研究部門の業績

応用情報システム研究部門
Applied Information Systems Division
(www.ais.cmc.osaka-u.ac.jp)


1 部門スタッフ

教授 下條 真司
略歴:1981年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1983年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士前期過程修了、1986年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士後期課程修了。1986年4月大阪大学基礎工学部助手、1989年2月大阪大学大型計算機センター講師、1991年4月大阪大学大型計算機センター助教授、1998年4月大阪大学大型計算機センター教授、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用システム研究部門教授。情報処理学会、電子情報通信学会、ACM、IEEE、ソフトウェア科学会各会員。

助教授 馬場 健一
略歴:1990年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1992年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士前期過程修了、1992年9月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士後期課程退学。1992年10月大阪大学情報処理教育センター助手、1997年4月高知工科大学工学部電子・光システム工学科講師、1998年12月大阪大学大型計算機センター助教授、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助教授。博士(工学)(1995年3月、大阪大学)。電子情報通信学会会員。

講師 野川 裕記
略歴:1990年3月大阪大学医学部医学科卒業、1990年7月大阪大学医学部付属病院研修医、1991年7月国立呉病院研修医、1997年3月大阪大学大学院医学研究科博士課程内科専攻終了、1997年4月札幌医科大学医学部助手、1999年6月札幌医科大学医学部講師、2000年8月大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門講師、2004年6月より東京医科歯科大学客員教授。電子情報通信学会、情報処理学会、日本セキュリティ・マネジメント学会各会員。

講師 寺西  裕一
略歴:1993年 3 月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1995年3 月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻情報工学分野前期過程修了。1995 年 4 月日本電信電話株式会社入社、同情報通信研究所勤務。2002 年西日本電信電話株式会社研究開発センター勤務。2004 年 4 月、同主査。2005 年1月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門講師となり、現在に至る。博士(工学)(2004年3月、大阪大学)。情報処理学会会員。

講師 秋山 豊和
略歴:1997年3月大阪大学工学部情報システム工学科卒業、1999年3月大阪大学大学院工学研究科情報システム工学専攻博士前期課程修了。2000年4月大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助手、2005年1月大阪大学サイバーメディアセンター応用システム研究部門講師となり、現在に至る。博士(工学)(2003年9月、大阪大学)。IEEE、電子情報通信学会、情報処理学会各会員。

助手 東田 学
略歴:1989年3月東京工業大学理学部数学科卒業、1991年3月東京工業大学大学院理工学研究科数学専攻修士課程修了、1997年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士課程修了。1994年大阪大学大型計算機センター助手、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助手。

教務職員 野崎 一徳
略歴:2000年3月北海道大学歯学部卒業、2004年3月大阪大学大学院歯学研究科博士課程修了。2004年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム部門教務職員となり、現在に至る。博士(歯学)(2004年3月、大阪大学)。情報処理学会会員、歯科医師。

助手 加藤 精一(中之島センター)
略歴:1997年3月東京大学工学部計数工学科卒業、1999年3月東京大学大学院理学系研究科天文学専攻修士課程修了、2002年3月東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程修了。2002年4月大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム部門教務職員、2004年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム部門助手となり、現在に至る。博士(理学)(2002年3月、東京大学)。日本天文学会会員。

兼任教員
客員教授 坂田恒昭(塩野義製薬株式会社)
招聘助教授 藤川和利(奈良先端科学技術大学院)
招聘助教授 有吉勇介(尾道大学)
招聘研究員 奥田 剛(奈良先端科学技術大学院)
招聘研究員 植田和憲(高知工科大学)
特任助教授 齋藤和典(有限会社メディヘルパー)
特任助教授 島田伸敬(立命館大学)
特任助教授 鶴 正人(九州工業大学)
特任講師 谷川哲司(日本電気株式会社)
特任助教授 野川裕記(東京医科歯科大学)

協力教員
春本 要(大阪大学大学院工学研究科社会連携室情報ネットワーク部門助教授)
伊達 進(大阪大学大学院情報科学研究科バイオ情報工学専攻ゲノム情報工学講座助手)

2 教育および教育支援業績

2.1 スーパーコンピュータシステム

 2001年1月5日より運用を開始したスーパーコンピュータ・システムSX-5/128M8は、導入後4年を経過し5年目を迎えた (借料は6年間の予定である)。
 昨年度7月に行なったシステム運用ソフトウェアのバージョンアップの効果が目に見えて表れ、本年度は非常に安定した稼働状況であった。ユーザ利用率は、これまでの75%前後から10-pt近くも向上し85%を越えるようになった。この効率向上を受けて、運営交付金一律削減による節電要請も強くあり、システム稼働率 (通電時間) を前年比で3-pt程低下させることができた。やむなく稼働率を落したにも関わらず、稼働率と利用率を乗じた実運用効率は、これまでの70%台後半から本年度は80%を越えるまでに向上していることを強調しておきたい。また、昨年度は、ベクトル化率や平均ベクトル長といったベクトル機固有のチューニング指標が悪化する兆しが見られたが、本年度は、これらの指標にも向上が見られた。もちろん昨年度に行なったバージョンアップの効果もあろうが、演算効率の低下を注意深く監視し、ユーザのケアレスミスなどによる効率の著しい低下を早期に取り締まったことも改善に繋がった。システム運用管理掛の尽力に感謝したい。我々が運用しているフェアシェア・スケジューラによる資源管理は、運用側にとっては、システムのスループットを十二分に発揮させ運用効率の向上をもたらす優れた枠組であると評価できるが、ユーザ側からは、投入したジョブのTATの期待値を予期しにくいという不満が寄せられている。今後も継続的にユーザからの負担金収入を得るためには、投資額をより直接的に実行優先度に反映させる運用パラメータの模索が必要と指摘を受けている。併せて、システムのチューニングを進めるとともに、利用者への適切な情報提供の枠組を構築していきたい。これらの運用実績に関する詳細は、本年報の記事「スーパーコンピュータシステムSX-5/128/M8のフェアシェアスケジューラによる運用 (2004年度版)」を参照頂きたい。
 さて、借料期間の末期を迎えるにあたり、“TOP500 Supercomputer List” (http://www.top500.org/) における位置付けの凋落 (昨年の88位から更に291位まで後退。ちなみに初出時は8位 )を見るまでもなく、上述のような絶対的な効率向上の努力とは裏腹に、やはり相対的な性能低下が問題視されている。効率向上においては、運用側にも利用側にも人的コスト要因による飽和点低下を許容せざるを得ない側面があるのだが、こと現行システムにおいては、システム・チューニングやプログラム・チューニングによる「飽和点」を押し上げる努力は極限に達しつつある。そこで次年度からは視点を変え、これまでのような高い運用効率を維持したまま、マルチノードを使った大規模演算の推進が課題として浮かび上がっている。高性能計算機システムにおいてすらノード当たりの演算キャパシティの向上が穏やかなトレンドを描いている以上、次期システムは更に大規模なマルチノードシステムにならざるを得ないであろう。次期システム導入の動向も踏まえ、運用においても利用においてもマルチノードシステムに対応するノウハウの蓄積が必要である。これまでは、シングルノードのCPU数である16並列ジョブの実行を優先してジョブクラスの設定を行なってきたが、次年度からは、中小規模のジョブを、より実行効率の高い4並列または8並列へ誘導することで運用効率維持に配慮するとともに、マルチノードを必要とする32並列ジョブのプロモーションを企画している。
 この方針を推進することで、ユーザのシミュレーションが大規模化し演算量が増大すれば必然的に入出力データも増大する。本システムは、全体として20TBを越えるハードディスクによるストレージを有し、この中から9TB近いフラット・パーティションによる一時作業用領域をユーザに提供している。この /sxshort パーティションは、複数のノードからファイバーチャネル16ストライピング (論理性能は16GB/sec.だが、実際は数GB/sec.の転送能力) によって共有接続されており、他システムでは類を見ないユーティリティを提供している。容量の枯渇は導入当初から問題となりリフレッシュ・サイクルを設けて凌いで来たのだが、サイクルの更なる短期化をユーザに強要せざるを得ない深刻な状況に陥っている。残念ながら、現行の借料制度では、ディスク装置交換など導入システムのハードウェア構成の変更は許されないため、NAS(Network-Attached Storage) を追加導入するといった対処が考えられるが、例えば、1-gigabit EthernetとNFSプロトコルを経由したファイル・アクセスでは、せいぜい数GB/min.といったオーダーの転送能力しか達成できず、到底、大規模シミュレーションを必要とする研究者を満足させることはできない。とはいっても、絶対的な容量不足は深刻であり、何らかのストレージ・システム追加による当面の対処策を模索するとともに、次期システム導入に際しては、経年時の対処策を織り込むことを検討したい。
かように、スーパーコンピュータ・システムが繁忙すればするほど、その事前データ処理・事後データ処理を行なうサブシステムの必要性が高まっている。ヘテロジニアス・システムの構築はこれまでも諸処行なわれてきたが、利用適正判定をユーザに預け利便に反したり、相互での大規模データ交換に齟齬を来したりと、いずれも満足のいく成果を得られたとはいい難いものであった。次期システムの更新は、汎用計算機システムの更新とほぼ同時期に行なわれる予定であるが、汎用計算機システム枠で導入している教育用PCのアイドルタイムを演算用途に有効活用する方向で検討を開始している。既に、プロトタイプシステムの実証的構築作業を終え、来年度より現行導入システムでの実験運用を行なう予定である。次期システム更新時には、スーパーコンピュータ・システムとオンデマンド型PCクラスタ・システムの協調によるマルチスケール、マルチフィジックス・シミュレーションへの対応を視野に入れている。既存の枠組を継承しつつグリッド技術の適用を行なうことで、研究者のワークフローを円滑に効率良く実装する事が可能なシステム構築を目標としたい。

2.2 バイオグリッド基盤システム

2.2.1 システムの概要

 バイオグリッド基盤システムは2002年3月に整備されて以降、2002年5月末からスタートした文部科学省ITプログラム「スーパーコンピュータネットワークの構築」(バイオグリッド・プロジェクト)の研究開発基盤として運用されてきた。
 グリッドシステム1は、クラスタ用の専用ネットワークインターフェース Myrinet により高速かつ低遅延に密結合した典型的な計算グリッドシステムである。グリッドシステム2は、複数の FastEthernetによって多点結合したクラスタ・システムであり、柔軟なサブシステムの分割や、トランキング結合による高大域データ交換が可能である。グリッドシステム3は、古典的な共有メモリ型サーバ・システムであり、大規模データベース検索において汎用性能を提供する。グリッドシステム4は、クラスタ型ファイルサーバであり、トータル15TBのネットワーク・ストレージを提供する。

2.2.2 システムの整備状況

 今年度も昨年度に引き続き、安定したサービスの提供を継続して行った。また、ユーザからの要望に対しても、ヘルプデスクシステムにより運用グループ全体でシームレスなサービスの提供が可能となっている。
 また、今年度は主に SC2004 で JGNⅡ、NaReGi など対外プロジェクトとの連携が数多く行われた。
 今後のシステムのさらなる安定化を目的としたグリッドシステム 2 の OSのバージョンアップを予定しており、グリッドシステム 1, 4 に関しては、既にバージョンアップを完了している。(具体的なバージョンアップ内容については後述)
 グリッドシステム 2 に関しては、SCore , 各コンパイラとの対応状況を勘案し、順次バージョンアップを実施する予定である。
 表 1~表 3に本年度実施したシステム更新作業のリストを示す。

表 1 本年度のシステム更新作業リスト    
(グリッドシステム1)
  • Intel Fortran Compiler 7.1→ 8.0 バージョンアップ
  • Intel C++ Compiler 7.1 → 8.0 バージョンアップ
  • Intel Math Kernel Library 6.0 → 6.1.1 バージョンアップ
  • J2SE SDK 1.4.1_02 → 1.4.2_07 バージョンアップ
  • MPICH 1.2.5 → 1.2.6 バージョンアップ
  • Condor 6.4.7 → 6.6.8 バージョンアップ
  • SCore 5.4.0 → 5.8.2 バージョンアップ
  • Red Hat Linux 7.3 → Fedora Core 1 バージョンアップ

表 2 本年度のシステム更新作業リスト    
(グリッドシステム2)
  • Intel Fortran Compiler 7.1 → 8.0 バージョンアップ
  • Intel C++ Compiler 7.1 → 8.0 バージョンアップ
  • Intel Math Kernel Library 6.0 → 6.1.1 バージョンアップ
  • J2SE SDK 1.4.1_02 → 1.4.2_04 バージョンアップ
  • MPICH 1.2.5 → 1.2.6 バージョンアップ

