研究部門の業績

応用情報システム研究部門
Applied Information Systems Division
(http://www.ais.cmc.osaka-u.ac.jp)


1 部門スタッフ

教授 下條 真司
略歴:1981年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1983年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士前期課程修了、1986年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士後期課程修了。1986年4月大阪大学基礎工学部助手、1989年2月大阪大学大型計算機センター講師、1991年4月大阪大学大型計算機センター助教授、1998年4月大阪大学大型計算機センター教授、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用システム研究部門教授。情報処理学会、電子情報通信学会、ACM、IEEE、ソフトウェア科学会各会員。

助教授 馬場 健一
略歴:1990年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1992年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士前期課程修了、1992年9月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士後期課程退学。1992年10月大阪大学情報処理教育センター助手、1997年4月高知工科大学工学部電子・光システム工学科講師、1998年12月大阪大学大型計算機センター助教授、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助教授。博士(工学)(1995年3月、大阪大学)。電子情報通信学会、IEEE会員。

講師 寺西 裕一
略歴:1993年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1995年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻情報工学分野前期課程修了。1995年4月日本電信電話株式会社入社、同情報通信研究所勤務。2002年西日本電信電話株式会社研究開発センター勤務。2004年4月、同主査。2005年1月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門講師となり、現在に至る。博士(工学)(2004年3月、大阪大学)。情報処理学会会員。

講師 秋山 豊和
略歴:1997年3月大阪大学工学部情報システム工学科卒業、1999年3月大阪大学大学院工学研究科情報システム工学専攻博士前期課程修了。2000年4月大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助手、2005年1月大阪大学サイバーメディアセンター応用システム研究部門講師となり、現在に至る。博士(工学)(2003年9月、大阪大学)。IEEE、電子情報通信学会、情報処理学会各会員。

助手 東田 学
略歴:1989年3月東京工業大学理学部数学科卒業、1991年3月東京工業大学大学院理工学研究科数学専攻修士課程修了、1997年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士課程修了。1994年大阪大学大型計算機センター助手、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助手。

助手 加藤 精一(中之島センター)
略歴:1997年3月東京大学工学部計数工学科卒業、1999年3月東京大学大学院理学系研究科天文学専攻修士課程修了、2002年3月東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程修了。2002年4月大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム部門教務職員、2004年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム部門助手となり、現在に至る。博士(理学)(2002年3月、東京大学)。日本天文学会会員。

教務職員 野崎 一徳
略歴:2000年3月北海道大学歯学部卒業、2004年3月大阪大学大学院歯学研究科博士課程修了。2004年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム部門教務職員となり、現在に至る。博士(歯学)(2004年3月、大阪大学)。情報処理学会会員、歯科医師。

兼任教員
特任教授 丸山裕之
特任助教授 齋藤和典(株式会社セキュアウェア)
特任助教授 島田伸敬(立命館大学)
特任助教授 鶴 正人(九州工業大学)
特任助教授 野川裕記(東京医科歯科大学)
特任講師 谷川哲司(日本電気株式会社)
特任助手 岡村真吾
特任助手 坂根栄作
客員教授 坂田恒昭(塩野義製薬株式会社)
招聘助教授 藤川和利(奈良先端科学技術大学院)
招聘助教授 有吉勇介(尾道大学)
招聘研究員 奥田 剛(奈良先端科学技術大学院)
招聘研究員 植田和憲(高知工科大学)
共同研究者
助教授 春本 要(大阪大学大学院工学研究科社会連携室情報ネットワーク部門)
特任助教授 伊達 進(大阪大学大学院情報科学研究科バイオ情報工学専攻ゲノム情報工学講座)

2 教育および教育支援業績

2.1 バイオグリッド基盤システム

2.1.1 システムの概要

 バイオグリッド基盤システムは2002年3月に整備されて以降、2002年5月末からスタートした文部科学省ITプログラム「スーパーコンピュータネットワークの構築」(バイオグリッド・プロジェクト)の研究開発基盤として運用されている。
 グリッドシステム1は、クラスタ用の専用ネットワークインターフェース Myrinet により高速かつ低遅延に密結合した典型的な計算グリッドシステムである。グリッドシステム2は、複数の FastEthernetによって多点結合したクラスタ・システムで、柔軟なサブシステムの分割や、トランキング結合による高大域データ交換が可能となっている。グリッドシステム3は、古典的な共有メモリ型サーバ・システムであり、大規模データベース検索において汎用性能を提供する。グリッドシステム4は、クラスタ型ファイルサーバであり、トータル15TBのネットワーク・ストレージを提供する。

2.1.2 システムの整備状況

 今年度も昨年度に引き続き、安定したサービスの提供を目的とした運用を実施した。また、ユーザからの要望に対しても、ヘルプデスクシステムにより運用グループ全体でシームレスなサービスの提供を目指している。
 今年度は、よりセキュリティの強化を図るため、グリッド1を除く OS のバージョンアップを行い、同時にログイン時の SSH パスワード認証を禁止、 SSH 公開鍵認証をユーザに義務付け運用を実施している。(グリッド1については NAREGI ミドルウェア導入のため OSのバージョンアップは見送りの状態となっている:後述)
 また、今年度は、SPring-8との高速データ転送実験や、大阪大学蛋白質研究所QM/MM シミュレーションによる蛋白質研究及び創薬研究に協力し、学内外における本システムを利用した対外連携を活発にしている。
 表1~3に本年度実施したシステム更新作業のリストを示す。

表1 本年度のシステム更新作業リスト
(グリッドシステム1)
  • Intel Fortran Compiler 8.0→ 8.1 バージョンアップ
  • Intel C++ Compiler 8.0 → 8.1 バージョンアップ
  • Intel Math Kernel Library 6.1.1 → 7.2 バージョンアップ
  • J2SE SDK 1.4.1_02 → 1.4.2_07 バージョンアップ
  • NAREGI ミドルウェア インストール
表2 本年度のシステム更新作業リスト
(グリッドシステム2)
  • Intel Fortran Compiler 8.0 → 8.1 バージョンアップ
  • Intel C++ Compiler 8.0 → 8.1 バージョンアップ
  • Intel Math Kernel Library 6.1.1 → 7.2 バージョンアップ
  • J2SE SDK 1.4.1_04 → 1.4.2_07 バージョンアップ
  • NQSII インストール
  • Fedora Core 2 → Cent OS 4.3 バージョンアップ
表3 本年度のシステム更新作業リスト
(グリッドシステム4)
  • Fedora Core 2 → Cent OS 4.3 バージョンアップ
また現在、本システムの利用に対する期待が当初より徐々に変わってきており、それに適切に対応すべく運用形態の見直しを下記を含め検討している。

2.1.3 システムの利用状況

 表4に2005年度のグリッドシステムの稼働率を示す。なお、集計の対象期間は2005年4月1日から2006年2月28日までの334日間である。

表4 2005年度のグリッドシステムの稼働率
(集計対象期間:334日間)
計画停止
日数
障害
日数
稼働率
%
グリッドシステム1 16 91 68.0
グリッドシステム2 16 91 68.0
グリッドシステム3 7 0 97.9
グリッドシステム4 16 91 68.0

 グリッドシステム3の稼働率が他のシステムよりもやや高い。これは、NIS/NFSサーバであるグリッドシステム4のサービス停止が、グリッドシステム3のメインユーザ(データグリッドグループ:グリッドシステム3上にローカルアカウントを持つ)には影響がないことから、通常の稼動状態として日数をカウントしているためである。
 また今年度より、よりユーザの要望に対し、的確な対応を実現するため、従来のヘルプデスクシステムを廃止し、新たに Request Tracker を導入した。これは従来のヘルプデスクシステムの基本的機能を引き継ぎつつ、更に細かいリクエスト管理機能やメールによるリクエスト投入機能などを可能とし、より利便性を高めたものである。
 下記の図1はRequest Tracker の WebUI をキャプチャしたものである。
図1 Request Tracker

2.1.4 基盤システムを用いた共同研究紹介

 上述した基盤システムを用いた共同研究・連携が2005年度数多く実施された。本節では、そのうちいくつかを簡単に紹介する。それ以外の活動についても、本報告書他節で紹介されているので、そちらを参照されたい。

連携1)JGNIIプロジェクトの 連携
連携先:NICT (National Institute of Information and Communications Technology)
 2005年9月に開催された iGrid2005 において、NICTが実施した、計算機群と超広帯域光ネットワークの連携実験にグリッド2、12 ノードを拠出した。また、同様の連携を 2005年11月の SC05, 2006年1月のJGNII シンポジウムにおいておこなった。

連携2)NAREGI プロジェクトとの連携
連携先:東北大学
 NAREGI ミドルウェアを導入し、連携実験のためグリッド1を提供した。詳細は後述。

2.1.5 次世代グリッドミドルウェア NAREGI にむけた取り組み

 大阪大学サイバーメディアセンターでは、次世代のグリッドミドルウェアの研究開発を目的としたNAREGIプロジェクトに参画している。NAREGIプロジェクトは、全国の主要な大学や研究機関が参画して推進されており、わが国日本だけでなく欧米諸国からも非常に注目度の高いプロジェクトとなっている。
 本センターでは、そのような観点から、バイオグリッド基盤システム1を利用して、NAREGI プロジェクトの成果物の導入試験をより迅速に実施し、その有用性について検証をしている。本センターで実施する導入試験では、本学だけでなく次世代の運用形態を考慮し、他大学計算センター等と連携することでより実践的かつ現実的な視点から厳しい検証を特徴と考えている。
 2005年度は、2月にはNAREGIプロジェクトで開発されたグリッドミドルウェアNAREGI αをグリッド基盤システム1に導入し、東北大学との連携による検証実験を開始した(図2)。
 グリッドミドルウェアNAREGI αの動作を以下に示す。
【実行準備】
1) 利用者登録を行い CA (認証局)から証明書を取得。
2) PSE を用いて、プログラムを転送・コンパイルしてアプリケーション実行環境をグリッド計算資源に配置する。
3) WFT (Work Flow Tool) を用いて、グリッドMPIジョブ実行手続き(ワークフロー)及び実行 CPU数等の計算資源に関する用件を記述する。



【コアロケーション】
1) WFT からSS (Super Scheduler) へワークフローをサブミットする。
2) SS は利用者が記述した資源用件を満たす計算資源を IS (Information Service) に問い合わせる。
3) SS は、各サイトの資源管理インターフェースとなるグリッド VM に対し、各サイトに同時実行開始の予約を交渉する。
4) 交渉が合意されるとグリッド VM はローカルスケジューラに対してジョブ実行を予約する。
【モニタリング】
1) ジョブの実行(途中)結果をグリッド可視化サービスにより可視化しモニタする。
 以上の動作を大阪大学、及び東北大学に設置されている計算機を用いて検証実験を行い、その運用上の問題点、技術的課題などを実践的観点から考察している。
 大阪大学に構築した NAREGI α は、バイオグリッド基盤システム1の6ノードを用いて環境を以下のような構成で構築している。
ノード#1: IS node (Information Service)
ノード#2: SS node (Super Scheduler)
ノード#3: Operation node (Work Flow Tools)
ノード#4: GridVM node (GridVM Scheduler +GridVM Engine)
ノード#5: EX node (GridVM Engine)
ノード#6: EX node (GridVM Engine)

図2 NAREGI αによる東北大-阪大
検証実験構成図
 本報告書執筆時点では、東北大学との連携は計画段階であるが、下記のような計画でNAREGI αの検証実験を実施予定としている。
【検証環境】
 大阪大学に構築した NAREGI αの環境に東北大学の GridVM node (計算ノード)を追加した構成とする。また、大阪大学と東北大学とのネットワーク接続についてはグリッド研究会網(MPLS)の grid-2 ネットワークを用いて実施する予定である。
【検証方法】
 大阪、及び東北の研究者が手元の端末 (PC) から大阪大学で動作する WFT にブラウザを用いてアクセスし、ジョブをサブミットする。
 尚、今回の検証実験で使用するプログラムはNAREGI プロジェクトの開発グループが使っているテストプログラムでの検証を予定している。
 
 本報告書執筆時点では以上のように非常に簡単な検証実験ではあるが、新しい技術を運用にいち早く取り入れるための努力を日々続けている。

2.2 全学IT認証基盤システム

 全学IT認証基盤システムは、1)統一アカウント認証サーバシステム、2) CA/RAシステム、3)シングルサインオンシステム、の3システムからなる。これらのうち、 2004年度に1)統一アカウント認証サーバシステムを整備した。2005年度は2) CA/RAシステム、3)シングルサインオンシステムの各システムを構築するために必要な機能、またそれら機能の標準化動向・製品調査を行い、仕様書の作成等を行った。
 CA/RAシステム及びシングルサインオンシステムは、CAシステム、RAシステム、ディレクトリサーバシステム、シングルサインオンシステム、ディレクトリ統合管理システム、監視・管理システム及びICカードから成る。CAシステムの設置・運用は高度なセキュリティが要求されるため、学外の機関に委託することを想定している。ユーザの秘密鍵と公開鍵証明書はICカードに格納されて各ユーザに配付される。
 本システムにより、本学のあらゆる情報システムがPKI技術のもと、サーバ、クライアント、個人を安全、確実に認証することが可能となり、事務情報や個人情報のネットワーク上での安全なやり取りが実現される。本システムの機能は本学内の研究・教育環境の大幅な前進となるだけでなく、国立情報学研究所等が推進するサイバーサイエンスインフラストラクチャ(CSI)におけるUPKI (University PKI) やNAREGI (National Research Grid Initiative) をベースとするインフラに対応しうるものとすることで、日本国内において大学間の連携基盤を構築していく上での先駆的役割を果たすこととなる。
 2006年度は本システムの導入を進め、本格運用に向けて、システムの運用方法や利用規定の整備を行っていく。
図 3 全学IT認証基盤システムの構成

