研究部門の業績

先端ネットワーク環境研究部門
Advanced Network Environment Division
(www.ane.cmc.osaka-u.ac.jp)


1 部門スタッフ


教授 中野 博隆

1972年4月 東京大学工学部電気工学科卒業、1977年3月 東京大学大学院工学系研究科電子工学専門課程博士課程修了。同年4月 日本電信電話公社(1985年4月より日本電信電話株式会社(NTT))武蔵野電気通信研究所画像通信研究部入社。1989年10月 NTT情報通信処理研究所画像情報サービス研究グループリーダ、1995年7月 NTTヒューマンインタフェース研究所メディア応用システム研究部長,1999年1月 NTT移動通信網株式会社(現NTTドコモ)マルチメディア研究所長を経て、2004年4月より大阪大学サイバーメディアセンター先端ネットワーク環境研究部門教授、現在に至る。電子情報通信学会、映像情報メディア学会、画像電子学会、IEEE各会員。1977年博士(工学)。


助教授 長谷川 剛

1995年3月 大阪大学基礎工学部情報工学科退学。1997年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程修了。1997年6月 大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程退学。同年7月 大阪大学経済学部助手。1998年4月 大阪大学大学院経済学研究科助手。2000年7月 大阪大学サイバーメディアセンター先端ネットワーク環境研究部門助手。2002年1月大阪大学サイバーメディアセンター助教授。大阪大学大学院情報科学研究科の発足に伴い、2002年4月より、同研究科兼任、現在に至る。電子情報通信学会、The Internet Society各会員。2000年博士(工学)。

助手 笹部 昌弘

2001年3月 大阪大学基礎工学部情報科学科卒業。2003年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程修了。2004年6月 大阪大学大学院情報科学研究科博士後期課程退学。 2003年9月より2004年6月まで独立行政法人日本学術振興会特別研究員。2004年7月 大阪大学サイバーメディアセンター先端ネットワーク環境研究部門助手、現在に至る。電子情報通信学会会員。2006年3月博士(情報科学)。

2 教育および教育支援業績

[1] 全学共通教育機構において開講されている以下の科目を分担した。
(1) 情報処理教育科目「情報倫理と社会」
(以上、中野)
[2] 基礎工学部において開講されている以下の科目を担当した。
(1) 情報処理教育科目「情報論B」
(以上、中野)
(2) 情報ネットワーク(学部)
(以上、長谷川)
(3) 基礎工学PBL(情報科学)(学部)
(以上、長谷川、笹部)
(4) 情報科学ゼミナール(学部)
(5) 情報科学実験A前期(学部)
(6) プログラミングD(学部)
(以上、笹部)
[3] 大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻において開講されている以下の科目を担当した。
(1) ネットワーク設計論
(以上、中野)
(2) 超高速ネットワーク構成論
(3) 情報ネットワーク学演習I
(4) 情報ネットワーク学演習II
(以上、長谷川)
[4] 情報ネットワーク小委員会委員(長)として、主に大阪大学情報ネットワークシステム(ODINS)の企画、管理、運用を担当した。具体的には、大学法人化やネットワークインシデントの多発化などを受けて、これらに対応するODINS倫理規定、セキュリティーポリシー、ODINS緊急対応組織(ODINS-CERT)を規定した。ODINS5期WGを開催し、老朽化の進むODINS4期ネットワーク更新のために必要となるネットワーク機能、セキュリティ機能、サーバホスティング機能などについての検討を行った。また、セキュリティーインシデントの発生に対し、再発防止のための調査、警告発出などの対応を行った。さらに、サイバーメディアセンターが推進している全学IT認証基盤整備とODINSの整合性について検討を進めた。(以上、中野、長谷川)
[5] 文部科学省 21世紀COEプログラム 「ネットワーク共生環境を築く情報技術の創出」の一環として、大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻における演習科目「情報ネットワーク学演習I」の中で、ネットワークプロセッサ設計ラボ(NWPラボ)を推進した。(長谷川)

3 2005年度研究実績

3.1 「ユビキタスネットワーク環境における通信方式の研究」

 諸技術発展を受けて、あらゆるものが独自の識別子とコンピュータを持ちワイアレスリンクで接続されるユビキタスコンピューティング環境が新しいパラダイムとして想定されている。その一環として、あらゆる商品にRF-IDを付けて、生産から最終消費まで一環管理しようとする構想は既に多くの実証実験が行われている。
 このような背景を踏まえて、新たな研究領域として、 「ユビキタスネットワーク環境における通信方式の研究」を継続している。この研究では、ユビキタスネットワーク環境下の様々なアプリケーションに適用する通信方式を提案し、その特性を明らかにしていく。
 2005年度は、多数のユビキタスノードから単一のリーダにリアルタイム情報を収集する「ユビキタスノード用ストリーム型情報転送方式」の理論解析を進めた、さらに、大量電子タグの一括読み取りに相当する「ユビキタスノード用ブロック型情報収集方式」を新たに考案し特許化した。

3.1.1 ユビキタスノード用ストリーム型情報転送方式

 この方式の概要は以下の通りである。リーダはアクセスエリアに侵入したユビキタスノード(以下、ノードと称す)から識別子の登録を受ける。以後、リーダは識別子が登録されたノードに定期的にアクセスし、一定サイズの情報を読み出す。ユビキタスノードへのアクセスタイムアウト時にはエリアからこのノードが離脱したものと判断し、登録を削除する。
従来、本方式のような複雑な動作を純粋に理論だけで解析するのは困難であった。そのため、理論解析が済んだのは一部の特性に留まっていた。しかし、PALM算法で証明されているINVERSION公式を用いることにより解析が簡単化されることを見出した。この公式はイベントドリブンな状態遷移と時間ドリブンな状態遷移が混在する時に観測基準を正規化して状態方程式の構成を可能とするものである。この公式を用いることにより、全体の解析が可能となった。
(特願2005-164067)

[関連発表論文]
(1) 中野 博隆,“ユビキタス環境からのデータ収集とコンテンツの生成について,” 信学技報, vol. 105, no. 16, CQ2005-7, pp. 33-37, 2005年4月.
(2) 平野 裕介,長手 航,中野 博隆,“ユビキタス環境用ストリーム型情報収集システムにおける転送効率向上について”,信学技法, Vol.105, No. MoMuC2005-55 ,2005年9月.
(3) 長手 航, 平野 裕介, 中野 博隆,“ユビキタス環境用情報収集のためのシミュレータ”,信学技法, Vol.105, No. MoMuC2005-56 ,2005年9月.

