業務及び研究の報告

情報メディア教育研究部門
Infomedia Education Division


1.部門スタッフ

助教授 中西通雄
略歴:1978 年3 月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1980 年3 月大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程物理系専攻修了。同年4 月三菱電機株式会社入社、1989 年3月同社主事、1990 年6 月同社退社。同年7月大阪大学基礎工学部助手、1995 年4 月大阪大学情報処理教育センター助教授、2000年4 月より大阪大学サイバーメディアセンター助教授。AACE、情報処理学会、電子情報通信学会、教育システム情報学会各会員。

講師 北道淳司
略歴:1988 年3 月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1990 年3 月大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程物理系専攻修了、1991 年7 月大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程物理系専攻中退。同年8 月同大学基礎工学部助手、1997 年4 月大阪大学大学院基礎工学研究科助手(組織改編のため)、1999 年4 月大阪大学情報処理教育センター講師。2000 年4 月より大阪大学サイバーメディアセンター情報メディア教育研究部門講師。電子情報通信学会、情報処理学会各会員。

助手 桝田秀夫
略歴:1992 年3 月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1994 年3 月大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程物理系専攻修了、1998 年3 月大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程物理系専攻修了。1998 年4 月大阪大学情報処理教育センター助手、2000年4 月より大阪大学サイバーメディアセンター情報メディア教育研究部門助手。電子情報通信学会、情報処理学会各会員。

助手 大崎博之
略歴:1993 年3 月大阪大学基礎工学部情報工学科退学、1995 年3 月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻前期課程修了、1997 年3 月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻後期課程修了。同年4 月大阪大学大学院基礎工学研究科情報数理系助手、1999 年4 月大阪大学情報処理教育センター助手。2000 年4 月より大阪大学サイバーメディアセンター情報メディア教育研究部門助手。IEEE、電子情報通信学会会員。

助手 中村匡秀
略歴:1994 年3 月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1996 年3 月大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程物理系専攻修了、1999 年3 月大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程情報数理系専攻修了。1999 年5 月より2000 年3 月までカナダ・オタワ大学ポスドクフェロー。2000 年4 月より大阪大学サイバーメディアセンター情報メディア教育研究部門助手。IEEE、電子情報通信学会各会員。

助手 小川剛史
略歴: 1997 年3 月大阪大学工学部情報システム工学科卒業、1999 年3 月大阪大学大学院工学研究科情報システム工学専攻博士前期過程修了、2000 年3 月大阪大学大学院工学研究科情報システム工学専攻博士後期過程中退。2000 年4 月より大阪大学サイバーメディアセンター情報メディア教育研究部門助手。IEEE、電子情報通信学会、情報処理学会、日本バーチャルリアリティ学会各会員。

2.部門の業務概要

 サイバーメディアセンターの部門構成とそれらに関わる主な業務は、http://www.cmc.osaka-u.ac.jp/j/shomu/kaiso.html に記載されているとおりである。本部門では大きく4 つの業務があるが、「情報処理教育カリキュラムの開発」も重要な業務であると考えており、広報誌「サイバーメディアフォーラム」創刊号(2000 年9 月) に記したように、本部門の職掌を次の4 つに分類しなおしている。なお、情報倫理教育は情報処理教育の一部として捉えている。
  1. 情報処理教育カリキュラムの開発
  2. 情報処理教育環境の構築と研究
  3. ファカルティ・ディベロップメント
  4. 情報処理教育の実施
以下、これら4 つのそれぞれについて、今年度の目標とその成果を概観する。

3.業務の実施状況

3.1 情報処理教育カリキュラムの開発

 1994 年に共通教育機構が発足したときに、共通教育のなかに情報処理教育科目という分類ができ、それに属する授業科目として「情報活用基礎」が新設された。6 学部で必修、文学部で選択(1995 年度から必修) として開始され、新入生にコンピュータリテラシーを身につけさせることに大きな貢献をしてきた。しかし、この1 科目だけという状況が続いており、情報科学を核として再構築することが情報処理教育科目専門委員会の目標であった。
 2001 年度の情報処理教育科目に、情報科学や情報倫理関連の5 つの授業科目を設置できたことは、今年度の大きな成果である。これは、本センター、基礎工学部、文学部、および法学部の先生方の協力を得て実現できたものなので、全ての学部において卒業要件単位に含めて頂くことを期待したが、6 学部にとどまった。卒業要件単位に含めるかどうかは各学部が決めることであるが、新設科目の趣旨や授業予定内容についての情報提供が不足していたかもしれない。来年度以降も、共通教育機構カリキュラム委員会の情報処理教育科目専門委員会などにおいて検討を進めていきたい。

