置づけが得られるよう、関係する室や委員会に働きかけていくことが必要であると考えている。

2.8 SecureNetプログラム

 サイバーメディアセンターでは、IT社会の高度化・複雑化が進む中で、人材不足が深刻化するネットワークセキュリティ専門技術者を養成するため、2001年度より、文部科学省科学技術振興調整費(新興分野人材養成)の助成を受け、「セキュア・ネットワーク構築のための人材育成」(SecureNetプログラム)を立ち上げた。最先端の技術を反映した実践中心のカリキュラムと専門的な知識を十分に備えたスタッフをそろえ、大学院生、社会人を中心にネットワークセキュリティ専門技術者の育成を行っている。本プログラムにおいては、年間10人程度、本プログラムの継続期間5年間で50人程度の専門家を育成することを目標としている。
 具体的には、カリキュラムは、半期ずつの基礎コース、応用コースから構成される。それぞれのコースでは、セキュリティ技術、セキュリティマネジメント、法制度の3つのテーマを、講義と実験を組み合わせて週1日のペースで実施している。さらに、それぞれのテーマごとに外部講師を迎えての特別講義も併せて実施している。第I期、第II期の基礎コース、応用コースを通して目標を上回る12~15名程度の人材を育成し、これらの修了者は学内で、社会でその成果を発揮している。
 また、情報科学研究科と連携し、研究科の正式なカリキュラムである演習において、本プログラムの一部であるネットワークセキュリティに関するテーマを与え、教育している。さらに、大阪大学社会人教育講座と題した社会人セミナーにネットワークセキュリティに関するテーマを拠出し、実施に協力している。
 本年度は、プログラム実施から3年目を迎え、文部科学省の中間評価を受けた。それに先立ち、3年間のプログラムの成果を評価するため、10月末に成果報告会を開催した。その結果、総合評価において「非常に優れた成果が期待できる取組である」との高い評価を得た。当初の計画通り引き続き5ヶ年計画で人材育成に当たる。詳しくは「センター報告」の記事を参照のこと。

2.9 阪大TV

 阪大TVは、学内から外部へ映像を用いた情報発信源としての役割を担っており、研究会や講義の様子のライブ配信、ドイツ語学習コンテンツなどをサービスとして提供している。サイバーメディアセンターでは、これらに関わる技術的サポートを行っている。本年度は新放送公開講座のコンテンツの準備や、昨年度から大学院国際公共政策研究科、大学院情報科学研究科、サイバーメディアセンターで行っているタイ・タマサート大学との遠隔講義の模様をライブ配信し、映像コンテンツとして蓄積した。また、独立法人化に関してコンベンションセンターで行われた法人化準備検討状況報告会の模様も同様にライブ配信され、映像が蓄積されている。これらのコンテンツは現在も阪大TVのホームページから見ることが可能になっている。阪大TVの機能は、新設された大阪大学中之島センターに移行する予定であるが、今後もサイバーメディアセンターのサポートは継続していく。

2.10 中之島センター

 大阪大学中之島センターは、文部科学省によるキャンパス・イノベーションセンターを含む地下2階、地上10階建ての建物で、旧阪大医学部跡地に阪大OB、企業の寄付によって建設され、 2004年4月にオープンする。中之島センターのコンセプトとして、 
の3つの機能が掲げられており、これらの機能を実現するために、1Fの情報発信スペース、2Fのレストラン、多目的スペース、模擬法廷を含む遠隔講義システムの入った講義室、会議室などが用意され、阪大同窓会へのサービスとして8Fの医療サービス、9Fの交流サロン、10Fの佐治敬三メモリアルホールが設置されている。遠隔講義システムには、ハイビジョン映像による双方向会議システムや WebCT、MediaDEPOなどの e-Learning を実現するソフトウェアも完備されている。阪大の学生向けにとどまらず、社会人の高度教育の場として、既に社会人セミナー等が企画されており、今後大阪大学の第3のキャンパスとして、同窓の交流の場として期待は大きい。
図 4 大阪大学中之島センター完成予想図

2.11 教育活動

 本部門は情報科学研究科マルチメディア工学専攻、および工学部情報システム工学科目にて応用メディア工学講座を兼任しており、学部、大学院の学生の研究指導を行うとともに、下記の講義を担当した。

3. 研究概要

3.1 グリッド基盤技術の開発と応用

 グリッドは科学技術の発展に必要不可欠であるとして、多くの研究者や科学者らの期待を高めている。また、今日ではグリッドのビジネスへの応用への期待も急速に高まりつつあり、われわれの日常生活においてもグリッドという言葉を目にすることが多くなってきた。
 本研究部門では、今日のグリッドへの期待や需要の高まりをグリッド技術の開発黎明期の早くから予測し、1990年代半ばよりグリッド技術の研究開発を推進してきている。本年度の主な研究課題は以下のとおりである。

3.1.1 グリッド環境における大規模画像データ処理の高速化に関する研究

 バイオ科学の分野においては、計算機上で行ったシミュレーション結果を基に高性能なデバイスによる観測実験を行い、結果を照合することで蛋白質の3次元構造などを解析する手法が用いられている。並列計算技術により、計算機上のシミュレーション速度が急速に向上しているため、現在、観測装置におけるスループット向上が重要な課題の一つとなっている。
 3次元構造の解析においては、観測装置から出力される画像データの3次元再構築処理が必要となる。観測設備において、研究者に短時間で解析結果の概要を提示することで、解析結果を想定した観測が可能となり、限られた観測時間内でより正確な観測が実施できる。
 そこで本研究では、高性能な観測装置から出力される画像データのリアルタイム処理システムの構築を目標とする。注目している観測装置から出力されるデータは高精細でありサイズが大きいため、大規模な計算資源を必要とする。しかし、観測設備は計算資源をもたないことが多く、計算機センターなどにデータを移動して処理する必要がある。そこで、本研究では組織間の資源共有技術としてグリッド技術を適用し、遠隔地の計算資源を利用することで解析時間の短縮を目指す。

3.1.2 バイオサイエンスのための次世代計算プラットホームの構築

 本研究部門は、サイバーメディアセンターが中心となって推進する文部科学省ITプログラム「スーパーコンピュータネットワークの構築」(通称:バイオグリッドプロジェクト)において中心的な研究開発を行っており、バイオサイエンスの発展に寄与するグリッド基盤技術の創生という点で非常に重要な責務と役割を担っている。2003年度においては、そのような観点から、2002年度までに本研究部門らが中心となって開発された2つの基盤技術を利用し、日本-中国という広域ネットワーク上にバイオサイエンスのための次世代計算プラットホームの構築を行うことに本研究部門では成功している。本節では、まずその構築された計算プラットホームを構成する2つのグリッド基盤技術について概説するとともに、その次世代計算プラットホームの概要について説明する。

1) セキュアファイルシステムGSI-SFS
 本システムについては前年度の年報で概説しているが、説明の関係上再度概説する。本ファイルシステムは、ユーザ利便性とデータセキュリティを両立するファイルシステムとして開発された。
 セキュリティ強度とユーザ利便性は、一般的に相反する関係にある。すなわちセキュリティ強度を向上させればユーザ利便性は低下する一方、反対にユーザ利便性を向上させようとする場合、セキュリティ強度は低下するのが一般的である。本ファイルシステムはこのトレードオフ問題を解決し、システムのユーザがネットワーク上に分散する高機密性データを安全かつ容易にアクセスすることを可能にする。
 技術的には、本ファイルシステムは、X.509v3証明書によるシングルサインオン機能を提供するセキュリティ認証基盤技術GSI (Grid Security Infrastructure)とマサチューセッツ工科大学で開発されたファイルシステムSFS (Self-certifying File System)を基礎技術として利用している。本研究部門では、これらの既存の有用な2つの基礎技術の特徴を解析し、それらを最大限に利用するファイルシステムアーキテクチャを設計実装することにこれまでに成功している。
 アーキテクチャ等については、論文[]が詳しいので参照されたい。また、本ファイルシステムは、バイオグリッドウェブページ(http://www.biogrid.jp)より利用可能となっているので、興味ある読者は是非アクセスされたい。

2) グリッドポータルGUIDE (Grid User Interface to the Distributed Environment)
 近年グリッド技術は、世界規模でその研究開発が進められているが、その技術の多くがユーザにグリッドについての知識と利用経験を要求するために、グリッド技術の恩恵に期待する研究者(天文、バイオなど)にとって利用が困難という現状がある。
 本基盤技術はそのような背景から構築されたポータルシステムであり、ClustalWやBLASTといったバイオ研究において利用頻度が高いソフトウェアへのインターフェースを提供する。ユーザはこれらを通じてグリッドに関する詳細な知識を要求されることなくグリッド化されたBLASTなどの恩恵を得ることが可能となるものである。
 本基盤技術に関してもバイオグリッドウェブページ(http://www.biogrid.jp)より利用可能となっているので興味ある読者は是非アクセスされたい。

 3) バイオサイエンスのための次世代計算プラットホーム
 本研究は中国の国立研究所中国科学院(北京)と本研究部門を中心として進められた。グリッドでは計算資源、データ資源、あるいは科学計測機器などといったさまざまなネットワーク上の資源が統合され、動的に利用可能となることが期待される。さらにいえば、われわれが日常生活で電源プラグを差し込むと利用できるのと同様に、膨大な計算パワーやアクセスしたいデータが自由かつ容易に利用可能となることがグリッド究極の目的であるといえる。
 2003年度では上述した2つの基盤技術を応用し、それを利用するユーザがアクセスするデータの位置および、計算が行われる位置(計算資源の管理場所)について全く意識することなくウェブインタフェースを通じてグリッドを利用できる計算プラットホームの実現を目的とした。具体的には、中国科学院(北京)の保有する貴重なバイオデータ(データ資源)を、大阪大学サイバーメディアセンターの保有する大型クラスタシステム(計算資源)で解析することができる環境を実現する。これにより、計算資源、データ資源の地理的な分散問題を解決し、次世代計算プラットホームの1形態を示し、さらなる研究課題を実践的な観点からの導出も狙う。

3.2 QoSを考慮したネットワークアーキテクチャに関する研究開発

 ビデオ会議や電話(VoIP)など、リアルタイム性や通信帯域に対する要求の厳しいアプリケーションが増加・普及するにつれ、ベストエフォート型を前提に発展してきたインターネットにおいても、多様な通信品質(QoS)要求への対応が重要な課題となってきている。
 本研究部門では、多様な要求品質や信頼性要件などに対応したネットワークアーキテクチャ、および、その効率的、効果的なネットワーク管理・制御手法に関する研究を進めている。本年度の主な研究課題は以下のとおりである。