3.1.2 ユビキタスノード用ブロック型情報転送方式

 通信ノードから一定サイズのコンテンツを効率よく収集する方式の研究を新たに開始した。前項が連続データを扱うのに対し、本方式は一定サイズ(ブロック)データを扱うことが異なる。ノードは簡単な構成であることを前提とし、リーダからの読出し要求に応えることはできるが隣接ノードのキャリアを検出することはできないと仮定した。具体的には多量の電子タグから識別情報を一括して読み出すことを想定している。
 リーダからノードに対してその応答確率を指定する方法が極めて効率の良い結果を生む。この方法はノードに指定確率に従った応答を行わせる機構を追加するだけで実現可能であり、コスト増加にならないという特徴を持つ。指定される確率が最適であれば、どのようにノード数が増大しても1/e以上の確率でリーダの読取は成功する。この値(0.37)は、類似技術であるCSMA-CAに比較しても引けをとらない。
 さらに効率を向上するため、識別子を仮識別子と残識別子に分離し、仮識別子は上記の方法で残識別子は仮識別子を用いたノード指定方式で行う方法を追加した。この結果、通常のパラメータサイズにおいて、電文のやり取りに基づくオーバヘッドを無視すると、通信チャネルの利用効率として、0.9程度が得られるとの結果を得た。
 上記の期待される効率、最適なパラメータなどはコンピュータシミュレーションによって確かめられた。
(特願2006-010390)

[関連発表論文]
(1) 中野 博隆,“ユビキタス環境からのデータ収集とコンテンツの生成について,” 信学技報, vol. 105, no. 16, CQ2005-7, pp. 33-37, 2005年4月.
(2) 平野 裕介,長手 航,中野 博隆,“ユビキタス環境用ストリーム型情報収集システムにおける転送効率向上について”,信学技法, Vol.105, No. MoMuC2005-55 ,2005年9月.
(3) 長手 航, 平野 裕介, 中野 博隆,“ユビキタス環境用情報収集のためのシミュレータ”,信学技法, Vol.105, No. MoMuC2005-56 ,2005年9月.
(4) 増田 浩充,“環境センサを用いたブロック型情報収集方式の効率向上,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2006.

3.1.3 ノード移動モデルの研究

 Bluetoothに見られるような数メートル程度の結合を前提とした通信における制御方式の解析においては、メートル精度のノード分布を推測できる動きモデルがその基礎になると考えられる。特に、観測の簡単な解析の定義領域(以下、セルと称す)境界におけるモデルの動きから、セル内の面的分布を推定するモデルは実用的にも重要と考えられる。これが可能になれば、定点におけるノードの通過状況の観測から、どの位置のアクセスポイントをアクティブにしたら良いか(より多くの帯域を配備したら良いか)、どのアクセスポイントに情報を配信したらよいか、などの制御効率化が期待できる。そこで、大阪大学内の特定の場所における人々の動きをノードの動きに見たて、定点観測から面的分布を推定する可能性について検討した。モデルと観測を比較するための観測系、分析系を開発した。本格的な観測はこれからであるが、モデルと観測誤差の傾向、ノード動きの傾向と適用すべきモデルの関係についてはほぼ推定どおりの結果が得られた。今後、モデルの適用限界、分布推定精度について見当を進める。

[関連発表論文]
(1) 相原 聖,“定点観測に基づくモバイル分布密度の推定,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2006.

3.1.4 有線・無線統合ネットワークにおけるTCPの性能向上に関する研究

 現在利用可能である無線アクセス技術には、携帯電話の2.5 G や3 G、PHS、無線LAN、衛星通信のように様々な種類・規格が存在し、そのいずれもがTCP/IP やUDPといったインターネットで用いられるプロトコルをシームレスに用いることができる。それにより、無線ネットワークをアクセスネットワークとして端末をインターネットに接続する、いわゆる有線・無線統合ネットワークが普及し、多くのインターネット上のサービスが、クライアント端末が無線接続されているホストであることを考慮せずに提供されることが多くなった。
 しかし、有線・無線統合ネットワークにおいては、インターネットでもっとも広く使用されているトランスポート層プロトコルであるTCP (Transmission Control Protocol ) データ転送の性能が低下するという問題が指摘されている。特に、無線ネットワークで発生するリンクエラーによって引き起こされるパケット廃棄(以下、無線リンクロス)と、ネットワークの輻輳によって発生するパケット廃棄(以下、輻輳ロス)を判別できないことが性能低下の大きな原因となっている。
 この問題に対しては以前より議論がなされており、解決手法が数多く提案されている。しかし、これら既存の解決手法の多くは、送信側TCP を修正する、あるいは途中経路のルータに機能を付加するなど、有線ネットワーク側の修正が必要となる。しかし、上述のように有線・無線統合ネットワークが浸透するにつれ、サービス提供者はクライアント端末のネットワークアクセス環境を考慮せずにサービス提供を行うようになったため、コスト面から有線ネットワーク内の機器所有者が無線ネットワークに特化した修正を積極的に行うことは期待できないと考えられる。すなわち、無線ネットワークを経由したネットワークアクセス性能の向上に意欲を持つのは、無線ネットワーク事業者および無線端末のユーザであると考えられるため、既存の手法を適用することは難しい。一方、有線ネットワーク側の修正を必要とせず、有線ネットワークと無線ネットワークの境界となるベースステーションを修正することにより性能向上を図る手法も存在するが、ベースステーションでTCP コネクションを分割するためにTCPのEnd-to-end の原則を崩す、あるいはベースステーションでTCP ヘッダにアクセスするためにIPSec などによりIP パケットのペイロード部分が暗号化されたトラヒックに対応できないといった問題がある。
 そこで我々は、TCP スループットを改善する手法として、無線接続された受信端末のみに修正を限定することにより、容易に導入が可能であり、TCP のend-to-end の原則を保ち,暗号化されたトラヒックにも適用できる動的ACK 分割手法を提案した。提案手法では受信端末においてパケット廃棄の種類を判別し、無線リンクロスが発生したと判別された場合にTCPのACK (ACKnowledgement ) パケットを分割送信するACK分割技術を用いて、送信側TCP の輻輳ウィンドウサイズをすばやく増加させる。その際、輻輳ウィンドウサイズが無線リンクロス発生直前の値にまで回復するとACK 分割を終了する機能,およびACK パケットの送信レートを動的に制御する機能を導入することにより、有線ネットワークの輻輳や無線アクセスネットワークの上り帯域の圧迫を回避する。
 提案方式の有効性は,まずシミュレーションによる評価を行い、提案手法を用いることでTCPのスループットが改善されることを示した。また本研究では,提案手法を用いた場合のTCP スループットの数学的な解析を行い、本提案手法の有効性に関する検討を行った。

[関連発表論文]
(1) Masashi Nakata, Go Hasegawa, and Hirotaka NAKANO, Receiver-based ACK Splitting Mechanism for TCP over Wired/wireless Integrated Networks, in Proceedings of CEWIT 2005, December 2005.
(2) 仲田昌史, 長谷川剛, 中野博隆, “有線・無線統合ネットワークにおけるTCP性能向上のための動的ACK分割手法,”電子情報通信学会技術研究報告 (NS2005-66), July 2005.
(3) 仲田昌史, 長谷川剛, 中野博隆, [奨励講演]有線・無線混在ネットワークのための TCP 動的 ACK 分割手法のスループット解析, 電子情報通信学会技術研究報告, January 2006.
(4) Masashi Nakata, “Receiver-based ACK Splitting Mechanism for TCP over Wired/wireless Heterogeneous Networks,” Master’s thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, February 2006.