2.3 SecureNetプログラム

 本年度は第IV期応用コースおよび第V期基礎コースを開講した。第IV期応用コースでは、昨年度開講した第IV期基礎コースからの継続の受講生6名に、新たに応募のあった4名を加えた、10名を受講生とした。受講生の内訳は、社会人7名、大学院生3名であった。第V期基礎コースでは、一般公募によって募集した受講生及びカーネギーメロン大学日本校の学生を受講生とした。最終年度ということもあり、応募のあった27名全員を受講生とした。受講生の内訳は、社会人16名、大学院生11名であった。
 今年度の本プログラムの内容は次の通りである。第IV期応用コースでは、無線LAN、セキュリティ監査、Cyber War をテーマとして取り上げ、講義・実習を行った。第V期基礎コースでは、ソフトウェアの脆弱性の詳細、侵入解析のための基礎知識、情報セキュリティ監査、プロバイダ責任制限法等の法制度、不正アクセス・ウィルス対策などの講義を行った。さらに、大阪大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻の学生28名及び社会人受講生12名を対象に本プログラムの一部を演習として実施した。
 さらに、2004年度に引き続き、e-Learningを実施するためのコンテンツ作成を進めるとともに、2005年10月から2006年1月にかけて、作成したコンテンツの試験公開を行った。受講生は一般公募によって募集した92名であった。試験公開後、受講生に対してアンケート調査を実施し、その結果を基にコンテンツの改善・英語化を行った。改善・英語化後のコンテンツについても試験公開及びアンケート調査を行った。
 環境整備、および研究成果として、1)セキュアVPN技術の検証、2)機密情報管理システムの構築と実証、3)ネットワーク計測アルゴリズムの検証、4) SoftEther CAシステムの構築と実証、に取り組んだ。
 本年度は最終年度にあたるため、2005年7月22日に千里阪急ホテルにおいて、本プログラム5年間の成果報告会を行った。参加者は48名であった。

2.4 JGN II

 JGN2は、1999年4月から2004年3月まで運用されたJGN(Japan Gigabit Network: 研究開発用ギガビットネットワーク)を発展させた新たな超高速・高機能研究開発テストベッド・ネットワークとして、独立行政法人情報通信研究機構(NiCT)が2004年4月から運用を開始したオープンなテストベッド・ネットワーク環境である。産・学・官・地域などと連携し、次世代のネットワーク関連技術の一層の高度化や多彩なアプリケーションの開発など、基礎的・基盤的な研究開発から実証実験まで推進することを目指している。
 JGN2は、全国規模のIPネットワーク、光波長ネットワーク、光テストベッドの研究開発環境を提供している。また、2004年8月から日米回線を整備し、国内外の研究機関とも連携して研究開発を推進している。さらに、JGN2と連携した研究開発拠点として、7か所の直轄研究開発施設(JGN2リサーチセンター)を整備している。そのうちのひとつがJGN2大阪リサーチセンターであり、サイバーメディアセンター(応用情報システム研究部門)内に設置され、 研究ならびに開発を行っている。
 JGN2大阪リサーチセンターでは、研究課題を「拠点連携型資源共有技術」とし、Gridを中心とした広域連携技術について研究開発を行う。すなわち、広域かつ広帯域ネットワークにおいて効率的な拠点連携型資源共有技術(Gridを中心とした技術)を可能にするためのネットワークプラットホームの研究開発を行う。このため、特に、P2P技術を有効利用することによるセキュアな資源共有環境の構築技術、DiffServモデルの拡張による拠点間ネットワーク帯域制御技術、の研究開発を行っている。今年度の主な成果としては、3章以降にも述べているが、国際会議1件、国内研究会5件の発表を行った。また、後述の国際会議SuperComputing2005において、デモ展示を、報道発表1件を行った。

2.5 教育活動

 本部門は情報科学研究科マルチメディア工学専攻、および工学部情報システム工学科目にて応用メディア工学講座を兼任しており、学部、大学院の学生の研究指導を行うとともに、下記の講義を担当した。

3 研究概要

3.1 グリッド基盤技術と応用

 本研究グループでは、近年急速にその可能性を着目されている広域分散計算技術グリッドとその応用についての研究開発を実施している。グリッド技術は、インターネット上における分散あるいは並列計算技術というHPC (High Performance Computing) 技術として見られることが多いが、それはグリッド技術の一側面でしかない。実際、今日数多くの国内外における研究機関、大学でグリッド技術が研究開発されているが、そこではHPCとしての側面だけでなく、データ集約・管理、仮想化、セキュリティといった側面でもまた研究開発が日夜進められているという状況がある。また、これらの研究開発の特徴は、科学、産業のアプリケーション利用という側面から実践的に実施されることが多く、産学連携という形式で実施されることが多いのが特徴となっている。本研究グループでも、そのような潮流をいち早く察知し、文部科学省ITプログラム(通称:バイオグリッドプロジェクト)に参画する企業、大学の研究者、さらにはPRAGMA等の海外研究コミュニティと連携し、真に有用なグリッド技術に関する研究開発を実施している。本報告書では、紙面の関係から下記の主要な4研究を紹介する。
(1) ウェブにおける分散推論システムとその問い合わせ最適化手法の開発
(2) グリッド上のアプリケーション連携を考慮した利用者の意思決定支援
(3) 生体高分子シミュレーションのOGSA対応によるユーザの利用環境整備
(4) グリッド環境における細粒度アクセス制御

3.1.1 ウェブにおける分散推論システムとその問い合わせ最適化手法の開発

 近年のライフサイエンスではウェブによる情報共有が一般的となり、その一環としてGene Ontologyをはじめとする様々なオントロジの開発が進められている。また、情報科学分野ではFaCTやRacerに代表される推論システムが数多く開発され、オントロジに対する問い合わせにも有用であると期待される。しかし、これらの既存の推論システムでは問い合わせ対象のオントロジを一カ所に集約しなければならないため、更新頻度の高いオントロジを対象とするシステムの維持には手間がかかる。またプライバシなどの理由でダウンロードできないオントロジは問い合わせの対象になり得ない。そこで、本研究では複数の推論システムが連携して問い合わせを実行する分散推論システムを開発する。これにより、オントロジの集約に伴う上記の問題を解決し、ライフサイエンスにおけるオントロジの応用を拡大することが本研究の目的である。

3.1.2 グリッド上のアプリケーション連携を考慮した利用者の意思決定支援

 創薬に対するコンピュータの利用は積極的に行われている。本研究ではDOCKと呼ばれるタンパク質・化合物同士のドッキングシュミレーションを対象としている。DOCKは薬となりうる化合物を絞り込む最初の段階に用いられるツールの1つである。例えば、ある1つのタンパク質に関連して効果を示す薬の候補を大量の化合物の中から探していくために、対象のタンパク質とそれぞれの化合物との結合の強さをDOCKにより算出する。
 創薬に限らず、コンピュータシミュレーションにおいては、実世界の現象を忠実に再現することが求められている。シミュレーションを現実世界に近づけるためには、利用する各ツールのパラメータ調整を正確に行う必要がある。DOCKにおいても同様であり、対象の物質ごとに最適なパラメータを探し出していく必要がある。このような作業は、ユーザとなる研究者の試行錯誤によってなされることが多く、この効率化が非常に重要である。本研究では、このような試行錯誤の過程における利用者の意思決定を支援するシステムの研究開発を実施している。

3.1.3 生体高分子シミュレーションのOGSA対応によるユーザの利用環境整備

 高度な科学問題を対象としたグリッドシステムを構築するためには、既存の科学アプリケーションを有効に活用する必要がある。そのためには既存の技術とグリッドの最新技術を容易に結合させる必要があるが、そのような手法はまだ確立されていないのが現状である。
 このような問題を解決する手段として、SDSC (San Diego Supercomputer Center) のNBCR (National Biomedical Computation Resource) プロジェクトでは既存のアプリケーションをWebサービスとして利用可能にするOPALというソフトウェアを開発している。OPALを利用すれば、既存の科学アプリケーションをラップしたWebサービスを容易に生成することが可能である。アプリケーション開発者は実行したいアプリケーションの場所や特性を設定ファイルに記述すれば、その設定に基づきアプリケーションをGlobus Toolkit等のグリッドミドルウェアで実行するWebサービスがOPALによって提供されるのである。
 しかしながら、OPALは全ての既存のアプリケーションの要求に応えられるわけではない。OPALはただ指定されたアプリケーションをグリッド環境上で実行する単純なWebサービスを生成するのみであり、アプリケーション開発者はその生成されたWebサービスを更新したり修正したりすることによってアプリケーション固有の問題を解決するサービスを作成することはできない。例えば、われわれが対象としている生体高分子シミュレーションでは複数のプログラムがグリッド環境上で長時間に渡って実行され、シミュレーション実行中にプログラム間で計算途中のデータを交換する必要があるが、OPALはただアプリケーションをグリッド環境上で起動する以上の機能を持っていないため、このような要求には対処することができない。さらにOPALはグリッド環境上での実行にGlobus Toolkit2ベースの技術を使用しているが、現在のGlobus Toolkitの最新バージョンは4(以下、GT4)である。GT4はWebサービス(WSRFサービス)をベースに構築されており、OPALのようなWebサービスベースのソフトウェアはGT4ベースで構築されるべきであると考えられる。
 このような問題を有する現状に対して、実際アプリケーションのユーザに適切な利用環境を提供することが本研究開発の目的である。

3.1.4 グリッド環境における細粒度アクセス制御

 企業秘密が含まれる創薬データや患者のプライバシが含まれる医療データなど、グリッドで機密データを共有したいという要求が高まっている。しかし、グリッドにはその性質上、多種多様なユーザやデータが含まれる。従って、そのような機密データの共有を実現するためには、ユーザやデータの属性に応じた適切なアクセス制御を行うことが必須となる。しかし、従来のグリッド技術では、後述のようにアクセス制御に関する技術が未だ成熟されておらず、機密データの取り扱いが可能なグリッド環境は未だ実現されていない。そこで本グループでは、機密データの取り扱いを視野に入れた、グリッド環境におけるアクセス制御技術の研究開発を実施している。

 上記のようにグリッド基盤グループでは、グリッドを応用する上で必要となる技術開発を目的として、実際アプリケーション利用の観点から技術開発を推進している。本研究の具体的な内容成果については、4.2節を参照されたい。

3.2 口腔科学推進の為のITインフラ設計開発研究

 これまで医療分野(歯科医療を含む)では、広帯域ネットワークや、低遅延型ネットワーク等への要求、要望はそれほど強くはなかった。一方で、手術シミュレーションや、流体、力学等の物理シミュレーションへのニーズは着実に高まってきている。これは、大阪大学医工連携センター(MEIセンター)の設立を鑑みても明らかである。しかしながら、物理シミュレーションや、大規模データを扱うアプリケーションでは、計算資源や、記憶装置資源を確保することが困難で、さらに言えば、それらが潤沢に確保でき、また、可及的医療現場から簡単にアクセスできれば、これまで大学内や、企業では困難であったアプリケーションを実現できる。
 そこで、我々の医療情報デザインチームでは、口腔科学に焦点をあて、特に、発音の物理シミュレーションをチェアサイドで出来るようにする事を目的に、研究開発を行ってきた。歯科治療では、口腔内の解剖学的形態を補綴物や、外科手術によって変形させることがある。その結果、発音に違和感を訴える患者がいる。時に、歯茎摩擦音に関して言えば、前歯周囲がその調音に大きく影響を与えることが知られており、その部分の形態を変化させる治療には十分な情報を元にした治療スキームが必要であると考えた。


 そこで、物理的な考察を行うため、発音時に発生する気流と、それによる音の発生を、数値流体シミュレーションにより、明らかにすべく、発音時の口腔内の形状をCT等によって取得し、それを元にポリゴンデータセットを作成し、流体計算をおこなった。その結果、歯茎摩擦音のような乱流から発声する音の解析には、空間を非常に詳細に観察する必要があり、同時に、歯と歯の間等、非常に狭い領域が音の発生に重要な影響を与えていることが推察出来た。しかしながら、それらの計算を行うには、少なくとも、口腔領域を3千6百万以上の領域に空間を分解し計算を行う必要があり、そのためには膨大な計算時間が必要になり、その他にも、記憶容量は少なくとも、10TB以上必要になる事も分かった。同時に、このような大規模な計算結果を可視化することにも注意しなくてはならず、チェアサイドにあるスタンドアロンな端末では不可能であることが分かった。
 これらの問題点を解決しつつ、コスト的な側面からも解決可能な技術研究開発の糸口として、我々は、高速ネットワーク環境下での分散コンピューティング及び、分散データベース、ストレージをWebアプリケーションとしてラッピングする技術を選択した。この技術の実装を進めてゆく事で、将来、計算口腔医科学ポータルを学内に構築することが可能になると考えている。
 現在までの進捗状況としては、本研究室が共同で研究に当たっている情報通信開発機構JGN2プロジェクトに参画し、10Gbpsベースの環境下での実証実験に取り組んでいる。2005年度は、一部成果をSuperComputing2005、JGN2シンポジウム2006にて発表した。
 今後、物理シミュレーション用IT基盤と、医療用情報と演繹手法を用いて、柔軟に統合してゆき、Semanticデータベースの構築を平行して進めて行きたいと考えている。

3.3 ユビキタスコンテンツ流通技術

 インターネットの普及により、様々なネットワークサービスが生み出され、そのサービス内容は年々拡大の一途を遂げている。エンドユーザからは高度で親和性の高いサービスが望まれるようになり、ユビキタスコンピューティングへの期待がたかまりつつある。本研究では、ユビキタスコンピューティング環境において、ユーザの状況を考慮に置き、ニーズのあるコンテンツをいつでも、どこからでも迅速に提供することを目指している。このようなユビキタスコンテンツサービスを実現するためには、ユーザの位置、ユーザの周辺の気温、湿度、人の密集度といったセンサー情報から、ある種のイベントや個人の行動履歴、スケジュールといった個人情報までを、蓄積・加工・配信する高度で高性能な枠組みが必要となる。こうした枠組みの実現における問題は、扱う情報量が膨大で多岐に及んでいること、情報同士の関連性が複雑であること、さらに情報配信のための経路制御も考慮しなければならないなど、多岐にわたる。
 本研究テーマでは、上記問題に対するアプローチとして、エージェントプラットフォームを計算の基盤、P2Pネットワークを通信の基盤とし、コンテンツ発見と状況適応化、コンテンツ配信の2つのテーマに着目して研究を推進している。

