サイバーメディアセンターの役割について(岸野 文郎)
第2代 サイバーメディアセンター長
岸野 文郎
第2代 サイバーメディアセンター長 岸野 文郎

サイバーメディアセンターは、2000年4月に設立されてから5年経ち、また昨年4月に国立大学法人化されてから1年経ちます。この間、大学を取り巻く環境は大きく変わり、本センターも少なからず影響を受けています。このような状況を踏まえ、今後のセンターのあり方について私の考えを述べて本年度の年報の巻頭言に代えさせていただきます。

【サイバーメディアセンターの役割】
大学の評価は世界一流の研究成果は勿論ですが、その他の評価、例えば教育が充実し学生が満足するとともに、社会に出てからも大いに活躍できる能力を身につけることができることも重要です。また、「地域に生き世界に伸びる」のモットーにもあるように、地域社会から国内、国外における社会貢献も重要になります。これらの活動を支援するため、なくてはならないのが情報通信基盤であり、水、空気のような存在であるとも言えます。常に最新で、最高の状態を保つためには、最先端の研究を持続的に推進し、研究成果を実運用に供し、その中から課題を抽出して解決を図る必要があります。更に、法人化に伴い、運営費交付金の配分が各法人に一括して委ねられていることもあり、全国共同利用施設としての役割とともに、より一層学内の情報基盤としての役割も求められています。以下に何点かの具体例について述べます。

【学術情報基盤の確立】
今後の科学技術・学術分野や産業分野での国際協調・競争に積極的に対応するため、全国レベルで最先端コンピュータ、高速ネットワーク、更にこれらの研究を行っているグループを有機的に結合した「最先端学術情報基盤」の実現を目指して、国立情報学研究所と7大学情報基盤センターが共同して推進しています。大阪大学では、大型計算機センター時代より、スーパーコンピュータの全国共同利用施設として、最先端技術をいち早く運用システムに取り入れてきました。高速ネットワークシステム、情報セキュリティも最先端技術を導入してきた実績もあり、関連研究者の育成にも多大の貢献をしてきました。全国共同利用の観点から、統一的な認証基盤の構築が今後重要になると思われます。大学は教育、研究、学務などの事務管理などさまざまなサービスが行われており、クレジットカード、ICカードによる改札など、単一サービスの認証は普及しつつありますが、複数サービスを対象に、個人ごとのサービス条件に応じた高度な認証基盤をどうするかは、正しくいまが黎明期であり、どのような認証サービスがビジネスモデルとして構築できるか、また確立すべき技術基盤を探求する絶好の時期であると言えます。

【教育の情報化】
旧情報処理教育センターを受け継ぎ、全学の情報教育のインフラを提供するミッションも負っています。高校での、「情報」学習を経験した学生が入学してくる時期を迎え、このような学生を対象とした情報教育についても見直しを図り、各部局の事情に応じたサポートも今後重要になってくると思われます。更に重要なことは、学生サービスの一環として多種多様な能力を有する学生に、学習の進捗状況に応じてフォローできるきめ細かいサービスを提供することです。既に先生方の中には講義ノートをディジタル情報でお持ちの方も多いと思いますので、インターネットを介してWeb上で学生が自由に予習、復習ができるとともに、自由に質問できたり、進捗度をチェックすることによる学生の学習支援が重要です。これらは、CMS(Course Management System)と呼ばれ、本センターでも試験的に導入していますが、学生の利便性を考慮すると全学的に普及させる必要があります。シラバス、受講届システム等と連動すれば、学生がどの科目を履修するかの手助けにもなりますし、全世界に発信できれば、国内外から本学に学ぼうとする人に情報提供できるとともに、本学で創造された「知」を発信することによる社会貢献を果たすことにもなります。

【学内事務システム】
従来本センターは教育、研究のための情報基盤を管理、運営してきており、学務情報、予算管理などの事務情報システムは他部門の管轄でした。しかし、インターネットの進展により、両者の区別はなくなりつつあり、セキュリティ、サーバの共通化等を考えると一体管理が今後の流れになるでしょう。本学においても両者を一体に管理、運用すべく検討を開始しており、今後益々重要になってくると思われます。

【新サービス、ビジネスモデルの創出】
本センターは、スーパーコンピュータの利用負担金をお願いするなど、本学の他部局とは異なり実サービスを提供する稀有な存在です。最先端の計算機システム、ネットワークを提供し、更には認証基盤、ディジタルコンテンツも検討中であり、これらを組み合わせた最新のサービスを提供できる能力、機能を有しています。新しいサービス、ビジネスモデルを構築できる素地ができつつあると思います。

地球上の生物の歴史を振り返りますと、必ずしも強いものが生き残ることはありません。このような歴史の中で、哺乳類、そして人類が生き延びてきたのは変化に柔軟に、かつ素早く対処できたからだと言われています。サイバーメディアセンターは関連する最新技術をいち早く取り入れ、かつ学内外の要求条件に素早く対応できることを目指すべきと考えます。また、全国共同利用施設として「最先端学術情報基盤」の実現に貢献するとともに、学内の情報基盤を企画、運用、管理することに積極的に関わっていく所存です。今後とも、関係される皆様方の一層のご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。