3.2 高速トランスポートアーキテクチャに関する研究

 エンドホスト間でデータを高速に、かつ効率よく転送するための中心技術がトランスポートプロトコルである。特にインターネットで用いられているTCPでは、エンドホストがネットワークの輻輳状態を自律的に検知して転送率を決定している。これは、インターネットの基本思想であるEnd-to-end principleの核になっているものであるが、エンドホストの高速化により、その適応性をより高度なものにできる可能性が十分にある。また、ネットワーク内ルータでは、エンドホストの適応性を前提とした制御を考えていく必要があるが、それが実現されれば、自律性、適応性に富んだ高機能ネットワークの可能性も見えてくる。本研究テーマでは、そのような高速トランスポートプロトコルに関する研究に取り組んでいる。また、CDN (Contents Distribution Network)やデータグリッドなど、IPネットワーク上において特定のサービスを提供するためのオーバーレイネットワークにおけるトランスポートアーキテクチャに関する研究にも取り組んでいる。

3.2.1 インラインネットワーク計測技術に関する研究

 近年のネットワークサービスの多様化に伴い、サービスオリエンテッドなネットワーク(サービスオーバレイネットワーク)が拡がりつつある。これらのネットワークにおいてサービス品質を向上させるためには、下位層ネットワークであるIPネットワークを与条件として、サービス提供のためのコネクション設定要求が発生した時に、利用可能な下位層ネットワーク資源量を適切に把握することが重要である。
 そこで我々の研究グループでは、IP ネットワークのエンドホスト間で利用可能な帯域幅および物理帯域を同時にかつ少ないオーバヘッドで計測する、インラインネットワーク計測手法を提案している。提案方式は TCP コネクションのデータ転送時に得られる情報に基づいて計測を行なうインラインネットワーク計測と呼ばれる方式であり、新たな計測用のトラヒックをネットワークに導入する必要がなく、かつ計測結果を素早く導出することが可能となる。物理帯域の計測手法に関しては、同時に計測を行う利用可能帯域値を利用することで、従来手法とはまったく異なるアルゴリズムを用いて物理帯域の推測を行っている。
 本年度の研究においては、高速ネットワークにおいても帯域計測が可能な、新たなインラインネットワーク計測手法の提案を行った。高速(1 Gbps以上) なネットワークにおいて、パケットペアやパケットトレインなど、パケット間隔ベースの計測手法は、下記の二つの問題を持つ。まず、高速ネットワークでの計測は非常に短いパケット間隔が必要となるが、短い間隔でパケットを送信することは、大きなCPU 負荷を必要とする。次に、高速ネットワーク対応のネットワークインタフェースのほとんどが割り込み削減機構(IC,Interrupt Coalescence)を採用していることである。IC はパケットの到着間隔を変えたり、パケットのバースト転送を生成したりするため、パケット間隔ベースの計測が不正確となる。
 そこで本研究においては、上記の二つの問題を解決したインライン計測手法を提案した。提案手法はIC によって発生するパケットのバースト転送を逆に利用し、パケット送信間隔を調整することなく高い利用可能帯域を計測することができる。シミュレーション結果から、提案手法がIC がある環境で数Gbps の利用可能帯域でも計測可能であることがわかった。さらに、既存のパケットストリームを用いた手法に比べて、計測に使用するパケットが1/100 程度になることもわかった。またICIM を導入したTCP が従来のTCP と同じデータ転送性能を持ちながら、数RTT 程度という短い間隔で計測結果を導出することもわかった。

[関連発表論文]
(1) Cao Le Thanh Man, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “ImTCP: TCP with an inline measurement mechanism for available bandwidth,” to appear in Computer Communications Journal, Special Issue on Monitoring and Measurements of IP Networks, 2006.
(2) Cao Le Thanh Man, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “A simultaneous inline measurement mechanism for capacity and available bandwidth of end-to-end network path,” submitted for publication.
(3) Cao Le Thanh Man, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “ImTCP HighSpeed: Inline network measurement for high-speed networks,” in Proceedings of Passive and Active Measurement Workshop 2006 (PAM 2006), March 2006.
(4) Cao Le Thanh Man, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “ICIM: An inline network measurement mechanism for highspeed networks,” in Proceedings of the 4th IEEE/IFIP Workshop on End-to-End Monitoring Techniques and Services (E2EMON 2006), April 2006.
(5) Cao Le Thanh Man, 長谷川 剛, 村田 正幸, “エンドホスト間のネットワークパスの物理帯域のインライン計測手法,” 電子情報通信学会技術研究報告(IN2005-123), June 2005.
(6) Cao Le Thanh Man, 長谷川 剛, 村田 正幸, “高速ネットワークのためのインライン計測手法,” 電子情報通信学会技術研究報告(IN2005-15), pp. 5-10, December 2005.
(7) Cao Le Thanh Man, Go Hasegawa, Masayuki Murata, “A packet burst-based inline network measurement mechanism,” 電子情報通信学会2006 総合大会, March 2006.
(8) 森 一成, 浜 崇之, 長谷川 剛, 村田 正幸, 下西 英之, 村瀬 勉, “インラインネットワーク計測手法およびその応用手法の実ネットワーク上での性能評価,” 電子情報通信学会技術研究報告(IN2005-154), pp. 67-72, February 2006.
(9) 森 一成, “インラインネットワーク計測手法およびその応用手法の公衆網における性能評価,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2006.

