大塚 紀子

これからも
欧州の都市交通計画に携わる
一研究者として。

Role model02

大塚 紀子

地域都市開発研究所(ドイツ・ドルトムント市) 上席研究員

[ クロス・アポイントメント ]
大阪大学サイバーメディアセンター 特任講師(常勤)

京都女子大学短期大学部初等教育科 卒業
大阪工業技術専門学校建築学科2部 卒業
英国ヨーク大学建築研究所建築学専攻 修士課程
英国オックスフォード・ブルックス大学都市デザイン研究所都市デザイン専攻 修士課程
同 博士課程

研究について

EUの人々の公共交通への関心を高めるために。

ドイツ・ドルトムント市にある地域都市開発研究所に勤務し、欧州の都市交通計画に関する研究に携わっています。EU本部が推進するヨーロッパ縦断鉄道ネットワークの整備に向けたプロジェクトでは、研究チームのワーク・パッケージ・リーダーに就任。EUの人々が自家用車から公共交通主体の生活に転換できる方策を考察してきました。

大阪大学とは、都市再生におけるブラウンフィールド※の再利用と活性化の事例を研究。欧州の研究者は日本の都市交通計画や都市再生の事例に関心が高く、これまで大阪大学と本務先の同僚たちとのワークショップなどを実施してきましたが、クロス・アポイントメント制度の活用により、さらに共同研究が進めやすくなりました。

※ブラウンフィールド:工場跡地など

日本企業での実務経験が研究者としての幅を広げて。

都市デザインの研究は実務とのつながりが強いため、欧州の地方自治体やNPOの担当者と一緒に研究プロジェクトを進める機会が多くなります。私が海外で研究職を続けられるのは、渡英前に10年間日本のゼネコンで勤務し、実務経験で培ったチームワークや業者との交渉能力が大きな役割を果たしているからだと思います。研究職を目指す皆さんには、一度実務を経験されることをお勧めします。

欧州の都市交通システムやデザインの問題点の議論を重ねていく中で、わずかでも自分の研究が都市の将来設計に貢献できていると思える時があります。研究者になった喜びを感じる瞬間ですね。

年齢や外国人であることが壁にならなかった理由。

英国でPhD※を終えて研究者の道を歩み出した時には40歳を超えていたため、研究職公募で年齢制限が明示的でない欧州でも、仕事探しに苦労しました。それでも実務経験があったことで、学術的知識の蓄積面で主流の研究者とスタート地点が同じでなくても十分に対抗できると分かり、年齢的な不安や弊害を感じることはありませんでした。

その後、主人の転勤でスイスに渡り、二つの大学で研究職に就き、現在のドイツ・ドルトムントの研究所へ。常に任期付きで、自分で研究費を獲得しなければ継続できない状況ですが、前を向いて進むことができるのは、知らない国の新しい職場で研究を始めたり、初めての環境での生活が苦にならない性格だからだと思います。英国と欧州大陸の研究者は考え方や振る舞いがかなり違い、驚くこともありますが、新たな発見としていつも楽しんでいます。

※ PhD:Doctor of Philosophy博士号

欧州での研究フィールドを広げていきたい。

過去15年間に英国・スイス・ドイツの研究機関で働き、それぞれの国の研究の進め方を学びながら、競争的研究費のプロポーザルをいくつも書いているうちに、いつのまにか人脈も広がりました。今後もどんどん応募し、大きな国際共同研究のリーダーとしてプロジェクトに携わっていきたいと思います。また、これまでは西欧諸国との研究が多かったため、今後は欧州の他地域の研究者と交流を深め、都市交通計画やブラウンフィールドの研究を続けていければと考えています。

INTERVIEW