3.2.1 アクティブネットワーク技術等を用いたサービス運用管理技術の研究開発

 Diffserv網におけるBandwidth Broker等のQoSサーバによる集中型QoS管理アーキテクチャとは別のアプローチとして、エッジルータ等で自律分散的に網状態に基づいた適応的制御を行う、分散型QoS管理アーキテクチャの研究を進めている。
 本研究では、分散型QoS制御網を実現するための要素技術としてアクティブネットワーク技術に着目し、多様な品質要求やネットワーク状況の変化に柔軟に対応可能なQoS管理網の検討を進めている。アクティブネットワーク技術を用いることにより、ネットワーク内部のノードとエンドノード(エッジルータあるいは端末)との間で、トラヒックパスに沿った効率的な情報の送受が可能となるため、これをQoS制御のための網内情報収集・制御情報伝達に応用することにより、効率的でスケーラブルなQoS制御網の実現が期待できる。
 本年度では、分散型QoS制御を実現する上で必要となるエッジノードとコア網内ノード間での網状態情報伝達・管理機構の方式検討を行うとともに、網状態情報伝達・管理機構を前提としたエッジによる経路選択制御の基本性能評価と方式検討を行っている。

3.2.2 Diffserv環境におけるQoS制御機構に関する研究

 インターネットにおいてQoS制御を可能とするアーキテクチャとしてDiffservが提案されている。Diffservでは、ドメインと呼ばれる単一ポリシーに従うネットワークごとにQoS制御を行う。この Diffservには最低帯域保証を実現するAFサービス(AF PHB)が規定されている。
 その上で、複数のドメインにわたってAFサービスを提供する場合、各ドメインの入口で到着レートを観測することにより優先度が再設定される。このような状況では、ドメインを経由するごとに品質が劣化する問題があるため、それを防ぐ新たな優先度の設定手法を考える。
 また、ひとつのドメイン内においても、UDPフローとTCPフローが混在する際に、TCPフローが影響を受け品質を維持できないという問題がある。そのため、そのような環境下でもAFサービスを用いて、QoS制御を可能とする手法を考える。

3.2.3 IPネットワーク上でのライフラインの実現のための研究開発

 DSLやケーブルインターネット等によるアクセス回線のブロードバンド化や、IPネットワーク関連機器の高機能化・低廉化等によって、VoIPやIP-VPNサービスなどが普及しつつある。このようなIPネットワークの急速な普及に合わせて、現行のPSTNがライフラインとして提供している緊急通報・重要通信の確保等と同等の機能をIPネットワーク上でも実現するための研究が必要とされている。
 VoIPでの110番、119番や警察や消防向けのVPNサービス等、品質確保が必要な通信を実現するため、 および、災害時等の非常にネットワークが輻輳した環境において、通信内容の品質を確保するためには、通信セッション単位でのQoS提供が不可欠である。
 本研究においては、VoIPの代表的なプロトコルでもあり、次世代のIPベースの携帯電話システムなどの主要な候補である、通信セッション確立プロトコル(SIP)を対象として、ネットワークにおけるQoS技術と呼制御システムによる、呼の受付制御技術を組み合わせて、対故障性が高く、高い負荷時にも容易に耐えられる、QoS技術について研究開発を行っている。

3.2.4 モバイル・マルチメディア網におけるサービス品質制御に関する研究

 いつでも、どこでも、あらゆるものが通信サービスを享受可能なユビキタス通信サービスの実現を目指して、第3世代携帯電話(3Gモバイル)や無線LAN技術を用いた高速無線サービスが展開されている。さらに、有線アクセスについても、光ファイバやADSLによるサービスが本格化し始めている。今後は、これら無線/有線の高速アクセス手段を場所や環境に応じ自由に使い分けることにより、さらに利便性の高いモバイルマルチメディアサービスの実現が期待されている。
 本サービスの実現にあたっては、マルチメディアを一元的に取り扱えるIPやATMといった高速パケット転送技術に加え、特定のアクセス技術に依存しないユニバーサルなIPモビリティ技術の確立が重要視されている。上記複数のアクセス網を利用しつつ、IPレベルでの移動制御を実現することにより、適材適所なアクセス手段の利用や異種メディアのアクセス網間のシームレスな移動通信の実現が可能となる。このためモバイル IPを中心に具体的実現技術の研究を行われている。
 本研究では、様々なサービス品質(QoS)要求をもつマルチメディアを転送可能なモバイル網の経済的な実現を目指し、通信品質と網リソースの利用効率に大きな影響を及ぼすパケット転送時のQoS制御技術の確立を目的とした研究を行っている。特に、移動時のパケット転送遅延や網リソースの冗長な消費を抑制するモバイルIP経路最適化技術、および広帯域アクセス網におけるマルチQoSクラス制御や経路選択制御技術について検討を進めている。

3.3 マルチメディア・コンテンツの配信および効果的な活用技術

 マルチメディア・コンテンツの有効活用は、情報システムの根幹をなすものである。特に、Webコンテンツに代表されるマルチメディア・コンテンツの効果的な配信技術は、一般ユーザの利便性向上の観点から重要な研究課題である。本研究テーマでは、Webコンテンツを高速に配信するためのキャッシングプロキシの構築技術や、Webコンテンツを利用者ごとに個人化して配信、提示するための技術に関して研究を推進している。
 また、テレビ局などの実際の放送現場における映像コンテンツの有効活用は、放送のディジタル化とともにますます重要性を増している。そこで、映像コンテンツの編集支援の観点から、アノテーションに基づく映像コンテンツの活用支援システムについて研究を推進している。

3.4 ユビキタス環境における情報活用技術

 来るべきユビキタスコンピューティング環境では、固定端末、モバイル端末はもとより、家電製品や街中に埋め込まれたセンサーなど多様な機器が何らかの手段でネットワーク接続され、相互に情報交換を行うことが可能になると考えられる。本研究テーマでは、そのような環境における新しいサービスを開発するための基盤技術について研究を推進している。特に、ユビキタス環境では従来のような固定的な情報検索サービスではなく、様々な状況に応じて提供される情報が変化するような状況依存型サービスが実現できると考え、そのようなサービスを効率的に開発できるようなプラットフォームをP2P (Peer-to-Peer)アーキテクチャに基づいて実現する手法について研究を推進している。

3.5 ネットワークセキュリティ技術

 インターネットがビジネスや生活に不可欠な社会基盤になった現在、従来の開放的研究環境の視点だけでなく、現実社会に起き得る犯罪や災害などのリスクに強いセキュリティを強化したネットワークの構築が急務である。特に、大規模な不正情報を特定のシステムへ集中して送信することで相手の機能をマヒさせるDoS(サービス拒否)攻撃や、既存システムの既知の脆弱性を利用して大規模な不正動作を行わせようとするウイルスやワームなどの行為が後を立たない。今後安定した社会基盤と呼ぶに耐え得るネットワーク環境を実現する上では、不正行為の検知と対策だけでなく、その予防と抑止も視野に入れた問題解決を行うことが必要となる。
 本研究テーマでは、上記の目標を達成するための要素研究項目として、DNS(ドメイン名システム)の信頼性向上と、侵入検知技術の大規模ネットワークでの観測実験による応用手法の開発の2点について研究を推進している。
 なお、2004年2月現在、米国シリコンバレーに本社をおく某社とNDA契約を締結し、業務提携について交渉中である。

4. 2003年度研究業績

4.1 グリッド基盤技術の開発と応用

4.1.1 グリッド環境における大規模画像データ処理の高速化に関する研究

 本研究では観測施設から計算資源を保有する施設にデータを移動して処理する環境を想定している。ここで、データの移動と解析を逐次実行した場合、データが大規模になると解析時間が増大する。また、想定している3次元再構築アプリケーションでは、適用される画像処理が複数存在し、個々の処理は独立に処理される。そこで、本研究ではまず、データを分割してパイプライン処理することを検討した。

(a) グリッド環境におけるパイプライン処理の実現
 本研究では特にデータ転送により生じる処理時間を最小化することを目標とし、データ転送処理のために提案されているパイプライン処理モデルをグリッド環境に拡張適用した。その際発生した以下のような問題を解決する手法を提案した。

動的ボトルネック検出
     採用したパイプライン最適化手法は、総処理時間を目的関数として最適なデータサイズを求める手法で、ボトルネックステージの特性を示すパラメータにより最適なデータ分割サイズが与えられる。グリッド環境ではネットワークやノードの負荷が変化することが想定され、パイプラインのボトルネックステージが変化する可能性がある。そこで、本研究では動的にボトルネックステージを検出する手法を提案した。

動的データサイズ制御
     ネットワークやノードの負荷変化により、ボトルネックステージが変化した場合、ステージ間でデータ待ちが発生し、処理時間が長くなる可能性がある。そこで、本研究では負荷変動時にデータ待ちが発生しないようにデータサイズを調整する手法を提案した。また提案手法を拡張し、動的にデータサイズを変更することで、パイプラインの処理時間を短縮する手法も提案した。 

(b) 3次元再構築へのパイプライン処理の適用
 3次元再構築で必要となる代表的な画像処理として、バックプロジェクション、セグメンテーション、ボリュームレンダリングがあげられる。これらの処理をパイプライン化するためには、分割したデータを独立に処理可能とする必要がある。本研究では、まず、セグメンテーションおよびボリュームレンダリングについてパイプライン化が可能な処理手法を提案した。

関連発表論文
(1) 山下浩嗣, 秋山豊和, 原隆浩, 加藤精一, 下條真司, 西尾章治郎, “データグリッド環境における大規模データ処理のパイプライン化に関する一考察”, 情報処理学会データベースとWeb情報システムに関するシンポジウム論文集, pp.25-30, November 2003.

(2) 秋山豊和, 山下浩嗣, 原隆浩, 加藤精一, 下條真司, 西尾章治郎, “データグリッド環境における大規模データのパイプライン処理アーキテクチャの提案”, 情報処理学会研究報告(データベースシステム研究会04-DBS-132), pp.9-15, January 2004.

(3) Toyokazu Akiyama, Hiroshi Yamashita, Takahiro Hara, Seiichi Kato, Shinji Shimojo and Shojiro Nishio, “A proposal of pipelined image processing in a grid environment”, in Proceedings of SAINT 2004 Workshops, pp.596-601, January 2004.