3.2 情報処理教育環境の構築と研究

(1) システム全体

 教育用計算機システムは、利用者用計算機が約750 台、実利用者数が約1 万2 千人という規模である。これを維持し、授業に円滑に利用してもらえるようにするためには、日頃からきちんとした管理が必要である。昨年3 月に新システムへ機種更改し、4 月の授業ではいろいろと不備な点があったことは否めない。利用者計算機のTurboLinuxの不安定さ、サーバ計算機のAIX の不具合などが主な要因であったが、本部門の教官が中心となってシステムの安定化を図ってきた。9 月には、図書館本館の完成に伴って分散配置端末室をオープンした。図書館の端末室は日曜日も利用できることから、学生に非常に人気が高い。システム全体として高い稼働率を維持できている。

[関連発表論文]

(2) 利用者用計算機の保守方式の確立

 利用者用計算機は、ソフトウェアの更新などをすべて遠隔で行うことができるように設計・構築した。この成果は顕著であり、システムのカットオーバ以来、担当者が全ての利用者計算機をまわって作業するという事態は一度もなく、ほぼ遠隔操作によって解決できている。このような効率的な保守方法は、unix ベースのシステムを採用しているがゆえに構築できたわけであるが、いずれ公開して、他大学などのシステム構築の際に参考にしてもらえるようにする予定である。

(3) 各種ツールの開発・サイトライセンスの提供


 ログイン前のお知らせ表示、プリンタ出力インタフェイスの改善、印刷枚数の制限、授業支援システムの構築など、いくつかの利用者向けツール群を作成して提供してきた。図1は、授業支援システムの出欠表示画面の例である。さらに、Web ページのQ&A を充実するなどして利用者の便宜を図っている。また、学内向けにMathematica のキャンパスライセンスの配布・管理サービスを担当している。

(4) CALL システムとの連係強化


CALL のWindows2000 システムとの利用者アカウントの一元化(正確には同期化) を実現し、どちらのシステムからもパスワードを変更できるようにした。これにより、技官が担当していたパスワード再発行作業も4 月から軽減される予定である。また、メールサーバをCALL システムからもアクセスできるようにして、情報教育システムでもCALL システムでも同じようにメールを読み書きできるようにした。同時に、From 行の偽造などの不正に対する防止策も講じている。

3.3 ファカルティディベロップメント

(1) コースウェア開発

 今年度は機種更新直後であり、「情報活用基礎」の授業のために多くのWeb ページを積極的に作成してきた。これを核として、来年度は一般情報処理教育のためのコースウェアとして利用可能な形にしたい。

(2) 授業評価

 9 月には、「情報活用基礎」に関して、受講学生による授業評価アンケートを実施した。クラス別の評価結果は当該の授業担当教官にだけお知らせして、個別に意見交換を行った。担当教官からは、大変参考になったとの意見が多く、来年度の授業での改善に役立てて頂けることになっている。紙ベースで実施したので集計に手間取ったが、来年度はWeb ベースの評価システムを作成して、集計結果がすぐに授業にフィードバックされるようにしていきたい。

(3) 情報処理教育研究会の実施

 ファカルティ・ディベロップメントの一環として、情報処理教育研究会を情報処理教育センター時代から継続している。今年度は機種更新後の運用の安定化に時間をとられてなかなか開催できなかったが、3 月7 日に約30 名の参加者を得て開催した。以下の3 件の事例報告とディスカッションを行った。
  1. 「情報活用基礎における学生による授業評価」…サイバーメディアセンター中西通雄
  2. 「プレゼンテーション演習導入の試み」…サイバーメディアセンター中村匡秀
  3. 「情報活用基礎におけるクラス分け教育の評価」…人間科学研究科原田章