表 3 本年度のシステム更新作業リスト    
(グリッドシステム4)
  • Red Hat Linux 9 → Fedora Core 2 バージョンアップ

 SC2004 ではコンピューティンググループのデモンストレーションを中心にコンパイラ、ライブラリ等の環境を整備し、バイオグリッド基盤システムの持つプロセッサ資源を提供する。
 また、運用形態の見直しとして、以下の項目を検討中である。

2.2.3 システムの利用状況

 表 4に2004年度のグリッドシステムの稼働率を示す。なお、集計の対象期間は2004年4月1日から2005年2月28日までの334日間である。

表 4 2004年度のグリッドシステムの稼働率
(集計対象期間:334日間)

計画停止
日数
 障害 
日数
稼働率
%
グリッドシステム1 22 47 79.3
グリッドシステム2 22 47 79.3
グリッドシステム3 7 0 97.9
グリッドシステム4 19 47 80.2

 グリッドシステム3の稼働率が他のシステムよりもやや高い。これは、NIS/NFSサーバであるグリッドシステム4のサービス停止が、グリッドシステム3のメインユーザ(データグリッドグループ:グリッドシステム3上にローカルアカウントを持つ)には影響がないことから、通常の稼動状態として日数をカウントされたためである。
 バイオグリッド基盤システムの利用率の調査の為、基盤システム利用率調査システム を開発した。これは、予め保存しておいたバイオグリッド基盤システムのsar コマンド、vmstat コマンドのログデータを用い、システムの負荷情報等をグラフ化するシステムである。利用者は、Web ブラウザより、あるノードの CPU 負荷やネットワーク負荷等の知りたい情報を選び、その調査対象期間を設定することで、グラフを表示させることができる。
以下の図 1に、bg01n001e00.hpc.cmc.osaka-u.ac.jpの負荷情報を表示したグラフを示す。



図 1 基盤システム利用率調査システム

2.2.4 ヘルプデスクシステム FAQ

 以下に今年度システムに関するヘルプデスクシステムにユーザより寄せられた要望や質問の FAQ を示す。

Q バイオグリッド基盤システムの利用申請
A ユーザ登録、アカウント作成の実施

Q バイオグリッドネットワークへの接続設定
A ネットワークフィルタ開閉設定の実施

 上記のとおり、今年度のヘルプデスクシステムへ寄せられた要望や質問は、バイオグリッド基盤システムの新規利用申請や、バイオグリッドネットワークへの接続依頼が多く、今年度以前に寄せられていたシステムの利用方法やアプリケーションに関する質問等は少なかった。これは情報発信 Web ページにおいて、利用の為のマニュアルを作成し、広くユーザに公開していることに起因していると考えられる。

2.2.5 SC2004(Super Computer 2004) 対応

 SC2004(2004/11) において、バイオグリッド基盤システムのプロセッサ資源の拠出など、下記のデモンストレーションへ貢献を果たした。

【Gfarm (GRID DATA FARM)】
【NAREGI テストベッドモニタリング】
【QM/MM 連成シミュレーション】
【JGNⅡ】
 SC2004 期間中は、バイオグリッド R&D センターに 24 時間体制で待機し、デモンストレーション実施時のトラブル対応を行い、デモンストレーションの円滑実施に貢献し、各グループの研究成果導出に貢献した。

2.3 データグリッドシステム

 本年度にクラスタシステムおよび計算機追加のため、ネットワーク構成の変更を実施した。変更後の構成を図 2に示す。本年度の保守状況としては、Onyx300のグラフィックパイプおよびネットワーク機器Summit5i (su5i-dg001)の故障が発生した。Onyx300については保守契約を結んでいたため、無償交換が可能であったが、su5i-dg001については保守契約を結んでおらず、スポット保守費用を出費することとなった。su5i-dg001はバイオグリッド基盤システム等の他のシステムも接続しており、故障発生時にはこれらのシステムが使用不能になるなど影響が大きかった。そのため、2005年度は保守契約に含むことを検討している。また、最近は購入機器によってはライフタイム保障等のサービスも提供されているため、このようなサービスの利用も検討したい。
 データグリッドシステムのOnyx300は、これまで主にCAVEシステムの可視化エンジンとしての機能を利用してきたが、12TBのストレージとバックアップ用装置の有効利用を進めるため、SX-5にNFSマウントして利用することを検討している。これが実現すれば、SX-5でのシミュレーション結果出力のためのディスク容量不足およびシミュレーション結果の可視化性能の向上が見込める。
 さらに、昨年度開発したStorage Resource Broker (SRB)のWebインタフェース(WebSRB)を用いて、電子顕微鏡の遠隔操作実験を実施した。北海道大学から大阪大学の超高圧電子顕微鏡を遠隔利用する実験で、本部門で開発したソフトウェアにより、CCDカメラで取得したデータをSRBに自動アップロードして、北海道大学側からWebSRBによるデータ取得を行い、正常に動作することを確認した。



図 2 データグリッドシステム構成図

2.5 全学IT認証基盤システム

 全学IT認証基盤システムは、1)統一アカウント認証サーバシステム、2) CA/RAシステム、3)シングルサインオン機能整備、の3システムからなり、2004年度の間接経費で整備されるよう要求を出していた。これらのうち、2004年度に一部配分を受け、1)統一アカウント認証サーバシステムを整備した。これは、汎用機システム導入時に併せて整備した統一アカウントシステムを拡張し、全学で利用可能とするものである。
 すなわち、統一アカウントシステムは、全学の認証が必要なシステムにおいて、統一的なログイン名(およびパスワード)を利用して、認証を可能にする目的で導入を計画した。当初は、検証を兼ね、サイバーメディアセンターが管理する、情報教育用計算機システム、CALLシステム、電子図書館システムなどに限定してサービスを行ってきた。これを今回の整備によって、他組織が管理する計算機システムに対してもログイン認証サービスが提供できるようになった。
 今後の課題としては、現在のシステムでは、全登録者が認証の対象となり、組織ごとにログイン可能な人を限定できない、などの問題があるため、これらの解決方法を探る必要がある。また、このサービスを利用する場合の運用方法や利用規定の整備を進めていく必要がある。
 なお、全学IT認証基盤整備は、残りの2) CA/RAシステム、3)シングルサインオン機能、を整備するため、2004年度に引き続き、2005年度にも要求している。



図 3 統一アカウント認証サーバシステム

2.6 ポータルシステム

2.6.1 ポータル連携の整理

 本年度の成果として,現状のサイバーメディアセンターのポータルシステムと,他のサーバで提供されているWebアプリケーションの連携について整理したことがあげられる。現状のポータルシステムはサイバーメディアセンターで発行、管理している全学統一アカウントを用いてログインすることができる。そのため、学内で認証が必要なWebアプリケーションを提供する場合、ポータルシステムと認証部分を連携することで、その運用コストを低減することができる。現状のポータルシステムは図4に示す4つの方式で認証連携を実施している。それぞれの連携方式は以下のような方式で認証連携を実現している。
(1) ポータルシステム標準の認証連携
現状のポータルシステムはNEC社製のStarOffice Business Portalというシステムを採用している。本システム標準の認証連携方式は、ログインしているユーザの認証情報(ユーザ名、パスワード)を連携先のサーバにHTTP POSTまたはGETにより受け渡す実装となっている。本連携方式を採用する場合、連携先のサーバにおいても、統一アカウントのデータベースを参照する機能が必要となる。一般的には認証情報を管理しているデータベースを同期する手法がとられることが多い。
(2) 大学側での独自実装による認証連携(A)
(1)の認証連携方式では、連携先のサーバで認証データベースを参照することになるが、連携先のサーバはサービス提供部門の管理となるため、サイバーメディアセンターの管轄外となる。学内ではまだ計算機管理に関するガイドラインは定義されておらず、部門側での計算機管理レベルについての保証がない。万一部門側のサーバがクラックされた場合、全てのユーザに対してアカウントを再発行する必要があり、その作業負荷は相当なものになると考えられる。サーバが学内に分散している以上サイバーメディアセンター側でこのような危険性について担保するのは難しく、連携先のサーバに認証情報を提供せずに、シングルサインオンを実現する連携方式を実装した。ただし、本方式では連携先、連携元のサーバに事前に秘密情報を共有するため、仕様を公開すると脆弱性が増加するという欠点がある。
(3) 大学側での独自実装による認証連携(B)
ベンダーが販売しているパッケージ製品などにおいては、独自のアカウント管理機構を備えているものもあり、連携先のサーバにおいて利用されるアカウントは必ずしも統一アカウントと同一であるとは限らない。このような場合にアカウント名を変換して認証連携する機構を実装している。
(4) リバースプロキシサーバを用いた学外サーバとの認証連携
図書館で提供しているデータベースサービスは学外の企業が提供しているサーバと認証連携する必要がある。本サービスでは、サービス提供サーバと信頼関係を構築したプロキシサーバを経由してアクセスする方式を採用している。ポータルシステムで認証したユーザのみプロキシサーバを利用できる機能をNECに依頼して実装している。
現在認証連携しているシステムのリストを表 5に示す。さらに、学務情報システム(事務局学生部)、全学研究シーズ集(先端科学イノベーションセンター)について認証連携の要請を受けている。



図 4 ポータルシステム連携方式の分類

表 5 ポータルシステム連携サービス
連携しているサービス 関連部門
教員基礎DBシステム 事務局データ管理分析室
セミナー/シンポジウム情報登録システム 事務局企画広報室
学内BBSシステム 事務局企画広報室
Webアンケートシステム 共通教育機構
NetAcademy サイバーメディアセンター
DBサービス 附属図書館
パスワード変更 サイバーメディアセンター
スパコン利用者業績登録 サイバーメディアセンター

2.6.2 現状の課題

(1) 独自実装による認証連携
大学側で独自に実装した連携方式が採用されているため、ベンダー側で独自実装部分に関連する部分の対応が鈍くなっている。基本的にベンダー側ではユーザ側で独自拡張を行った機能についてはサポートを行えず、また、拡張部分を含めたサポートを依頼するための予算確保が行えていない。また、2.6.1節で述べたように、現状の認証手順は公開した時点でセキュリティが低下するという欠点を持つ。大学での調達手続きにおいて、一定金額を超える調達については政府調達となるため、入札を実施することになる。政府調達では仕様を公開することが前提となるため、現状の連携手法を用いて新たなサービスとの連携を構築することができない。連携を構築するためには、別途予算を獲得して随意契約にて追加導入する必要があるが、現状では調達側より同年度内での同一システムに対する追加予算投資は望めないという意見をいただいている。現状では全ての連携について大学側のスタッフで対応する方向で検討せざるを得ない状況になっている。
(2) 部局システムとの連携が希薄
システム導入当時ポートレット(ポータルシステムに組み込めるアプリケーション)の実装方式の標準化が実施されていなかったため、ソフトウェアベンダーの製品をそのままポータルシステムに組み込むことができない(カスタマイズが必要)。また、連携しているサービスに関する説明などの記述について、現状ではサイバーメディアセンター側で手作業で記述する必要があり、最新情報を動的に反映することができない。

2.6.3 次期システムにおける解決方法の検討

 2.6.2節であげた問題点について、以下に述べるような標準技術を採用することにより、解決することを検討している。認証連携機構については現在e-ビジネスやWebサービス等の標準化を実施しているOASISにおいて標準化が進められているSAMLを採用することにより、連携プロトコルの透明性を増し、ベンダー側での対応を容易にすることを検討している。また,JSR168というポートレットの実装標準を採用することにより、ソフトウェアベンダーが提供するパッケージ製品をポータルサーバに導入することが可能になるのではないか、と考えている。さらに、RSSフィードを採用することで、部局で導入したアプリケーションサーバの最新情報を自動的に収集することを検討している。今後これらの標準技術の動向に注目しながらプロトタイプシステムを構築し、次期システムへの採用の要否について検討していく。