3.4 QoSを考慮したネットワークアーキテクチャ

 ビデオ会議や電話(VoIP)など、リアルタイム性や通信帯域に対する要求の厳しいアプリケーションが増加・普及するにつれ、ベストエフォート型を前提に発展してきたインターネットにおいても、多様な通信品質(QoS)要求への対応が重要な課題となってきている。
 本研究部門では、多様な要求品質や信頼性要件などに対応したネットワークアーキテクチャ、および、その効率的、効果的なネットワーク管理・制御手法に関する研究を進めている。本年度の主な研究課題は以下のとおりである。
  1. DiffServを利用した大規模Grid向けQoS制御機構に関する研究
  2. 長距離広帯域ネットワークにおける大規模データ高速転送手法に関する研究
  3. 転送時間の保証を目指した大規模データ転送手法に関する研究
  4. メトロポリタンエリアネットワークにおける同期型並列計算のためのトラヒック制御方式に関する研究
  5. イントラドメインモデルにおけるストリームフロー動的クラス割当方式に関する研究
  6. パケット交換網のための受付制御技術TACCSに関する研究

3.5 フォトニックネットワークに関する研究

 近年の光伝送技術の発展には目覚しいものがあり、WDM(波長分割多重)技術によってネットワークの回線容量は爆発的に増大してきた。しかし、光伝送技術とネットワーキング技術はおのおの別個の歴史を持ち、インターネットに適した光通信技術の適用形態については明らかになっていないのが現状である。そこで、WDM技術を用いた新たなグリッド環境であるλコンピューティング環境を構築するための技術、ならびにOCDM技術を用いてデータ粒度を考慮した光パスの設定に関する研究課題について取り組んでいる。今年度に行った研究課題は次のとおりである。
  1. λコンピューティング環境における共有メモリアクセス手法に関する研究
  2. λコンピューティング環境構築のための共有メモリシステムの実装と評価
  3. λコンピューティング環境構築のためのGlobus Toolkit を用いたMPIライブラリの実装と評価
  4. WDMに基づくλコンピューティング環境構築のための共有メモリアーキテクチャの設計と評価
  5. データ粒度可変光パスに関する研究
  6. 光クロスコネクトアーキテクチャにおけるOCDMを用いたマルチ粒度光パス設定に関する研究

3.6 ネットワークセキュリティ技術

 安定した社会基盤と呼ぶに耐え得るネットワーク環境を実現するには、不正行為の検知と対策だけでなく、その予防と抑止、さらには不正行為に耐性を持たせるための技術開発を行うことが必要となる。本研究テーマでは、要素研究項目として、DNS(ドメイン名システム)の信頼性向上と、ディジタルコンテンツ配信におけるコンテンツ保護およびプライバシ保護について研究を推進している。
 DNSはドメイン名とIPアドレスやメール配送先などの情報を対応付ける役割を果たすインターネットに欠かせない基盤技術の一つである。DNSは基本的に公開情報を提供する全世界に開かれたシステムであり、その詐称行為は大きな経済的被害を及ぼす。しかしながら、DNSに対する外部からの攻撃に対する防御は、現状では十分であるとは言えない。また、DNSが提供すべき情報は肥大化の一途を辿っており、現在のプロトコルでは一度に運べるデータ長が足りなくなるなどの問題が生じているため、これらへの対策を研究している。
 ディジタルコンテンツ配信サービスでは、販売者の要望として、特定の受信者だけに配信できることや、コンテンツの構造に基づいて配信を制御できることが挙げられる。一方、購入者の要望として、何を購入したかを知られたくないといった購入者のプライバシ保護に関することが挙げられる。本研究では、ディジタルコンテンツ配信サービスにおけるセキュリティ対策として、販売者の要望と購入者の要望の両方を満たした配信法の研究を行っている。

4 2005年度研究業績

4.1 グリッド基盤技術と応用(研究成果)

 本節では3.1節で記した研究項目ごとに具体的な研究内容・成果を報告する。

4.1.1 ウェブにおける分散推論システムとその問い合わせ最適化手法の開発

 本研究ではまず、典型的な推論システムであるPrologインタプリタを用いて分散推論システムの構築を試みた。このシステムはネットワークで接続された複数の推論ノードで構成され、それぞれはSWI-PrologとそのJavaインタフェースを用いて実装されている。各ノードでの問い合わせの実行中には通信ライブラリが呼び出され、ネットワーク上の他のノードに問い合わせを転送する。また、他のノードからの問い合わせを受けると、自ノード内のオントロジと比較して解を返す。この手法により、各ノードが持つオントロジを一カ所に集約することなく問い合わせを実行可能である。しかし、問い合わせ中の要素式の記述順序によって評価される要素式の組み合わせ数が増減し、同じ結果を得る問い合わせであっても問い合わせ実行時間にばらつきが生じるという問題が明らかになった。
 この結果を踏まえて、年度後半では分散推論における問い合わせ最適化手法の開発に取り組み、その第一歩として経験則に基づく最適化手法を提案した。本手法では、まず問い合わせ中の要素式が持つ変数をすべて一時変数として各要素式(問い合わせ)を転送し、それぞれの解の個数を得る(図4(a))。次に、この個数が少ない順に問い合わせ中の要素式を並べ替え、この順序にそって実際の解を得るための問い合わせを実行する(図4(b))。このように、提案手法では少ない解を返すノードから順に問い合わせることで組み合わせ数を抑制し、計算量の低減を図る。シミュレーションシステムを構築して行った評価では、本手法によって問い合わせ実行時間の低減が可能であることが示された。
 以上述べたように、2005年度はPrologインタプリタの拡張とその結果を踏まえた問い合わせ最適化手法の開発に注力した。今後、ウェブサービスとして運用可能な分散推論システムの実現に向けて提案手法の実装を進めていく計画である。また、実際にライフサイエンスオントロジを用いて評価を行い、提案手法の有用性を明らかにしたいと考えている。

図 4  解の個数に基づく問い合わせ最適化

4.1.2 グリッド上のアプリケーション連携を考慮した利用者の意思決定支援

 本研究ではDOCKと呼ばれるタンパク質・化合物同士のドッキングシュミレーション(図5)を対象としている。シミュレーションを現実世界に近づけるためには、利用する各ツールのパラメータ調整を正確に行う必要がある。DOCKにおいても同様であり、対象の物質ごとに最適なパラメータを探し出していく必要がある。以下に述べる2つの要因から、DOCKにおける最適パラメータの探索過程の複雑さはDOCKを利用する上での一つの大きな障壁となっている現状がある。

図5ドッキングシミュレーション

 まず第一の要因として、パラメータ数の多さが挙げられる。DOCKでは70を超えるパラメータが存在し、各パラメータが取りうる値全てを実行することは現実的に不可能である。そこでDOCKを利用する研究者は、パラメータの範囲をあらかじめ絞って実行し、その結果を見ながら次の新しいパラメータの範囲を試していくといった作業を繰り返していき、徐々に最適なところに近づけていくというのが現状である。
 第二の要因として、DOCKでは複数のツールを組み合わせて実行されなければならないということが挙げられる。DOCKの実行のためには、事前にいくつかのサブツール群を利用したDOCK用の入力データを作成する必要がある。そのようなサブツール群でもDOCKと同様のパラメータの調整が必要である。サブツール群での結果の違いはDOCKの実行結果にも大きな影響を与えることが多い。そのため研究者はサブツール群を一連のまとまりとして実行してパラメータを調整する必要がある。
 2つの要因に関わる作業は、どちらも研究者の各々の知識や経験に基づいて行われることがほとんどであり、実行環境をあらかじめ固定させておくことが難しい。例えば前者の要因では、調整の過程によって解析するパラメータ空間は結果によって変化し、後者では実行するツール群が変化する。本研究ではこのように状況によって変化する実行環境を、実行時の研究者の意思決定に基づいて柔軟に提供できる環境を目指している。
 本研究では実行環境を次のa~dの4つのレイヤに独立させ、実現している。
a) ユーザインタフェース
b) パラメータ調整
c) ワークフロー管理
d) ツールの実行管理
中心的となるレイヤはbとcの部分である。bのパラメータ調整レイヤとcのワークフロー管理レイヤを連携することで利用者の意思決定を柔軟にシステムに反映させる環境が実現できる。また、実際のツール実行(d)が他と分離されていることで、“研究者の意思決定”という抽象的な手順をシステム全体として管理することができる。本研究では上の4つのレイヤを実現したシステムアーキテクチャを設計し、DOCKに関わる一連の実験環境を構築した。この環境によりシステムを利用する研究者は、実行ノードの選択やツール間でのデータの移動など本来のツール利用の目的から離れた部分に関しては考える必要がなく、本来の目的である意思決定の部分に集中することができる。

4.1.3 生体高分子シミュレーションのOGSA対応によるユーザの利用環境整備

 高度な科学問題を対象としたグリッドシステムを構築するためには、既存の科学アプリケーションを有効に活用する必要がある。そのためには既存の技術とグリッドの最新技術を容易に結合させる必要があるが、そのような手法はまだ確立されていないのが現状である。
 このような問題を解決する手段として、SDSC (San Diego Supercomputer Center) のNBCR (National Biomedical Computation Resource) プロジェクトでは既存のアプリケーションをWebサービスとして利用可能にするOPALというソフトウェアを開発している。OPALを利用すれば、既存の科学アプリケーションをラップしたWebサービスを容易に生成することが可能である。アプリケーション開発者は実行したいアプリケーションの場所や特性を設定ファイルに記述すれば、その設定に基づきアプリケーションをGlobus Toolkit等のグリッドミドルウェアで実行するWebサービスがOPALによって提供されるのである。
 しかしながら、OPALは全ての既存のアプリケーションの要求に応えられるわけではない。OPALはただ指定されたアプリケーションをグリッド環境上で実行する単純なWebサービスを生成するのみであり、アプリケーション開発者はその生成されたWebサービスを更新したり修正したりすることによってアプリケーション固有の問題を解決するサービスを作成することはできない。例えば、われわれが対象としている生体高分子シミュレーションでは複数のプログラムがグリッド環境上で長時間に渡って実行され、シミュレーション実行中にプログラム間で計算途中のデータを交換する必要があるが、OPALはただアプリケーションをグリッド環境上で起動する以上の機能を持っていないため、このような要求には対処することができない。さらにOPALはグリッド環境上での実行にGlobus Toolkit2ベースの技術を使用しているが、現在のGlobus Toolkitの最新バージョンは4(以下、GT4)である。GT4はWebサービス(WSRFサービス)をベースに構築されており、OPALのようなWebサービスベースのソフトウェアはGT4ベースで構築されるべきであると考えられる。
 これらの問題を解決するためにわれわれはSDSCの研究者らと共同でOPALを修正し、GT4の上でOperation Providerとして動作するように機能拡張を行った。Operation ProviderはGT4実装上の基本となる技術であり、ある機能を他のWebサービスに追加的に実装可能とする技術である。つまり、Operation Providerとして実装されたOPALを用いることによって、アプリケーション固有の問題に対応したサービスにOPALの機能を追加することが可能になる。さらに作成されたサービスはWSRFベースのサービスでありGT4の有するグリッド技術の恩恵を受けることが可能である。図6はOPAL Operation ProviderのGT4の中での位置づけを示す。
 われわれは現在、このOPAL Operation Providerを用いて生体高分子シミュレーションのOGSA化を行っている。OPALの機能によってアプリケーションのグリッド環境上での起動は処理されるため、アプリケーション開発者はOPALに対する設定ファイルを記述するのみで良く、アプリケーション固有の問題に集中することが可能である。OPAL Operation Providerはアプリケーションのグリッド環境への投入、WSRFベースのサービス化、アプリケーション固有の処理を容易に結びつけることができ、既存の科学アプリケーションをグリッド化する非常に有効な方法であると言える。

図6 OPAL Operation Providerの位置づけ

4.1.4 グリッド環境における細粒度アクセス制御

 本グループでは、細粒度なアクセス制御が可能で、かつアクセス制御ルールの変更に柔軟に対応できるシステムアーキテクチャの提案を行った。本アーキテクチャは,英国サルフォード大学およびケント大学で開発されている権限管理基盤 (PMI) であるPERMISをベースとした。PERMISは、RBAC (Role-Based Access Control) に基づいたアクセス制御機構を提供する。RBACでは、アクセス権限をユーザではなく、ロール(役割)に割り当てる。すなわち、ユーザのアクセス権限は、ユーザにロールを割り当てることによって、間接的に与えられる。これにより、ユーザ属性の変更に伴うアクセス制御ルールの修正を最小限にできる。またPERMISは、グリッド上の各計算機が提供するサービスのメソッド単位でのアクセス制御が可能である。本アーキテクチャでは、この特徴を利用し、細粒度なデータアクセス制御を実現する。今年度は本アーキテクチャの医療データ共有システムとセンサグリッドへの応用を検討した。
 医療データ共有システムは、医者と研究者が医療データや知見を共有するものである。本システムにより、これまで診療目的にしか利用されていなかった医療データを、研究目的へ利用することが可能になる。これによって、研究者にとっては豊富な医療データを用いた研究を行うことが可能になり、医者にとっては、その研究に基づいた最新の成果や知見を実診療に反映できることになる。これにより、医療技術や知見の向上、ひいては医療分野全体の発展に繋がると期待される。
 本システムにおいて、医者は診察した患者の氏名、住所などの個人データ、および、病名、症状、投薬履歴などの医療データをデータベースに保存する。研究者はこのデータベースにアクセスし、医療データを参照することができる。しかし、研究利用に必要のない個人データに関しては、プライバシー保護の観点から閲覧を許可するべきではない。このようなアクセス制御を実現するために図7に示すシステムを設計した。医者や研究者などのユーザはポータルを介してXMLデータベースにアクセスする。ポータルとデータベースの間にはデータ提供サービスとデータ取得サービスがあり、PERMISで記述されたルールに基づいてデータ取得サービスでアクセスが許可されていないデータが除去され、データ提供サービスで再構成される。アクセスの可否は医者個人に対してではなく、医者であればdoctor、研究者であればresearcherなどのロールに対してルールを記述するため、管理が容易である。本システムはHealthGrid 2006 において発表予定である[2]。
 センサグリッドへの応用は独立行政法人情報通信研究機構 (NICT) のJGN IIプロジェクトと共同で行った。本研究の目的は、センサデバイスのグリッドサービス化による汎用的な統合技術の実現、および、それらのセキュアな連結技術の実現である。具体的には、様々な場所に設置された複数の全方位カメラから得られた動画データをバイオグリッド基盤システムで高速に合成し、ユーザが任意の地点から見た景色をポータルで見ることができるシステムの構築することである。
 本システムにおいて、動画の合成には奈良先端科学技術大学院大学で開発されたソフトウェアを使用した。本システムではカメラごとのアクセス制御ではなく、座標ベースのアクセス制御が要求される。また、ルールは全方位カメラの設置されている施設の管理者が決定できる必要がある。これらの要件を満たすため図8に示すシステムを設計した。施設の管理者はPERMISにどのロールにどの範囲へのアクセスを許可するかを記述したルールを登録する。ユーザがポータルに見たい位置の仮想カメラの座標を入力すると、ポータルはPERMIS認可サービスにユーザID、ユーザのロール、座標を送信してアクセスの可否を問い合わせる。アクセスが許可されるとポータルはバイオグリッド基盤システムで動画を合成し、得られた動画をユーザに表示する。本システムについてはSC2005でデモンストレーションを行った。
 本研究では、グリッド環境における細粒度アクセス制御アーキテクチャを提案し、医療データ共有システムとリアルタイム動画合成システムに応用した。本アーキテクチャは汎用的なものであり、機密データを扱う他のシステムへの応用が期待される。