3.2.2 インラインネットワーク計測技術を利用した新たなTCPサービスに関する研究

 上述のインラインネットワーク計測技術を用いることにより、TCPコネクションが転送中のデータ・ACKパケットを利用して、ネットワークパスの帯域に関する情報を獲得することができる。この情報を用いることで、従来実現できなかった、あるいは、従来アプリケーション層で実現する必要のあったさまざまなネットワークサービスを、トランスポート層、つまりTCPの制御によって実現することができると考えられる。本年度における研究では、その中でもバックグラウンドデータ転送、および一定のスループットを確保したデータ転送を実現するTCPの輻輳制御手法に関する検討を行った。
 バックグラウンド転送とは、他のトラヒックに影響を与えずにネットワークの空いている帯域のみを利用して行うデータ転送のことである。バックグラウンド転送が実現されることによって、品質を向上させることのできるネットワークサービスが存在する。例えば、前述したCDN ではユーザからのコンテンツ閲覧要求を受けて行われるデータ転送以外にもバックアップ、キャッシング、プリフェッチなどによって発生するデータ転送を行っている。このとき、バックアップ等のデータ転送をバックグラウンド転送によって行うことによって、バックアップ等のデータ転送中にもユーザからのコンテンツ要求に迅速に対応することが可能となる。
 本研究では、インラインネットワーク計測によって得られる計測結果を用いて、従来のTCPよりも優先度の低いデータ転送を実現する新たなバックグラウンド転送方式ImTCP-bgを提案した。本提案方式においては、計測された利用可能帯域の情報を用いてTCPコネクションの最大ウィンドウサイズを設定することによって、バックグラウンド転送を実現している。また、利用可能帯域の計測ができない、または正確でない場合にも、フォアグランドトラヒックに影響を与えないデータ転送を実現するために、データパケットのラウンドトリップ時間を監視することでネットワーク輻輳を早期に発見する手法を提案した。
 本研究においてはさらに、提案したバックグラウンド転送手法をFreeBSD上に実装し、実験ネットワーク、および東京-大阪間の公衆インターネット環境においてその性能評価を行った。その結果、提案手法はシミュレーションによる評価結果とほぼ同程度の性能を得ることができ、従来提案されているバックグラウンド転送と比較して、フォアグラウンドトラヒックに影響を与えることなく、高いデータ転送スループットを実現できることを明らかにした。
 一方、インターネットの発展によりサービスが多様化し、リアルタイム配信型アプリケーションなど、通信品質の確保を必要とするアプリケーションが注目されている。これまで、IP 層やアプリケーション層において高い通信品質を提供する手法が提案されているが、ネットワーク規模に対するスケーラビリティや導入コストなどの問題から実現が困難とされている。
 そこで本研究では、トランスポート層において高い通信品質を実現する一方式として、TCP コネクションを用いてある一定のスループットを上位アプリケーションに提供する、TCP の輻輳制御方式を提案した。提案手法は、送信側TCP の輻輳ウィンドウサイズの増加方法を変更することで、データ送信レートを制御する。提案手法の評価はシミュレーションによって行い、その結果、背景トラヒック量が多く、利用可能帯域がほとんど存在しない環境においても、物理帯域の約10-20%のスループットを高い確率で獲得できることを示した。

[関連発表論文]
(1) Tomoaki Tsugawa, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Background TCP data transfer with inline network measurement,” to appear in IEICE Transactions on Communications, 2006.
(2) Tomoaki Tsugawa, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Background TCP data transfer with inline network measurement,” in Proceedings of Asia-Pacific Conference on Communications (APCC 2005), (Perth), pp. 459-463, October 2005.
(3) 津川 知朗,長谷川 剛,村田 正幸, “インラインネットワーク計測手法ImTCPおよびその応用手法の実装および性能評価,” 電子情報通信学会技術研究報告(IN2005-120), pp. 79-84, December 2005.
(4) 山根木 果奈, 長谷川 剛, 村田 正幸, “スループット保証を実現するTCPの輻輳制御方式の提案と評価,” 電子情報通信学会技術研究報告, March 2006.
(5) Tomoaki Tsugawa, “TCP-based background data transfer using inline network measurement technique,” Master’s thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, February 2006.

3.2.3 TCPオーバレイネットワークに関する研究

 ADSL やFTTH といった広帯域アクセス網技術の進展により、近年ますますインターネットが発展し、ユーザ数の爆発的な増加に伴い、要求されるサービスが多様化している。それらの中には、エンドホスト間のスループットなどに関して高いネットワーク品質を要求するサービスもあるが、現在のインターネットはベストエフォート型であり、ユーザの要求品質を満たすことはできない。この問題を解決し、IP 層において品質制御を行う技術としてIntServやDiffServ などが存在する。例えばDiffServでは、サービスの種類によってルータにおけるパケット処理の優先順位を決定することによって、各フローの通信品質の差別化を行うことを目的としている。しかしながら、IntServやDiffServを実現するためには、フローが通過するすべてのルータに品質制御機能が実装されている必要があり、ネットワーク規模に対するスケーラビリティ、導入コストなどの面から実現は困難であると考えられる。一方、CDN (Contents Delivery Network)におけるプロキシキャッシュサーバなどのように、品質制御をアプリケーション層で行う技術も研究されているが、各アプリケーションに特化した複雑な制御を必要とする、所望の性能を得るためのパラメータセッティング等が困難である、などの問題がある。
 そこで我々は、IP層やアプリケーション層において品質制御を行うのではなく、IP層においては従来のルーティングなど必要最低限の機能のみを提供し、品質制御をトランスポート層において行うTCPオーバレイネットワークに関する研究を行っている。TCPオーバレイネットワークにおいては、通常エンドホスト間に設定されるTCPコネクションをネットワーク内のノード(TCPプロキシ)で終端し、分割されたコネクションごとにパケットを中継しながら転送を行う。これにより、TCPコネクションのフィードバックループを小さくすることが可能になるため、スループットの向上を期待することができる。また、TCPオーバレイネットワークを構築することによって、ネットワーク環境の違いを吸収することが可能になるため、要求されるサービス品質に応じた制御を行うことが可能になる。例えば、送受信ホスト間に無線ネットワークが含まれる場合、一般的にはTCP コネクションのスループットは大幅に低下する。しかし、無線ネットワーク部分でデータ転送が独立するように、その前後でコネクション分割を行うことにより性能劣化を最小限に抑えることが可能である。
 そこで本研究では、TCP オーバレイネットワークにおいて必要不可欠であるTCP コネクション分割機構について説明し、コネクション分割を行うことによりエンドホスト間のデータ転送速度が向上することを、簡単な数値例を用いて示した。しかし、既存システムの変更を最小限にとどめるために、TCP の輻輳制御アルゴリズムを各中継ノードにおいて独立に動作させる場合、それらが互いに干渉し、その結果期待するほどのスループットが得られないことが明らかとなった。そこで、この問題を考慮したエンドホスト間のスループット解析を示し、その妥当性をシミュレーションとの比較により検証した。その結果、スループット劣化はTCPプロキシの前後のコネクションが通過するネットワーク環境に差が少ない場合に大きくなり、最大で約60%性能が低下することがわかった。また、そのスループット劣化を防止するためには、従来TCPコネクションに必要とされる量の3倍から10倍の送信バッファが必要であることが明らかとなった。
 また、NECとの共同研究により、東京―大阪間の公衆インターネット回線を用いた、TCPプロキシ機構の実証実験をいった。その結果、TCPプロキシ機構が実ネットワークにおいても有効であり、エンド端末のプロトコルやパラメータ設定を変更することなく従来手法に比べて高いデータ転送スループットを獲得できることを明らかにした。また、TCPプロキシ間のTCPコネクションに高速TCPを用いることで、さらに高いスループットが得られることがわかった。

[関連発表論文]

(1) Ichinoshin Maki, Go Hasegawa, Masayuki Murata and Tutomu Murase, “Performance analysis and improvement of TCP proxy mechanism in TCP overlay networks,” International Conference on Communications (ICC) 2005, May 2005.
(2) Kana Yamanegi, Takayuki Hama, Go Hasegawa, Masayuki Murata, Hideyuki Shimonishi and Tutomu Murase, “Implementation experiments of TCP proxy mechanism,” in Proceedings of 6th Asia-Pacific Symposium on Information and Telecommunication Technologies, pp. 17-22, November 2005. (Best Paper Award)