2.7 SecureNetプログラム

 本年度は第III期応用コース、第IV期基礎コースを開講した。基礎コース(第IV期)では、受講者全員を一般公募によって募集した。募集人員10名を上回る30名の応募があり、選考により15名を受講生とした。受講生の内訳は、社会人11名、大学院生4名であった。修了者は、第III期応用コース13名、第IV期基礎コース15名であった。第IV期基礎コースから中之島センター利用による大阪大学エクステンション対象のコースとして認定され、修了者には大阪大学エクステンション修了証が発行されている。本プログラム修了者が、大阪大学エクステンションの発行第1号となっている。
 今年度の本プログラムの内容は、次のとおりである。第III期応用コースでは、無線LAN、セキュリティ監査、Cyber War をテーマ取り上げ、講義・実習を行った。第IV期基礎コースでは、ネットワーク上の脅威となる様々な問題を取り上げ攻撃の詳細、侵入解析のための基礎知識、盗聴技術とその対策、著明なサービスのセキュリティホール、暗号技術、無線LANの問題、ウイルス対策、IPv6での問題点などを講義で展開した。さらに、2004年度後期(2004年10月~2005年3月)に、大阪大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻の学生29名を対象に本プログラムの一部を演習として実施した。
 また、e-Learningを実施するためのコンテンツ作成を行った。次年度以降にこれらを活用し、よりよい人材の養成に当たる予定である。
 環境整備、および研究成果として、1)計算機環境再現装置の整備、2)利用者の多重帰属を実現するVPNのプロトタイプ実装、3) C2Cコンテンツ配信基盤に関する研究、4)インラインネットワーク計測技術、5)大阪大学におけるPKI認証基盤の構築、に取り組んだ。
 次年度は、本プログラムの最終年度にあたり、成果報告会等を実施する予定である。

2.8 中之島センター

 2004年4月4月にオープンした大阪大学中之島センター(ホームページ: http://www.onc.osaka-u.ac.jp/)は、大阪大学の様々な活動の外部への情報発信拠点として、また大阪大学の同窓会活動の拠点として多くの方に利用されており、ホームページへの訪問者数も2005年3月現在で、54000人を数えるまでになっている。



図 5 ONCロゴ

3~6Fはキャンパス・イノベーションセンター部分で、12の他大学・団体(大阪大学を含む)が入居しており、2月には工学部の同窓会組織である大阪大学工業会の事務所がオープンした。2Fの一部と,7~10Fが大阪大学の施設で(1F,2Fレストランはキャンパス・イノベーションセンターとの共用部分)、各部屋にはTV会議システム、AV機器(2,7F講義室、10Fホール)が備えられており、TV会議システムと連動した配信システムを用いると簡単に授業コンテンツが作成できるようになっている。この遠隔講義システムは、会議やシンポジウムなどの記録にも適しているため、授業以外でも多くの方々に使用して頂いた(遠隔講義システムの詳細は、2004年度の「サイバーメディアフォーラム」に記載)。12月より予約システムが稼働してからは、リアルタイムに利用状況の確認、キャンセル受付、イベント情報の更新が可能になった。また、2004年度後期には、朝日カルチャーセンターと提携した一般市民向け講座「Handai-Asahi中之島塾」がスタートし、外部の受講者の方々に阪大総長印の修了証を発行する「大阪大学エクステンション」が始まった。大阪大学エクステンションでは、セキュアネットプログラムを始め、今後さらに講座を開講していく予定である(新規の申請は2005年度後期からの受付となる予定)。2005年度には、中之島センターと隣接した市立科学館、国際美術館などの施設との共同イベントも企画されている。イベント情報を御覧頂き、イベントの主催者としてだけではなく、興味のあるイベントにも是非参加して頂きたい。最後に、今年度の利用についての統計を掲載する(統計は申請内容を元に算出)。


(ア)年間使用率
使用コマ数 2572 / 総コマ数 9693 = 26.5%
(イ)使用率推移



*1、2月は工事で一部使用不可。
(ウ)センターの利用目的



(エ)遠隔講義システム使用率
利用コマ数 282 / 使用コマ数 2572 = 11.0%

2.9 JGN II

 JGN2JGNIIは、1999年4月から2004年3月まで運用されたJGN(Japan Gigabit Network: 研究開発用ギガビットネットワーク)を 発展させた新たな超高速・高機能研究開発テストベッド・ネットワークとして、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が2004年4月から運用を開始したオープンなテストベッド・ネットワーク環境である。産・学・官・地域などと連携し、次世代のネットワーク関連技術の一層の高度化や多彩なアプリケーションの開発など、基礎的・基盤的な研究開発から実証実験まで推進することを目指している。
 JGNIIは、全国規模のIPネットワーク、光波長ネットワーク、光テストベッドの研究開発環境を提供している。また、2004年8月から日米回線を整備し、国内外の研究機関とも連携して研究開発を推進している。さらに、JGNIIと連携した研究開発拠点として、7か所の直轄研究開発施設(JGNIIリサーチセンター)を整備している。そのうちのひとつがJGNII大阪リサーチセンターであり、サイバーメディアセンター(応用情報システム研究部門)内に設置され、 研究ならびに開発を行っている。
 JGNII大阪リサーチセンターでは、研究課題を「拠点連携型資源共有技術」とし、Gridを中心とした広域連携技術について研究開発を行う。すなわち、広域かつ広帯域ネットワークにおいて効率的な拠点連携型資源共有技術(Gridを中心とした技術)を可能にするためのネットワークプラットホームの研究開発を行う。このため、特に、P2P技術を有効利用することによるセキュアな資源共有環境の構築技術、DiffServモデルの拡張による拠点間ネットワーク帯域制御技術、の研究開発を行う。
 具体的には、次の2つのテーマについて研究開発を進めていく。
 
A) 拠点連携のためのセキュアな資源共有技術
 広域に分散点在しているリソース(高速CPU、大規模データファイル、高性能解析装置等のデバイス)が高速ネットワーク網で連携されている拠点連携型資源環境において、ユーザニーズに対応するためには、資源の最大限の活用を図り、安全、高速かつ自由に大容量データを最適な場所に転送するとともに、デバイスの遠隔共有利用を行う必要がある。アプリケーションからみると、煩雑なNW設定や回線速度の問題、デバイスから発生される大量データのより実時間レベルの解析サービス、セキュリティ対応等の現状課題がある。これら課題のクリアによるユーザへのサービス性向上(動的なネットワーク構成とセキュリティ向上等)によりNWの利用向上に貢献する。
 
B) 広域ネットワークにおける帯域制御連携技術
 本研究では、Grid等のネットワーク上で連携して動作することを特徴とするアプリケーション同士が効率的に計算資源を共有できることを目的に、各計算資源が要求する通信帯域を管理・制御する技術の研究開発を行う。
 DiffServなどによって現在実用化されている帯域制御技術は、ある期間以上存在する集約された通信要求に対して帯域を確保する技術である。また、複数のISPをまたがる帯域制御としては、ISPが配備するBB(Bandwidth Broker)の相互間通信で実現するモデルが研究されているが、特定のユーザあるいはネットワーク(VPNなど)を構築することを目的としており、アプリケーションのレベルからの要求に基づく帯域制御ではない。一方、グリッド等の資源共有のための通信セッション要求は非常にバースト的であり、細かい時間単位での帯域制御を必要とする。このため、アプリケーションの知識を利用して通信を最適化するような新規の技術が必要である。
 従って、本研究開発では、BB(Bandwidth Broker)等の技術を利用して、アプリケーションを統括するサーバとISPなどが連携して動的に帯域を確保し、個別セッションの通信を最適に制御・管理するサーバを開発・試作する。さらに、光ネットワーク技術の進展から波長制御が可能となることを想定し、アプリケーション要求に基づきサーバが波長を制御する手法を評価・試作する。実用化の方向として、グリッドコンピューティングなどのいわゆる計算機間連携の他、企業ネットワークで有望とされる複数拠点でのデータ共有(データグリッド)などへの適用を目指す。

2.10 教育活動

 本部門は情報科学研究科マルチメディア工学専攻、および工学部情報システム工学科目にて応用メディア工学講座を兼任しており、学部、大学院の学生の研究指導を行うとともに、下記の講義を担当した。

3 研究概要

3.1 グリッド基盤技術開発と応用

3.1.1 Telescience Project-高性能観測施設の観測支援システムの構築-

 サイバーメディアセンターでは改組前の旧大型計算機センターである1999年から、University California San Diego (UCSD)のNational Center for Microscopy Imaging Research (NCMIR)の超高圧電子顕微鏡の遠隔利用の要望により、San Diego Supercomputing Center (SDSC)および大阪大学超高圧顕微鏡センターと共同で、電子顕微鏡の遠隔利用システムの構築に取り組んできた (Telescience Project)。一方、バイオ、ナノサイエンス分野において、近年、高性能な電子顕微鏡や放射光施設による構造解析実験が注目を集めつつある。しかし、高性能な観測設備は、導入、管理コストが高く、施設の共同利用を推進する必要がある。現在、共同利用実験施設は以下のような課題を抱えている。
現状では研究者が共同利用実験施設に来て、現地で実験を行っている。観測実験は失敗することもあるため、利用者は再実験の期間も見込んで余分に施設利用期間を申請する。そのため、再実験のための試料準備時間の間も施設が占有されるため、利用効率は低くなる。また、遠隔からの利用者も多く、利用者の都合によるキャンセルも考慮すると、利用効率を維持したままでの日程調整は難しい。
例えば超高圧電子顕微鏡では、生物試料を観測する際には試料を凍結し、観測中に試料が損傷するのを防ぐための対策を取る必要がある。こういったknow-howを研究者側で認知していないことが多く、本来観測可能な試料が観測できないまま研究が滞ってしまう可能性がある。
本研究ではこのような高性能観測実験施設のスループットの向上、施設でのknow-howの蓄積、提供を目指し、Telescience Projectにおいて、遠隔利用システムを含む統合的な観測支援システムの構築に取り組んでいる。

3.1.2 大学間連携のための認証基盤システムの構築

 国立大学の法人化に伴い、国立大学法人では学生向けのサービス向上および業務効率化のため、大学業務のITシステム化が急ピッチで進められている。一方、2005年4月より施行される個人情報保護法にも示されているとおり、大学業務においても個人情報の保護が重要な課題となる。サイバーメディアセンターでは大学の業務システムにおける情報保護を目的として、7大学の情報基盤センターと連携し、Public Key Infrastructure (PKI)を用いた認証基盤システムの検討を進めている。大学間の認証連携により以下のようなサービスを実現できる。
同一ID(認証デバイス)で連携しているすべての大学のネットワークサービスが利用可能になる。
e-Leaningにおけるコンテンツ共有や履修申請、成績登録システムの連携などが考えられる。
単一センターでは実現不可能であった大規模計算のサービスが可能になる。
 本研究では大学間の認証連携を想定したPKI認証基盤を構築することを目的とし、その技術課題について検討する。

3.2 QoSを考慮したネットワークアーキテクチャ

 ビデオ会議や電話(VoIP)など、リアルタイム性や通信帯域に対する要求の厳しいアプリケーションが増加・普及するにつれ、ベストエフォート型を前提に発展してきたインターネットにおいても、多様な通信品質(QoS)要求への対応が重要な課題となってきている。
 本研究部門では、多様な要求品質や信頼性要件などに対応したネットワークアーキテクチャ、および、その効率的、効果的なネットワーク管理・制御手法に関する研究を進めている。本年度の主な研究課題は以下のとおりである。

3.2.1 DiffServを利用した大規模Grid向けQoS制御機構に関する研究

 大規模なデータを取り扱うGridコンピューティングではVirtual Organization (VO)を構成する拠点(サイト)間のデータ転送性能が計算性能に大きく影響を及ぼす。一方、Gridコンピューティングの底辺拡大のために、計算資源を広域に分散したユーザに利用させるための技術も研究開発が行われている。
広域に分散したユーザが質の高い計算を行う場合、使用頻度の低いGridのために、専用の高速回線を準備する必要があり、コストが非常に大きくなる問題がある。このような問題を解決するため、DiffServのAFサービス(最低帯域保障型サービス)を利用し、広域ネットワークを経由する大規模Gridデータ転送向けのQoS技術の研究開発を実施している。

3.2.2 複数ドメインを経由するトラヒックのQoS制御に関する研究

 インターネットにおいてQoS制御を可能とするアーキテクチャとしてDiffServが提案されている。DiffServでは、ドメインと呼ばれる単一ポリシーに従うネットワークごとにQoS制御を行う。この DiffServには最低帯域保証を実現するAFサービス(AF PHB)が規定されている。
 その上で、複数のドメインにわたってAFサービスを提供する場合、各ドメインの入口で到着レートを観測することにより優先度が再設定される。このような状況では、ドメインを経由するごとに品質が劣化する問題があるため、それを防ぐ新たな優先度の設定手法を考える。