図7 医療データ共有システムの構成
図8 リアルタイム動画合成システムの構成

関連発表論文
(1) Takahiro Kosaka, Susumu Date, Hideo Matsuda, and Shinji Shimojo, “A Heuristic Query Optimization for Distributed Inference on Life-Scientific Ontologies,” in Knowledge Acquisition from Distributed, Autonomous, Semantically Heterogeneous Data and Knowledge Sources - Proceedings of a Workshop Held in Conjunction with 2005 IEEE International Conference on Data Mining, pp. 54-63, November 2005.
(2) 木戸善之, 伊達進, 前野隆志, 長谷川一郎, 下條真司, 松田秀雄, “in-Silicoスクリーニングを支援するワークフロースキーマの設計と実装”, 情報処理学会第2回バイオ情報学研究会, pp17-24, 2005年10月
(3) Takahito Tashiro, Susumu Date, Shingo Takeda, Ichiro Hasegawa, Shinji Shimojo: Architecture of Authorization Mechanism for Medical Data Sharing on the Grid, In Proceedings of HealthGrid 2006. (in press)

4.2 口腔科学推進の為のITインフラ設計開発研究

4.2.1 Webベースの知能医療情報サービスの開発

 医療情報としては、患者情報、疾患情報、薬剤情報、画像情報、病理画像情報などそれぞれが関連性のある情報がある。もし、これらの情報が患者単位や疾患単位で時系列的に検索可能になれば、疫学研究や実際の治療に役立つと考えられる。一方で、生態シミュレーションは、過去のデータから現在を類推する、疫学情報とは異なり、現在の状態から、未来を予測することが物理的に可能であると考えられる。そこで、両者の情報を意味的に関連付けを行い、医師や研究者が検索可能な情報として臨床に役立てることは出来ないか、という目的で、研究を実施した。
 Web技術ベースでの医療情報提供は、ローカルPCにソフトウェアをインストール出来ない病院が多数であることや、頻繁に行われる保険制度更新やモジュールの追加などを考慮に入れると、管理が容易である。また、ブラウザさえあれば、携帯電話にせよ、PDAにせよ情報にアクセスできることになるので、医療従事者に情報を入力してもらいやすい環境を構築できる。また、W3Cに従い、RDF/OWLとWeb Service Description Language(WSDL)を用いることで、医療情報データだけではなく、より多岐にわたるデータと関連付けが可能となり、多様な生活背景を持つ人々に、その人が望むサービスを提供することを考慮に入れている。また、Webサービスと本システムは連携することを前提に開発しており、高度な練成シミュレーション等もシステムの一部として組み込むことが可能となっている。
 同時に、シミュレーション結果は、Webサービス化された分散リモート可視化モジュールにより、ブラウザに大規模可視化の結果を表示させることが可能である。また、それらの結果と疾患データは関連付けられているため、さまざまな研究への応用も期待できる。

関連発表論文

(1) Masashi Nakagawa, Kazunori Nozaki, Shinji Shimojo: Web-Based Distributed Simulation and Data Management Services for Medical ApplicationsProc of IEEE CBMS 2006, 2006. (in press)
(2) Ly Lam Ngoc Bich, “セマンティック web 技術を用いた医療情報検索システムに関する研究”, 大阪大学工学部, 特別研究報告, Feb 2006.

4.2.2 医療用流体音響練成シミュレーション

 医療におけるシミュレーションは、複雑なジオメトリと、物理モデルの複雑さ難しさから、さまざまな視点からのアプローチが必要である。歯茎摩擦音の発声は、肺からの空気が舌と口蓋前方部との間で圧縮され、個人差はあるものの、約0.7mm程度の上下前歯(中切歯、側切歯)の隙間から体外へ放射される。この物理現象を明らかにするためには、音の発生に着目しなければならない。すると、流体計算結果に求められる精度がおよそ見積もることが出来る。本実験では、流体解析コードにSTREAM(㈱ソフトウェアクレイドル)をSX5(㈱NEC)上で用い、流体計算を行い、流体計算結果から、二重極音源項であるPowell音源を計算した。また、Lighthillの音響アナロジーを用いた計算をBiogrid Grid2上で行った。その結果、流体計算と音響計算は並列計算効率を考慮に入れつつ、パイプライン処理を行うことで、全体のシミュレーションにかかる時間を節約できることが明らかになった。また、音の発生を観察するためには、詳細な計算格子が必要となり、より正確な計算結果を得たければ、分散データ可視化が必須であることが確認された。

関連発表論文

(1) 甲斐島武,加藤精一,秋山豊和,野崎一徳,水野由子,下條真司: “グリッド環境における通信遅延時間の確率分布を用いた集団通信時間の推定方法”,情報処理学会論文誌:コンピューティングシステム, Col 46, SIG16, 2005.
(2) Kazunori Nozaki, Toyokazu Akiyama, Shingo Maeda, Hiroo Tamagawa, Shinji Shimojo: Integration of Computational Fluid Dynamics and Computational Aero Acoustics simulations on Grid system for Dental applications, Proc of IEEE CBMS 2005, 2005.
(3) Kazunori Nozaki, Toyokazu Akiyama, Hiroo Tamagawa, Seiichi Kato, Yuko Mizuno- Matumoto, Masashi Nakagawa, Yoshinobu Maeda, Shinji Shimojo: The First Grid for Oral and Maxillofacial Region and its Application for Speech Analysis, Methods of Information in Medicine 2005; 44: 253-256.

4.3 ユビキタスコンテンツ流通技術

4.3.1 P2PエージェントプラットフォームPIAX の実装

 P2Pネットワーク上で自律性をもって相互に連携を行う分散型アプリケーションを構築するための基盤システムPIAX (P2P Interactive Agent eXtensions)を開発した。ここでいうエージェントとは可搬性(mobility)と自律性を持つシステムエージェントを指し、サービスを実現する基本的なソフトウェアモジュールの単位となる。
 PIAXの特徴を次に挙げる。
 図9はPIAXの基本アーキテクチャを示している。任意のピア上のエージェントに対する通信およびエージェント発見のための機能は、P2Pネットワークが持つ資源発見の機構により実現されている。それぞれのエージェントが持つ機能は、Javaベースのコードを記述する形で実装される。PIAXではエージェント間の相互連携をサポートするため、エージェントを発見しながらメッセージを送受信するための同期・非同期型のAPIを用意しており、これらを用いることでユビキタス環境におけるアプリケーションを効率的に開発可能である。PIAXの開発はオープンソースプロジェクトとして行われており、すでにその一部はP2P標準化推進プロジェクトである JXTA に登録されている。
図9 PIAXのアーキテクチャ

4.3.2 状況依存型コンテンツサービスのための分散演繹機構の研究

 ユビキタス環境における典型的なアプリケーションとして、ユーザの状況に応じて、適切なコンテンツを切り替えて提示する状況依存型コンテンツサービスが挙げられる。状況依存型コンテンツサービスにおいては、アプリケーションがどのようなコンテンツを提示すべきか判定できるよう、ノードに保持されている情報をもとにしてユーザが置かれる状況を導き出す必要がある。本研究ではこうしたユーザの状況を動的かつ柔軟に導き出すための手法として、あらかじめ記述されたルールと与えられた情報をもとに新たな情報を論理的に導き出す演繹処理を用いる方法を検討した。ルールを利用して状況を論理的に導き出すことによって、動的に変化する情報間の関連付けが可能となる。例えば、同じ「近い」というルールに対して、移動手段が徒歩であれば1km 以内、車であれば5km 以内の距離等、ユーザが置かれた状況に応じてルールを選択させることができ、柔軟な組み合わせが可能である。
 本研究では、ルールを直列型と並列型に正規化し、直列型ルールでは反復検索手法を、並列型ルールでは同時検索手法を適用し、結果としてマッチした情報が大量となる場合に反復検索手法に切り替える手法を考案し、現実的データのもとで問い合わせ結果の処理数、処理のステップ数を削減できることを確認した。

関連発表論文

(1) 大谷隆三,竹内亨,吉田幹,寺西裕一,春本 要,下條真司: “状況依存型サービスのための分散演繹機構の提案," 第126回 マルチメディア通信と分散処理研究会

4.3.3 口コミ型コンテンツ流通システムの実現法に関する研究

 ユビキタス環境の実現により、だれでも、どこでもコンテンツを発信、受信することが可能となる。このような環境では、限られたコンテンツ発信者が、一定の統制のもとコンテンツを体系的に提供する従来型のコンテンツ配信よりも、オープンなプロトコルのもと、個人が自由にコンテンツを配信可能な、いわば口コミ型のコンテンツ流通の重要性が増すことになると考えられる。ユビキタス環境を生かした口コミ型コンテンツ流通サービスとして、我々は共有地図を用いたコラボレーション環境 ‘MapWiki’ を考案し、実現した。MapWiki は、近年インターネット上で広く用いられているWiki と呼ばれるWeb 上で情報を編集・共有するためのコンテンツ管理システムを共有地図上で実現するものである。
 地図上に、だれでも、どこからでも自由にコンテンツを追加・編集可能とすることで、実フィールドのユーザとバーチャル環境のユーザ間を含めたコラボレーションを実現し、また、コンテンツの表現および管理に Wiki を用いることで、直感的かつ容易なコンテンツ発信を可能とした。MapWikiの効率的実装のため、地図上の表示位置の近傍から順に存在するコンテンツを検索し画面更新する手法、P2Pネットワーク上で位置コンテンツを分散管理する手法を提案した。提案機構は JavaScript を用いた非同期通信処理を行うWebブラウザ上のアプリケーションとして実装し、有効性を確認している。

図10 MapWikiの実装画面例

関連発表論文

(1) 寺西裕一,鎌原淳三,下條真司: “MapWiki: 共有地図を用いたユビキタスコンテンツ流通環境,” 情報処理学会第13回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集
(2) Yuuichi Teranishi, Junzo Kamahara, Shinji Shimojo: “MapWiki: An Ubiquitous Collaboration Environment on Shared Maps,” International Symposium on Applications and the Internet Workshops ― SAINT 2006 Workshops

4.3.4 ショッピングモール向けコンテンツ推薦システムの実装

図11 ショッピングモール向けコンテンツ推薦システム

 本年度、本研究プロジェクトにおいてショッピングモール向け商品推薦システムの設計と実装を行なった。商品推薦システムはショッピングセンター利用者の近隣にある店舗の商品から、利用者の属性、趣味、行動(閲覧)履歴といったプロファイルにあった商品を推薦する。本システムにおいて、利用者は、ワンダーキャッチャーと呼ばれるマスコット、もしくは、利用者ごとに作成されたカードをショッピングモール内で持ち歩く。利用者のお気に入り情報もしくは、おすすめ情報が近隣に見つかると、マスコットを持っている場合はマスコットの振動、および、音声により知らせる。最寄りのモニタにマスコットもしくはカードをかざすと、それら利用者向けの情報が提示される。システム全体は、日立のシングルサインオン認証技術、NTTの合成エンジン技術、および、大阪大学のP2Pエージェントプラットフォームそれぞれの技術の連携により構成されている。まず、本システムのプロトタイプ実装を行って、INTEROP、UNSといった国際的展示会において実機を用いたデモを行い、その後、一般ユーザを対象とした大規模な実証実験を約1ヶ月にわたって、青森県五所川原市のショッピングモールにて実施した。
図12 INTEROP2005における展示の様子

図13 UNS2005における展示の様子

関連発表論文

(1) 石芳正,寺西裕一: “Ubiquitous Authentication and Agent,” ITRC17
(2) 下條真司,須永宏,寺西裕一 : “ユビキタス時代のショッピングナビゲーション,”月刊自動認識,2005年12月.

4.4 QoSを考慮したネットワークアーキテクチャ

4.4.1 DiffServを利用した大規模Grid向けQoS制御機構に関する研究

 Gridにおける大規模なファイル転送をターゲットに、個別の通信セッションに対してQoSを提供する技術の研究開発を行っている。本研究では、フローの特性や広域網を経由して伝送されるデータサイズ等に大規模なデータを取り扱うGrid (DataGrid)を想定し、比較的コストが低く、ISP等を通じてサービスが入手可能なDiffServのAFサービスを利用した方式を提案している。
 提案する動的予約帯域調整方式はDataGridにおけるデータサイズやフローの発生確率等を想定し、個別のフローが動的に自分の予約済み帯域を調整することで、各フローに対する帯域の予約がなるべく失敗しない(呼損率を低下させる)よう制御するとともに、ユーザとの最初の契約を極力保障することを目的としている。
図 14 動的な予約帯域調整

 本年度は基本的な方式の提案と典型的なネットワーク環境での性能評価をシミュレーションによって実施した。シミュレーションでは一般のISP等のネットワークを利用することを想定し、ユーザは最低帯域保障型のサービスを利用し、広域網の基幹部分に他のトラフィックがある場合と無い場合についてデータを収集した。その結果、呼損率、スループットにおいて、他の方式より良い性能を得ており、性能の保証に関しても他の方式と同等もしくはより良い性能を得ることができた。

関連発表論文

(1) Masaaki Noro, Ken-ichi Baba and Shinji Shimojo, “QoS control method to reduce resource reservation failure in datagrid applications”, in Proceedings of PACRIM2005, August 2005.
(2) 野呂正明, 長谷川一郎, 馬場健一, 下條真司, “Grid における大規模ファイル転送向けQoS 制御方式の性能評価”, 電子情報通信学会技術研究報告IN2005-83, pp. 131-136, September 2005.