3.2.4 インターネットルータのバッファサイズに関する研究

 現在、インターネットルータのバッファ容量の決定のためには、帯域遅延積を指標とする方法が広く利用されている。これに対し、ルータを通過するフローが多く存在する場合、ネットワークリンクの利用率を維持するには帯域遅延積をフロー数の平方根で除算したサイズで十分であるという主張が提起されている。しかしこの主張には、リンク利用率以外の視点からの評価が行われていない、評価を行う際のパラメータが限られている等の問題が存在する。
 そこで本研究では、ns-2 を用いたシミュレーションにより、ルータのバッファ容量がTCP の性能に与える影響を考察した。その結果、フロー数が十分に大きければ、バッファ容量を減少してもリンク利用率を高く維持できるが、帯域遅延積を用いた場合と比較すると、パケット廃棄率に関して性能が劣化していること、50 - 100Kbyte 程度の転送データサイズを境としてデータ転送遅延時間が増加し、転送データサイズが小さいフローが多数を占めるネットワークや、エンド端末間の伝播遅延時間が小さいネットワーク以外においては、バッファ容量を減少することによる悪影響が現れることが明らかになった。

[関連発表論文]
(1) 冨岡 健史, 長谷川 剛, 村田 正幸, “ルータのバッファサイズがTCPに与える影響の一考察,” 電子情報通信学会技術研究報告, March 2006.
(2) 冨岡 健史, “ルータにおけるバッファサイズがTCP性能に与える影響のシミュレーション評価,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2006.

3.2.5 生物の増殖モデルに基づくTCPの輻輳制御方式

 帯域や遅延が大きいネットワークにおいてTCP Reno を用いた場合においてスループットが低下することが問題点として挙げられる。この問題は、ウィンドウサイズの増加量を決定するパラメータが小さく(1 ラウンドトリップ時間(RTT) あたり1 パケット)、ウィンドウサイズの減少量を決定するパラメータが大きい(パケット廃棄発生時に半減させる) ことに起因している。この問題に対する解決法は数多く提案されているが、それらの多くはTCP Reno のウィンドウサイズ制御の基本的機構であるAIMD 方式を引き継いでおり、その増減の量を決定するパラメータをネットワーク環境に応じて静的あるいは動的に調節することでスループットの改善を行っている。
 しかし、それらの多くは特に帯域や遅延が大きいネットワーク環境を想定した修正であるため、他の環境において適用された場合にも問題点を持たないかどうかは不明であり、本質的な解決を行っているとはいえない。これは、TCP Reno は送受信ホスト間のパスのRTT を計測しているが、利用可能帯域を知るための効率的な方法を持たないためである。すなわち、TCP が何らかの手法を用いて、送受信ホスト間のパスの帯域に関する情報をすばやく、高い精度で取得することができれば、ウィンドウサイズの制御にAIMD 方式を用いる必要はなく、より効率の良い輻輳制御方式を考えることが可能となる。
 これらの問題に対してわれわれは、インライン計測技術を用いて帯域に関する情報を取得し、その情報を用いてウィンドウサイズ制御を行うことによって、従来のTCP Reno における問題を本質的に改善するための新たなTCP の輻輳制御方式を提案している。ウィンドウサイズ制御のアルゴリズムは、帯域に関する情報を用いることによってウィンドウサイズを適切な値にすばやく調節すること、および他のコネクションが競合する際に公平に帯域を分配できることを目的として設計する。そのために、数理生態学において生物の個体数の変化を表すモデルとして有名なロジスティック増殖モデル、およびロトカ・ヴォルテラ競争モデルを適用する。これらのモデルをTCP のウィンドウサイズ制御へ適用するために、生物の個体数をデータ転送速度に、個体数の収束値である環境容量を物理帯域に、および種間の競争を同一リンク上の複数コネクションの競合にそれぞれ変換する。本研究では、提案方式の特性を数学的解析によって明らかにし、提案方式が持つパラメータ設定方法に関する議論を行った。また、前述の高速ネットワークにおけるインラインネットワーク計測手法を用いて、ネットワークパスの物理帯域および利用可能帯域を取得することによって、提案している輻輳制御方式が、将来の超高速ネットワーク環境においても十分な性能を発揮することができることを明らかにした。

[関連発表論文]
(1) Yousuke Matsuura, “Performance evaluation of TCP congestion control mechanism based on inline measurement,” Master’s thesis, Graduate School of Infomation Science and Technology, Osaka University, February 2006.

3.2.6 超高速データ転送を実現するTCPの輻輳制御方式に関する研究

 例えば、近年注目されているデータグリッドネットワーク、ストレージエリアネットワーク等においては、エンド端末が1-10 Gbpsクラスの帯域を持つ高速ネットワークに直接接続され、データの取得・送出、データベースの更新、遠隔バックアップ等において、ギガバイトからテラバイト級のデータを高速に転送することが要求される。このような高速データ転送を行う場合に、現在のインターネットにおいて標準的に用いられているTCP Renoバージョンを用いると、大きなリンク帯域を十分使う程度のスループットを得ることができないという問題が指摘されている。この問題を解決するための一つの方法として、TCP Renoの輻輳制御方式を改変し、高いスループットを得ることができるHighSpeed TCPと呼ばれる方式が提案されているが、その性質はこれまで明らかになっておらず、特に従来のTCP Renoバージョンとの公平性に関しては考慮されていない。
 そこで本研究では、HighSpeed TCPコネクションが従来のTCP Renoコネクションと同じリンクを共有する場合のスループットおよび公平性に関して、数学的解析手法およびコンピュータ上のシミュレーションを用いて考察している。その結果、HighSpeed TCPは従来のTCP Renoに比べて非常に高いスループットを得ることができるが、システム条件によっては大量のパケット廃棄によってスループットが著しく低下し、リンク帯域を十分使う程度のスループットを得ることができない場合があること。また、従来のTCP Renoと同じリンクを共有する場合、TCP Renoを用いたコネクションのスループットを大幅に低下させるため、両者の間の公平性を維持することができない等の問題点を持つことを明らかにしている。さらに本研究では、解析によって明らかになったHighSpeed TCPが持つ問題点を解決し、高いスループットを得るとともに、TCP Renoコネクションとの公平性を改善するTCPの輻輳制御方式の提案を行っている。提案方式の有効性はシミュレーションによって評価を行い、提案方式によって、従来のTCP Renoコネクション公平性を大幅に改善し、HighSpeed TCPに比べて最大で約50%のスループット向上を実現できることを示している。
 さらに本研究では、そのような高速TCPプロトコルではなく、GridFTPなどにおいて用いられている、通常のTCPコネクションを複数本並列的に用いることでデータ転送性能を向上させる並列TCP手法に着目し、その性能を数学的解析により明らかにした。解析においては、並列に設定されるTCPコネクションが同期的に動作する場合、および非同期的に動作する場合の両方を考慮し、並列TCP手法によるデータ転送スループットの上限と下限を明らかにした。その結果、理想的なTCP コネクション数はネットワークパラメータなどによって大きく変化し、その設定が困難であることが明らかとなった。 また、高速TCPプロトコルと比較すると、ネットワーク環境の変動に対する性質などの点で、並列TCP 方式が劣っていることを明らかにした。