3.2.3 イントラドメインモデルにおけるストリームフロー動的クラス割当方式に関する研究

 ストリームアプリケーションの通信をストリームフロー、その他の一般的なアプリケーションの通信を非ストリームフローと呼び、区別する。これらの通信が単一のリンクに集約された場合、TCPとUDPの振る舞いの違いから、双方の相互影響によるサービス品質の劣化が問題となる。この問題を緩和する方法として、ストリームフローと非ストリームフローを別のクラスに収容する方法がある。しかしながら、各クラスの割り当て帯域を固定的に決定するのは困難である。また、それを動的に調整する方法は、大規模なネットワークでは実現しにくい。そこで、この問題を緩和することができ、かつ、動的帯域割り当て方式よりもスケーラビリティの高い、動的クラス割り当て方式について検討する。
さらに、本格的な音声・動画などのストリーム型通信サービスのために、IP網においてもAdmission制御の必要性が高まっている。新規フロー開始時に、シグナリングにより網の空き資源を確認する従来のAdmission制御とは異なり、パケット交換網の特徴を十分考慮し、網内に一時収容した後に輻輳の有無を確認する新しい概念を導入することによりAdmission制御を実現することを考える。

3.3 マルチメディア・コンテンツの配信および効果的活用

 マルチメディア・コンテンツの有効活用は、情報システムの根幹をなすものである。特に、Webコンテンツに代表されるマルチメディア・コンテンツの効果的な配信技術は、一般ユーザの利便性向上の観点から重要な研究課題である。本研究テーマでは、Webコンテンツを多様なネットワーク環境におかれた利用者に対して効果的に配信する技術や、Webコンテンツを利用者ごとに個人化して配信、提示するための技術に関して研究を推進している。
 また、テレビ局などの実際の放送現場における映像コンテンツの有効活用は、放送のディジタル化とともにますます重要性を増している。そこで、映像コンテンツの編集支援の観点から、アノテーションに基づく映像コンテンツの活用支援システムについて研究を推進している。

3.4 ユビキタス環境のためのコンテンツ活用技術

 来るべきユビキタスコンピューティング環境では、固定端末、モバイル端末はもとより、家電製品や街中に埋め込まれたセンサーなど多様な機器が何らかの手段でネットワーク接続され、相互に情報交換を行うことが可能になると考えられる。本研究テーマでは、そのような環境における新しいサービスを開発するための基盤技術について研究を推進している。特に、ユビキタス環境では従来のような固定的な情報検索サービスではなく、様々な状況に応じて提供される情報が変化するような状況依存型サービスが実現できると考え、そのようなサービスを効率的に開発できるようなプラットフォームをP2P (Peer-to-Peer)アーキテクチャおよびモバイルエージェント技術に基づいて実現する手法について研究を推進している。

3.5 ネットワークセキュリティ技術

 詐称したWebアドレス等によるフィッシング詐欺など、インターネット上でのビジネス活動などの日常生活に対する脅威が急速な勢いで増加している現在、従来の研究実験環境の視点だけでなく、現実社会に起き得る犯罪を抑止し、災害などの障害に強いセキュリティを強化したネットワークの構築が急務である。これらの脅威の温床になっているのは、既知の脆弱性を利用した不正動作による既存システムへの侵入と乗っ取りである。また意図的に情報を大量送信し機能をマヒさせるDoS(サービス拒否)攻撃も、システムの可用性を低下させる要因となっている。今後安定した社会基盤と呼ぶに耐え得るネットワーク環境を実現するには、不正行為の検知と対策だけでなく、その予防と抑止、さらには不正行為に耐性を持たせるための技術開発を行うことが必要となる。
 本研究テーマでは、上記の目標を達成するための要素研究項目として、DNS(ドメイン名システム)の信頼性向上と、侵入検知技術の大規模ネットワークでの観測実験による応用手法の開発の2点について研究を推進している。

3.6 フォトニックネットワークに関する研究

3.6.1 λコンピューティング環境における共有メモリに関する研究

 ネットワークにおける高速かつ大容量な伝送を可能とする技術への要求を満たすために、光伝送技術を用いた研究が活発に進められているが、パケット交換技術に基づいたアーキテクチャをとる限り、個々のコネクションに対する高品質通信の実現は非常に難しくなっている。そこで、各ノード計算機を接続している光ファイバを、インターネットとして利用するのではなく専用の通信路として利用し、WDM技術を用いた高速な通信チャネルとして活用するλコンピューティング環境を提案している。すなわち、各ノード計算機と接続しているネットワークを仮想的なリングネットワークとして利用し、このリング上にデータを載せる、あるいは伝送することにより、高速・高品質通信を可能とする技術である。このλコンピューティングを実現するための手法について検討する。

3.6.2 データ粒度可変光パスに関する研究

 コネクション間のデータ転送を行う際に、フォトニックネットワーク上において利用する多重方法にいくつかの手法がある。ここでは、OC (Optical Code)を用いた光パスを用いて伝送を行うことを考える。その上で、データ転送粒度を考慮した伝送方式について検討する。

4 2004年度研究業績

4.1 グリッド基盤技術開発と応用

4.1.1 Telescience Project-高性能観測支援施設の観測支援システムの構築-

 本年度はPRIMEプロジェクトとしてUCSDから学生を3名招待し、そのうちの2名、Ramsin Khoshabeh,とSteve GeistがTelescience Projectに参加した(図 6)。Ramsin Khoshabehはグリッドミドルウェアベースで構築した遠隔操作システムのSession ManagerのIPv6対応を行い、Steve GeistはCCDの遠隔操作システムのWeb Service部分の導入部分を担当した。



図 6 PRIMEプロジェクト

 これまでグリッドミドルウェアベースでの遠隔操作システム実装を進めてきたが、必ずしもインタラクティブな操作においてグリッドミドルウェアが適しているとは限らない。そこで、現在別途研究を進めているPKI認証基盤と同期して、VPNベースでのよりオーバヘッドの少ない遠隔操作システムの構築について検討を進める。本年度はSoftEther CAというPKI認証を用いたVPNソフトウェアを導入した。今後、ビデオ会議システムおよびHDTV伝送システム等のVPN上での利用について検証する。

関連発表論文

(1) 秋山 豊和,“Telescienceグループ進捗報告”,バイオグリッドシンポジウム2005,2005年3月.
(2) Toyokazu Akiyama, Shinji Shimojo, “Design and Implementation of a Remote Operation System for Ultra High Voltage Electron Microscope for Telescience”, Remote Access and Automation Workshop, Mar.ch 2005.
(3) Toyokazu Akiyama, Kazunori Nozaki, Seiichi Kato, Shinji Shimojo, Steven T. Peltier, Abel Lin, Tomas Molina, George Yang, David Lee, Mark Ellisman, Sei Naito, Atsushi Koike, Shuichi Matsumoto, Kiyokazu Yoshida, Hirotaro Mori, “Scientific Grid Activities in Cybermedia Center, Osaka University”, Biogrid Workshop 2005, May. 2005.

4.1.2 大学間連携のための認証基盤システムの構築

 本年度は、以下の項目について検討した。
秘密鍵をPC上で管理した場合、ウイルスやセキュリティホールにより、鍵の有効性が失われる可能性があるため、スマートカードデバイスであるUSBキーまたはICカード等を用いることが望ましい。携帯性、耐久性、コスト等の面から検討を進めているが、現状ではどのデバイスが望ましいかは断言できない。テスト運用では、両デバイスを併用することで、さらに検討を進める。
認証局はプライベート認証局で運用する方法と、証明書を第3者認証機関から発行してもらう方式が考えられる。ユーザに公開するサーバの証明書をプライベート認証局で発行した場合、ユーザの端末に認証局のルート証明書を格納する必要がある。ここで、認証局管理者の過失により不正に発行されたサーバ証明書を用いた悪質サイトによりユーザが被害を受けた場合、認証局運営者(大学側)が訴えられる可能性がある。そこで、「ユーザに公開するサーバの証明書は第3者認証機関から購入し、その他のサーバおよびユーザ証明書のみプライベート認証局から発行する」というアプローチがよいと考えられる。
ディレクトリ情報管理において、DNにユーザの所属等を記述することがあるが、この場合、組織内での人事異動や学生の学部変更などにより証明書の再発行が要求される。証明書には基本的にユーザの属性情報は含まず、DNのディレクトリには組織全体を示す情報のみ記述する。このとき組織内でのDNの一意性を保つために、CNには組織内統一IDを用いる。
属性情報は証明書と分離するため、別途属性情報を管理するためのディレクトリサーバを用意する。また、部局独自の属性情報が必要となる可能性があるため、組織内にディレクトリツリーを構築し、部局独自の属性を付与できる構成とする。ここで、属性名称の重複が発生しないように、命名規則を定めておく。
WebアプリケーションにおいてはSAMLという認証方式の標準化が進められている。PKIとSAMLを組み合わせた認証基盤を構築するため、OpenSAMLを用いたプロトタイプシステムの構築を進める。
OpenLDAPおよびFreeRADIUSというオープンソースソフトウェアと商用のアクセスポイントを用いて、EAP-TLSによるユーザ認証およびユーザの属性に基づく認可決定が実現できることを確認した。上述のディレクトリツリーの構築とあわせて、全学システムとして展開する上での課題について引き続き検討する。
グリッドコンピューティングのコミュニティでは、実組織間に一時的に構築される共同研究のための組織等を仮想組織(Virtual Organization: VO)と呼び、これをどのように実現するかが課題となっている。本研究では上述のような属性ベースでの認可決定が可能な基盤を構築することで、VO管理が実現できると考えている。そこで、その他のリソースについてもPKIおよび属性情報に基づく認証、認可機構を構築し、VO管理の実現を目指す。

関連発表論文

(1) 秋山 豊和,寺西 裕一,下條 真司,“大阪大学におけるPKI認証基盤の検討状況”,国立大学法人7大学情報基盤センター認証研究会,2005年2月.
(2) Toyokazu Akiyama, Yuichi Teranishi, Shinji Shimojo, Yoshio Tanaka, Ayako Komatsu, “Security/VO Management - Interim report of PKI deployment in 7 Computing Centers -”, International Symposium on Grid Computing (ISGC) 2005, April. 2005.

4.2 QoSを考慮したネットワークアーキテクチャ

4.2.1 DiffServを利用した大規模Grid向けQoS制御機構に関する研発

 Gridにおける大規模なファイル転送をターゲットに、個別の通信セッションに対してQoSを提供する技術の研究開発を行っている。本研究では、フローの特性や広域網を経由して伝送されるデータサイズ等に大規模なデータを取り扱うGrid (DataGrid)を想定し、比較的コストが低く、ISP等を通じてサービスが入手可能なDiffServのAFサービスを利用した方式を提案している。
A) 動的予約帯域調整方式
 本方式はDataGridにおけるデータサイズやフローの発生確率等を想定し、個別のフローが動的に自分の予約済み帯域を調整することで、各フローに対する帯域の予約がなるべく失敗しない(呼損率を低下させる)よう制御するとともに、ユーザとの最初の契約を極力保障することを目的としている。


図 7 動的な予約帯域調整

 本年度は基本的な方式の提案と典型的なネットワーク環境での性能評価をシミュレーションによって実施した。シミュレーションでは一般のISP等のネットワークを利用することを想定し、ユーザは最低帯域保障型のサービスを利用し、広域網の期間部分に他のトラヒックがある場合と無い場合についてデータを収集した。その結果、呼損率、スループットにおいて、他の方式より良い性能を得ており、性能の保証に関しても他の方式と同等もしくはより良い性能を得ることができた。


図 8 方式図


図 9 シミュレーションモデル

B) 過剰マーキングによる個別フロー品質保証方式
 Gridのフロー全体に対する帯域の割付の方式以外に、個別フローに対してユーザから要求された性能を保証する方式も重要である。一般にTCPではユーザと契約した帯域と実際のTCPのスループットは一致せず、輻輳している環境では契約以下の性能しか得ることができない。
 そのため、DiffServのAFサービスを利用してユーザの要求する性能を満たすため、各フローに対して過剰に受付することで輻輳時の個別フローの性能を保証する方式を提案した。
 本年度はフロー毎に変化する各要求に対して、どの程度の上乗せを実施すれば同一の資源量で性能を保証しつつ多数の要求を処理することが可能であるかの測定をシミュレーションによって実施した。

関連発表論文

(1) 野呂 正明, 長谷川 一郎, 馬場 健一, 下條 真司, “Grid における大量データ送信に適した品質保証方式”, 電子情報通信学会技術研究報告IA2004-22, pp. 21-16, January 2005.