4.4.2 長距離広帯域ネットワークにおける大規模データ高速転送手法に関する研究

 近年、Grid技術に代表される、広域に分散した大規模データを利用し、長距離かつ高速なデータ転送を必要とするアプリケーションが登場している。しかしながら、一般的にデータ転送に使用されているTCPでは帯域遅延積が大きなネットワークにおいてリンク帯域を満たすことが困難であることが報告されている。そのため、高速転送を実現するひとつの解決策として、信頼性を付加したUDP上でレート制御を行うUDTが提案されている。UDTはパケットペア方式による帯域推定を行い、レート制御に反映させることで、他の高速転送プロトコルと比較して高いスループットが得られる。しかし、用いられている制御手法では複数のUDTフローが競合した場合に多大なパケット廃棄を発生させることや、TCP等の異なる性質を持つフローと競合した場合に共存するフローに対して大きな影響を及ぼすことが問題になる可能性がある。
 本研究では、長距離広帯域ネットワークにおいて、大規模データ転送フローが競合フローに対して過度に影響を及ぼすことなく、高い帯域使用率を維持することで、効率的に高速転送を実現する新たな制御手法を提案する。すなわち、端末側及びネットワーク側の2つの視点から制御方式の検討を行い、端末側の制御手法として、輻輳状態において適切な推定帯域値に基づくレート制御を実現し、過剰なパケット送信を抑制するgentle UDTを新たに提案し、ネットワーク側の制御として輻輳の早い段階から確率的パケット廃棄を有効にするEasy REDを組み合わせた制御手法を提案した。
 提案手法の有効性を評価するためにシミュレーションを行った。その結果、提案手法では従来手法に比べ、長距離高速ネットワークにおいて複数の大規模データ転送が共存した場合にも高い帯域使用率を維持したままでパケットロス率を改善できることを示した。また、異なる性質を持つフローと共存した場合にも、それらに大きな影響を与えることなく、大規模データの高速転送を実現できることを示した。

関連発表論文

(1) Fumiaki Tameshige, Ken-ichi Baba, Masaaki Noro and Shinji Shimojo, “A novel high-performance transport protocol considering fairness with TCP in long-distance high-speed network”, to appear in Proceedings of IEEE INFOCOM2006 (Poster), April 2006.
(2) Fumiaki Tameshige, Ken-ichi Baba, Masaaki Noro and Shinji Shimojo, “Performance evaluation of high-speed data transfer methods in long-distance broadband networks”, submitted for publication.
(3) 為重文覚, 馬場健一, 野呂正明, 下條真司, “高帯域遅延積ネットワークにおけるUDTの帯域推定手法の一検討”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会B-7-8, p. 135, September 2005.
(4) 為重文覚, 馬場健一, 野呂正明, 下條真司, “高帯域遅延積ネットワークにおけるUDT を用いた効率的な高速転送方式”, 電子情報通信学会技術研究報告NS2005-133, pp. 65-68, December 2005.
(5) 為重文覚, 馬場健一, 野呂正明, 下條真司, “距離広帯域ネットワークにおける高速データ転送手法の性能評価”, 電子情報通信学会技術研究報告IN2006-198, vol. 105, no. 628, pp. 249-254, March 2006.

4.4.3 転送時間の保証を目指した大規模データ転送手法に関する研究

 近年、Grid 技術を用いた研究開発が活発に行われている。分散環境において大規模な計算を行う場合には、計算処理とデータ転送を並列に処理することによって高い計算性能を実現している。そのため、ある計算処理時間内に次の計算に必要なデータの転送を完了させるための保証技術が必要となっている。インターネットにおける通信品質の保証技術のひとつとして、DiffServ アーキテクチャが提案されており、最低帯域を保証するサービスとして AF PHB が標準化されている。DiffServ AF では、到着レートに応じてパケットをマーク付けし、輻輳時には低優先度パケットを積極的に廃棄する。しかし、TCP の輻輳制御はパケット損失によって送信レートを低下させるため、輻輳時には契約した帯域を得ることができないという問題があり、従来は必要な帯域に上乗せした帯域契約が必要であるとされていた。
 本研究では、比較的低コストで実用可能な DiffServ AF と2本の TCP の組み合わせによって、従来よりも少ない帯域契約でデータ転送の性能保証を行うことを目的とする。TCP の最大ウィンドウサイズを適切に設定し、送信レートが契約帯域以下になるように制御された基本フローによって、契約帯域を効率的に利用し、最低帯域を保証する。さらに独立な別フローを追加することによって、非輻輳時の転送を高速化する転送手法を提案した。
 次に、提案する転送手法の基本性能を明らかにし、その有用性について評価を行うために、複数のフローが同一のリンクを共有するネットワークを想定してシミュレーションを行った。その結果、最大ウィンドウサイズを制限することによって、同じ契約帯域を用いた従来の手法よりも高速な転送が可能であることと、従来よりも少ない帯域契約によってデータ転送時間の性能保証が可能であることを示した。

関連発表論文

(1) 檜山亜佑子, 野呂正明, 馬場健一, 下條真司, “転送時間を保証するための大規模データ転送手法の提案”, 電子情報通信学会 総合大会公演論文集, p. B-7-144, March 2006.
(2) 檜山亜佑子, “転送時間を保証するための大規模データ転送手法の提案”, 大阪大学工学部, 特別研究報告, February 2006.

4.4.4 メトロポリタンエリアネットワークにおける同期型並列計算のためのトラヒック制御方式に関する研究

 大規模な科学技術計算を行う際に必要な計算能力を得る方法として、複数のコンピュータを多数組み合わせて計算を行う並列計算が広く利用されている。一般的な並列計算では計算とデータ転送をオーバラップさせることで処理時間を短縮する手法が用いられる。しかし、同期型並列計算では計算中に通信を伴う同期処理が必要となるため、オーバラップさせたデータ転送と同期メッセージが同一ネットワーク内で混在することになる。このとき、帯域が十分でないと通信特性の違いからデータ転送トラヒックが帯域の多くを占めることになり、同期処理が遅延する結果となる。同期型並列計算において同期処理の遅延は全体の性能に大きく影響するため、これを防ぐことは計算性能の向上において非常に重要である。
 そこで本研究では適切なトラヒック制御を行うことによってデータ転送トラヒックが通信路を過剰に占有することを抑え、同期処理の遅延を防ぐことによって並列計算の性能を向上することを目的とする。具体的には、同期処理トラヒックとデータ転送トラヒックに、輻輳ウィンドウサイズの調整による制御、RBUDPによる制御を用いる。その結果、メッセージ交換トラヒックにRBUDP を利用することは、遅延に対する性能の劣化を抑えるという点で有効であることを明らかにした。

関連発表論文

(1) 中村雄太, 馬場健一, 下條真司, “Grid 環境における同期型並列計算のためのトラヒック制御方式”, 電子情報通信学会 総合大会公演論文集, p. B-7-145, March 2006.
(2) 中村雄太, “メトロポリタンネットワークにおける同期型並列計算のためのトラヒック制御方式”, 大阪大学大学院情報科学研究科, 修士学位論文, February 2006.

4.4.5 イントラドメインモデルにおけるストリームフロー動的クラス割当方式に関する研究(東京工業大学大学院理工学研究科山岡研究室との共同研究)

 本研究では、ストリームアプリケーションの通信をストリームフロー、その他の一般的なアプリケーションの通信を非ストリームフローと呼び、区別する。これらの通信が単一のリンクに集約された場合、TCPとUDPの振る舞いの違いから、双方の相互影響によるサービス品質の劣化が問題となる。この問題を緩和するひとつの方法は、ストリームフローと非ストリームフローを別のクラスに収容する方法である。しかし、各クラスの割り当て帯域を固定的に決定するのは困難である。また、それを動的に調整する方法は、大規模なネットワークでは実現しにくい。そこで、我々は、この問題を緩和することができ、かつ、動的帯域割り当て方式よりもスケーラビリティの高い、動的クラス割り当て方式を提案する。
 提案方式はDiffServ AF PHBの枠組みを用いて実現可能である。提案方式では、非ストリームフローをいくつかのクラスに分類し、ストリームフローを各クラスの性質や状況を考慮して、動的に割り当てる。また、クラス割り当ての際、クラス本来の非ストリームフローの極端な品質劣化を抑制するため、ストリームフローに非ストリームフローよりも高い廃棄優先度を設定する。本研究では、非ストリームフローの分類と各クラスの性質の違いについて述べ、廃棄優先度の設定について議論する。その後、動的クラス割り当てを行うアルゴリズムを提案し、計算機シミュレーションによる評価実験を行った。実験結果より、提案方式がトラヒックの変化に対応しながら、ストリームフロー、非ストリームフローに一定の品質を提供できることが示された。
図 15 ストリームフロー収容方式

関連発表論文

(1) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Drop precedence mapping on dynamic class assignment method”, The Mediterranean Journal of Computers and Networks, vol. 1, no. 1, pp. 37-46, July 2005.
(2) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Dynamic class assignment method based on bandwidth request declaration on domain model”, in Proceedings of IASTED CSN2005, pp. No. 482-072, September 2005.
(3) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba, Katsunori Yamaoka and Noboru Sonehara, “An effect of dynamic class assignment using bandwidth request declaration”, 電子情報通信学会通信ソサイエティ大会, pp. BS-10-7, September 2005.

4.4.6 パケット交換網のための受付制御技術TACCSに関する研究(東京工業大学大学院理工学研究科山岡研究室との共同研究)

 本格的な音声・動画などのストリーム型通信サービスのために、IP網においてもAdmission制御の必要性が高まっている。シグナリングに基づく方法を用いて、Admission制御を実現することが考えられるが、パケット到着の特性まで考慮した制御を実現することは難しい。そこで本研究では、到着したフローを一時収容し、一定時間後に輻輳確認を行うことでAdmission制御を実現する、パケット交換網のための新しいAdmission制御技術、Tentative Accommodating and Congestion Confirming Strategy (TACCS)を提案する。TACCSでは、一時収容を行うことにより、到着したフローが収容された後のパケット到着特性を反映したAdmission制御を、事前に資源情報を収集する必要なく実現できる。MX/M/c/cとM/G/1/Kの2つの待ち行列システムを組み合わせてTACCSをモデル化し、理論解析を行った結果から、TACCSは、網内のノード群の自律的動作により、集中管理主体に頼らないAdmission制御を実現可能にする技術であることを示すとともに、パラメータ設定のためのガイドラインを与えた。
図16 Admission制御モデル

 次に、TACCS では、CDA (Congestion Detection Agent) から広告されるパケット損失情報を基にフロー収容可否決定を行うため、網内のボトルネックとなり得る箇所にCDA を配置する必要がある。しかし、コアノードへの機能追加なしで同等の性能が実現できれば、その導入コストを低く抑えられる上、TACCS のスケーラビリティの向上を実現することが可能である。そこで本研究では、CDA を配置せずに、エッジノードの連携のみで網内の輻輳に対する受付制御を実現する、Edge-based TACCS を提案する。計算機シミュレーションによる評価結果から、Edge-based TACCS は、コアノードの機能追加を必要としないにも関わらず、従来のTACCS に対して遜色ない性能を実現可能であることを示した。

関連発表論文

(1) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Tentative accommodating and congestion confirming strategy -A novel admission control strategy for packet switching networks-”, IEICE Transactions on Communications, vol. E89-B, no. 2, pp. 373-382, February 2006.
(2) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Concept of admission control in packet switching networks based on tentative accommodation of incoming flows”, in Proceedings of IWQoS 2005, pp. 349-352, June 2005.
(3) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Analysis of tentative accommodating and congestion confirming strategy; a novel admission control strategy for packet switching networks”, in Proceedings of IEEE GLOBECOM2005, pp. 501-506, December 2005.
(4) 安川健太, 勝野聡, 馬場健一, 山岡克式, “TACCS との組み合わせによる動的クラス割当方式の適用規模拡大”, 電子情報通信学会総合大会, pp. B-7-2, March 2006.
(5) 伊達拓紀, 安川健太, 馬場健一, 山岡克式, 曽根原登, “高機能エッジノードの連携によって受付制御を実現するEdge-based TACCS の提案”, 電子情報通信学会技術研究報告IN2005-199, vol. 105, no. 628, pp. 255-260, March 2006.
(6) 伊達拓紀, 安川健太, 馬場健一, 山岡克式, 曽根原登, “高機能エッジノードの連携による網内ボトルネックに応じたTACCS の実現”, 電子情報通信学会総合大会公演論文集, pp. B-7-1, March 2006.