[関連発表論文]
(1) Zongsheng Zhang, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Performance analysis and improvement of HighSpeed TCP with TailDrop/RED routers,” IEICE Transactions on Communications, vol. E88-B, no. 6, pp. 2495-2507, June 2005.
(2) Zongsheng Zhang, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Experimental results of implementing high-speed and parallel TCP variants for long fat networks,” to appear in IEICE Transactions on Communications, 2006.
(3) Zongsheng Zhang, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Experimental evaluations of gentle High-Speed TCP for long-fat networks,” in Proceedings 6th Asia-Pacific Symposium on Information and Telecommunication Technologies, pp. 47-52, November 2005.
(4) Zongsheng Zhang, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Analysis evaluation of parallel TCP: Is it really effective for long fat networks?” submitted for publication.
(5) 張 宗升, 長谷川 剛, 村田 正幸, “高速TCPおよび並列TCP方式の実験ネットワークでの評価,” 電子情報通信学会技術研究報告, pp. 17-22, June 2005.
(6) 張 宗升, 長谷川 剛, 村田 正幸, “並列TCP方式のスループット解析とパラメータ設定に関する考察,” 電子情報通信学会技術研究報告, pp. 7-11, January 2006.
(7) Zongsheng Zhang, “High-speed transport-layer protocols for fast long-distance networks.” Ph.D thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, January 2006.

3.2.7 エンドシステム/ネットワーク統合環境におけるTCPの高速・高機能化に関する研究

 インターネットの急速な発展にともなうトラヒックの増大に対し、バックボーンネットワークでは広帯域化、高速化が急速に進められている。 その結果、現在のインターネットにおいてはエンドホスト資源やアクセスリンク資源がボトルネックになりつつある。たとえば、繁忙なWeb サーバなどにおいてTCP を用いたデータ転送を行う際、エンドホストのソケットバッファ、ディスクリプタ、CPU 資源などのTCPコネクションを確立するための資源が不足することによってエンドホストがボトルネックなることが問題となる。そこで、本研究においては、この問題を解決するためにエンドホストにおけるTCP コネクション資源の管理方式を提案し、シミュレーション、実装実験を通して、その有効性を確認した。一方、現在のインターネットではDSL (Digital Subscriber Line) などの普及によって、ユーザホストとインターネットを接続するアクセスリンク帯域は増加している。しかしながら、依然としてアクセスネットワークの帯域はバックボーンネットワークに比べると十分ではなく、特にユーザが複数のネットワークアプリケーションを同時に利用するような場合ではアクセスリンク帯域がボトルネックとなる。また、 標準のTCP コネクションのスループットはRTT などのパラメータに大きく影響されるため、 必ずしもユーザの意図した割合でアクセスリンク帯域がアプリケーション間で共有されない。
 そこで本研究では、これらの問題点を解決し、ボトルネックとなるアクセスリンク資源を有効に活用するためのアクセス資源管理方式を提案した。提案方式においては、まずユーザホストで全てのTCP コネクションに割り当てられる受信バッファの総量を仮想的に調節することによって、アクセスリンクの輻輳を防止する。その後、各TCP コネクションへの受信バッファの割り当てを、TCPコネクションの性質に基づいて決定する。シミュレーションによる性能評価結果より、提案方式はデータ転送時間の減少、およびアクセスリンクでの輻輳の回避や遅延の減少に大きな効果があり、 従来方式と比較した場合、アクセスリンクの利用率を高く維持したまま、 short-lived コネクションにおけるドキュメント転送の遅延を最大 90% 削減できることが明らかとなった。

[関連発表論文]
(1) Kazuhiro Azuma, Takuya Okamoto, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Design, Implementation and Evaluation of Resource Management System for Internet Servers,” Journal of High Speed Networks, vol.14, no. 4, pp.301-316, 2005.
(2) Kazuhiro Azuma, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Receiver-based management scheme of access link resources for QoS-controllable TCP connections,” to appear in International Journal of Communication Systems, 2005.

3.3 P2Pアーキテクチャに関する研究

 近年、コンピュータの高性能化により従来のクライアント-サーバ型アーキテクチャのようにファイルサーバやWWWサーバといったコンテンツを所有、管理するサーバを介するのではなく、ユーザ同士が直接、情報およびデータを交換するP2P型通信技術が注目されている。このような分散システムの一つであるP2P型システムにおいては、利用するユーザに対するQoS(検索・取得効率など)向上やシステム負荷(ネットワーク利用率、ピア使用率など)軽減が重要となる。
 本研究では、動画像ストリーミングやファイル交換システムに着目し、ファイルの検索、キャッシング、P2P論理網の構築といった要素技術を提案することで、これらの問題に取り組んでいる。

3.3.1 P2Pメディアストリーミング機構に関する研究

 近年、ネットワークの広帯域化を背景に動画像配信サービスの利用が普及してきている。P2P型通信技術を用いることで、ネットワークの負荷変動や動画像に対するニーズの変化などに柔軟に対応することのできる動画像配信サービスが実現できるものと考えられる。
 我々の研究グループでは、ピュアP2P型通信モデルに基づく途切れなくスケーラブルな動画像配信技術について検討してきた。 対象とするシステムでは、各ピアは過去に参照した/現在参照中の動画像を自身の有するキャッシュバッファに蓄積し、互いに交換・共有する。昨年度は、スケーラビリティを考慮した検索手法と動画像再生の連続性を考慮した取得先選択手法、そしてネットワーク内の動画像に対する需要と供給のバランスを考慮したキャッシングアルゴリズムを提案し、シミュレーション評価により有効性を示した。
 本年度は、システム変動への対応を考慮し、ネットワーク帯域の変動に対する適切な取得先切り替え手法、ピアの離脱など故障に対する耐性を有する検索手法をさらに提案した。シミュレーション評価により、提案手法が動画像300本分の容量のある環境下で11本の動画像に対して途切れなく9割の部分を再生可能であることを明らかにした。さらに、検索手法がフラッディングに比べてピアの離脱に対して耐故障性を有することも示した。

[関連発表論文]
(1) Masahiro Sasabe, Naoki Wakamiya, and Masayuki Murata, “Adaptive and Robust P2P Media Streaming,” WSEAS TRANSACTIONS on COMMUNICATIONS, vol. 4, pp. 425-430, July 2005.
(2) Masahiro Sasabe, Cache-based Adaptive Mechanisms for Media Streaming on Information Distributed Systems. PhD thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Mar. 2005.