4.1.2 バイオサイエンスのための次世代計算プラットホームの構築

図 5 日中を接続する次世代計算プラットホーム

 図 5は、本年度中国科学院微生物研究所信息网絡中心と大阪大学サイバーメディアセンター間で構築した、バイオサイエンスのための次世代計算プラットホームの概要を示している。このプラットホームは、3.1.2節で記したように、本研究部門でこれまでに開発された2つの基盤技術(セキュアファイルシステムGSI-SFSおよびグリッドポータルGUIDE)を利用することで実現されたものである。以下、その動作について概説する。
 バイオサイエンスに携わる研究者は、インターネットに接続しGUIDEにアクセス可能であれば、本計算プラットホームを通じて、バックエンドのグリッドによって提供される機能を利用できる。ユーザとなる研究者は、GUIDEに対してユーザ名とパスワードを一度入力するだけで、それ以降のプラットホームに対する動作がすべてセキュアな認証のもと期限付き(24時間)で実施される。一度認証が行われたユーザは解析したいデータを選択し、行いたい計算処理を選択するだけで、その後は利用するデータや計算資源がどこにあろうとも、自動的にシステムによって処理され解析結果がウェブインタフェースを通じてユーザに返される。例えば、中国科学院が保有する貴重な遺伝子データをセキュアファイルシステムGSI-SFSで自動的にマウントし、大阪大学サイバーメディアセンターの大型クラスタシステムで高速処理を行うといったことがユーザが意識することなく実現される。
 このことはただ単に計算資源とデータ資源が地理的な分散にも関わらず、本研究部門で構築した計算プラットホームによって動的かつフレキシブルに統合されることを示すだけでなく、次世代のグリッド利用の1形態を示したという点で大きな意味をもつ。今日のグリッド研究においては、インターネットに接続される資源だけでなく、それらに関わる人や技術に関しても、物理組織にとらわれないVO (仮想組織:Virtual Organization)化を目指した研究開発が活発化している。しかしながら、本報告書執筆時においてはVO化を実現する計算プラットホームの報告は多くなく、そのために本研究で示した計算プラットホームの仮想組織性は意義深い。さらにいえば、本研究は今日のグリッド研究の次ステップへの礎としての十分な意味をもつ。
 本研究部門では、次年度においても引き続き実践的な観点から実用的なグリッド基盤技術の研究開発を推し進めていくことを考えている。

関連発表論文
(1) Haruki Nakamura, Susumu Date, Hideo Matsuda and Shinji Shimojo, “A challenge towards next-generation research infrastructure for advanced life science”, Journal of New Generation Computing, vol. 22, no. 2, February 2004. in press.

(2) 武田伸悟, 伊達進, 下條真司, “GSI-SFS: グリッドのためのシングルサインオン機能を有するセキュアファイルシステム”, 情報処理学会論文誌コンピューティングシステム, vol. 45, no. 4, April 2004. in press.

(3) 武田伸悟, 伊達進, 下條真司, “グリッドファイルシステムGSI-SFS”, 情報処理学会研究報告2003-OS-93, pp.97-104, May 2003.

関連記事
(1) 伊達 進, 下條 真司, 奥村 利幸, 松田 秀雄, 秋山 豊和, 中村 春木,“バイオグリッドプロジェクト「スーパーコンピュータネットワークの構築」”情報処理学会誌, 44巻, 6号(平成15年6月号), pp.601-607、2003年6月.

関連新聞記事
(1) 「阪大中国とデータ“タッグ”」 朝日新聞3面:総合, 2003年7月25日

(2) 「阪大と中国 生物情報ネット構築-2万8000種検索可能に-」, 産経新聞:24面社会、2003年7月25日

(3) 「バイオ研究向けシステムを整備 阪大と中国科学院」, 日本経済新聞:17面テクノロジー、2003年7月25日

(4) 「阪大中国科学院 生物DBを効率検索-高速システム構築へ連携-」, 日経産業新聞:7面先端技術、2003年7月25日

(5) 「中国の生物資源 複数DB一度に検索-阪大などグリッド技術活用-」, 日刊工業新聞:5面科学技術

(6) 「バイオグリッド基盤を実現-阪大が中国科学院と共同で開催-」, 薬事日報:2面、2003年7月30日

(7) “System to retrieve biomass database developed”, Kansai Kippo, Vol. 10,No. 438,August 20, 2003.

4.2 QoSを考慮したネットワークアーキテクチャに関する研究開発

4.2.1 アクティブネットワーク技術等を用いたサービス運用管理技術の研究開発

 Diffserv網におけるBandwidth Broker等のQoSサーバによる集中型QoS管理アーキテクチャとは別のアプローチとして、エッジルータ等で自律分散的に網状態に基づいた適応的制御を行う、分散型QoS管理アーキテクチャの研究を進めている。本研究では、分散型QoS制御網を実現するための要素技術としてアクティブネットワーク技術に着目し、多様な品質要求やネットワーク状況の変化に柔軟に対応可能なQoS管理網の検討を進めている。本年度では、まず、エッジによる分散型QoS制御に必要となる網状態情報管理機構に関して、アクティブネットワーク技術を適用し、トラヒックパスに沿った情報伝達のアーキテクチャの提案と具体的制御方式の検討を行った。提案方式では、最小限の状態管理を行う書くコアルータが、エッジからの制御パケットに対応して処理を行うアクティブネットワーク型アーキテクチャをベースとして、リンク状態を管理するコアルータと分散トラヒック制御を行うエッジルータ間での効率的かつ柔軟な網状態情報伝達を実現している。
図 6 分散型QoS制御網の提案アーキテクチャ

 さらに、トラヒックパスに沿った情報伝達機構を前提にした、エッジノードによる経路選択制御方式に関する検討を行った。エンド・エンドでの制御に加え、リンク状態やトラヒック状況を通知するなど、網内ノードによる支援を利用した制御を行うことにより、サービス品質改善や輻輳回避の迅速化が図れることが期待できることから、トラヒックパスに沿った制御情報のやりとりを行うアクティブネットワークの枠組みを用いて、エンドノードが分散的に経路選択や帯域制御を行う方式の検討を行った。シミュレーション実験により、パスに沿って空き帯域値を収集して経路選択時の判定指標に利用する提案方式の性能評価を行い、エンド=エンド遅延(RTT)を用いた方式等と比較して、遅延ジッタ等の品質劣化が抑えられ、トラヒック変動に対しても迅速な反応が可能な制御が実現できることを確認した。ISP内でのトラヒックエンジニアリングを補完する分散型の適応的トラヒック制御や、IP-VPNやGrid等のオーバーレイネットワーク上でのトラヒック制御などへの応用が期待できる。

関連発表論文
(1) Masato Tsuru, Yoshiaki Kitaguchi, Hiroyuki Fukuoka and Yuji Oie, “On the practical active network with the minimal functionality”, in Proceedings of The Second International Workshop on Active Network Technologies and Applications (ANTA 2003), pp.45-52, May 2003.

(2) 福岡寛之, 馬場健一, 下條真司, “分散QoS 制御のためのアクティブネットワーク型網状態情報管理方式の検討”, 信学技報CS2003-68, pp. 29-34, September 2003.

4.2.2 Diffserv環境におけるQoS制御機構に関する研究

 インターネットにおいてQoS制御を可能とするアーキテクチャとしてDiffservが提案されている。 Diffservはネットワークの入口でパケットをクラス分けし、クラスに対応したDiffservコードポイントを設定する。ネットワーク内部ではコードポイントを参照してクラスごとにパケットの転送規則を決定する。ネットワーク内部におけるパケットの転送規則としてAF PHBが標準化されている。AFはパケットに優先度を設定するPHBであり、このPHBを用いることにより最低帯域保証サービスを提供することができる。
 まず、AFサービスを複数のドメインを経由して提供する場合について考える。最低帯域保証サービスでは、ネットワークの入口でユーザが送信するパケットのうち、保証する帯域分のパケットをINパケットとし、その他のパケットをOUTパケットとして異なるコードポイントを設定する。そして、INパケットを高い確率で宛先に転送することによってユーザに対して最低帯域保証サービスを提供する。この最低帯域保証サービスを、複数のドメインを経由して提供する場合、ドメイン境界においてINからOUTへのコードポイント再設定が発生し、最低帯域保証サービスのサービス品質が劣化する可能性がある。本研究では、この品質劣化を防ぐため、新しいコードポイント再設定方式を提案する。提案方式ではドメイン間専用のコードポイントを用い、ユーザ・ドメイン間でINに設定されたパケットをOUT パケットと区別することにより、INから再設定されたパケットをINに再々設定することを可能とする方式である。本研究では、提案方式を評価するためシミュレーションを行った。その結果、提案方式では従来の方式に比べ、複数ドメインを経由するフローの品質を改善することを示した。
図 7 提案したDSCP再設定方式

 次に、ひとつのドメイン内においてTCPとUDPが混在する場合を考える(東京工業大学学術国際情報センター山岡研究室との共同研究)。本研究では、ストリームアプリケーションの通信をストリームフロー、その他の一般的なアプリケーションの通信を非ストリームフローと呼び、区別する。これらの通信が単一のリンクに集約された場合、TCPとUDPの振る舞いの違いから、双方の相互影響によるサービス品質の劣化が問題となる。この問題を緩和するひとつの方法は、ストリームフローと非ストリームフローを別のクラスに収容する方法である。しかし、各クラスの割り当て帯域を固定的に決定するのは困難である。また、それを動的に調整する方法は、大規模なネットワークでは実現しにくい。そこで、我々は、この問題を緩和することができ、かつ、動的帯域割り当て方式よりもスケーラビリティの高い、動的クラス割り当て方式を提案する。提案方式はDiffserv AF PHBの枠組みを用いて実現可能である。提案方式では、非ストリームフローをいくつかのクラスに分類し、ストリームフローを各クラスの性質や状況を考慮して、動的に割り当てる。また、クラス割り当ての際、クラス本来の非ストリームフローの極端な品質劣化を抑制するため、ストリームフローに非ストリームフローよりも高い廃棄優先度を設定する。本論文では、はじめに非ストリームフローの分類と各クラスの性質の違いについて述べ、次に、廃棄優先度の設定について議論する。その後、動的クラス割り当てを行うアルゴリズムを提案し、計算機シミュレーションによる評価実験を行う。実験結果より、提案方式がトラヒックの変化に対応しながら、ストリームフロー、非ストリームフローに一定の品質を提供できることが示された。
図 8 ストリームフロー収容方式

関連発表論文
(1) 本久勝一, 福岡寛之, 馬場健一, 下條真司, “複数ドメインを経由するAF サービスのためのコードポイント再設定方式の提案”, 電子情報通信学会技術研究報告IA2003-19, pp.33-38, July 2003.