4.2.2 複数ドメインを経由するトラヒックのQoS制御に関する研究

 インターネットにおいてQoS制御を可能とするアーキテクチャとしてDiffServが提案されている。 DiffServはネットワークの入口でパケットをクラス分けし、クラスに対応したDiffServコードポイントを設定する。ネットワーク内部ではコードポイントを参照してクラスごとにパケットの転送規則を決定する。ネットワーク内部におけるパケットの転送規則としてAF PHBが標準化されている。AFはパケットに優先度を設定するPHBであり、このPHBを用いることにより最低帯域保証サービスを提供することができる。
 まず、AFサービスを複数のドメインを経由して提供する場合について考える。最低帯域保証サービスでは、ネットワークの入口でユーザが送信するパケットのうち、保証する帯域分のパケットをINパケットとし、その他のパケットをOUTパケットとして異なるコードポイントを設定する。そして、INパケットを高い確率で宛先に転送することによってユーザに対して最低帯域保証サービスを提供する。この最低帯域保証サービスを、複数のドメインを経由して提供する場合、ドメイン境界においてINからOUTへのコードポイント再設定が発生し、最低帯域保証サービスのサービス品質が劣化する可能性がある。本研究では、この品質劣化を防ぐため、新しいコードポイント再設定方式を提案する。提案方式ではドメイン間専用のコードポイントを用い、ユーザ・ドメイン間でINに設定されたパケットをOUT パケットと区別することにより、INから再設定されたパケットをINに再々設定することを可能とする方式である。本研究では、提案方式を評価するためシミュレーションを行った。その結果、提案方式では従来の方式に比べ、複数ドメインを経由するフローの品質を改善することを示した。


図 10 提案したDSCP再設定方式

関連発表論文

(1) Shoichi Motohasa, Hiroyuki Fukuoka, Ken-ichi Baba and Shinji Shimojo, “An effective re-marking scheme for DiffServ AF service through multiple domains”, IEICE Transactions on Communications, vol. E87-D, no. 12, pp. 2569-2577, December 2004.

4.2.3 イントラドメインモデルにおけるストリームフロー動的クラス割当方式に関する研究(東京工業大学大学院理工学研究科山岡研究室との共同研究)

 次に、ひとつのドメイン内においてTCPとUDPが混在する場合を考える。本研究では、ストリームアプリケーションの通信をストリームフロー、その他の一般的なアプリケーションの通信を非ストリームフローと呼び、区別する。これらの通信が単一のリンクに集約された場合、TCPとUDPの振る舞いの違いから、双方の相互影響によるサービス品質の劣化が問題となる。この問題を緩和するひとつの方法は、ストリームフローと非ストリームフローを別のクラスに収容する方法である。しかし、各クラスの割り当て帯域を固定的に決定するのは困難である。また、それを動的に調整する方法は、大規模なネットワークでは実現しにくい。そこで、我々は、この問題を緩和することができ、かつ、動的帯域割り当て方式よりもスケーラビリティの高い、動的クラス割り当て方式を提案する。提案方式はDiffServ AF PHBの枠組みを用いて実現可能である。提案方式では、非ストリームフローをいくつかのクラスに分類し、ストリームフローを各クラスの性質や状況を考慮して、動的に割り当てる。また、クラス割り当ての際、クラス本来の非ストリームフローの極端な品質劣化を抑制するため、ストリームフローに非ストリームフローよりも高い廃棄優先度を設定する。本論文では、はじめに非ストリームフローの分類と各クラスの性質の違いについて述べ、次に、廃棄優先度の設定について議論する。その後、動的クラス割り当てを行うアルゴリズムを提案し、計算機シミュレーションによる評価実験を行う。実験結果より、提案方式がトラヒックの変化に対応しながら、ストリームフロー、非ストリームフローに一定の品質を提供できることが示された。


図 11 ストリームフロー収容方式

 本格的な音声・動画などのストリーム型通信サービスのために、IP網においてもAdmission制御の必要性が高まっている。シグナリングに基づく方法を用いて、Admission制御を実現することが考えられるが、パケット到着の特性まで考慮した制御を実現することは難しい。そこで本研究では、到着したフローを一時収容し、一定時間後に輻輳確認を行うことでAdmission制御を実現する、パケット交換網のための新しいAdmission制御技術、Tentative Accommodating and Congestion Confirming Strategy (TACCS)を提案する。TACCSでは、一時収容を行うことにより、到着したフローが収容された後のパケット到着特性を反映したAdmission制御を、事前に資源情報を収集する必要なく実現できる。MX/M/c/cとM/G/1/Kの2つの待ち行列システムを組み合わせてTACCSをモデル化し、理論解析を行った結果から、TACCSは、網内のノード群の自律的動作により、集中管理主体に頼らないAdmission制御を実現可能にする技術であることを示すとともに、パラメータ設定のためのガイドラインを与えた。


図 12 Admission制御モデル

関連発表論文

(1) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Dynamic class assignment for stream flows considering characteristics of non-stream flow classes”, IEICE Transactions on Communications, vol. E87-B, no. 11, pp. 3242-3254, November 2004.
(2) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Class assigning management for stream flows considering characteristics of non-stream flow classes”, in Proceedings of Networks 2004, pp. 75-80, June 2004.
(3) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Drop precedence mapping on dynamic class assignment method; simplified one link model”, in Proceedings of CSNDSP 2004, pp. 416-419, July 2004.
(4) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Concept of admission control in packet switching networks based on tentative accommodation of incoming flows”, in Proceedings of iwQoS 2005, March 2005. (submitting).
(5) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Proposal of Tentative Accommodating and Congestion Confirming Strategy; a novel admission control strategy for packet switching networks”, in Proceedings of IEEE Globecom 2005, March 2005. (submitting).
(6) 安川 健太, 馬場 健一, 山岡 克式, “イントラドメインモデルにおけるストリームフロー動的クラス割当方式の評価”, 電子情報通信学会技術研究報告IN2004-42, pp. 37-42, July 2004.
(7) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Evaluation of dynamic class assignment method with traffic information exchange”, 電子情報通信学会通信ソサイエティ大会BS-10-2, pp. SE33-SE34, September 2004.
(8) 安川 健太, 馬場 健一, 山岡 克式, “パケット交換網のための新しいAdmission 制御技術TACCSの提案”, 電子情報通信学会総合大会B-7-68, March 2005.
(9) 安川 健太, 馬場 健一, 山岡 克式, “パケット交換網のためのAdmission 制御技術TACCS の提案と性能解析”, 電子情報通信学会技術研究報告IN2004-202, pp. 17-22, March 2005.

4.3 マルチメディア・コンテンツの配信および効果的活用

4.3.1 Webコンテンツ配信の高度化に関する研究

Webコンテンツの配送時間制御および配送順序制御
 Webコンテンツは通常HTMLドキュメントとそれに埋め込まれた画像等のインラインオブジェクトから構成され、通常、サーバからの配送順序に従ってブラウザに表示されていく。本研究ではインラインオブジェクトの配送時間および配送順序を制御できる機構を提案し、その有効性を示してきた。
 本年度は、提案機構を特殊なプロトコルを利用せず通常のWeb転送プロトコルであるHTTPを用いて実現する方法を考案しその評価を行うとともに、これまでの研究成果をとりまとめACM Transactions on Internet Technologyへ投稿し、採録が決定した。

関連発表論文

(1) Kaname Harumoto, Tadashi Nakano, Shinya Fukumura, Shinji Shimojo, and Shojiro Nishio, “Effective Web Browsing Through Content Delivery Adaptation,” to appear in ACM Transactions on Internet Technology, Vol. 5, No. 4, November 2005.

WWWコンテンツの個人化手法に関する研究
 WWWで提供されるページ群は、ほとんどが固定的なリンク構造で全体が構成されている。そのため、ユーザごとに多様なナビゲーションパターンがあるにも関わらず、WWWサイトのリンク構造は一つしかなく、ユーザによってはリンクを辿るという動作を何度も繰り返さなければならない状況がある。
 そこで本研究では、ユーザのページ視聴履歴からナビゲーションパターンを検出し、それに基づいてページの構成ならびにリンク構造を動的に変更して提示する手法を提案してきた。今年度は、これまでの成果をとりまとめた論文が下記の学術論文誌に採録された。

関連発表論文

(2) 福村 真哉, 中野 賢, 春本 要, 下條 真司, 西尾 章治郎, “ユーザの視聴傾向に基づくWebコンテンツ個人化提示システム,” 情報処理学会論文誌: データベース, Vol. 45, No. SIG 14 (TOD 24), pp. 12-22, December 2004.

4.3.2 映像コンテンツの意味構造化の研究

 昨今のマルチメディア・コンテンツのディジタル化に伴い、コンテンツの再利用性の向上、高度な知的コンテンツの創出が期待されている。一般にこれらの実現には、コンテンツの属性や意味内容に基づいた構造化が必要とされる。これまで、まとまりのある意味内容をもつ映像素材の抽出のために、意味グラフを用いた手法の提案・開発を行ってきた。
 これら意味構造化の応用システムにおいて、メタデータは必要不可欠な要素であり、その作成手法は、根本的な問題としてDublin Coreの時代より議論されている。作成手法の実用性を考慮すれば、人手を積極的に介在した手法と既存のメタデータの連携を実現することが現実的である。その上でメタデータ作成の目的や条件、および恩恵を勘案した上での実運用を考える必要がある(図 13)。この検証として、第86回全国高校野球選手権大会において、インターネットのコンテンツ制作を目的としたメタデータ作成の実証実験を行った。この実験系は、メタデータの作成手段として音声認識を用いたボイスタグシステムを利用し、メタデータ作成からコンテンツまでの一貫した実運用系の構築を試みるものである。加えて、様々な放送用のメタデータの連携と活用における必要条件についての考察を行った。



図 13 メタデータ利用の概念図

関連発表論文

(1) Tomohisa Akafuji, Kaname Harumoto, Keishi Kandori, Koiti Hasida, and Shinji Shimojo, “An Annotation Method and Application for Video Contents Based on a Semantic Graph”,” in Proceedings of 5th Pacific Rim Conference on Multimedia (PCM2004), Advances in Multimedia Information Processing - PCM2004, LNCS 3331, Part I, pp. 478-486 , Springer, December 2004.
(2) Tomohisa Akafuji, Kaname Harumoto, Mitsuru Yasukata, Yozo Yamamoto, Masaaki Kobayashi, Keishi Kandori, and Shinji Shimojo, “Creation and Application of Metadata for Content Production in Broadcasting Stations”, to appear in Proceedings of EUROMEDIA 2005, April 2005.
(3) 赤藤 倫久, 春本 要, 香取 啓志, 安方 満, 山本洋三, 小林 正明, 下條 真司, “コンテンツ制作における放送用メタデータの作成と活用”, 映像情報メディア学会誌(投稿中).
(4) 赤藤 倫久, 春本 要, 香取 啓志, 橋田 浩一, 下條 真司, “意味グラフに基づく映像コンテンツのアノテーション手法とその応用”, 映像情報メディア学会誌(投稿中).

4.4 ユビキタス環境のためのコンテンツ活用技術

4.4.1 位置情報に基づくP2Pネットワークの動的構成手法

 状況依存型アプリケーションで特に重要であると考えられる位置情報を利用した検索要求に対して、既存のP2Pネットワークでは検索メッセージを位置に関係なくフラッディングさせるため膨大なトラフィックが発生するという問題がある。これは、既存のP2Pネットワークが端末の位置や情報に関する位置とは独立に構成されているのが原因である。そこで本研究では、位置的な範囲を限定した検索メッセージを効率的に伝播させるために、端末の位置情報に基づいてP2Pネットワークを構成する手法(LL-Net: Location- based Logical Network)を提案している。
 LL-Netでは、対象領域全体をエリアに分割し、エリア間ネットワークとエリア内ネットワークにより論理ネットワークを構成することにより、特定エリアへの検索メッセージの伝播を効率化する(図 14)。特に今年度は、エリアを階層的に捉えることによってさらに検索メッセージの伝播を効率化する手法を考案し、モバイル端末の出現、移動、消滅に応じて動的にネットワーク構成を変更するためのプロトコルを設計した。また、端末の故障を検知しリンクを修復するプロトコルを新たに考案した。提案手法のシミュレーション評価により、既存のP2Pネットワークよりも検索メッセージ数を大幅に削減できることを示した(図 15)。



図 14 LL-Netの階層化とメッセージ伝播



図 15 LL-Netと従来のP2Pネットワークのトラフィック比較

関連発表論文

(1) Yu Kaneko, Kaname Harumoto, Shinya Fukumura, Shinji Shimojo, and Shojiro Nishio, “A Location-Based Peer-to-Peer Network for Context-Aware Services in a Ubiquitous Environment”, in Proceedings of 2005 Symposium on Applications and the Internet Workshops, pp. 208-211, February 2005.
(2) 金子 雄, 春本 要, 福村 真哉, 下條 真司, 西尾章治郎, “位置情報に基づくP2Pネットワークにおけるエリアの階層化”, 電子情報通信学会第16回データ工学ワークショップ(DEWS2005)論文集, 1B-o1, March 2005.