3.3.2 高速なファイル検索,取得のための障害回復力のあるP2P論理網構築手法に関する研究

 P2Pファイル共有システムではピアは論理網を利用して所望するファイルの検索を行うため、論理網の構造が下位の物理網の負荷及びユーザQoSであるファイルの検索・取得効率に影響をおよぼす。論理網が物理網トポロジを考慮せずに構築された場合には、物理的に遠いピアが隣接関係を持つ可能性があり、その結果、論理網上でのメッセージのやりとりによって物理網に冗長なトラヒックが発生する。また、検索メッセージに対して早く応答メッセージを返信したピアが必ずしも物理的に近いとは限らないため、ピアは、より近く、高速にファイル取得が行えるピアを発見するため、複数の応答メッセージの受信を待たなければならない。さらに、検索速度の向上のためには、検索メッセージが効率的に論理網上で拡散するのがよく、同じピア数に対してより直径の小さい論理網を構築するのが望ましい。
 そこで、Barabasi-Albert (BA) モデルに基づく高速なファイル検索、取得のための論理網構築手法を提案した。提案手法では、新規参加ピアが物理的に近くかつ論理網上で隣接ピア数の多いピアに接続することで、直径が小さくかつ物理網特性を考慮した論理網を構築することができる。その結果、下位の物理網の負荷を抑えるとともに、ピアはより物理的に近い取得先ピアをより早く発見することができる。さらに、 動的に論理リンクを切り替えることにより、論理網の構造を改善し、ピア消失などの障害から回復することができる。現実的な物理網トポロジを用いた計算機シミュレーションにより、BAモデルに比べて最大で約60%程度到達率を向上させるとともに、隣接ピアが物理的にも近く、また、障害回復力を有する論理網を構築できることを示した。
来年度は本年度の提案手法により構築される論理網に基づく、検索手法及びキャッシング手法を検討、提案することにより更なるユーザQoS向上を達成する。

[関連発表論文]
(1) 笹部 昌弘, 若宮 直紀, 村田 正幸, “高速なファイル検索,取得のための障害回復力のあるP2P 論理網構築手法,” 電子情報通信学会技術研究報告(IN2006-178), pp. 131-136, Mar. 2006.
(2) Masahiro Sasabe, Cache-based Adaptive Mechanisms for Media Streaming on Information Distributed Systems. PhD thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Mar. 2005.

4 社会貢献に関する業績

4.1 教育面における社会貢献

4.1.1 学外活動

 該当なし。

4.1.2 研究部門公開

(1) 2005年4月29日午後13:00-16:00まで、銀杏祭において研究部門公開を行い、24名の来訪者を得た。公開内容はモバイルマルチメディア、次世代インターネット技術に関するもので、現在の数十倍~数百倍の速度を持つ超高速ネットワーク構築のための光技術を用いたネットワーク、そのネットワークを用いて高画質映像などのさまざまなマルティメディアコンテンツの転送、携帯電話等のモバイル機器を用いた高速ネットワークアーキテクチャ等に関する紹介を行った。

4.2 学会活動

4.2.1 国内学会における活動

(1) 電子情報通信学会総務理事(H16.6-17.6)
(以上、中野)
(2) 電子情報通信学会コミュニケーションクオリティ研究会専門委員
(3) 電子情報通信学会英文論文誌B分冊編集委員
(以上、長谷川)

4.2.2 論文誌編集

(1) 電子情報通信学会英文論文誌特集号,“`Special Section on Networking Technologies for Overlay Networks’’ 編集委員
(以上、長谷川)

4.2.3 国際会議への参画

(1) 8th IFIP/IEEE International Conference on Management of Multimedia Networks and Services (MMNS 2005), Technical Program Committee Co-Chair
(2) The 2006 International Conference on Communications (ICC 2006), Technical Program Committee Co-Chair
(3) IEEE GLOBECOM 2006, Technical Program Committee Member
(4) The International Conference on Information Networking (ICOIN), Technical Program Committee Member
(以上、長谷川)

4.2.4 学会における招待講演・パネル

(1) 第4回情報科学技術フォーラム(FIT2005) ,“船井業績賞記念パネル討論:ユビキタス社会の担い手は何か”,パネラー(2005.9.8)
(以上、中野)

4.2.5 招待論文

該当なし。

4.2.6 学会表彰

(1) 6th Asia-Pacific Symposium on Information and Tele-communication Technologies (APSITT2005), Best Paper Award

4.3 産学連携

4.3.1 企業との共同研究

(1) 株式会社ルネサステクノロジ「モバイル・ユビキタスネットワーク技術の研究」(2004~2005年度)
(以上、中野)

4.3.2 学外での講演

該当なし。

4.3.3 特許

(1) ストリーム型情報収集方式(特願2005-164067)
(2) ブロック型情報収集方式(特願2006-010390)
(以上、中野)

4.3.4 学外委員

(1) 国立情報学研究所ネットワーク運営連携本部会議委員
(2) 第11回日独シンポジウムプログラム委員(2005.9.14-16)
(以上、中野)

4.4 プロジェクト活動

(1) 情報ネットワーク小委員会委員長(2004.4~2006.2、学内活動)
(2) 情報倫理小委員会委員長(2005.8~2006.2、学内活動)
(3) ICカードワーキング議長(2005.10~、学内活動)
(4) ODINS5期検討ワーキング議長 (2005.4~、学内活動)
(以上、中野)
(5) 文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(A)(2)「サービスオーバーレイネットワークのためのインラインネットワーク計測技術の確立」(2003~2005年度)分担
(6) 総務省 戦略的情報通信研究開発推進制度 特定領域重点型研究開発 「ネットワークサービスの早期展開を実現するオーバレイネットワーク基盤の研究開発」(2005~2007年度)分担
(7) 文部科学省 科学研究費補助金(基盤(A))「メタ情報環境を実現するネットワーキング技術の確立」、2004-2007分担
(8) 文部科学省 科学研究費補助金(若手(A))「10Gbpsのスループットを達成する真にスケーラブルなTCPの輻輳制御方式の開発」、 2004-2006代表
(9) 文部科学省 科学技術振興調整費「サイバーソサエティ実現のための仮想網技術」、 2002-2004(研究分担者)
(以上、長谷川)
(10) 文部科学省 科学技術振興調整費「セキュアネットワーク構築のための人材育成」、 2001-2005分担
(以上、中野、長谷川)
(11) 文部科学省 科学研究費補助金(若手(B))「P2PネットワークにおけるユーザQoSを考慮した検索手法に関する研究」、 2005~2007年度代表
(以上、笹部)

4.5 その他の活動

該当なし。

2005年度研究発表論文一覧

学術論文誌

(1) Cao Le Thanh Man, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “ImTCP: TCP with an inline measurement mechanism for available bandwidth,” to appear in Computer Communications Journal, Special Issue on Monitoring and Measurements of IP Networks, 2006.
(2) Cao Le Thanh Man, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “A simultaneous inline measurement mechanism for capacity and available bandwidth of end-to-end network path,” submitted for publication.
(3) Tomoaki Tsugawa, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Background TCP data transfer with inline network measurement,” to appear in IEICE Transactions on Communications, 2006.
(4) Zongsheng Zhang, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Performance analysis and improvement of HighSpeed TCP with TailDrop/RED routers,” IEICE Transactions on Communications, vol. E88-B, no. 6, pp. 2495-2507, June 2005.
(5) Zongsheng Zhang, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Experimental results of implementing high-speed and parallel TCP variants for long fat networks,” to appear in IEICE Transactions on Communications, 2006.
(6) Kazuhiro Azuma, Takuya Okamoto, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Design, Implementation and Evaluation of Resource Management System for Internet Servers,” Journal of High Speed Networks, vol.14, no. 4, pp.301-316, 2005.
(7) Kazuhiro Azuma, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Receiver-based management scheme of access link resources for QoS-controllable TCP connections,” to appear in International Journal of Communication Systems, 2005.
(8) Masahiro Sasabe, Naoki Wakamiya, and Masayuki Murata, “Adaptive and Robust P2P Media Streaming,” WSEAS TRANSACTIONS on COMMUNICATIONS, vol. 4, pp. 425-430, July 2005.