(2) Shoichi Motohisa, Hiroyuki Fukuoka, Ken-ichi Baba and Shinji Shimojo, “An effective remarking scheme for Diffserv AF service through multiple domains”, in Proceedings of 2003 IEEE Pacific Rim Conference on Communications, pp.462-465, August 2003.

(3) 本久勝一, 福岡寛之, 馬場健一, 下條真司, “ドメイン境界におけるコードポイント再設定方式のTCP フローに対する評価”, 電子情報通信学会技術研究報告IN2003-313, pp.327-332, March 2004.

(4) 安川健太, 馬場健一, 山岡克式, “ストリームフローと他通信混在時におけるパケット廃棄優先度設定の検討”, 電子情報通信学会技術研究報告NS03-44, pp.41-44, June 2003.

(5) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Classification of non-stream flows to reduce negative interactions between stream and non-stream flows”, in Proceedings of 2003 IEEE Pacific Rim Conference on Communications, pp.772-775, August 2003.

(6) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Dynamic class assignment for stream flows considering characteristics of non-stream flow classes”, IEICE Transactions on Communications, October 2003. (条件付き採録)

(7) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Class assigning management for stream flows considering characteristics of non-stream flow classes”, in Proceedings of NETWORKS 2004, January 2004.(6月発表予定)

(8) 小山内隆, 安川健太, 馬場健一, 山岡克式, “実キュー長に基づくUDP パケット優先廃棄の有効性に関する研究”, 電子情報通信学会技術研究報告IN2003-331, March 2004.

(9) 小山内隆, 安川健太, 馬場健一, 山岡克式, “実キュー長に基づくUDP パケット優先廃棄の有効性に関する研究”, 電子情報通信学会総合大会B-7-120, March 2004.

4.2.3 IPネットワーク上でのライフラインの実現のための研究開発

 われわれの研究では、個別の通信セッションに対してQoSを提供するために、ネットワークレベルのQoS技術(Diffserv)とSIPの呼制御システムであるSIP proxyによるQoS提供技術を組み合わせることで実際の通信のQoSを確保する技術を研究してきた。

(a) 非常時を想定したVoIP通信の優先帯域制御
 現在のインターネットではDiffserv等の優先帯域制御技術が活用されていない。一方、災害時などを想定した場合、110番や119番等の緊急・重要通信に対しては高品質なサービスを提供する必要があるとともに、一般のユーザの通信には提供するサービスを最小限に抑えることで、なるべくたくさんのユーザに対してサービスを実施する必要がある。そのため、本研究では、次のような特徴を有するネットワークにおけるQoS方式をVoIPのデータに適用することを提案した。
 実際のVoIPのデータトラフィックを基本データと付加データの2種類に分類する。基本データとは最低限の通信を実現するために必要なデータであり、付加データはそれ以外のデータである。これら基本データと付加データを呼の重要度に応じて3つに分類する。
 (1) すべての通信の基本データ
 (2) 重要通信の付加データ
 (3) 一般通信の付加データ
 これらのデータを、DiffservのAFサービスの分類である、“Green, Yellow, Red”に対応させる。AFサービスでは、ネットワークが混雑してきた場合に、Redに色づけされているパケットから先に破棄される。ここで、VoIPデータの分類における(1)をGreenに、(2)をYellowに、(3)をRedに対応させる。これにより、呼が多数発生してネットワークが混雑してきた場合、ルータにおいてRedから先に破棄することで、一般ユーザの品質を落としつつ、緊急・重要通信の品質を高く保つことができる。
図 9 AFによるVoIPトラフィックのQoS

(b) 緊急・重要通信のためのVoIPの呼制御方式
 VoIPにおいて個別の通信の品質を確保するためには、ネットワークにおけるQoSだけでは不十分である。完全に品質を保証するためには、一定以上のトラフィックがネットワークに流れ込まないように制限する機能が必要である。
 また、非常時を想定した場合、呼が多発することが予想されるため、過負荷時にもサービスが停止したりすることない、可用性の高い方式が望まれる。そのため、DiffservのAFサービスと組み合わせて利用するVoIPの呼制御方式について研究を行った。
 この方式ではSIPを対象として、実際にネットワークを流れているDiffservのトラフィックの観測値とSIPのシグナリングパケットのうち、新規呼の接続要求のみをログとして記録し、それら2つの情報から新規の呼の受付可能性を判断して、トラフィックの流入を制限する方式を提案した。
図 10 呼制御方式

関連発表論文
(1) Masaaki Noro, Takahiro Kikuchi, Ken-ichi Baba, Hideki Sunahara, Shinji Shimojo,“QoS Support for VoIP traffic to Prepare Emergency”,in Proc. SAINT2004 workshop,pp.229-235,January 2004.

(2) Takahiro Kikuchi, Masaaki Noro, Hideki Sunahara, Shinji Shimojo,“Lifeline Communication System in the Internet”, in Proc. SAINT2004 workshop, pp.236-242,January 2004.

(3) 野呂正明, 菊地高広, 大熊秀明, 砂原秀樹, 下條真司, “インターネットにおけるライフライン機能の実現”, 信学技報 IA2003-15, pp.9-15, July 2003.

(4) 大熊秀明, 小野寺充, 菊川泰士, 砂原秀樹, 下條真司, “災害発生時のVoIP音声品質の検討と評価”, 信学技報IA2003-40, pp.25-30, January 2004.

4.2.4 モバイル・マルチメディア網におけるサービス品質制御に関する研究

 ユビキタス時代のさらなる通信端末の多様化、偏在化に対応するため、モバイルIPv6やネットワークモビリティ技術におけるサービス品質制御の研究を進めた。IPv6技術とネットワーク単位の移動管理技術を組合せることで、多数の端末移動を効率的に管理することが可能となる。ここで、ネットワークモビリティ技術の様々な利用形態を想定すると、Mobile Router (MR)をもつ電車にモバイル端末(MN)をもった乗客が乗り込む例のように、MR-MNの多段入れ子接続による階層化モバイルネットワークが生じる。このような状況では、パケットが各MR/MNのHAを経由することから、転送経路が長くなり、また多重カプセル化により転送効率が低下するという問題が生じる。本研究では、この問題点を解決するため、モバイルネットワーク自体の位置とその内部でのMN位置を階層的に管理する方式を考案した(図 11)。本方式により、MNのHAからモバイルネットワークへの直接転送が可能となり、さらに通常の経路最適化機構を組み合わせることで全てのHAを非経由とできる。さらに、経路長やノードの処理負荷削減効果の評価により提案方式の有効性を評価した。
図 11 階層化モバイルNWの経路最適化方式

 さらに、無線LANやFTTHを活用したIPv6時代に向けた新たな高速広帯域モバイルアクセス網の構成方式を提案した。本方式では、Extensible Authentication Protocol (EAP)を用いたアクセス認証時に、複数のサービス網やQoSクラス毎に用意されたVLANをダイナミックに割当てることで、最適経路やQoSクラスのセキュアな選択が可能となる(図 12)。従来方式であるPPPoEに比較して、認証やパケット転送の高速化を経済的に実現可能である。さらに考案した方式について、実装システムを用い、提案方式の有効性を評価した。
図 12 提案したアクセス網構成方式

関連発表論文
(1) Yasushi Takagi, Hiroyuki Ohnishi, Keisuke Sakitani, Ken-ichi Baba, and Shinji Shimojo, “Route Optimization Methods for Network Mobility with Mobile IPv6,” IEICE Transactions on Communicaitons EB. Vol.E-87-B, no.3, pp.480-489, March 2004.

(2) Yasushi Takagi, Takeshi Yamada, Kazuhiko Suzuki, Makoto Kainuma, Hisakazu Bessho, and Ken-ichi Baba, “Broadband IP Nomadic Access Network for IPv4/IPv6 Services with Dynamic Service Selection,” in Proc. 5th Asia-Pacific Symposium on Information and Telecommunication Technologies, pp.525-530, November 2003.

4.3 マルチメディア・コンテンツの配信および効果的な活用技術

4.3.1 WWWコンテンツの個人化手法に関する研究

 WWWで提供されるページ群は、ほとんどが固定的なリンク構造で全体が構成されている。そのため、ユーザごとに多様なナビゲーションパターンがあるにも関わらず、WWWサイトのリンク構造は一つしかなく、ユーザによってはリンクを辿るという動作を何度も繰り返さなければならない状況がある。
 そこで、ユーザのページ視聴履歴からナビゲーションパターンを検出し、それに基づいてページの構成ならびにリンク構造を動的に変更して提示する手法を提案した。特に今年度は、ページを構成する各要素をWebページに配置する手法について検討を進め、その検討に基づきプロトタイプシステムへの実装を行った。さらに、被験者によるシステム評価を行い、提案する個人化手法の有効性を確認した。

関連発表論文
(1) Shinya Fukumura, Tadashi Nakano, Kaname Harumoto, Shinji Shimojo, and Shojiro Nishio, “Realization of Personalized Presentation for Digital Contents Based on Browsing History,” Proceedings of 2003 IEEE Pacific Rim Conference on Communications, Computers and Signal Processing (PACRIM2003), pp.605-608, August 2003.

(2) 福村真哉, 中野 賢, 春本 要, 下條真司, 西尾章治郎, “ユーザの視聴傾向に基づき個人化したWebページの動的生成,” 情報処理学会研究報告, 2004-DBS-132, pp.57-64, January 2004.