4.4.2 ユビキタス環境におけるプライバシ保護手法

 ユビキタス環境においては、利用者の嗜好や状況などに応じて情報を推薦するような多様な状況依存型サービスが構築されると考えられる。このような状況依存型サービスを享受するためには、利用者は自身の年齢、職業、嗜好、位置などの個人情報を利用者に何らかの形で開示する必要があるが、個人情報を何の制御も行わず開示した場合、プライバシが侵害されるリスクが発生する。
 そこで本研究では、サービス提供者が必要とする個人情報を指定し、利用者のエージェントが自身の個人情報の開示レベル(粒度)を調整して開示するアーキテクチャを提案した(図 16)。特に、個人情報の粒度制御においては、個人情報を開示されることによるリスクを個人が特定されるリスク(特定確率)と定義し、利用者が指定する特定確率の上限値をもとに、開示する個々の個人情報の粒度をサービス品質ができるだけ高くなるように制御する手法を提案した。



図 16 個人情報制御アーキテクチャ

関連発表論文

(1) 宮本 崇弘, 山田 和広, 竹内 亨, 奥田 剛, 春本 要,下條 真司, “情報源の異種性を隠蔽し動的に粒度調整可能なユーザプロファイル生成機構”, 情報処理学会 マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2004)シンポジウム論文集, July 2004.
(2) Takeshi Okuda, Takahiro Miyamoto, Susumu Takeuchi, Kaname Harumoto, and Shinji Shimojo, “Unified Architecture for Managing User Profiles”, in Proceedings of 2005 Symposium on Applications and the Internet Workshops, pp. 192-195, February 2005.
(3) 宮本 崇弘, 竹内 亨, 奥田 剛, 春本 要, 有吉 勇介, 下條 真司, “プライバシとサービス品質のトレードオフを考慮した個人情報制御機構の提案”,, 電子情報通信学会第16回データ工学ワークショップ(DEWS2005)論文集, 6A-o1, March 2005.

4.5 ネットワークセキュリティ技術

4.5.1 DNSの信頼性とセキュリティの向上

 DNSは「osaka-u.ac.jp」などのドメイン名が示すIPアドレスやメール配送先などの情報を対応付ける役割を果たすインターネットに欠かせない基盤技術の一つである。
 DNSは基本的に公開情報を提供する全世界に開かれたシステムであり、その詐称行為は大きな経済的被害を及ぼす。また、次世代インターネットIPv6でのアドレス長増加や詐称防止のための認証機能に対応するためDNSが蓄積する情報は、肥大化の一途を辿っており、現在のプロトコルでは一度に運べるデータ長が足りなくなるなどの問題が生じている。
 本研究では、DNSSEC認証を行う際に発生するトランスポート上の問題について、以下の解析と提案を行った。
 現在DNSではUDPペイロード長を512バイト以下に制限し、それを越える場合はTCPを使う。しかしこの方式では大きくなるペイロード長に対してUDPだけでは対応できず、TCPでの再処理に伴うオーバヘッドが増えるおそれがある。そこで拡張プロトコルEDNS0により、UDPでも数キロバイトまでのペイロードを運ぶ方法が提案されている。しかし、この場合IPパケットの最大長を越えると、UDPパケットが分割されてしまい、信頼性が下がる恐れがある。
 本研究では実トラフィックを収集したシミュレーションの結果、DNSSEC認証を導入した場合、IPv6上で単一パケットで送れるUDPの最大長1232バイトを越えるペイロードの割合は全体の30%近くに達することを示した(図 17、図 18)。



図 17 実トラフィック収集情報から導出したシミュレーションによるDNSSEC認証後のペイロード長の状況



図 18 DNSSEC認証前と認証後による変化(Additional Recordの有無による変化を含む)

4.5.2 侵入検知技術システムによる大規模ネットワークでの観測実験

 ネットワーク上のパケットの傾向やその他の事象を監視し、セキュリティ事故を予防しようとする侵入検知技術やIDS(侵入検知システム)の導入事例が増えている。しかし、ウイルス等不正アクセス情報を検知するための侵入パターンが多様化するにつれ、単独の侵入検知システムでは不正アクセスを予見し切れない事例が増加している。また、単なるパターンマッチングだけでなく、別種のプロトコルの挙動の相関を見つけ、ネットワーク上に起こる事象を解析予見する方法も必要となっている。
 本研究では、運用ネットワークからの情報収集を行う際、侵入システム上の異なる実装を比較した上で、実時間の監視には報告情報量の多いGUIインターフェースを使用したもの、また長時間の情報蓄積には単機能のパケット収集装置を使い、別途データはオフラインで解析することが有効であることを示した。

関連発表論文

(1) Rikitake, K. “A Study of DNS Transport Protocol for Improving The Reliability (信頼性向上のためのDNSトランスポートプロトコルの研究)”, Ph.D. dissertation, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Osaka, Japan (2004).
(2) 力武 健次, 野川 裕紀, 田中 俊昭, 中尾 康二, 下條 真司:, “IPv6移行に伴うDNSペイロード長増加に関する解析と考察”, 信学論(B), Vol. J87-B, No. 10, pp. 1552-1563 (2004).
(3) Rikitake, K., Nogawa, H., Tanaka, T., Nakao, K. and Shimojo, S., “Internet Security Management on Teleworking Environment”, Proceedings of the Sixth Japan Telework Society Conference, Japan Telework Society, pp. 85-90(2004).
(4) Rikitake, K., Nogawa, H., Tanaka, T., Nakao, K. and Shimojo, S., “An Analysis of DNSSEC ransport Overhead Increase”, IPSJ SIG TechnicalReports 2005-CSEC-28 , March 2005.

4.6 フォトニックネットワークに関する研究

4.6.1 λコンピューティング環境における共有メモリアクセス手法に関する研究(大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻村田研究室との共同研究)

 まず、λコンピューティング環境上に仮想光リングを構成し、光リング上にデータを載せることにより、波長を仮想的な共有メモリとして利用するモデルを対象としている。このモデルでは、広域分散システムにおける共有メモリと通信チャネルの区別の必要がなくなり、計算機間の高速なデータ交換が可能になる。この共有メモリを用いて並列計算を行う際のメモリアクセスの競合回避方法、データの一貫性制御、同期方法の提案、評価を行っている。具体的には、並列計算用のアプリケーションプログラムを用いたシミュレーションを行い、その結果、広域な光リング上での共有メモリシステムが有効であること、特に同期処理が少ないプログラムにおいて並列化効果の高いことがわかった。
 次に、分散計算を行う場合に、λコンピューティング環境構築技術のうちのひとつである、各ノード計算機上に存在する共有メモリを高速にアクセスする手法を実装し、その性能を明らかにする。具体的には、日本電信電話株式会社フォトニクス研究所が開発している情報共有ネットワークシステム(AWG-STAR システム) を用いる。その結果、AWG-STAR システムによる分散計算は、共有メモリへの書き込み回数に大きく依存し、現状ではボトルネックとなっていることがわかった。そこで、効率よく共有メモリへの書き込みを行うことによりAWG-STAR システムの性能を向上させることが可能であることを示した。
 また、WDM技術を利用してグリッド計算を高速に行うλコンピューティング環境の実現形態として、WDM技術に基づくフォトニックネットワークであるAWG-STARシステムを用いてグリッド計算環境を構築した。すなわち、グリッド計算のデファクト標準となっているGlobus Toolkitをミドルウェアとして導入できるように、分散計算のためのMPIライブラリであるMPICH-G2をAWG-STAR上で動作可能とした。そのために、AWG-STARの共有メモリシステムを利用できるメッセージパッシング手法を提案し、実装している。さらに、Globus Toolkitに基づいたMPIアプリケーションを実行し、構築したシステムが正常に動作することを確認し、また、実現システムにおける分散計算の性能を評価した。その結果、AWG-STARを用いた共有メモリ上のデータ交換の性能は、共有メモリへのアクセス回数、データサイズに大きく影響されることが明らかになった。これは、グリッド計算をより高速に実行するλコンピューティング環境の設計に指針を与えるものである。

関連発表論文

(1) Hirohisa Nakamoto, Ken-ichi Baba and Masayuki Murata, “Proposal and evaluation of realization approach for a shared memory system in λ computing environment”, IEICE Transactions on Communications, Special Issue on Next Generation Photonic Network Technologies, November 2004. (submitting).
(2) Hirohisa Nakamoto, Ken-ichi Baba and Masayuki Murata, “Shared memory access method for a λ computing environment”, in Proceedings of IFIP Optical Networks and Technologies Conference (OpNeTec), pp. 210-217, October 2004.
(3) 中本 博久, 馬場 健一, 村田 正幸, “λコンピューティング環境における共有メモリアクセス手法の提案”, 電子情報通信学会技術研究報告PN2004-29, vol. 104, no. 85, pp. 43-48, May 2004.
(4) 中本 博久, 馬場 健一, 村田 正幸, “λコンピューティング環境における共有メモリシステム実現手法の提案と評価”, 電子情報通信学会技術研究報告IN2004-283, pp. 197-202, March 2005.
(5) 谷口 英二, 馬場 健一, 村田 正幸, “λコンピューティング環境構築のための共有メモリシステムの実装と評価”, 電子情報通信学会技術研究報告PN2004-43, vol. 104, no. 255, pp. 57-62, August 2004.

4.6.2 データ粒度可変光パスに関する研究(大学院工学研究科電子情報エネルギー工学専攻北山研究室との共同研究)

 光符号を用いたパス設定には波長ルーティングに基づいたネットワークにおける固定的なデータ粒度に起因する様々な問題を解決する可能性がある。本研究では、ひとつの波長に複数のパスを設定することにより利用率を向上させることを目指し、光符号ラベルパスと光符号分割多重パスのデータ粒度を考慮して性能を明らかにする。併せて、それぞれの手法を利用するための光クロスコネクトのアーキテクチャを示している。光符号ラベルパスにはオン-オフトラフィックモデルを適用し、光符号分割多重パスには多元接続干渉(MAI)を主な性能要因とする近似モデルを用いて性能を解析した。その結果、提案した2種類の光パス設定手法にはそれぞれの適用領域があることがわかった。

関連発表論文

(1) Shaowei Huang, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Variable-capacity optical paths: Optical-code labeled path vs. OCDM path”, in Proceedings of 9th OptoElectronics and Communications Conference/3rd International Conference on Optical Internet (OECC/COIN 2004), pp. 124-125, July 2004.
(2) 黄 少偉, 馬場 健一, 村田 正幸, 北山 研一, “データ粒度可変光パス: 光符号ラベルパスvs. 光符号分割多重パス”, 電子情報通信学会技術研究報告PN2004-35, pp. 7-12, August 2004.