国際会議会議録

(1) Cao Le Thanh Man, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “ImTCP HighSpeed: Inline network measurement for high-speed networks,” in Proceedings of Passive and Active Measurement Workshop 2006 (PAM 2006), March 2006.
(2) Cao Le Thanh Man, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “ICIM: An inline network measurement mechanism for highspeed networks,” in Proceedings of the 4th IEEE/IFIP Workshop on End-to-End Monitoring Techniques and Services (E2EMON 2006), April 2006.
(3) Tomoaki Tsugawa, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Background TCP data transfer with inline network measurement,” in Proceedings of Asia-Pacific Conference on Communications (APCC 2005), (Perth), pp. 459-463, October 2005.
(4) Ichinoshin Maki, Go Hasegawa, Masayuki Murata and Tutomu Murase, “Performance analysis and improvement of TCP proxy mechanism in TCP overlay networks,” International Conference on Communications (ICC) 2005, May 2005.
(5) Kana Yamanegi, Takayuki Hama, Go Hasegawa, Masayuki Murata, Hideyuki Shimonishi and Tutomu Murase, “Implementation experiments of TCP proxy mechanism,” in Proceedings of 6th Asia-Pacific Symposium on Information and Telecommunication Technologies, pp. 17-22, November 2005. (Best Paper Award)
(6) Zongsheng Zhang, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Experimental evaluations of gentle High-Speed TCP for long-fat networks,” in Proceedings 6th Asia-Pacific Symposium on Information and Telecommunication Technologies, pp. 47-52, November 2005.
(7) Zongsheng Zhang, Go Hasegawa and Masayuki Murata, “Analysis evaluation of parallel TCP: Is it really effective for long fat networks?” submitted for publication.
(8) Masashi Nakata, Go Hasegawa, and Hirotaka NAKANO, Receiver-based ACK Splitting Mechanism for TCP over Wired/wireless Integrated Networks, in Proceedings of CEWIT 2005, December 2005.

口頭発表(国内研究会など)

(1) 中野 博隆,“ユビキタス環境からのデータ収集とコンテンツの生成について,” 信学技報, vol. 105, no. 16, CQ2005-7, pp. 33-37, 2005年4月.
(2) 平野 裕介,長手 航,中野 博隆,“ユビキタス環境用ストリーム型情報収集システムにおける転送効率向上について”,信学技法, Vol.105, No. MoMuC2005-55 ,2005年9月.
(3) 長手 航, 平野 裕介, 中野 博隆,“ユビキタス環境用情報収集のためのシミュレータ”,信学技法, Vol.105, No. MoMuC2005-56 ,2005年9月
(4) Cao Le Thanh Man, 長谷川 剛, 村田 正幸, “エンドホスト間のネットワークパスの物理帯域のインライン計測手法,” 電子情報通信学会技術研究報告(IN2005-123), June 2005.
(5) Cao Le Thanh Man, 長谷川 剛, 村田 正幸, “高速ネットワークのためのインライン計測手法,” 電子情報通信学会技術研究報告(IN2005-15), pp. 5-10, December 2005.
(6) Cao Le Thanh Man, Go Hasegawa, Masayuki Murata, “A packet burst-based inline network measurement mechanism,” 電子情報通信学会2006 総合大会, March 2006.
(7) 森 一成, 浜 崇之, 長谷川 剛, 村田 正幸, 下西 英之, 村瀬 勉, “インラインネットワーク計測手法およびその応用手法の実ネットワーク上での性能評価,” 電子情報通信学会技術研究報告(IN2005-154), pp. 67-72, February 2006.
(8) 津川 知朗,長谷川 剛,村田 正幸, “インラインネットワーク計測手法ImTCPおよびその応用手法の実装および性能評価,” 電子情報通信学会技術研究報告(IN2005-120), pp. 79-84, December 2005.
(9) 山根木 果奈, 長谷川 剛, 村田 正幸, “スループット保証を実現するTCPの輻輳制御方式の提案と評価,” 電子情報通信学会技術研究報告, March 2006.
(10) 冨岡 健史, 長谷川 剛, 村田 正幸, “ルータのバッファサイズがTCPに与える影響の一考察,” 電子情報通信学会技術研究報告, March 2006.
(11) 張 宗升, 長谷川 剛, 村田 正幸, “高速TCPおよび並列TCP方式の実験ネットワークでの評価,” 電子情報通信学会技術研究報告, pp. 17-22, June 2005.
(12) 張 宗升, 長谷川 剛, 村田 正幸, “並列TCP方式のスループット解析とパラメータ設定に関する考察,” 電子情報通信学会技術研究報告, pp. 7-11, January 2006.
(13) 笹部 昌弘, 若宮 直紀, 村田 正幸, “高速なファイル検索,取得のための障害回復力のあるP2P 論理網構築手法,” 電子情報通信学会技術研究報告(IN2006-178), pp. 131-136, Mar. 2006.
(14) 仲田昌史, 長谷川剛, 中野博隆, “有線・無線統合ネットワークにおけるTCP性能向上のための動的ACK分割手法,”電子情報通信学会技術研究報告 (NS2005-66), July 2005.
(15) 仲田昌史, 長谷川剛, 中野博隆, [奨励講演]有線・無線混在ネットワークのための TCP 動的 ACK 分割手法のスループット解析, 電子情報通信学会技術研究報告, January 2006.

2005年度特別研究報告・修士論文・博士論文

博士論文

(1) Masahiro Sasabe, Cache-based Adaptive Mechanisms for Media Streaming on Information Distributed Systems. PhD thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Mar. 2005.
(2) Zongsheng Zhang, “High-speed transport-layer protocols for fast long-distance networks.” Ph.D thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, January 2006.

修士論文

(1) Tomoaki Tsugawa, “TCP-based background data transfer using inline network measurement technique,” Master’s thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, February 2006.
(2) Yousuke Matsuura, “Performance evaluation of TCP congestion control mechanism based on inline measurement,” Master’s thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, February 2006.
(3) Masashi Nakata, “Receiver-based ACK Splitting Mechanism for TCP over Wired/wireless Heterogeneous Networks,” Master’s thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, February 2006.

特別研究報告

(1) 相原 聖,“定点観測に基づくモバイル分布密度の推定,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2006.
(2) 増田 浩充,“環境センサを用いたブロック型情報収集方式の効率向上,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2006.
(3) 森 一成, “インラインネットワーク計測手法およびその応用手法の公衆網における性能評価,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2006.
(4) 冨岡 健史, “ルータにおけるバッファサイズがTCP性能に与える影響のシミュレーション評価,” 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, February 2006.