4.3.2 映像コンテンツの意味構造化の研究

 昨今のマルチメディア・コンテンツのディジタル化に伴い、コンテンツの再利用性の向上、高度な知的コンテンツの創出が期待されている。一般にこれらの実現には、コンテンツの属性や意味内容に基づいた構造化(以下、意味構造化)が必要とされる。
 マルチメディア・コンテンツの意味構造化のアプローチとしては、知識表現による方式とアノテーション方式の二つに大別される。特に、放送局における需要や必要条件を考慮した実用的な観点から、アノテーション方式に基づいた意味構造化手法の研究開発をしている。この研究では、アノテーションの精度や粒度、アノテーションデータの意味構造化とその応用、実際の運用までを含めた全体的な系としての評価検討を進めている。
 2003年度においては、放送現場における編集支援として、第85回全国高等学校野球選手権における映像素材に対するアノテーション支援システムおよび映像シーン検索システム(図 13)を開発した。
 本システム系では、既存の利用価値の高いデータベースとの連携による実用的なアノテーション支援を実現した。その上で、意味グラフを用いた構造化から、まとまりのある意味内容の映像シーンの抽出を可能とするものである。
図 13 全体のシステム概念図

関連発表論文
(1) 赤藤倫久, 春本 要, 香取啓志, 橋田浩一, 下條真司, “意味グラフに基づく映像コンテンツのアノテーション手法とその応用,” 映像情報メディア学会誌(投稿中).

4.4 ユビキタス環境における情報活用技術

4.4.1 Webサービスを用いたP2Pプラットフォームアーキテクチャ

 ユビキタス環境では、携帯端末が広く普及し、センサー類などがネットワークに接続されるようになることで、場所や時間に依らず温度や天気といった状況情報を利用できるようになる。それらの情報をサーバで収集し管理するのはコスト面およびリアルタイム性の面で問題がある。そこでP2P型のアーキテクチャが適していると考えられるが、P2P型アーキテクチャでは情報やサービスを発見する手段が必要となる。さらに、収集した情報を状況として判断し、アプリケーションからは容易に状況判断が可能になるようにするためのミドルウェアがあれば、様々な状況依存型アプリケーションの開発が容易になる。そこで、アプリケーションとP2Pネットワークの間に状況情報を収集し処理するコンテキストアウェア層をミドルウェアとして用意するアーキテクチャを提案し、それをWebサービスを用いて実現する手法を提案した。

関連発表論文
(1) Kaname Harumoto and Shinji Shimojo, “A P2P Platform Architecture for Context-Sensitive Applications and Its Implementation Using Web Services,” Proceedings of 2003 IEEE Pacific Rim Conference on Communications, Computers and Signal Processing (PACRIM2003), pp.185-188, August 2003.

4.4.2 位置情報に基づくP2Pネットワークの動的構成手法

 状況依存型アプリケーションで特に重要であると考えられる位置情報を利用した検索要求に対して、既存のP2Pネットワークでは検索メッセージを位置に関係なくフラッディングさせるため膨大なトラフィックが発生するという問題がある。これは、既存のP2Pネットワークが端末の位置や情報に関する位置とは独立に構成されているのが原因である。そこで、位置的な範囲を限定した検索メッセージを効率的に伝播させるために、端末の位置情報に基づいてP2Pネットワークを構成する手法(LL-Net: Location- based Logical Network)を提案した。
 LL-Netでは、対象領域全体をエリアに分割し、エリア間ネットワークとエリア内ネットワークにより論理ネットワークを構成することにより、特定エリアへの検索メッセージの伝播を効率化する(図 14)。このように論理ネットワークを構成するためには、モバイル端末の移動に応じてその構成を動的に変更する必要がある。そこで、モバイル端末の出現、移動、消滅に応じて動的にネットワーク構成を変更するためのプロトコルを設計した。また、シミュレーション評価により、既存のP2Pネットワークよりも検索メッセージ数を大幅に削減できることを示した。
図 14 位置情報に基づくP2Pネットワーク

関連発表論文

(1) 金子 雄, 福村真哉, 春本 要, 下條真司, 西尾章治郎, “モバイル環境におけるP2P型通信を用いた状況依存型集合場所検索サービスの構築,” 情報科学技術フォーラム(FIT2003)講演論文集, 第4分冊, M-072, pp.187-188, September 2003.

(2) 金子 雄, 福村真哉, 春本 要, 下條真司, 西尾章治郎, “モバイル環境における端末の位置情報に基づくP2Pネットワークの提案と評価”, 電子情報通信学会第15回データ工学ワークショップ(DEWS2004)論文集, Web掲載, March 2004.

4.5 ネットワークセキュリティ技術

4.5.1 DNSの信頼性とセキュリティの向上

 DNSはosaka-u.ac.jpなどのドメイン名が示すIPアドレスやメール配送先などの情報を対応付ける役割を果たすインターネットに欠かすことのできない基盤技術の一つである。DNSは基本的に公開情報を提供する全世界に開かれたシステムであり、必然的にDoS攻撃の対象となりやすい。また、次世代インターネットIPv6でのアドレス長増加等に対応するためDNSが蓄積する情報は肥大化の一途を辿っており、現在のプロトコルでは一度に運べるデータ長が足りなくなるなどの問題が生じている。
 本研究では,既存のDNSのトランスポート層プロトコルの弱点を検討し、信頼性を強化するための以下2つの提案を行った。
図 15 T/TCPによるやり取りの例

(a) DoS攻撃を防止しにくいUDPに代わってTCPを使うべく、 DNSのトランスポート層にTCPの拡張の一つである T/TCP (トランザクショナルTCP.図 15)を導入することを提案した。また既存のDNSプログラムコードにT/TCPを実装して評価した上で、T/TCPが DNS の問い合わせ処理の信頼性を向上させ、またファイアウォールの設定の自由度を広げるという面で、 DNS 全体のセキュリティを向上させ得る有効な代案となるという結論を示した。

(b) 現在DNSではUDPペイロード長を512バイト以下に制限し、それを越える場合はTCPを使う。しかしこの方式ではIPv6への移行に伴い大きくなるペイロード長に対してUDPだけでは対応できず、TCPでの再処理に伴うオーバヘッドが増えるおそれがある。この問題に対し、運用ネットワークから収集したDNSの実トラフィック情報に基づいて、IPv4からIPv6への移行に際して512バイトを越えるペイロードが増えるかを予測した。その結果512バイトを越えるペイロードの割合は全体の0.04%から1~3%へと大きく増え、IPv6への移行に際してはUDPペイロード長に対して抜本的なプロトコルの改定が必要であることを示した。

4.5.2 DNSに関する侵入検知技術の大規模ネットワークでの観測実験

 ネットワーク上のパケットの傾向やその他の事象を常時観測し、セキュリティ事故の予防につなげる侵入検知技術やIDS(侵入検知システム)を導入する企業が増えている。しかし、ウイルス等不正アクセス情報を検知するための侵入パターンが多様化するにつれ、単独の侵入検知システムでは不正アクセスを予見し切れない事例が増加している。また、単なるパターンマッチングだけでなく、別種のプロトコルの挙動の相関を見つけ、ネットワーク上に起こる事象を解析予見する方法も必要となっている。
図 16 情報収集のためのIDSシステム概要
 本研究では、運用ネットワークから収集したDNS情報のやり取り(図 16)とTCP接続のアクセスパターンを解析することで、DNS情報のやり取りのパターンとWebやメールなどTCPを使った諸活動との間に一定の相関があることを示した。

関連発表論文
(1) Kenji Rikitake, Koji Nakao, Hiroki Nogawa and Shinji Shimojo, “T/TCP for DNS: A performance and security analysis”, IPSJ Journal, vol. 44, no. 8, pp.2060-2071, August 2003.

(2) Kenji Rikitake, Hiroki Nogawa, Toshiaki Tanaka, Koji Nakao and Shinji Shimojo,“DNS transport size issues in IPv6 environment”, in Proceedings of 2004 Symposium on Applications and the Internet (SAINT 2004 Workshops) (ISBN 0-7695-2050-2), vol. 2004, pp.141-145, January 2004.

(3) 力武健次, "DNSの信頼性とセキュリティ問題",セキュア・ネットワーク構築のための人材育成成果報告会, pp. 101-115, October 2004.

(4) Kenji Rikitake, Hiroki Nogawa, Fumiaki Sugaya, Koji Nakao and Shinji Shimojo, “Behavioral analysis of DNS and TCP connections”, in Proceedings of IPSJ Computer Security Symposium 2003 (CSS2003), vol. 2003, no. 15, pp.521-526, October 2003.

(5) Kenji Rikitake, Fumiaki Sugaya, Koji Nakao, Hiroki Nogawa and Shinji Shimojo,“Resource consumption analysis of DNS servers against DoS attacks”, in IPSJ SIG Technical Reports 2003-QAI-8, vol. 2003, no. 68, pp.51-54, July 2003.

(6) 力武健次, 野川裕記, 田中俊昭, 中尾康二, 下條真司, “IPv6移行に伴うDNSペイロード長増加に関する解析と考察”, 電子情報通信学会和文論文誌B (投稿中), January 2004.

5. 社会貢献に関する業績

5.1 教育面における業績

5.1.1 学外活動

(1) 大阪市立大学 創造都市研究科都市情報学専攻ワークショップ(下條)
(2) 東京工業大学 数理・計算科学特論第4(下條)
(3) 放送大学 非常勤講師(下條)
(4) 東京工業大学 非常勤講師(下條)
(5) 神戸大学工学部 日本経済の課題(下條)
(6) 大阪大学社会人教育講座 セキュア・ネットワークセミナー2003(下條、馬場、野川)
(7) 国立情報学研究所主催情報セキュリティセミナー 「大阪大学におけるセキュリティポリシーの運用」(野川)
(8) 京都大学にて講演 「セキュリティ分野における人材育成:大阪大学の試み」(野川)

5.1.2 研究部門公開

2003年度いちょう祭
 4月29日、30日の2日間に渡って、いちょう祭が開催された。サイバーメディアセンターでは、センターが提供している情報基盤サービスの紹介、および全国共同利用設備であるスーパーコンピュータ(SX5)、アカウント等号管理システムやポータルシステムを含む汎用機の一部、1月に導入されたデータグリッド基盤システムにおける立体可視化装置 CAVEの見学会を開催した。参加者は両日で41名を数え、昨年の参加者数は大幅に増加した。今後はさらにいちょう祭で提供可能なコンテンツを整備し、サイバーメディアセンターの教育、研究の現状を公開できるようにしていく予定である。
写真 1 いちょう祭での公開の様子