5 社会貢献に関する業績

5.1 教育面における社会貢献

5.1.1 学外活動

(1) 大阪市立大学 創造都市研究科都市情報学専攻ワークショップ(下條)
(2) 東京工業大学 数理・計算科学特論第4(下條)
(3) 放送大学 非常勤講師(下條)
(4) 東京工業大学 非常勤講師(下條)
(5) 神戸大学工学部 日本経済の課題(下條)
(6) 神戸大学大学院自然科学研究科 非常勤講師(馬場)
(7) 大阪大学社会人教育講座 セキュア・ネットワークセミナー2004(下條、馬場、野川)

5.1.2 研究部門公開

2004年度いちょう祭
 4月29日、30日の2日間にわたり、いちょう祭が開催された。サイバーメディアセンターでは、センターが提供している情報基盤サービスの紹介や全国共同利用設備であるスーパーコンピューター、バイオグリッドシステム、データグリッドシステム、SecureNet、国際共同研究(テレサイエンス)などを紹介した。特に、CAVEシステム見学では、そのしくみに関する質問が多数寄せられた。
 2005年度はいちょう祭の開催が吹田キャンパスから豊中キャンパスに移行し、様々な講習会や、ポスター展示、体験セミナーなどが行われる予定であり、大幅な内容拡充がなされる予定である。



写真 1 いちょう祭での公開の様子

SC2004への出展
 2004年11月5日(土)~11月12日(金)にかけて、米国ペンシルバニア州ピッツバーグでSC2004が開催された。SCはハイパフォーマンスコンピューティング及びネットワーキングに関する最先端技術に関する国際会議と研究展示会からなるものであり、毎年11月に米国の主要都市で開催されている。SC2004では、これらの技術に関する研究開発に従事する研究者や技術者が “bridging community” のキーワードのもと世界各国から集まり、参加者間の意見交換・議論が活発に展開された。
 本研究部門では、サイバーメディアセンターとして2000年(SC2000)より毎年出展を行っており、今回がResearch Exhibitorとして5回目の出展となった。今年度は、昨年に引き続きITプログラム「スーパーコンピュータネットワークの構築」(通称バイオグリッド・プロジェクト)の研究成果、およびJGNⅡの研究成果を広く公開した。
  期間中、多数の来場者が我々のブースを訪れ、研究者らと来場者との間で活発な議論や情報交換が交わされた。今回のSC2004においても外部の関心や評価を肌で感じる貴重な機会を得ることができ、サイバーメディアセンターの研究成果を広く公表することに成功した。



写真 2 SC2004における展示の様子

5.2 学会活動

5.2.1 国内学会における活動

(1) 第122回 マルチメディア通信と分散処理(DPS)研究会 「高速通信・モバイルエージェント」座長 ((寺西))

5.2.2 論文誌編集

該当なし

5.2.3 国際会議への参画

(1) HPC Asia 2004 BioGrid Workshop Chair(下條)
(2) HPC Asia 2004 Program Committee member(下條)
(3) SC2004 Program Committee member(下條)
(4) IEEE Super Computing 2004 (SC2004) Program Committee member(下條)
(5) The Thirteenth IEEE International Symposium on High-Performance Distributed Computing 'HPDC-13' Program Committee member(下條)
(6) The 2005 International Symposium on Applications and the Internet (SAINT2005), International Liaison Chair(下條)
(7) The 2005 International Symposium on Applications and the Internet (SAINT2005), Financial Chair(馬場)

5.2.4 学会における招待講演・パネル

(1) 電子情報通信学会 2004年ソサイエティ大会 チュートリアル講演「グリッドコンピューティングと光ネットワーク技術」(馬場)
(2) 電子情報通信学会 フォトニックネットワーク研究会 招待講演「グリッドコンピューティングにおけるフォトニックネットワーク技術の動向」(馬場)
(3) ASIA grid summit (Seoul, Korea) 「Biogrid Project in Kansai」(下條)
(4) e-science workshop (Seoul, Korea) 「Telescience activity in BioGrid Project」(下條)

5.2.5 招待論文

該当なし

5.2.6 学会表彰

該当なし

5.3 産学連携

5.3.1 バイオグリッドセンター関西

 文部科学省ITプログラム「スーパーコンピュータネットワークの構築」(通称バイオグリッドプロジェクト)での研究開発成果の産業界での活用を促進し、かつ、産学連携による応用研究開発を推進するため2004年2月に特定非営利活動法人(NPO法人)バイオグリッドセンター関西を立ち上げた。このNPO法人と協力して、学外の企業や研究組織との研究会やシンポジウムを開催し活発な研究交流と人材育成を行っている。



図 19 NPO法人バイオグリッドセンター関西の概要



図 20 バイオグリッドシンポジウム2005

 本年度は、その活動の一環として、NPO法人バイオグリッドセンター関西と「バイオグリッド関連技術の実証実験環境の構築と応用研究」というテーマで共同研究を行った。この共同研究ではNECを始めNPO法人参加企業複数社の協力を得て、生体シュミレーションソフトウェアのグリッド環境下での利用の実証的実験を実施することができた。
 また、この実証的実験環境の構築にあたっては、サン・マイクロシステムズ株式会社と日本ヒューレット・パッカード株式会社より最新のPCクラスター設備をサイバーメディアセンターへ寄贈頂き、これらを繋いだグリッド環境を整えた。
① Sun Fire V60xシリーズ ( 10ノード )
各ノードの主なスペック
 CPU: Intel Xeon 3.2GHz,
 Memory: 4GB, HDD: 73GB x 2
② HP Integrity rx2600シリーズ ( 4 ノード)
各ノード主なスペック
 CPU: Intel Itanium2 1.5GHz x 2 (Dual構成),
 Memory: 4GB, HDD: 73GB x 2



図 21 グリッド実証実験環境の概要

5.3.2 企業との共同研究

(1) ケイディーディアイ株式会社「網内計測情報に基づくQoS制御技術の研究」
(2) 株式会社ケイディーディーアイ研究所「ネットワーク防御技術に関する研究」
(3) 株式会社富士通研究所「ネットワークセキュリティ攻撃の研究」
(4) 特定非営利活動法人「バイオ研究分野向けグリッドサービスの応用研究開発」
(5) 独立行政法人 情報通信研究機構「次世代高機能ネットワーク基盤技術・利活用技術に関する研究開発」プロジェクトにおける拠点連携型資源共有技術に関する研究開発
(6) 独立行政法人 情報通信研究機構「拠点連携型資源共有のための波長ネットワーク構成法」に関する研究開発

5.3.3 学外での講演

(1) Grid World2004 グリッド協議会記念シンポジウム2004:「バイオグリッドの近況について」
(2) 筑波大学計算科学研究センター発足シンポジウム:「e-Science: ITと科学の幸せな結婚とは」
(3) 戦略的基盤ソフト開発プロジェクトシンポジウム:「バイオインフォマティクスと戦略ソフト」
(4) 「電子政府推進シンポジウム2004関西」~安心・安全な電子政府と個人情報保護~:「安心・安全な電子政府・電子自治体と個人情報保護」
(5) ユビキタスシティおおさかシンポジウム2004:「ユビキタスがつなぐまち・暮らし・ビジネス」
(以上 下條)

5.3.4 特許

該当なし

5.4 プロジェクト活動

(1) 情報通信研究機構 JGNII (下條、馬場、秋山、伊達)
(2) 文部科学省 科学技術振興調整費 振興分野人材養成 「セキュアネット構築のための人材育成」(下條、馬場、野川、寺西、秋山)
(3) 日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(B)「DiffServ機構を用いたストリ-ム型通信のQoS割当て制御に関する研究」(馬場)
(4) 21世紀COEプログラム「ネットワーク共生環境を築く情報技術の創出」(下條、馬場)
(5) 文部科学省 科学研究費補助金特定領域研究 C 「IT の進化の基盤を拓く情報学研究」 A05 班 「Grid 技術を適用した新しい研究手法とデータ管理技術の研究」(下條、秋山、加藤、野崎)
(6) 文部科学省科学技術振興費 IT プログラム 「スーパーコンピュータネットワークの構築」(下條)
(7) 総務省「情報通信分野の研究開発」ユビキタスネットワーク技術の研究開発(ユビキタスネットワーク認証・エージェント技術)(下條、春本)
(8) 文部科学省 科学技術振興調整費 わが国の国際的リーダーシップの確保「アジアグリッドイニシアチブ」(下條)
(9) 日本学術振興会 科学研究費補助金 若手(B)「光グリッド環境における光共有メモリアーキテクチャに関する研究」(馬場)
(10) 日本学術振興会 科学研究費補助金若手(B) 「IPv6マルチホーム環境におけるグリッド技術を用いた経路選択手法に関する研究」(秋山)
(11) 文部科学省 科学技術振興調整費 重要課題解決型研究等の推進「セキュリティ情報の分析と共有システムの開発」(下條)

5.5 その他の活動

(1) 特定非営利活動法人 バイオグリッドセンター関西 理事長
(2) 文部科学省科学技術政策研究所 科学技術動向研究センター 専門調査員
(3) 関西IT推進本部 関西ITナビゲータ
(4) 近畿情報通信協議会 幹事
(5) 大阪市北地区まちづくり推進協議会 ナレッジ・キャピタル企画委員会 委員
(6) 財団法人関西情報産業活性化センター 「行政・地域情報化フォーラム」アドバイザー
(7) 財団法人 大阪科学技術センター ITBL技術普及・利用動向調査委員会 数理・情報科学分科会」委員
(8) 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 グリッド研究開発実施委員会委員
(9) 株式会社 セキュアウェア 顧問
(10) 独立行政法人 情報通信研究機構 通信・放送融合技術開発テストベッド利用審査委員会委員
(11) 独立行政法人 情報通信研究機構 創造的情報通信技術研究開発推進制度に係る評価委員会委員
(12) 独立行政法人 情報通信研究機構 国際共同研究助成制度に係る評価委員会委員
(13) 独立行政法人 情報通信研究機構 JGNII副総括責任者
(14) 独立行政法人 理化学研究所 ゲノム科学総合研究センターゲノム情報科学研究評価委員会委員
(15) 独立行政法人 日本学術振興会産学協力研究委員会 インターネット技術第163委員会 副委員長
(16) 社団法人 情報処理学会 国際担当理事
(17) 社団法人 電子情報通信学会 インターネットアーキテクチャ研究会 専門委員
(以上 下條)
(18) 総務省情報通信政策局 戦略的情報通信研究開発推進制度 専門評価委員
(19) 情報通信研究機構 大阪JGN IIリサーチセンター 主席拠点研究員
(20) 情報通信研究機構 大阪JGN IIリサーチセンター 特別研究員
(以上 馬場)

5.6 寄付受け入れ

(1) サン・マイクロシステムズ株式会社 Sun Fire V60x 10台及び付属機器1式
(2) 日本ヒューレット・パッカード株式会社 Integrity rx2600 1台及び付属機器1式
(以上 バイオグリッドを中心とするグリッド研究活動に対して)

2004年度研究発表論文一覧

著書

該当なし

学会論文誌

(1) 武田 伸悟, 伊達 進, 下條 真司, “GSI-SFS: グリッドのためのシングルサインオン機能を有するセキュアファイルシステム”, 情報処理学会論文誌コンピューティングシステム, Vol. 45, No. SIG6 (ACS 6), pp. 223.233, May 2004.
(2) Kenji Rikitake, Hiroki Nogawa, Toshiaki Tanaka, Koji Nakao, and Shinji Shimojo, “An Analysis of DNS Payload Length Increase during Transition to IPv6”, IEICE Trans. Commun. (Japanese Edition), Vol. J87-B, No. 10, pp. 1552.1563, October 2004.
(3) Hirohisa Nakamoto, Ken-ichi Baba, and Masayuki Murata, “Proposal and evaluation of realization approach for a shared memory system in λ computing environment” , IEICE Transactions on Communications, Special Issue on Next Generation Photonic Network Technologies, November 2004. (submitting).
(4) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba, and Katsunori Yamaoka, “Dynamic class assignment for stream flows considering characteristics of non-stream flow classes”, IEICE Transactions on Communications, Vol. E87-B, No. 11, pp. 3242-3254, November 2004.
(5) 野崎 一徳., “歯科医療分野におけるgrid 技術とpost virtual reality”, 可視化情報学会, Vol. 24, No. 95, pp. 20.25, November 2004.
(6) Shoichi Motohasa, Hiroyuki Fukuoka, Kin-ichi Baba, and Shinji Shimojo, “An eRective remarking scheme for DiRserv AF service through multiple domains”, IEICE Transactions on Communications, Vol. E87-D, No. 12, pp. 2569-2577, December 2004.
(7) 福村 真哉, 中野 賢, 春本 要, 下條 真司, 西尾 章治郎., “ユーザの視聴傾向に基づくWeb コンテンツ個人化提示システム”, 情報処理学会論文誌: データベース, Vol. 45, No. SIG 14 (TOD 24), pp. 12.22, December 2004.
(8) 赤藤 倫久, 河合 栄治, 山口 英, 香取 啓志., “コンテンツ制作におけるメディアの多様化への対応”, 映像情報メディア学会誌, Vol. 59, No. 2, pp. 279.286, February 2005.
(9) 田代 孝仁, 中島 義和, 田村 裕一, 米延 策雄, 宇治 茂, 吉川 秀樹, 越智 隆弘, 田村 進一., “位置校正が行われていない2 視点X 線画像群からの立位における3 次元脊椎アライメント計測”, 電子情報通信学会和文論文誌D2 分冊, March 2005.
(10) Kazunori Nozaki, Toyokazu Akiyama, Hiroo Tamagawa, Seiichi Kato, Yuko Mizuno-Matsumoto, Masashi Nakagawa, Yoshinmobu Maeda, and Shinji Shimojo, “The first grid for oral and maxillofacial region and its application for speech analysis” , Methods of Information in Medicine, Vol. 44, No. 2, 2005.