4.5 フォトニックネットワークに関する研究

4.5.1 λコンピューティング環境における共有メモリアクセス手法に関する研究(大阪大学大学院情報科学研究科村田研究室との共同研究)

 近年、ネットワーク接続された複数の計算機を用いて大規模な科学技術計算を行うグリッド計算に関する研究開発が盛んに行われている。グリッド計算環境で分散計算を実行する場合、現状ではノード計算機間の通信にはTCP/IPが用いられているが、TCP/IPを用いたパケットを単位としたデータ交換では、パケット損失やパケット処理に要するオーバーヘッドの影響が大きく、大規模計算で必要な大量データの共有や交換を行うには十分な性能を得ることは困難である。そこで各ノード計算機に光ファイバを直結し、さらに近年研究開発が活発に行われているWDM (Wavelength Division Multiplexing)技術を適用して波長パスをノード計算機間の高速な通信チャネルとして活用するλコンピューティング環境を提案している。すなわち、波長パスを利用することにより、ユーザに対して高速かつ高信頼な通信パイプを提供することが可能になり、さらに、波長パスを用いて、例えば仮想的にノード計算機をリング状に接続することによって、分散計算を行うノード計算機間でのデータ交換、共有ができるようになる。現在、λコンピューティング環境の実現形態として、WDM技術に基づくフォトニックネットワークを用いてグリッド計算環境を構築している。



 本研究では、λコンピューティング環境上に仮想光リングを構成し、光リング上にデータを載せることにより、波長を仮想的な共有メモリとして利用するモデルを対象としている。このモデルでは、広域分散システムにおける共有メモリと通信チャネルの区別の必要がなくなり、計算機間の高速なデータ交換が可能になる。この共有メモリを用いて並列計算を行う際のメモリアクセスの競合回避方法、データの一貫性制御、同期方法の提案、評価を行っている。具体的には、並列計算用のアプリケーションプログラムを用いたシミュレーションを行い、その結果、広域な光リング上での共有メモリシステムが有効であること、特に同期処理が少ないプログラムにおいて並列化効果の高いことがわかった。

関連発表論文

(1) Hirohisa Nakamoto, Ken-ichi Baba and Masayuki Murata, “Proposal and evaluation of realization approach for a shared memory system in λ computing environment,” in Proceedings of the forth International Conference on Optical Internet (COIN2005), pp. 90-95, May 2005.

4.5.2 λコンピューティング環境構築のための共有メモリシステムの実装と評価(大阪大学大学院情報科学研究科村田研究室との共同研究)

 本研究では、分散計算を行う場合に、λコンピューティング環境構築技術のうちのひとつである、各ノード計算機上に存在する共有メモリを高速にアクセスする手法を実装し、その性能を明らかにする。具体的には、日本電信電話株式会社フォトニクス研究所が開発している情報共有ネットワークシステム(AWG-STARシステム)を用いる。その結果、AWG-STARシステムによる分散計算は、共有メモリへの書き込み回数に大きく依存し、現状ではボトルネックとなっていることがわかった。そこで、効率よく共有メモリへの書き込みを行うことによりAWG-STARシステムの性能を向上させることが可能であることを示した。

関連発表論文

(1) Eiji Taniguchi, Ken-ichi Baba and Masayuki Murata, “Implementation and evaluation of shared memory system for establishing λ computing environment,” in Proceedings of 10th OptoElectronics and Communications Conference (OECC2005), pp. 20-21, July 2005.

4.5.3 λコンピューティング環境構築のためのGlobus Toolkit を用いたMPIライブラリの実装と評価(大阪大学大学院情報科学研究科村田研究室との共同研究)

 本研究では、WDM技術を利用してグリッド計算を高速に行うλコンピューティング環境の実現形態として、WDM技術に基づくフォトニックネットワークであるAWG-STARシステムを用いてグリッド計算環境を構築した。すなわち、グリッド計算のデファクト標準となっているGlobus Toolkitをミドルウェアとして導入できるように、分散計算のためのMPIライブラリであるMPICH-G2をAWG-STAR上で動作可能とした。そのために、AWG-STARの共有メモリシステムを利用できるメッセージパッシング手法を提案し、実装している。さらに、Globus Toolkitに基づいたMPIアプリケーションを実行し、構築したシステムが正常に動作することを確認し、また、実現システムにおける分散計算の性能を評価した。その結果、AWG-STARを用いた共有メモリ上のデータ交換の性能は、共有メモリへのアクセス回数、データサイズに大きく影響されることが明らかになった。これは、グリッド計算をより高速に実行するλコンピューティング環境の設計に指針を与えるものである。

関連発表論文

(1) 井本舞, 谷口英二, 馬場健一, 村田正幸, “λコンピューティング環境構築のためのGlobus Toolkitを用いたMPIライブラリの実装と評価,” 電子情報通信学会技術報告(PN2005-1), vol. 105, pp. 7-12, April 2005.
(2) Mai Imoto, Eiji Taniguchi, Ken-ichi Baba and Masayuki Murata, “Implementation and evaluation of MPI library with Globus toolkit for establishing λ computing environment,” in Proceedings of 6th Asia-Pacific Symposium on Information and Telecommunication Technologies, pp. 421-426, November 2005.

4.5.4 WDMに基づくλコンピューティング環境構築のための共有メモリアーキテクチャの設計と評価(大阪大学大学院情報科学研究科村田研究室との共同研究)

 本研究では、λコンピューティング環境における共有メモリアーキテクチャをモデル化、および解析し、ネットワークトポロジやキャッシュ一貫性制御などがどのように性能に影響を与えるかを示す。そこで、まず、λコンピューティング環境において実現可能な3つのタイプのアーキテクチャを考え、それらのアーキテクチャのモデル化に状態の滞在時間を任意に設定できるセミ・マルコフ過程を利用し、解析を行った後、数値例を与えてどのようなタイプの共有メモリアーキテクチャがλコンピューティング環境に適しているかを評価した。その結果、キャッシュ一貫性制御にかかる状態確率が大きいもののリング距離にはあまり依存しないこと、共有変数の割合が大きくない領域では計算性能は十分に確保できることがわかった。

4.5.5 データ粒度可変光パスに関する研究(大阪大学大学院工学研究科北山研究室との共同研究)

 光符号を用いたパス設定には波長ルーティングに基づいたネットワークにおける固定的なデータ粒度に起因する様々な問題を解決する可能性がある。本研究では、ひとつの波長に複数のパスを設定することにより利用率を向上させることを目指し、光符号ラベルパスと光符号分割多重パスのデータ粒度を考慮して性能を明らかにする。併せて、それぞれの手法を利用するための光クロスコネクトのアーキテクチャを示している。光符号ラベルパスにはオン-オフトラフィックモデルを適用し、光符号分割多重パスには多元接続干渉(MAI)を主な性能要因とする近似モデルを用いて性能を解析した。その結果、提案した2種類の光パス設定手法にはそれぞれの適用領域があることがわかった。

関連発表論文

(1) Shaowei Huang, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Variable bandwidth optical paths: Comparison between Optical Code-Labeled path and OCDM path,” to appear in IEEE Journal of Lightwave Technology, 2006.

4.5.6 光クロスコネクトアーキテクチャにおけるOCDMを用いたマルチ粒度光パス設定に関する研究(大阪大学大学院工学研究科北山研究室との共同研究)

 本研究では、まず、光クロスコネクトアーキテクチャ上に設定するOCDMに基づくラベルスイッチングパス(OCDM-LSP)を提案する。ファイバ、波長帯、波長のそれぞれのレイヤでのラベルスイッチングパスに、提案するOCDM-LSPを加えることにより、波長レベルのパス設定より細かい粒度でパスを設定することが可能になる。このOCDM-LSPを設定可能な光クロスコネクトアーキテクチャの設計を行うとともに、OCDM-LSPを用いた場合の性能をシミュレーションを用いて明らかにした。その結果、OCDM-LSPを用いることにより、呼損率をかなり小さくできることが確認できた。

関連発表論文

(1) Shaowei Huang, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “OCDM-based fine multi-granularity optical path provisioning and its cross-connect design,” submitted for publication.

4.6 ネットワークセキュリティ技術

4.6.1 DNSSEC認証におけるトラフィックの解析

 DNSは「osaka-u.ac.jp」などのドメイン名が示すIPアドレスやメール配送先などの情報を対応付ける役割を果たすインターネットに欠かせない基盤技術の一つである。DNSは基本的に公開情報を提供する全世界に開かれたシステムであり、その詐称行為は大きな経済的被害を及ぼす。また、DNSが提供すべき情報は肥大化の一途を辿っており、現在のプロトコルでは一度に運べるデータ長が足りなくなるなどの問題が生じている。本研究では、DNSSEC認証を行う際に発生するトランスポート上の問題について、以下の解析と提案、発表を行った。
 DNS(ドメイン名システム)の認証手法の1つであるDNSSECでは、DNSの応答パケットにデジタル署名を加えることでペイロード長が大きくなる。このペイロード長増大によりDNSのUDPペイロードを運ぶIPパケットの分割とパケットロス率の増加が起こり、DNSのリゾルバ-サーバ間交信の信頼性が下がると予想した。本研究では、実トラフィックのサンプルおよびDNSSECの署名を追加したペイロード長値の再計算により推定したDNSペイロード長分布が、極値分布となるモデルを提案した。また、このモデルに基づいて DNSのリゾルバ-サーバ間のパケットロスと分割の発生率をネットワークトラフィックのシミュレーションにより推定する手法について提案を行った。

関連発表論文

(1) Rikitake, K., Nakao, K., Shimojo, S., and Nogawa, H.:A Simulation-based UDP Traffic Analysis of DNSSEC,IEICE Technical Report ISEC2005-22, Vol. 105, No. 193, pp. 97-104(2005).
(2) 力武 健次,DNSの抱えるセキュリティ・リスクと対策,平成17年電気関係学会関西支部連合大会講演論文集,2005年11月13日,p. S40 (2005).

4.6.2 追跡者単独で不正者の特定が可能な匿名フィンガープリンティング

 ディジタルコンテンツ配信サービスでは、購入者による購入コンテンツのコピーの再配布が大きな問題となっている。再配布を防ぐ手法として、さまざまなフィンガープリンティング法が提案されている。販売者はフィンガープリンティング法を用いることで、購入者を特定できる情報を販売コンテンツに埋め込むことができる。販売者は購入者が再配布したコンテンツを入手できれば、そのコンテンツの購入者を特定することができる。このことは購入者による再配布の抑止効果となる。購入者のプライバシを保護する必要がある場合は、匿名フィンガープリンティング法を用いることで、購入者は匿名でコンテンツを購入することができる。匿名フィンガープリンティング法では、販売者と購入者の他に登録機関が存在し、購入者はコンテンツの購入に先だって、登録機関に個人情報を登録する。従来の多くの匿名フィンガープリンティング法では、販売者が購入者を特定するためには、登録機関の協力が必要であった。しかし、購入者の特定を早急に行えるようにするためには、販売者が単独で購入者を特定できることが望ましい。



本研究では、販売者が単独で購入者を特定でき、かつ、従来法よりも効率のよい匿名フィンガープリンティング法を提案した。提案法では、購入者は販売者に対して匿名で購入できるという性質を保ちつつ、購入者の個人情報(名前など)が正確にコンテンツに埋め込まれるようにした。このことにより、販売者は単独で、入手したコンテンツからその購入者を特定することができる。 従来法と比較して提案法では、購入者が登録機関へ登録する回数は増えるものの、1回の購入に必要な計算量の合計は減らすことができた。

関連発表論文

(1) Shingo Okamura, Maki Yoshida, and Toru Fujiwara, “Coin-based Anonymous Fingerprinting Scheme with Automatic Identification of Redistributors,” Peer- reviewed Proceedings of the ISSA 2005 New Knowledge Today Conference.

4.6.3 分岐構造をもつコンテンツに対する分岐選択履歴を配信者から秘匿可能な配信プロトコル

 コンテンツ配信サービスが多様化し、様々な論理的構造をもつコンテンツの配信が行なわれている。論理的構造をもつコンテンツの例として、インタラクティブドラマが挙げられる。インタラクティブドラマはいくつかのシーンから構成され、途中で示される選択肢から何を選択するかによって、その後のストーリー展開が異なるように配信される。インタラクティブドラマの配信では、配信者が巧妙なストーリーを用意し、視聴者の選択履歴を知ることで、その視聴者の性格や趣味嗜好が配信者に知られてしまう恐れがある。
 本研究では、インタラクティブドラマの配信を想定し、視聴者のプライバシを保護しつつ、ストーリーの流れを保つように配信を制御できる配信法を提案する。



従来研究では、単に視聴者が匿名でドラマを視聴できるだけではなく、各配信が同じ視聴者に対するものか否かを配信者が判断できない配信法を提案している。これにより、ある配信における視聴者が判明したとしても、他の配信の匿名性は保たれたままとなっている。しかし従来法では、視聴者は1回の配信に対して1回だけ選択が許されていたため、すでに視聴したシーンにおいて選択をし直す場合、再度、最初のシーンから視聴し直さなければならなかった。提案法では、過去に視聴したシーンでの再選択ができるようにすることで、視聴済みシーンを再度配信する必要がないように改良した。

関連発表論文

(1) Shingo Okamura, Maki Yoshida, and Toru Fujiwara, “An Unlinkable Interactive Drama Delivery System Allowing Rechoice of a Scene,” Proceedings of the 2006 Symposium on Cryptography and Information Security.