SC2003への出展
 11月15日から21日にわたりSC2003 (Supercomputing 2003)が米国アリゾナ州フェニックスにおいて開催された。本研究部門では、サイバーメディアセンターとして、2000年より毎年出展を重ね、今年度で4度目の出展となる。本年度は、2002年度よりサイバーメディアセンターが中心となって推進している文部科学省ITプログラム「スーパーコンピュータネットワークの構築」(通称バイオグリッドプロジェクト)の2年目ということもあり、その出展はITプログラムの成果発表を中心に行われた。本プロジェクトは、関西圏の研究所、大学、企業を中心として進められるプロジェクトであるために、サイバーメディアセンターの研究者だけではなく、大阪大学たんぱく質研究所のほか、奈良先端大学院大学、日立ソフトウェアからの研究者、技術者らも出展に参画した。
 出展では、欧米を中心とする世界各国の研究者らの注目をあつめ、サイバーメディアセンターの研究成果とその意義について広く訴えることに成功した。また同時に、数多くの問い合わせ、質問というフィードバックも得られ、手ごたえのある研究展示であったと自負している。本研究部門では、すでに次年度のSC2004にむけて、世界と競いあう研究開発を積極的に進めている。
写真 2 SC2003で奮闘する展示者らの様子

5.2 学会活動

5.2.1 国内学会における活動

(1) 情報処理学会:第2回情報科学技術フォーラム(Forum on Information Technology (FIT2003)) 「広域分散アーキテクチャ」 座長(下條)

5.2.2 論文誌編集

該当なし

5.2.3 国際会議への参画

(1) The 2004 International Symposium on Applications and the Internet (SAINT2004), Program Chair(下條)

(2) The 2004 International Symposium on Applications and the Internet (SAINT2004), Publication Chair(馬場)

5.2.4 学会における招待講演・パネル

(1) The ACM Workshop on Grid Computing and e-Science 「BioGrid project in Kansai: towards a Grid technology for advanced life science」

(2) 日本学術振興会:サイエンスポリシーセミナー

(3) 情報処理学会:連続セミナー2003 第6回グリッドコンピューティング「バイオグリッド:バイオへのグリッド応用とその技術課題」 (ビデオ出演)

(4) 情報処理学会:第66回全国大会 「情報科学の未来:グリッドの場合」

(5) 電子情報通信学会:2004年総合大会パネル 「PB-4. 今後5年間のフォトニックネットワークの展望」 「アプリケーションから見たフォトニックネットワークに望むこと」
(以上 下條)

(6) 第1回CyberSECオープンセミナー 「ネットワーク時代のセキュリティ教育」

(7) 第30回アエラスフォーラム 「セキュリティ教育から見たソーシャルセキュリティ」

(8) コンピュータ犯罪に関する白浜シンポジウム ナイトセッション

(9) 掛川市での講演 「セキュリティインシデントとその対応」
(以上 野川)

5.2.5 招待論文

該当なし

5.2.6 学会表彰

(1) ギガビットネットワーク・シンポジウム2004・アワード委員会 先端・基盤技術賞 「秘匿性・信頼性を保証した広帯域自律分散ストレージシステムの構築」(分担研究者 野川)

5.3 産学連携

5.3.1 企業との共同研究

(1) 通信・放送機構 「アクティブネットワーク技術等を用いたネットワーアーキテクチャの研究開発」

(2) 通信・放送機構 「IP ネットワーク上でのライフラインの実現のための研究開発(優先帯域制御技術)」

(3) 株式会社ケイディーディアイ研究所 「大容量トラヒックからの攻撃検出技術に関する研究」

(4) ケイディーディアイ株式会社 「次世代IPネットワークにおけるQoS制御機構に関する研究」

5.3.2 学外での講演

(1) 大阪府商工労働部:日米・対日投資促進セミナー

(2) 財団法人大阪市都市工学情報センター:ユビキタスシティおおさかシンポジウム

(3) 財団法人インターネット協会:「IPv6 Summit KITAKYUSYU 2004」

(4) 国際バイオEXPO専門技術セミナー:「バイオとITの幸せな結婚とは」

(5) バイオ・ナノシュミレーションワーキング・グループ:「バイオグリッドプロジェクトへの取り組み」

(6) IT連携フォーラムOACIS(第4回シンポジウム)「ユビキタスネットワーク-ユビキタスネットワーキングフォーラムの動向と阪大の取り組み-」

(7) システムデザイン分科会:「コンピュータシステムの未来像-コンピュータネットワークと計算機システムの統合・アーキテクチャ」

(8) 札幌商工会議所:情報技術産業振興セミナー 「関西バイオグリッドプロジェクトの取組み」

(9) 中央農業総合研究センター:農林水産省委託研究プロジェクト「データベース・モデル協調システムの開発」

(10) 国立天文台:データグリッドセミナー「バイオグリッドプロジェクトにおけるデータグリッド技術」

(11) AVSコンソーシアム:第9回ビジュアリゼーションカンファレンス 「バイオグリッドプロジェクトにおける data visualization の取り組み」

(12) 彩都シンポジウム実行委員会:彩都シンポジウム「バイオグリッド・プロジェクトの現状と今後の展望」

(13) 神戸大学:学術情報基盤センター設置記念式典記念講演会

(14) 財団法人大阪科学技術センター:「ITBL技術普及・利用動向調査数理・情報科学分科会オープンワークショップ」 「バイオグリッドプロジェクトの現状」

(15) 財団法人大阪科学技術センター:「ITBL技術普及・利用に関する総合シンポジウム」 「バイオグリッドプロジェクトの現状」

(16) 文部科学省ITプログラム「スーパーコンピュータネットワークの構築」事務局:グリッドシンポジウム in 関西2003 「ライフサイエンスとグリッドの融合から生まれる新しい研究環境」
(以上 下條)

(17) Networld+Interop Tokyo 2003:「インターネットのライフライン化における課題」

(18) Networld+Interop Tokyo 2003:「インターネットにおけるライフライン機能の実現」

(19) Voice On the Net Japan 2003:「IPネットワークにおける非常時対応」
(以上 野呂)

5.3.3 特許

該当なし

5.4 プロジェクト活動

(1) 文部科学省 科学研究費補助金特定領域研究 C 「IT の進化の基盤を拓く情報学研究」(下條)

(2) A05 班 「Grid 技術を適用した新しい研究手法とデータ管理技術の研究」(下條)

(3) 文部科学省 科学技術振興調整費 先導的研究等の推進(下條)

(4) 「モバイル環境向 P2P 型情報共有基盤の確立」(下條、春本)

(5) 日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(A)「デジタルコンテンツとしての懐徳堂研究」(下條、馬場、春本)

(6) 文部科学省 科学技術振興調整費 振興分野人材養成 「セキュアネット構築のための人材育成プログラム」(下條、馬場、野川、秋山)

(7) 通信・放送機構 「相互接続ネットワークにおける VoIP 実現のための研究開発」(下條)

(8) 文部科学省 産学官連携イノベーション創出事業 「構造解釈に基づいたセキュリティプログラムの開発」(下條、野川、齋藤)

(9) 文部科学省科学技術振興費 IT プログラム 「スーパーコンピュータネットワークの構築」(下條)

(10) 総務省「情報通信分野の研究開発」ユビキタスネットワーク技術の研究開発(ユビキタスネットワーク認証・エージェント技術)(下條、春本)

(11) アジアグリッドイニシアチブ(下條)

(12) 21世紀COEプログラム「ネットワーク共生環境を築く情報技術の創出」(下條、馬場)

5.5 その他の活動

(1) 特定非営利活動法人 バイオグリッドセンター関西 理事長
(2) 社団法人情報処理学会 国際担当理事
(3) 近畿情報通信協議会 近畿情報通信協議会 幹事
(4) 関西IT推進本部 関西ITナビゲータ
(5) 大阪商工会議所 「バイオ情報ハイウェイⅡ期構想検討会議」バイオグリッド分科会委員
(6) 国立情報学研究所 グリッド研究開発実施委員会委員
(7) 国立情報学研究所 スーパーSINET推進協議会委員
(8) 通信・放送機構 通信・放送融合技術開発テストベッド利用審査委員
(9) 独立行政法人通信総合研究所 情報通信技術懇談会委員
(10) 独立行政法人産業技術総合研究所 レビューボード委員
(11) 総務省情報通信政策局 戦略的情報通信研究開発推進制度 評価委員会委員
(12) 大阪科学技術センター ITBL技術普及・利用動向調査委員会 数理・情報科学分科会委員
(13) イメージ情報科学研究所 研究委員会委員
(14) 関西情報・産業活性化センター ITシンポジウム「Info Tech’2003」プログラム委員
(15) 通信・放送機構 「相互接続ネットワークにおけるVoIP実現のための研究開発」プロジェ
クト総括責任者
(16) 日本原子力研究所 原子力コード研究委員会専門委員
(17) 通信・放送機構 けいはんな情報通信研究開発支援センター公募利用審査委員会委員
(18) 財団法人千里国際IT人材育成委員会委員
(19) 財団法人関西情報・産業活性化センター「行政・地域情報化フォーラム」幹事
(20) 日本学術振興会 産学協力研究委員会インターネット技術第163委員会 副委員長
(21) 社団法人情報処理学会電子情報通信学会  通信ソサイエティ インターネットアーキテクチャ委員会 専門委員
(以上 下條)
(22) 兵庫県 IT戦略推進会議委員
(23) 総務省情報通信政策局 戦略的情報通信研究開発推進制度 専門評価委員
(24) 通信・放送機構 「アクティブネットワーク技術等を用いたネットワークアーキテクチャの研究開発」 研究フェロー
(以上 馬場)
(25) 日本学術振興会産学協力研究委員会インターネット技術第 163 委員会 委員
(26) 関西社会経済研究所の依頼により、複数の自治体のセキュリティ監査を行う
(27) 地方自治情報センターの共同研究 「電子自治体に向けて具体的なセキュリティシステムの手法とモデルシステムの検証について」に参加
(以上 野川)

2003年度研究発表論文一覧

著書
(1) 野川裕記, 斎藤和典, 馬場健一, “新ブロードバンド教科書”, 下, 第3章, pp. 63-108, IDGジャパン, September 2003.

(2) 野川裕記, “ヌーベル・エポック”, October 2003.

学会論文誌
(3) Kazuhiro Shinosaki, Masakiyo Yamamoto, Satoshi Ukai, Shunsuke Kawaguchi, Asao Ogawa, Ryouhei Ishii, Yuko Mizuno-Matsumoto, Tsuyohi Inouye, Norio Hirabuki, Toshiki Yoshimine, Tetsuji Kaku, Stephen E. Robinson and Masatoshi Takeda, “Desynchronization in the right auditory cortex during musical hallucinations: A MEG study”, Psychiatrics, vol. 3, pp.88-92, June 2003.