国際会議会議録

(11) Yasushige Yonezawa, Kohei Ichikawa, Kazuto Nakata, Susumu Date, Ho Shirun, Takashi Korosawa, Rossen Apostolov, Toshihiro Sakuma, Toshikazu Takada, and Haruki Nakamura, “Application of grid architecture to hybrid qm/mm simulations on biopfuga (biosimulation platform united on grid architecture)”, In LSGRID2004 (Workshop on Life Sicence Grid 2004), May 2004.
(12) Yukako Tohsato, Takahiro Kosaka, Susumu Date, Shinji Shimojo, and Hideo Matsuda. , “Heterogeneous database federation using grid technology for drug discovery process”, In Proceedings of the First International Workshop on Life Science Grid (LSGRID2004), pp. 53-62, May-June 2004.
(13) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba, and Katsunori Yamaoka, “Class assigning management for stream flows considering characteristics of non-stream flow classes”, In Proceedings of Networks 2004, pp. 75-80, June 2004.
(14) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba, and Katsunori Yamaoka, “Drop precedence mapping on dynamic class assignment method; simplified one link model”, In Proceedings of CSNDSP 2004, pp. 416-419, July 2004.
(15) Masato Kitajima, Yukako Tohsato, Takahiro Kosaka, Kazuto Yamazaki, Reiji Teramoto, Susumu Date, Shinji Shimojo, and Hideo Matsuda, “Development of a database system for drug discovery by employing grid technology”, In Proceedings of the Seventh International Conference on High Performance Computing and Grid in Asia Pacific Region (HPCAsia'04), pp. 365-369, July 2004.
(16) Shaowei Huang, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata, and Ken-ichi Kitayama, “Variablecapacity optical paths: Optical-code labeled path vs. OCDM path”, In Proceedings of 9th OptoElectronics and Communications Conference/3rd International Conference on Optical Internet (OECC/COIN 2004), pp. 124-125, July 2004.
(17) Takashi Maeno, Susumu Date, Yoshiyuki Kido, Ichiro Hasegawa, and Shinji Shimojo. , “A system architecture assisting user trial-and-error process in in-silico drug design”, In HPCAsia2004 (The 7th International Conference on High Performance Computing and Grid in Asia Pacific Region), pp. 357-364, July 2004.
(18) Seiji Nakagawa, Takahiro Kosaka, Susumu Date, Shinji Shimojo, and Mitsuo Tonoike. , “A grid computing infrastructure for meg data analysis”, In Proceedings of the 14th International Conference on Biomagnetism, pp. 171-172, August 2004.
(19) Hirohisa Nakamoto, Ken-ichi Baba, and Masayuki Murata, “Shared memory access method for a λ computing environment”, In Proceedings of IFIP Optical Networks and Technologies Conference (OpNeTec), pp. 210-217, October 2004.
(20) Yuko Mizuno-Matsumoto, Gholam K. Motamedi, W. Robert S. Webber, Ryouhei Ishii, Satoshi Ukai, Takeshi Kaishima, Kazuhiro Shinosaki, and Ronald P. Lesser, “Waveletcrosscorrelation analysis of electrocorticography recordings from epilepsy”, In Proceedings of The 8th International Evoked Potentials Symposium (IEPS8), p. 319, October 2004.
(21) Tomohisa Akafuji, Kaname Harumoto, Keishi Kandori, Koiti Hasida, and Shinji Shimojo, “An annotation method and application for video contents based on a semantic graph”, In Advances in Multimedia Information Processing - PCM2004 Part 1, pp. 478-486, November 2004.
(22) Takahiro Kosaka, Susumu Date, Hideo Matsuda, and Shinji Shimojo, “Designing a rule-based environment to interoperate life-scientific ontologies for drug discovery”, In Proceedings of the 2005 Symposium on Applications and the Internet Workshops, pp. 324-327, January 2005.
(23) Takeshi Okuda, Takahiro Miyamoto, Susumu Takeuchi, Kaname Harumoto, and Shinji Shimojo, “Unified architecture for managing user profiles”, In Proceedings of 2005 Symposium on Applications and the Internet Workshops, pp. 192-195, February 2005.
(24) Yu Kaneko, Kaname Harumoto, Shinya Fukumura, Shinji Shimojo, and Shojiro Nishio, “A location-based peer-to-peer network for context-aware services in a ubiquitous environment”, In Proceedings of 2005 Symposium on Applications and the Internet Workshops, pp. 208-211, February 2005.
(25) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba, and Katsunori Yamaoka, “Concept of admission control in packet switching networks based on tentative accommodation of incoming flows”, In Proceedings of iwQoS 2005, March 2005. (submitting).
(26) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba, and Katsunori Yamaoka. “Proposal of Tentative Accommodating and Congestion Confirming Strategy; a novel admission control strategy for packet switching networks”, In Proceedings of IEEE Globecom 2005, March 2005. (submitting).

口頭発表(国内研究会など)

(27) 中本 博久, 馬場 健一, 村田 正幸., “コンピューティング環境における共有メモリアクセス手法の提案.”, 電子情報通信学会技術研究報告PN2004-29, 第104巻, pp. 43-48, May 2004.
(28) 水野(松本)由子, 松本 敦, 大方 美香, 増田 寿子, 鵜飼 聡, 石井 良平, 山本 雅清, 川口 俊介, 伊達 進, 甲斐島 武, 下條 真司, 篠崎 和弘, 井上 健., “親の養育態度と子どもの性格的安定との関連性に関する質問紙を用いた調査”, 第100 回日本精神神経学会総会誌, p. 213, May 2004.
(29) 水野(松本)由子, 甲斐島 武, 鵜飼 聡, 石井 良平, 山本 雅清, 川口 俊介, 松本 敦, 大方 美香, 増田 寿子, 篠崎 和弘, 下條 真司, “情緒的刺激によるMEG 変化の独立成分分析を用いた解析”, 日本生体磁気学会誌特別号, 第17 巻, pp. 164-165, June.
(30) Kenji Rikitake, Hiroki Nogawa, Toshiaki Tanaka, Koji Nakao, and Shinji Shimojo, “Internet security management on teleworking environment”, In Proceedings of the Sixth Japan Telework Society Conference, pp. 85-90. Japan Telework Society, July 2004.
(31) 市川 昊平, 伊達 進, 中田 一人, 米澤 康滋, Rossen Apostolov, 中村 春木, 下條 真司, “機能分散型生体高分子シミュレーション実行環境”, 情報処理学会研究報告(2004-HPC-99), July 2004.
(32) 前野 隆志, 伊達 進, 木戸 善之,長谷川 一郎, 下條真司., “思考テンプレートを共有する創薬支援システムの検討”, 電子情報通信学会技術研究報告(CPSY2004-9~19), 第104 巻, pp. 7-12, July 2004.
(33) 宮本 崇弘, 山田 和広, 竹内 亨, 奥田 剛, 春本 要, 下條 真司, “情報源の異種性を隠蔽動的に粒度調整可能なユーザプロファイル生成機構”, マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2004)シンポジウム, pp. 429-432, July 2004.
(34) 安川 健太, 馬場 健一, 山岡 克式., “イントラドメインモデルにおけるストリームフロー動的クラス割当方式の評価”, 電子情報通信学会技術研究報告IN2004-42, pp. 37-42, July 2004.
(35) 谷口 英二, 馬場 健一, 村田 正幸, “コンピューティング環境構築のための共有メモリシステムの実装と評価”, 電子情報通信学会技術研究報告PN2004-43, 第104巻, pp. 57-62, August 2004.
(36) 中川 真志, 下條 真司, “Ibr 補完によるリモート可視化サービス”, In The 2004 ITE Annual Convention, August 2004.
(37) 黄 少偉, 馬場 健一, 村田 正幸, 北山 研一, “データ粒度可変光パス: 光符号ラベルパスvs. 光符号分割多重パス”, 電子情報通信学会技術研究報告PN2004-35, pp. 7-12, August 2004.
(38) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba, and Katsunori Yamaoka,. “Evaluation of dynamic class assignment method with traffic information exchange”. 電子情報通信学会通信ソサイエティ大会BS-10-2, pp. SE33-SE34, September 2004.
(39) 馬場 健一, “グリッドコンピューティングと光ネットワーク技術”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会(チュートリアル講演)BT-2-1, September 2004. (招待講演).
(40) 水野(松本)由子, 鵜飼 聡, 石井 良平, 甲斐島 武, 松本 敦, 大方 美香, 増田 寿子, 篠崎 和弘., “性格安定度は脳波でわかるかについての一考”, 臨床神経生理学, 第32 巻, pp. 499-500, November 2004.
(41) 水野(松本)由子, 東 ますみ, 西村 治彦, 堀尾 裕幸, 甲斐島 武, 野崎 一徳, 石井 良平, 鵜飼 聡, 下條真司, 稲田紘, “高速脳機能診断システムの開発”, 医療情報学, 第24 (Suppl.)巻, pp. 838-839, November 2004.
(42) 馬場 健一, “グリッドコンピューティングにおけるフォトニックネットワーク技術の動向”, 電子情報通信学会技術研究報告PN2004-66, 第104巻, pp. 29-34, December 2004. (招待論文).
(43) 野呂 正明, 長谷川 一郎, 馬場 健一, 下條 真司, “Grid における大量データ送信に適した品質保証方式”, 電子情報通信学会技術研究報告IA2004-22, pp. 21-16, January 2005.
(44) 馬場 健一, “拠点連携型資源共有技術に関する研究開発”, JGNII シンポジウム2005, pp. 75-79, January 2005.
(45) 金子 雄, 春本 要, 福村 真哉, 下條 真司, 西尾 章治郎, “位置情報に基づくP2P ネットワークにおけるエリアの階層化”, 電子情報通信学会第16 回データ工学ワークショップ(DEWS2005) 論文集, March 2005. (Web 掲載.).
(46) 中本 博久, 馬場 健一, 村田 正幸, “λコンピューティング環境における共有メモリシステム実現手法の提案と評価”, 電子情報通信学会技術研究報告, March 2005.
(47) 宮本 崇弘, 竹内 亨, 奥田 剛, 春本 要, 有吉 勇介, 下條 真司, “プライバシとサービス品質のトレードオフを考慮した個人情報制御機構の提案”, 電子情報通信学会第16 回データ工学ワークショップ(DEWS2005) 論文集, March 2005. (Web 掲載).
(48) 安川 健太, 馬場 健一, 山岡 克式, “パケット交換網のための新しいAdmission 制御技術TACCSの提案”, 電子情報通信学会総合大会B-7-68, March 2005.
(49) 安川 健太, 馬場 健一, 山岡 克式, “パケット交換網のためのAdmission 制御技術TACCS の提案と性能解析”, 電子情報通信学会技術研究報告IN2004-202, pp. 17-22, March 2005.
(50) Kenji Rikitake, Hiroki Nogawa, Toshiaki Tanaka, Koji Nakao, and Shinji Shimojo, “An analysis of dnssec transport overhead increase”, In IPSJ SIG Technical Reports 2005-CSEC-28 (to be published), Vol. 2005 of IPSJ SIG Technical Reports, March 2005.

解説・その他

該当なし

2004年度特別研究報告・修士論文・博士論文

博士論文

(51) Kenji Rikitake. “A Study of DNS Transport Protocol for Improving The Reliability” , Ph.D. dissertation, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Osaka, Japan, December 2004.

修士論文

(52) 市川 昊平, “機能分散型生体高分子シミュレーションのための広域連携環境に関する研究”, Master's thesis, 大阪大学大学院情報科学研究科, Master's thesis, 大阪大学大学院情報科学研究科, February 2005.
(53) 武田 伸悟, “ グリッドにおける安全なデータ共有のための認証と認可手法”, Master's thesis, 大阪大学大学院情報科学研究科, February 2005.
(54) 中川 真志, “Ibrフレーム補完によるインタラクティブなリモート可視化サービス”, Master's thesis, 大阪大学大学院情報科学研究科, February 2005.
(55) 宮本 崇弘, “プライバシとサービス品質のトレードオフを考慮した個人情報制御機構の提案”, Master's thesis, 大阪大学大学院情報科学研究科, February 2005.

卒業研究報告

(56) 宇治澤 晋吾, “Grid 環境におけるファイル転送時間保証のための帯域管理手法”, Bachelor’s thesis, 大阪大学工学部, February 2005.
(57) 坪井 正徳, “公共ディスプレイにおける情報推薦のための嗜好推測リスクのモデル化とその評価”,Bachelor’s thesis, 大阪大学工学部, February 2005.
(58) 林 範一, “データグリッドへの時系列シミュレーションのデータ出力スケジューリング”,Bachelor’s thesis, 大阪大学工学部, February 2005.
(59) 前田 真吾, “分散環境を考慮した空力音響計算のための計算リソース分配手法の開発”, Bachelor’s thesis, 大阪大学基礎工学部, February 2005.