5 社会貢献に関する業績

5.1 教育面における社会貢献

5.1.1 学外活動

(1) タマサート大学SIIT遠隔教育(下條)
(2) スタンフォード日本センター バイオグリッド・プロジェクト(下條)
(3) 大阪大学社会人教育講座 「セキュア・ネットワークセミナー2005」(下條、馬場)

5.1.2 研究部門公開

SC2005

 大阪大学サイバーメディアセンターは、米国シアトルで11月に開催された国際会議・展示会であるSC (Supercomputing)に2005年度も研究展示機関として参加し研究成果報告を行ったのでここに報告する。
 本センターでは、2000年11月に米国ダラスで開催されたSC2000より数え、6回目の出展となる。このSCは毎年11月に米国で開催される高速ネットワーキングとハイパフォーマンスコンピューティングの国際展示会・国際会議であり、当該分野におけるそれとしては最大級の規模のものである。そのため、SCが開催される米国だけでなく、ヨーロッパ、アジア等からも当該分野の研究者、技術者が、それぞれの研究成果をもちより成果の報告・利用促進はもとより、その研究成果のさらなる発展を目的とした議論を展開する場となっている。このようなことから、この国際会議・展示の場で研究展示・報告を行うことは研究成果をもっとも効果的かつ効率的に欧米諸国を中心とする研究者に紹介できるということを意味し、そのためにわが国からも産業技術総合研究所、東京大学などの数多くの研究機関・大学が研究展示を行っている。
 さて、2005年度のサイバーメディアセンターの研究展示の話に移るが、2005年度は本センターと共同研究契約関係にあるNICT(独立行政法人 情報通信機構)、NPO法人バイオグリッド関西らの共同出資により研究展示を行った。また本センターと交流のある奈良先端科学技術大学院大学からも藤川助教授と博士後期課程の学生3名が参加された。また情報科学研究科からも伊達特任助教授が参加されている。当センターからは、下條センター長、馬場助教授、野崎教務職員のほか博士後期課程に在学する学生2名も参加し、それぞれが関係する研究プロジェクト、およびその研究内容について報告を行った(図17)。図18は会場に設置したブースの様子を、展示1日目が終了した際に撮影したものである。
図17 研究展示ブース前での記念撮影
図18 ブース全体:展示1日目終了時の様子

 次に、SCで照会した研究展示内容について下記にまとめる。SCでの研究展示では、われわれは5つのチームを構成し、そのテーマ別に研究展示ポスターを作成し、SC参加者である研究者や技術者にサイバーメディアセンターの活動内容や研究成果を紹介した。
(1) BioGrid Center Kansai (Nonprofit Organization)
 サイバーメディアセンターでは今日バイオグリッドプロジェクトを推進している。2006年度には最終年度を迎えるが、これまでの実績のひとつとしてそのプロジェクトの研究成果の利用促進をはかるため、企業、大学の研究者が集うNPOの設立に貢献したことがあげられる。SCではこれらの活動、今後の展開について紹介した。
(2) JGN II プロジェクト
 JGN IIプロジェクトは、先述のNICTとCMCとの共同研究の枠組みで推進されるプロジェクトであるが、研究成果であるQoS制御技術およびアクセス制御技術についてNICT所属の研究員らとともに発表を行った。
(3) テレサイエンスプロジェクト(図19)
 本テーマでは、応用情報システム研究部門で主に研究開発が推進されている計算流体力学を用いる大規模医療アプリケーションや、米国カリフォルニア大学や本学の電子顕微鏡センターと本センターで連携して進めている電顕データのリアルタイム伝送システム等について報告を行っている。
(4) テレプレゼンスプロジェクト
  本テーマでは、奈良先端科学技術大学院大学とNICTおよび本センターで共同で研究開発を進める、環境問題への取り組みを目的とし、全方位カメラなどのセンシングデバイス(計測デバイス)からバーチャルイメージを生成するシステムについて、そのアーキテクチャ等の紹介と研究成果報告を行った。
(5) コンピュテーショナルグリッド(図20)
 本テーマでは、本センターがバイオグリッドプロジェクト(文部科学省ITプログラム「スーパーコンピュータネットワークの構築」)を通じて、奈良先端大学院大学、神戸大学らと連携して進めているたんぱく質の機能予測を目的とした高いスループット解析システム、および大阪大学たんぱく質研究所や、NECなどの企業と連携により進めている、グリッド技術を用いた高分子シミュレーションのアーキテクチャについての紹介を行った。 
 2005年度の展示でも、大変多くの方がサイバーメディアセンターで実施されている研究活動や、研究成果に対して関心を盛ってくれていることを参加者一同感じとることができた。また、同時に今後のサイバーメディアセンターへ大変な期待があることをひしひしと感じている。サイバーメディアセンターの一員として、今後より一層の努力をしていきたいと参加者一同決意している。
図19 Telescience PJで使用したポスター 図20 コンピューティンググリッド

5.2 学会活動

5.2.1 国内学会における活動

(1) マルチメディア通信と分散処理(DPS)研究会 幹事(寺西)
(2) 第123回マルチメディア通信と分散処理(DPS)研究会「プロトコル」座長(寺西)
(3) マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO2005) シンポジウム「Webサービス」座長 (寺西)
(4) 第125回マルチメディア通信と分散処理(DPS)研究会「ミドルウェア・アプリケーション」座長(寺西)
(5) 第126回マルチメディア通信と分散処理(DPS)研究会「アドホックネットワーク」座長(寺西)

5.2.2 論文誌編集

(1) 情報処理学会論文誌「ブロードバンド・ユビキタス・ネットワークとその応用」特集号 編集委員(寺西)

5.2.3 国際会議への参画

(1) The 8th PRAGMA Workshop, Program Committee member(下條)
(2) Human Society@Internet Conference, Global PC Chair(下條)
(3) The 9th PRAGMA workshop, Program Committee member(下條)
(4) The 2006 International Symposium on Applications and the Internet (SAINT2006), General Chairs(下條)
(5) The 10th PRAGMA Workshop, Program Committee member(下條)

5.2.4 学会における招待講演・パネル

(1) International Symposium on Grid Computing 2005(台北 台湾)「Current Status of Biogrid Project」(下條)
(2) 馬場健一, “グリッド環境における高速ネットワーク技術”, 日本OR学会 関西支部「情報ネットワーク性能評価」研究部会 招待講演, November 2005.
(3) 馬場健一, “パケット多重化に基づくATMとIPの受付制御”, 電子情報通信学会総合大会パネル講演「ATMに学ぶ ―IP品質制御技術の新たな展開と期待―」, BP-2-4, March 2006.

5.2.5 招待論文

該当なし

5.2.6 学会表彰

該当なし

5.3 産学連携

5.3.1 企業との共同研究

(1) NPOバイオグリッドセンター関西 「バイオ研究分野向けグリッドサービスの応用研究開発」
(2) 独立行政法人 情報通信研究機構「『次世代高機能ネットワーク基盤技術・利活用技術に関する研究開発」プロジェクトにおける拠点連携型資源共有技術に関する研究開発 」
(3) ケイディーディアイ株式会社「網内計測情報に基づくQoS制御技術の研究」
(4) (株)富士通研究所「組織内外におけるネットワークセキュリティ技術」

5.3.2 学外での講演

(1) 第20回日英ハイテク産業フォーラム:「サイバーキャンパスの為のセキュリティ基盤」
(2) Kyusyu ICT-Media Collaboration 2005:「ネット時代の情報発信スタイル」
(3) eビジネス2005特別シンポジウム(次世代高度ネットワーク九州地区推進協議会):「ユビキタスネット社会(u-japan)でくらしはここまで変わる!」
(4) グリッド講演会(国立情報学研究所):「グリッドの研究開発状況」
(5) ITシンポジウム(info-Tech 2005):「ユビキタス時代のネットワーク技術」
(以上、下條)
(6) 彩都シンポジウム in Osaka:「大阪北部バイオクラスター関連の取り組みについて」
(7) ハイテク推進セミナー:「インシリコでの創薬を目指して」
(以上、坂田)
(8) ユビキタスネットワークシンポジウム 2005:「ユビキタスネットワーク認証・エージェント技術~コンテンツ流通エージェント技術~」(寺西)

5.3.3 特許

該当なし

5.4 プロジェクト活動

(1) 情報通信研究機構 JGNII (下條、馬場、秋山、伊達)
(2) 文部科学省 科学技術振興調整費 振興分野人材養成 「セキュアネット構築のための人材育成」(下條、馬場、寺西、秋山)
(3) 日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(B)「DiffServ機構を用いたストリーム型通信のQoS割当て制御に関する研究」(馬場)
(4) 21世紀COEプログラム「ネットワーク共生環境を築く情報技術の創出」(下條、馬場)
(5) 文部科学省 科学研究費補助金特定領域研究 C 「IT の進化の基盤を拓く情報学研究」A05 班 「Grid 技術を適用した新しい研究手法とデータ管理技術の研究」(下條、秋山、加藤、野崎)
(6) 文部科学省科学技術振興費 IT プログラム 「スーパーコンピュータネットワークの構築」(下條、伊達)
(7) 総務省「情報通信分野の研究開発」ユビキタスネットワーク技術の研究開発(ユビキタスネットワーク認証・エージェント技術)(下條、寺西、春本)
(8) 文部科学省 科学技術振興調整費 わが国の国際的リーダーシップの確保「アジアグリッドイニシアチブ」(下條)
(9) 日本学術振興会 科学研究費補助金 若手(B)「光グリッド環境における光共有メモリアーキテクチャに関する研究」(馬場)
(10) 日本学術振興会 科学研究費補助金若手(B) 「IPv6マルチホーム環境におけるグリッド技術を用いた経路選択手法に関する研究」(秋山)
(11) 文部科学省 科学技術振興調整費 重要課題解決型研究等の推進「セキュリティ情報の分析と共有システムの開発」(下條)

5.5 その他の活動

(1) 特定非営利活動法人 バイオグリッドセンター関西 理事長
(2) 文部科学省研究振興局 科学技術・学術審議会専門委員(研究計画・評価分科会)
(3) 独立行政法人 情報通信研究機構 国際共同研究助成制度に係わる評価委員会委員
(4) 独立行政法人 情報通信研究機構 創造的情報通信技術研究開発推進制度に係わる評価委員会委員
(5) 独立行政法人 情報通信研究機構 専攻研究員
(6) 独立行政法人 情報通信研究機構 通信・放送融合技術開発テストベッド利用審査委員会委員
(7) 理化学研究所 ゲノム科学総合研究センターゲノム情報科学研究評価委員会委員
(8) 私立大学情報教育協会 世界水準情報専門教育研究委員会委員
(9) 第27回日本医学会総会 第27回日本医学会総会企画展示員会委員
(10) 大阪府 地域健康相談ネットワーク推進事業補助金交付予定者選定審査委員会委員
(11) 大阪市 大阪駅北地区まちづくり推進協議会ナレッジ・キャピタル企画委員会委員
(12) 大阪市都市工学情報センター 北梅田ナレッジ・キャピタルユビキタス検討会メンバー
(13) 近畿情報通信協議会 幹事
(14) 名古屋大学情報連携基盤センター 外部評価委員会委員
(15) 財団法人 関西情報・産業活性化センター ITシンポジウムプログラム委員長並びに副運営委員長
(16) 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 グリッド研究開発実施委員会委員
(17) 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 学術情報ネットワーク運営・連携本部委員
(18) 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 認証作業部会委員
(19) 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 ネットワーク作業部会委員
(20) 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 スーパーSINET推進協議会委員
(21) 産業技術総合研究所グリッド研究センター グリッド協議会運営委員
(22) 株式会社 セキュアウエア 顧問
(23) 日本学術振興会 科学研究費委員会専門委員
(24) 関西IT推進本部 関西ITナビゲータ
(25) 社団法人 電子情報通信学会 インターネットアーキテクチャ研究専門委員会専門委員
(26) 大阪商工会議所 バイオ振興委員会委員
(27) 関西大学 関西大学ソシオネットワーク戦略研究センター研究員
(以上、下條)
(28) 総務省情報通信政策局 戦略的情報通信研究開発推進制度 専門評価委員
(29) 国立情報学研究所 学術情報ネットワーク運営・連携本部 認証作業部会委員
(30) 情報通信研究機構 大阪JGN IIリサーチセンター 主席拠点研究員
(以上 馬場)

2005年度研究発表論文一覧

著書

該当なし

学会論文誌

(1) 宮本崇弘, 竹内亨, 奥田剛, 春本要, 有吉勇介, 下條真司, “GrIP: プライバシとサービス品質のトレードオフを考慮した個人情報制御機構”, 日本データベース学会 Letters, vol. 4, no. 1, pp. 145-148, June 2005.
(2) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Drop precedence mapping on dynamic class assignment method”, The Mediterranean Journal of Computers and Networks, vol. 1, no. 1, pp. 37-46, July 2005.
(3) Takahiro Kosaka, Yukako Tohsato, Susumu Date, Hideo Matsuda and Shinji Shimojo, “An ogsa-based integration of life scientific resources for drug discovery”, Methods of Information in Medicine, vol. 44, no. 2, pp. 257-261, 2005.
(4) Toyokazu Akiyama, Yuuichi Teranishi, Kazunori Nozaki, Seiichi Kato, Shinji Shimojo, Steven T. Peltier, Abel Lin, Tomas Molina, George Yang, David Lee, Mark Ellisman, Sei Naito, Atsushi Koike, Shuichi Matsumoto, Kiyokazu Yoshida and Hirotaro Mori, “Scientific grid activities and pki deployment in the cybermedia center, osaka university”, Journal of Clinical Monitoring and Computing, vol. 19, no. 4-5, pp. 279-294, October 2005.
(5) Kaname Harumoto, Tadashi Nakano, Shinya Fukumura, Shinji Shimojo and Shojiro Nishio, “Effective web browsing through content delivery adaptation”, ACM Transactions on Internet Technology, vol. 5, no. 4, pp. 571-600, November 2005.
(6) 赤藤倫久, 春本要, 香取啓志, 橋田浩一, 下條真司, “意味グラフに基づく映像コンテンツのアノテーション手法とその応用”, 映像情報メディア学会誌, vol. 59, no. 11, pp. 1677-1688, 11 2005.
(7) 竹内亨, 寺西裕一, 春本要, 下條真司, “ソーシャルネットワークを活用した社内コミュニケーション支援システムの提案”, 情報処理学会マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集, vol. 2005, no. 19, pp. 295-300, November 2005.
(8) 田代孝仁, 中島義和, 田村裕一, 米延策雄, 宇治茂, 吉川秀樹, 越智隆弘, 田村進一, “位置校正が行われていない 2 視点 X 線画像群からの立位における 3 次元脊椎アライメント計測”, 電子情報通信学会 和文論文誌 D2 分冊, vol. J88-D2, no. 11, November 2005.
(9) 金子雄, 春本要, 福村真哉, 下條真司, 西尾章治郎, “ユビキタス環境における端末の位置情報に基づく P2P ネットワーク”, 情報処理学会論文誌:データベース, vol. 46, no. SIG18(TOD28), pp. 1-15, December 2005.
(10) 甲斐島武, 加藤精一, 秋山豊和, 野崎一徳, 水野(松本)由子, 下條真司, “グリッド環境における通信遅延時間の確率分布を用いた集団通信時間の推定手法”, 情報処理学会論文誌:コンピューティングシステム, vol. 46, no. SIG 16(ACS 12), pp. 43-55, December 2005.
(11) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Tentative accommodating and congestion confirming strategy -A novel admission control strategy for packet switching networks-”, IEICE Transactions on Communications, vol. E89-B, no. 2, pp. 373-382, February 2006.
(12) 竹内亨, 寺西裕一, 春本要, 下條真司, “ソーシャルネットワークに基づいた情報伝播型コミュニケーションの実証実験による有効性評価”, 情報処理学会論文誌, vol. 47, no. 2, pp. 555-565, February 2006.
(13) 河合洋明, 坂根栄作, 豊田博俊, 岡山聖彦, 河野圭太, 宮下卓也, 山井成良, 石橋勇人, 安倍広多, 松浦敏雄, “階層型 VPN における透過的仮想リンク確立手法”, 情報学 (電子紀要) http://ojs.info.gscc.osaka-cu.ac.jp/JI/, vol. 1, no. 3, March 2006. (投稿中).
(14) 中川真志, 下條真司, “IBR フレーム補完によるインタラクティブなリモート可視化サービス”, The Journal of ITE (the institue of Image information and Television Engineers), vol. 60, no. 3, pp. 439-445, March 2006.
(15) Shaowei Huang, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Variable-bandwidth optical paths: Comparison between Optical Code-Labeled path and OCDM path”, IEEE Journal of Lightwave Technology, 2006. (to be printed).