(4) Kazuhiro Shinosaki, Ryouhei Ishii, Satoshi Ukai, Yuko Mizuno-Matsumoto, Tsuyoshi Inouye, Masato Tutiyama, Tetsuji Kaku and Masatoshi Takeda, “Effect of normal aging on functional connectivity of the brain: An EEG study”, Psychogeriatrics, vol. 3, pp.49-53, June 2003.

(5) Takashi Yamaguchi, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Scheduling algorithm with consideration to void space reduction in photonic packet switch”, IEICE Transactions on Communications, vol. E86-B, no. 8, pp.2310-2318, August 2003.

(6) Kenji Rikitake, Koji Nakao, Hiroki Nogawa and Shinji Shimojo, “T/TCP for DNS: A performance and security analysis”, IPSJ Journal, vol. 44, no. 8, pp.2060-2071, August 2003.

(7) 寺西裕一, 豊城かおり, 奥田剛, 下條真司, 宮原秀夫, “ASIA:派生コンテンツの利用制約管理が可能な情報提供システム”, 電子情報通信学会論文誌, vol. J86-B, no. 8, pp.1463-1475, August 2003.

(8) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Dynamic class assignment for stream flows considering characteristics of nonstream flow classes”, IEICE Transactions on Communications, October 2003. 条件付き採録.

(9) Masaomi Kitayama, Hiroshi Otsubo, Shahid Parvez, Adhay Lodha, Ethel Ying, Boriana Parvez, Ryouhei Ishii, Yuko Mizuno-Matsumoto, Reza A. Zoroofi and O. Carter Snead III, “Wavelet analysis for neonatal electroencephalographic seizures”, Pediatri Neurology, vol. 29, pp.326-333, October 2003.

(10) 春本要, 藤本拓, 中野賢, 西尾章治郎, “パイプラインリクエストを考慮したWeb キャッシングプロキシ上での配送順序変更方式”, 情報処理学会論文誌, vol. 44, no. 11, pp.2806-2816, November 2003.

(11) 水野(松本)由子, Gholam K. Motamedi, W. Robert S. Webber, 鵜飼聡, 伊達進, 甲斐島武, 武田雅俊, 下條真司, 井上健, Ronald P. Lesser, “てんかんの後発射に対する電気刺激を用いた抑制の効果”, 臨床脳波, vol. 45, no. 12, pp.773-777, December 2003.

(12) 力武健次, 野川裕記, 田中俊昭, 中尾康二, 下條真司, “IPv6 移行に伴うDNS ペイロード長増加に関する解析と考察”, 電子情報通信学会和文論文誌B, January 2004. submitted.

(13) 水野(松本)由子, “親の養育態度が子どもの情緒に与える影響”, 平成15年度大阪城南女子短期大学紀要, pp.37-43, February 2004.

(14) Haruki Nakamura, Susumu Date, Hideo Matsuda and Shinji Shimojo, “A challenge towards next-generation research infrastructure for advanced life science”, Journal of New Generation Computing, vol. 22, no. 2, February 2004. in press.

(15) Akihiko Konagaya, Abbas Farazdel, Larry Ang, Peter Arzberger, Shinji Shimojo and Rick Stevens, “New generation computing welcomes contributions for a special issue”, Grid Systems for Life Sciences, vol. 22, no. 2, February 2004. in press.

(16) 赤藤倫久, 春本要, 香取啓志, 橋田浩一, 下條真司, “意味グラフに基づく映像コンテンツのアノテーション手法とその応用”, 映像情報メディア学会誌, February 2004. submitted.

(17) Yasushi Takagi, Hiroyuki Ohnishi, Keisuke Sakitani, Ken-ichi Baba and Shinji Shimojo, “Route optimization methods for network mobility with mobile IPv6”, IEICE Transactions on Communications EB, vol. E87-B, no. 3, pp.480-489, March 2004.

(18) Takahiro Kosaka, Yukako Tohsato, Susumu Date, Hideo Matsuda and Shinji Shimojo, “An OGSA-based integration of life scientific resources for drug discovery”, Methods of Information in Medicine, March 2004. submitted.

(19) Kohei Ichikawa, Susumu Date, Takeshi Kaishima and Shinji Shimojo, “A framework supporting the development of grid portal for analysis based on ROI”, Methods of Information in Medicine, March 2004. submitted.

(20) 武田伸悟, 伊達進, 下條真司, “GSI-SFS: グリッドのためのシングルサインオン機能を有するセキュアファイルシステム”, 情報処理学会論文誌コンピューティングシステム, vol. 45, no. 4, April 2004. in press.

国際会議会議録
(21) Shingo Takeda, Susumu Date and Shinji Shimojo, “A user-oriented secure filesystem on the grid”, in The 3rd IEEE/ACM International Symposium on Cluster Computing and the Grid (CCGrid 2003), May 2003. poster presentation.

(22) Hongyu Shi, Susumu Date, Yuko Mizuno-Matsumoto, Youki Kadobayashi and Shinji Shimojo, “A secure grid environment using IPSec on IPv6 network”, in The 3rd IEEE/ACM International Symposium on Cluster Computing and the Grid (CCGrid 2003), May 2003. poster presentation.

(23) Masato Tsuru, Yoshiaki Kitaguchi, Hiroyuki Fukuoka and Yuji Oie, “On the practical active network with the minimal functionality”, in Proceedings of The Second International Workshop on Active Network Technologies and Applications (ANTA 2003), pp.45-52, May 2003.

(24) Kohei Ichikawa, Yuko Mizuno-Matsumoto, Susumu Date and Shinji Shimojo, “A grid-enabled application of brain function analysis”, in The 3rd IEEE/ACM International Symposium on Cluster Computing and the Grid (CCGrid 2003), May 2003. poster presentation.

(25) Takahiro Kosaka, Susumu Date, Yuko Mizuno-Matsumoto and Shinji Shimojo, “The development of data grid environment for neuroinformatics”, in The 3rd IEEE/ACM International Symposium on Cluster Computing and the Grid (CCGrid 2003) Posters/Demonstrations, May 2003. poster presentation.

(26) Shinji Shimojo, Susumu Date, Toyokazu Akiyama, Toshiyuki Okumura, Hideo Matsuda and Haruki Nakamura, “BioGrid project in Kansai: towards a Grid technology for advanced life science”, in Proceedings of International Workshop on Grid Computing and e-Science, June 2003. invited paper.

(27) Rajkumar Buyya, Susumu Date, Yuko Mizuno-Matsumoto, Srikumar Venugopal and David Abramson, “Composition and on demand deployment of distributed brain activity analysis on global grids”, in Proceedings of International Workshop on Grid Computing and e-Science, June 2003. invited paper.

(28) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Classification of non-stream flows to reduce negative interactions between stream and non-stream flows”, in Proceedings of IEEE PACRIM 2003, pp.772-775, August 2003.

(29) Kaname Harumoto and Shinji Shimojo, “A P2P platform architecture for context-sensitive applications and its implementation using web services”, in Proceedings of 2003 IEEE Pacific Rim Conference on Communications, Computers and Signal Processing (PACRIM2003), pp.185-188, August 2003.

(30) Shinya Fukumura, Tadashi Nakano, Kaname Harumoto, Shinji Shimojo and Shojiro Nishio, “Realization of personalized presentation for digital contents based on browsing history”, in Proceedings of 2003 IEEE Pacific Rim Conference on Communications, Computers and Signal Processing (PACRIM2003), pp.605-608, August 2003.

(31) Shoichi Motohisa, Hiroyuki Fukuoka, Ken-ichi Baba and Shinji Shimojo, “An effective remarking scheme for Diffserv AF service through multiple domains”, in 2003 IEEE Pacific Rim Conference on Communications, pp.462-465, August 2003.

(32) Ken-ichi Baba, Takashi Yamaguchi, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Considerations on packet scheduling algorithms for photonic packet switch with WDM-FDL buffers”, in Proceedings of 29th European Conference on Optical Communication 2003 (ECOC2003), September 2003.

(33) Yasushi Takagi, Takeshi Yamada, Kazuhiko Suzuki, Makoto Kainuma, Hisakazu Bessho and Ken-ichi Baba, “Broadband IP nomadic access network for IPv4/IPv6 services with dynamic service selection”, in Proc. 5th Asia-Pacific Symposium on Information and Telecommunication Technologies, pp.525-530, November 2003.

(34) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Class assigning management for stream flows considering characteristics of nonstream flow classes”, in Proceedings of 11th International Strategy & Planning Symposium (Networks 2004), January 2004. 6月発表予定.

(35) Kenji Rikitake, Hiroki Nogawa, Toshiaki Tanaka, Koji Nakao and Shinji Shimojo, “DNS transport size issues in IPv6 environment”, in Proceedings of 2004 Symposium on Applications and the Internet (SAINT 2004 Workshops), vol. 2004, pp.141-145, January 2004.

(36) Masaaki Noro, Takahiro Kikuchi, Ken-ichi Baba, Hideki Sunahara and Shinji Shimojo, “QoS support for VoIP traffic to prepare emergency”, in Proceedings of 2004 Symposium on Applications and the Internet (SAINT 2004 Workshops), pp.229-235, January 2004.

(37) Takahiro Kikuchi, Masaaki Noro, Hideki Sunahara and Shinji Shimojo, “Lifeline communication system in the Internet”, in Proceedings of 2004 Symposium on Applications and the Internet (SAINT 2004 Workshops), pp.236-242, January 2004.

(38) Takahiro Kosaka, Yukako Tohsato, Susumu Date, Hideo Matsuda and Shinji Shimojo, “An OGSA-based integration of life scientific resources toward drug discovery”, in HealthGrid2004 Proceeding, January 2004. CD-ROM proceedings.

(39) Kohei Ichikawa, Takeshi Kaishima, Susumu Date and Shinji Shimojo, “A framework supporting the development of grid portal for analysis based on ROI”, in HealthGrid2004 Proceeding, January 2004. CD-ROM proceedings.

(40) Toyokazu Akiyama, Hiroshi Yamashita, Takahiro Hara, Seiichi Kato, Shinji Shimojo and Shojiro Nishio, “A proposal of pipelined image processing in a grid environment”, in Proceedings of SAINT 2004 Workshops, pp. 596-601, January 2004.

(41) Yukako Tohsato, Takahiro Kosaka, Susumu Date, Hideo Matsuda and Shinji Shimojo, “Heterogeneous database federation using grid technology for drug discovery process”, in The First International Workshop on Life Science Grid (LSGRID2004), February 2004. submitted.