3.4 情報処理教育の実施

(1) 情報活用基礎

 情報処理教育科目の「情報活用基礎」について、文学部および人間科学部への応援を続けている。単に応援ということではなく、情報活用基礎のモデル授業となるように常に心がけており、新しい取り組みを行っている。例えば、人間科学部での実践過程においては、学期当初からのコンピュータ利用経験別クラス編成、および中間実技試験結果によるクラス再編成を実施して教育評価を行ったほか、学生によるプレゼンテーションを取り入れる試みを行ってきた。この成果を他学部の情報活用基礎でも参考にしてもらえるように、上述の情報処理教育研究会などで広報活動につとめている。

(2) 情報倫理教育

 共通教育科目の「情報科学特論」の一部を担当する機会を得たので、受講学生(さまざまな学部の1 年生が中心) に情報倫理関連の課題を与えて調査させ、プレゼンテーションソフトを用いて発表させるという授業方法を試みた。受講学生はさまざまな学部の1 年生が中心であったが、この試みは受講学生にたいへん好評であった。情報倫理やそれに関連する話題は、教官からの一方通行的な講義ではなく、学生自身に考えてもらうことが肝要である。

(3) 基礎セミナーなど

 サイバーメディアセンターとしての講義としては、基礎セミナーの「UNIXプログラミング」を開講しており、perl やCGI のプログラミングの基礎および、Web でのGUI(Graphical User Interface)構築方法について講義・演習を行った。ある程度のプログラミング経験をもった学生に対する教育であり、「できる学生の力を伸ばす」という方針でさらに充実させていきたい。

(4) その他

 上記の授業のほかには、基礎工学部公開講座(一部を担当)、高校生向けの見学、一般学生向け初心者講習会、留学生向け講習会、授業担当教官向け講習会などを開催した。これらの一部は、本部門の教官がCALL 教室も用いて開催した。

4.来年度への抱負

 本部門の各教官の専門分野はそれぞれ異なるので、その違いを生かしつつ、部門としての研究体制を確立することが大きな課題である。以下、職掌ごとに簡単に抱負を述べる。

4.1 情報処理教育カリキュラムの開発

 中期的な目標としては、西暦2006 年度からの大学での情報教育を方向付けることがある。つまり、2006 年からは高校の新カリキュラムで「情報」を履修してきた新入生が入学してくるので、いくつかの先進的・実験的授業を今から試みていくことが必要である。

4.2 情報処理教育環境の構築と研究

 現状の情報教育システムを健全に維持することはもちろんのこと、短期的には、豊中新棟完成時の教育用計算機システムの設計、利用規則の見直し、管理者規則の制定、図書館との連係などが業務として挙げられる。また、学生のWeb ページの公開サービス、外部からのメールアクセスなども利用者や教官から要求されているので、実現にむけての検討を続ける。教育系の4 部門が協力して計算機の管理運営を進めることが求められており、来年度はそのための組織づくりを積極的に進めていきたい。計算機環境の構築と運用については、作業負荷が大きい割に学術論文になりにくい仕事がほとんどであるが、本学の教育を支えるために最善を尽くしていきたい。

4.3 ファカルティ・ディベロップメント

 コースウェアの開発や、授業評価システムの開発については、前述のとおりである。来年度の情報処理教育研究会は、情報倫理教育や理系の情報処理教育などのテーマで、3~4 回程度開催したいと考えている。

4.4 情報処理教育の実施

 情報活用基礎の兼担では、従来からのように新しい取り組みを織り込んでいきたいと考えている。特に、これからは情報倫理教育がとりわけ重要になる。情報倫理教育は重いテーマであり、まだ部門全体として取り組むことができていないので、試みとして情報活用基礎の授業へ組み込むことを進めたい。また、倫理や法律の先生方も交えて情報倫理教育について議論する機会を持てるようにしたい。
 また、理系の情報処理教育のあり方を考えることも必要である。コンピュータ実験科学研究部門および大規模計算科学研究部門と連係して、科学問題解決のための過程習得に関する新しい授業科目の検討や,科学問題解決のための計算機応用に関するファカルティ・ディベロップメントを進めていく所存である。

5.研究発表論文一覧

 第3章の中に記載しているため、ここでは一覧を省略した。なお、本部門の各教官はそれぞれの兼務先においても着実に研究を進めているが、その研究成果は本報告に含めていない。