国際会議会議録

(16) Kazunori Nozaki, Toyokazu Akiyama, Shingo Maeda, Hiroo Tamagawa and Shinji Shimojo, “Integration of computational fluid dynamics and computational aero acoustics simulations on grid system for dental applications”, in Proceedings of IEEE Computer Based Medical Systems (CBMS) 2005, pp. 517-522, March 2005.
(17) Tomohisa Akafuji, Kaname Harumoto, Mitsuru Yasukata, Yozo Yamamoto, Masaaki Kobayashi, Keishi Kandori and Shinji Shimojo, “Creation and application of metadata for content production in broadcasting stations - a case study of metadata using high school baseball games in japan -”, in Proceedings of EUROMEDIA 2005, pp. 77-82, April 2005.
(18) Hirohisa Nakamoto, Ken-ichi Baba and Masayuki Murata, “Proposal and evaluation of realization approach for a shared memory system in λ computing environment”, in Proceedings of the forth International Conference on Optical Internet (COIN2005), pp. 90-95, May 2005.
(19) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Concept of admission control in packet switching networks based on tentative accommodation of incoming flows”, in Proceedings of IWQoS 2005, pp. 349-352, June 2005.
(20) Shingo Okamura, Maki Yoshida and Toru Fujiwara, “Coin-based anonymous fingerprinting scheme with automatic identification of redistributors”, in Peer-reviewed Proceedings of the ISSA 2005 New Knowledge Today Conference, June 2005.
(21) Eiji Taniguchi, Ken-ichi Baba and Masayuki Murata, “Implementation and evaluation of shared memory system for establishing λ computing environment”, in Proceedings of 10th OptoElectronicsand Communications Conference (OECC2005), pp. 20-21, July 2005.
(22) Seiichi X . Kato and Shinji Shimojo, “e-spacecam: Cooperative observation system for small telescopes”, in the 9th Asian-Pacific Regional IAU Meeting 2005, p. to be printed, July 2005.
(23) Satoshi Nakayama, Maki Yoshida, Shingo Okamura, Akira Fujiwara and Toru Fujiwara, “An efficient private and consistent data retrieval protocol”, in Conference Records of Western European Workshop on Research in Cryptology, pp. 83-84, July 2005.
(24) Takahiro Miyamoto, Kaname Harumoto, Shinji Shimojo and Takeshi Okuda, “GRIP - A profile control mechanism for user privacy protection and quality of personalization services”, in Proceedings of 2005 IEEE Pacific Rim Conference on Communications, Computers and Signal Processing (PACRIM2005), pp. 217-220, August 2005.
(25) Masaaki Noro, Ken-ichi Baba and Shinji Shimojo, “QoS control method to reduce resource reservation failure in datagrid applications”, in Proceedings of PACRIM2005, August 2005.
(26) Hideo Matsuda, Gen Kawamura, Masato Kitajima, Kentaro Wakatsuki, Takehiro Furudate, Takahiro Kosaka, Susumu Date and Shinji Shimojo, “An information integration system on data grid environment”, in First DIALOGUE Workshop: Applications-Driven Issues in Data Grids, Columbus, Ohio, August 2005.
(27) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Dynamic class assignment method based on bandwidth request declaration on domain model”, in Proceedings of IASTED CSN 2005, pp. No. 482-072, September 2005.
(28) Shaowei Huang, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “OCDM-based fine multi-granularity optical path provisioning and its cross-connect design”, in Proceedings of Broadnets2006, October 2006. (to be submitted).
(29) Mai Imoto, Eiji Taniguchi, Ken-ichi Baba and Masayuki Murata, “Implementation and evaluation of MPI library with Globus Toolkit for establishing λ computing environment”, in Proceedings of 6th Asia-Pacific Symposium on Information and Telecommunication Technologies, pp. 421-426, November 2005.
(30) Takahiro Kosaka, Susumu Date, Hideo Matsuda and Shinji Shimojo, “A heuristic query optimization for distributed inference on life-scientific ontologies”, in Knowledge Acquisition from Distributed, Autonomous, Semantically Heterogeneous Data and Knowledge Sources - Proceedings of a Workshop held in Conjunction with 2005 IEEE International Conference on Data Mining Workshops, pp. 54-63, November 2005.
(31) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba and Katsunori Yamaoka, “Analysis of tentative accommodating and congestion confirming strategy; a novel admission control strategy for packet switching networks”, in Proceedings of IEEE GLOBECOM 2005, pp. 501-0506, December 2005.
(32) Yuuichi Teranishi, Junzo Kamahara and Shinji Shimojo, “Mapwiki: A ubiquitous collaboration environment on shared maps”, International Symposium on Applications and the Internet Workshops - SAINT 2006 Workshops, pp. 146-149, January 2006.
(33) Fumiaki Tameshige, Ken-ichi Baba, Masaaki Noro and Shinji Shimojo, “Performance evaluation of high-speed data transfer methods in long-distance broadband networks”, in Proceedings of IEEE Globecom2006, March 2006. (to be submitted).
(34) Fumiaki Tameshige, Ken-ichi Baba, Masaaki Noro and Shinji Shimojo, “A novel high-performance transport protocol considering fairness with TCP in long-distance high-speed network”, in Proceedings of IEEE INFOCOM2006 (Poster Session), April 2006. (to be presented).

口頭発表(国内研究会など)

(35) 井本舞, 谷口英二, 馬場健一, 村田正幸, “λ コンピューティング環境構築のための Globus Toolkit を用いた MPI ライブラリの実装と評価”, 電子情報通信学会技術報告 PN2005-2, vol. 105, no. 8, pp. 7-12, April 2005.
(36) Gen Kawamura, Masato Kitajima, Kentaro Wakatsuki, Takehiro Furudate, Takahiro Kosaka, Kazuto Yamazaki, Reiji Teramoto, Susumu Date, Shinji Shimojo and Hideo Matsuda, “A grid-based information integration system for drug discovery”, in International Workshop on Biomedical Data Engineering, Tokyo, April 2005.
(37) 鎌原淳三, 下條真司, “ウェブによる個人化地図共有システムの提案”, 夏のデータベースワークショップ DBWS2005 信学技報, no. 171, pp. 107-112, 7 2005.
(38) 中山敏, 吉田真紀, 岡村真吾, 藤原晶, 藤原融, “検索語の秘匿と検索結果の一貫性検証を可能とするデータ検索プロトコルにおける通信量の削減”, 電子情報通信学会 技術研究報告 ISEC2005-61, pp. 129-136, July 2005.
(39) K. Rikitake, H. Nogawa, K. Nakao and S. Shimojo, “A simulation-based UDP traffic analysis of DNSSEC”, in IEICE Technical Report ISEC2005-22, vol. 105, no. 193, pp. 97-104IEICE, July 2005.
(40) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba, Katsunori Yamaoka and Noboru Sonehara, “An effect of dynamic class assignment using bandwidth request declaration”, 電子情報通信学会 通信ソサイエティ大会, pp. BS-10-7, September 2005.
(41) 野呂正明, 長谷川一郎, 馬場健一, 下條真司, “Grid における大規模ファイル転送向け QoS 制御方式の性能評価”, 電子情報通信学会 技術研究報告 IN2005-83, pp. 131-136, September 2005.
(42) 為重文覚, 馬場健一, 野呂正明, 下條真司, “高帯域遅延積ネットワークにおける UDT の帯域推定手法の一検討”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会 B-7-8, p. 135B-7-8, September 2005.
(43) 寺西裕一, 森克利, 岡村真吾, 馬場健一, 斉藤和典, 島田伸敬, 野川裕記, 下條真司, “セキュアネットプログラムのための e-learning コンテンツの設計と開発”, 第3回 WebCT 研究会予稿集, pp.31-36, November 2005.
(44) 力武健次, “DNS の抱えるセキュリティ・リスクと対策”, 平成17年電気関係学会関西支部連合大会講演論文集, p. S40 平成17年電気関係学会関西支部連合大会事務局, November 2005.
(45) 下條真司, 須永宏, 寺西裕一, “ユビキタス時代のショッピングナビゲーション”, 自動認識最前線, pp. 24-29, December 2005.
(46) 寺西裕一, 鎌原淳三, 下條真司, “Mapwiki: 共有地図を用いたユビキタスコンテンツ流通環境”, DPS ワークショップ, pp. 414-419, 12 2005.
(47) 為重文覚, 馬場健一, 野呂正明, 下條真司, “高帯域遅延積ネットワークにおける UDT を用いた効率的な高速転送方式”, 電子情報通信学会技術研究報告 NS2005-133, pp. 65-68, December 2005.
(48) 岡本卓也, 曽我真人, 加藤精一, “モバイルエージェントを用いたリモート望遠鏡システムの構築”, 第12回天網の会ワークショップ, Jan 2006.
(49) Shingo Okamura, Maki Yoshida and Toru Fujiwara, “An unlinkable interactive drama delivery system allowing rechoice of a scene”, 2006年暗号と情報セキュリティシンポジウム予稿集, p. 127, January 2006.
(50) 浅野順也, 岡村真吾, 吉田真紀, 藤原融, “プライバシを保護した C2C ディジタルコンテンツ売買方式”, 2006年暗号と情報セキュリティシンポジウム予稿集, p. 214, January 2006.
(51) 中山敏, 吉田真紀, 岡村真吾, 藤原融, “検索語の秘匿と検索結果の一貫性検証を可能とする通信効率の良いデータ検索プロトコル”, 2006年暗号と情報セキュリティシンポジウム予稿集, p. 182, January 2006.
(52) 安川健太, 勝野聡, 馬場健一, 山岡克式, “TACCS との組み合わせによる動的クラス割当方式の適用規模拡大”, 電子情報通信学会 総合大会, pp. B-7-2, March 2006.
(53) 伊達拓紀, 安川健太, 馬場健一, 山岡克式, 曽根原登, “高機能エッジノードの連携によって受付制御を実現する Edge-based TACCS の提案”, 電子情報通信学会 技術研究報告 IN2005-199, vol. 105, no. 628, pp. 255-260, March 2006.
(54) 伊達拓紀, 安川健太, 馬場健一, 山岡克式, 曽根原登, “高機能エッジノードの連携による網内ボトルネックに応じた TACCS の実現”, 電子情報通信学会 総合大会, pp. B-7-1, March 2006.
(55) 岡村真吾, 寺西裕一, 秋山豊和, 馬場健一, 中野博隆, “大阪大学におけるキャンパス PKI の構築”, 情報処理学会 研究報告 2005-CSEC-32, pp. 67-72, March 2006.
(56) 大谷隆三, 竹内亨, 吉田幹, 寺西裕一, 春本要, 下條真司, “状況依存型サービスのための分散演繹機構の提案”, 第126回マルチメディア通信と分散処理研究会 (DPS), pp. 305-310, March 2006.
(57) 為重文覚, 馬場健一, 野呂正明, 下條真司, “距離広帯域ネットワークにおける高速データ転送手法の性能評価”, 電子情報通信学会技術研究報告 IN2006-198, vol. 105, no. 628, pp. 249-254, March 2006.
(58) 中村雄太, 馬場健一, 下條真司, “Grid 環境における同期型並列計算のためのトラヒック制御方式”, 電子情報通信学会 総合大会公演論文集, pp. B-7-145, March 2006.
(59) 檜山亜佑子, 野呂正明, 馬場健一, 下條真司, “転送時間を保証するための大規模データ転送手法の提案”, 電子情報通信学会総合大会公演論文集, pp. B-7-144, March 2006.

解説・その他

該当なし

2005年度特別研究報告・修士論文・博士論文

博士論文

(60) 甲斐島武, “広域分散計算環境における同期型並列プログラムのスケジューリングに関する研究”, PhD thesis, 大阪大学大学院情報科学研究科, January 2006.
(61) 竹内亨, “ソーシャルネットワークに基づいた情報伝播型コミュニケーションに関する研究”, PhD thesis, 大阪大学大学院情報科学研究科, January 2006.

修士論文

(62) 石芳正, “ユビキタス環境における p2p エージェントプラットフォームを用いた情報推薦機構”, 大阪大学大学院情報科学研究科, 修士学位論文, February 2006.
(63) 大谷隆三, “ユビキタス環境における状況依存型サービスのための分散演繹機構”, 大阪大学大学院情報科学研究科, 修士学位論文, February 2006.
(64) 為重文覚, “距離広帯域ネットワークにおける大規模データ高速転送手法”, 大阪大学大学院情報科学研究科, 修士学位論文, February 2006.
(65) 中村雄太, “メトロポリタンネットワークにおける同期型並列計算のためのトラヒック制御方式”, 大阪大学大学院情報科学研究科, 修士学位論文, February 2006.

卒業研究報告

(66) 檜山亜佑子, “転送時間を保証するための大規模データ転送手法の提案”, 大阪大学工学部, 特別研究報告, February 2006.
(67) 宮本琢也, “パラメータスィープ型グリッドコンピューティングのためのジョブ管理手法”, 大阪大学工学部, 特別研究報告, Feb 2006.
(68) Ly Lam Ngoc Bich, “セマンティック web 技術を用いた医療情報検索システムに関する研究”, 大阪大学工学部, 特別研究報告, Feb 2006.