(42) Masato Kitajima, Yukako Tohsato, Takahiro Kosaka, Susumu Date, Shinji Shimojo and Hideo Matsuda, “Development of a database system for drug discovery by employing grid technology”, in HPC Asia 2004 Biogrid Workshop, March 2004. submitted.

口頭発表(国内研究会など)
(43) 甲斐島武, 水野(松本)由子, 伊達進, 篠崎和弘, 下條真司, “MEGデータの独立成分分析(ICA)を用いた信号成分のクラスタリング解析”, 日本生体磁気学会誌特別号, vol. 16, no. 1, pp. 256-257, May 2003.

(44) 武田伸悟, 伊達進, 下條真司, “グリッドファイルシステムGSI-SFS”, 情報処理学会研究報告2003-OS-93, pp.97-104, May 2003.

(45) 水野(松本)由子, 松本敦, 大方美香, 増田寿子, 鵜飼聡, 山本雅清, 川口俊介, 伊達進, 甲斐島武, 篠崎和弘, 下條真司, “青年への情緒的刺激によるMEG変化と親の養育態度との関連性”, 日本生体磁気学会誌, vol. 16, no. 1, pp.174-175, May 2003.

(46) 川口俊介, 篠崎和弘, 鵜飼聡, 石井良平, 山本雅清, 小川朝生, 水野(松本)由子, 藤田典彦, 吉峰俊樹, Stephen E. Robinson, 武田雅俊, “Stroop課題を用いた統合失調症のMEG 研究”, 日本生体磁気学会誌, vol. 16, no. 1, pp.172-173, May 2003.

(47) 高坂貴弘, 中川誠司, 市川昊平, 前野隆志, 甲斐島武, 水野(松本)由子, 伊達進, 山口雅彦, 外池光雄, 下條真司, “グリッド計算基盤技術による脳磁場解析インフラストラクチャ構築の試み”, 日本生磁気学会誌特別号, vol. 16, no. 1, pp.262-263, May 2003.

(48) 安川健太, 馬場健一, 山岡克式, “ストリームフローと他通信混在時におけるパケット廃棄優先度設定の検討”, 電子情報通信学会技術研究報告NS03-44, pp. 41?44, June 2003.

(49) 市川昊平, 伊達進, 水野(松本)由子, 下條真司, “ジョブ特性を考慮した優先制御機構を有する脳機能解析システムの設計と構築”, 情報処理学会研究報告(2003-HPC-94), pp.37-42, June 2003.

(50) 山田和広, 片上修一, 寺西裕一, 奥田剛, 下條真司, 宮原秀夫, “コンテンツ配信におけるメタデータに基づいたCM選択機構の提案と評価”, マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO 2003)シンポジウム論文集, pp.433-436, June 2003.

(51) 史宏宇, 武田伸悟, 長谷川一郎, 伊達進, 水野(松本)由子, 下條真司, “IPv6におけるセキュアなグリッド環境の構築”, 情報処理学会研究報告(2003-HPC-94), pp.25-30, June 2003.

(52) Kenji Rikitake, Fumiaki Sugaya, Koji Nakao, Hiroki Nogawa and Shinji Shimojo, “Resource consumption analysis of DNS servers against DoS attacks”, in IPSJ SIG Technical Reports 2003-QAI-8, vol. 2003, no. 68, pp.51-54, July 2003.

(53) 野呂正明, 菊地高広, 大熊秀明, 砂原秀樹, 下條真司, “インターネットにおけるライフライン機能の実現”, 電子情報通信学会技術研究報告IA2003-15, pp. 9-15, July 2003.

(54) 本久勝一, 福岡寛之, 馬場健一, 下條真司, “複数ドメインを経由するAFサービスのためのコードポイント再設定方式の提案”, 電子情報通信学会技術研究報告IA2003-19, pp.33-38, July 2003.

(55) 甲斐島武, 市川昊平, 高坂貴弘, 伊達進, 水野(松本)由子, 下條真司, “グリッド技術を用いた効率的並列処理による脳機能解析システム”, 情報処理学会研究報告2003-HPC-95, pp. 191-196, August 2003.
(56) 武田伸悟, 伊達進, 下條真司, “グリッドにおける大規模ファイル共有システムの構築”, 情報処理学会研究報告2003-HPC-95 (29), pp.167-172, August 2003.

(57) 高坂貴弘, 細川卓哉, 遠里由佳子, 伊達進, 松田秀雄, 下條真司, “OGSA?DAIによる異種バイオデータベースの連携手法とその評価”, 電子情報通信学会技術研究報告CPSY2003-19 -22, pp.7-12, August 2003.

(58) 甲斐島武, 伊達進, 水野(松本)由子, 下條真司, “グリッド環境における協調並列型ジョブのためのスケジューリングシステム”, 情報技術レターズ, vol. 2, pp.7-8, September 2003.

(59) 金子雄, 福村真哉, 春本要, 下條真司, 西尾章治郎, “モバイル環境におけるP2P型通信を用いた状況依存型集合場所検索サービスの構築”, 情報科学技術フォーラム(FIT2003) 講演論文集, 第4分冊, M-072, pp.187-188, September 2003.

(60) 市川昊平, 伊達進, 水野(松本)由子, 下條真司, “優先度による実行順制御を考慮した脳機能解析ポータル”, 第2回情報科学技術フォーラム(FIT2003)一般講演論文集, vol. 1, pp.55-56, September 2003.

(61) 福岡寛之, 馬場健一, 下條真司, “分散QoS制御のためのアクティブネットワーク型網状態情報管理方式の検討”, 電子情報通信学会技術研究報告CS2003-68, pp.29-34, September 2003.

(62) 上田真由美, 高坂貴弘, 細川卓哉, 遠里由佳子, 伊達進, 松田秀雄, 下條真司, “メタデータを用いたバイオ情報データベース連携検索手法の提案”, 第2回情報科学技術フォーラム(FIT2003)一般講演論文集, vol. 2, pp.71-72, September 2003.

(63) 細川卓哉, 高坂貴弘, 遠里由佳子, 伊達進, 下條真司, 松田秀雄, “データグリッド技術を用いた異種分子生物学データベースの連携手法”, 情報処理学会研究報告03-MPS-46, pp.37-40, September 2003.

(64) Kenji Rikitake, Hiroki Nogawa, Fumiaki Sugaya, Koji Nakao and Shinji Shimojo, “Behavioral analysis of DNS and TCP connections”, in Proceedings of IPSJ Computer Security Symposium 2003 (CSS2003), vol. 2003, no. 15, pp.521-526, October 2003.

(65) Otsubo Hiroshi, Ochi Ayako, Iida K., Mizuno-Matsumoto Yuko and Asano F., “デジタルEEGでてんかんはどこまでわかるか”, 第37回日本てんかん学会, October 2003.

(66) 力武健次, “DNSの信頼性とセキュリティ問題”, セキュア・ネットワーク構築のための人材育成成果報告会, pp.101-115, October 2003.

(67) 山下浩嗣, 秋山豊和, 原隆浩, 加藤精一, 下條真司, 西尾章治郎, “データグリッド環境における大規模データ処理のパイプライン化に関する一考察”, 情報処理学会データベースとWeb情報システムに関するシンポジウム論文集, pp.25-30, November 2003.

(68) 水野(松本)由子, “脳機能の生理学的計測を用いた非定常解析”, バイオメクフォーラム21第30回研究会, December 2003. invited paper.

(69) 大熊秀明, 小野寺充, 菊川泰士, 砂原秀樹, 下條真司, “災害発生時のVoIP音声品質の検討と評価”, 電子情報通信学会技術研究報告IA2003-40, pp.25-30, January 2004.

(70) 秋山豊和, 山下浩嗣, 原隆浩, 加藤精一, 下條真司, 西尾章治郎, “データグリッド環境における大規模データのパイプライン処理アーキテクチャの提案”, 情報処理学会研究報告(データベースシステム研究会04-DBS-132), pp.9-15, January 2004.

(71) 福村真哉, 中野賢, 春本要, 下條真司, 西尾章治郎, “ユーザの視聴傾向に基づき個人化したWebページの動的生成”, 情報処理学会第129回データベースシステム研究会報告(2004-DBS-132), pp.57-64, January 2004.

(72) 川口俊介, 鵜飼聡, 石井良平, 山本雅清, 小川朝生, 水野(松本)由子, 藤田典彦, 吉峰俊樹, 篠崎武田雅俊, “色彩を伴う幻視を呈するてんかんの1症例―MEG・EEGと臨床症状による縦断的追跡―”, 近畿精神神経学会, February 2004.

(73) 本久勝一, 福岡寛之, 馬場健一, 下條真司, “ドメイン境界におけるコードポイント再設定方式のTCPフローに対する評価”, 電子情報通信学会技術研究報告IN2003-313, pp.327-332, March 2004.

(74) 小山内隆, 安川健太, 馬場健一, 山岡克式, “実キュー長に基づくUDPパケット優先廃棄の有効性に関する研究”, 電子情報通信学会技術研究報告IN2003-331, March 2004.

(75) 水野(松本)由子, “脳機能を解析する”, 産業創造館服ラボ研究会, March 2004. invited paper.
(76) 金子雄, 福村真哉, 春本要, 下條真司, 西尾章治郎, “モバイル環境における端末の位置情報に基づくP2Pネットワークの提案と評価”, 電子情報通信学会第15 回データ工学ワークショップ(DEWS2004) 論文集, March 2004.

(77) 小山内隆, 安川健太, 馬場健一, 山岡克式, “実キュー長に基づくUDPパケット優先廃棄の有効性に関する研究”, 電子情報通信学会総合大会B-7-120, March 2004.

(78) Yasushige Yonezawa, Kohei Ichikawa, Kazuto Nakata, Susumu Date, Ho Shirun, Takashi Korosawa, Rossen Apostolov, Toshihiro Sakuma, Toshikazu Takada and Haruki Nakamura, “Application of GRID architecture to Hybrid QM/MM simulations on BioPfuga (Biosimulation Platform United on Grid Architecture)”, in LSGRID2004 (Workshop on Life Science Grid 2004), May 2004. submitted.

解説・その他
該当なし

2003年度学位論文
博士論文
(79) Yasushi Takagi, “A Study on Quality of Service Control for Mobile Multimedia Networks”, PhD thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, March 2004.