スーパーコンピュータSX-5 の概要

1.はじめに

 サイバーメディアセンターでは、前身の大型計算機センターから引き継ぎ、4 年間にわたって運用を行ってきたスーパーコンピュータ・システムNEC社製SX-4/64M2を更新し、平成13 年1 月より新スーパーコンピュータ・システムNEC社製SX-5/128M8の運用を開始しました。ここでは、簡単に新スーパーコンピュータ・システムの概要を説明します。
 なお、詳しい説明やシステムの情報については、Web でも提供していますので、ご参照ください
(http://sxusers.center.osaka-u.ac.jp/sxusers/)。

2.新システムの特徴

 表1,2に主な能力を示します。本システムは、1.28TFLOPS(64bit 精度の浮動小数点演算を毎秒1.28兆回)の演算処理能力を持ち、導入時点においては国内最高性能のシステムであり、世界的にも十指に入ります(http://www.top500.org/)。
表1:新スーパーコンピュータ・システムの性能
SX5-5/128M8
表1:新スーパーコンピュータ・システムの性能
SX5-5/128M8
ピーク演算性能 1.3TFLOPS
主記憶容量 1.0TB
ファイルシステム装置 容量 18.8TB
冗長化機能 RAID3
インターフェイス ファイパーチャネル176本(最大17.6GB/s)
ネットワーク接続装置 インターフェイス Gigabit Ethernet16本(最大16Gbps)
Auspex NS2000
ファイルシステム装置 容量 4.0TB(ミラーリング後2.0TB)
冗長化機能 RAID5+RAID1(ミラーリング)
バックアップ装置 容量 4.0TB

 また、導入された主なソフトウェア、アプリケーションは次の通りです。
  1. プログラミング言語:Fortran90,HPF,C,C++
  2. 数値演算ライブラリ:ASL/SX,MathKeisan(BLAS,LAPACK,ScaLAPACK,…..),IMSL,NAG,
     CERNLIB
  3. ジョブ・キューイング・システム:NQS,LSF
  4. 統合開発環境:PSUITE,Cygnus Code Fusion
  5. 並列化支援ツール:Etnus TotalView
  6. 可視化支援ルール:AVS/Express Developer,RVSLIB,SpaceFinder
    表2:新旧スーパーコンピュータの性能比較

    新システム 旧システム 従来比
    名称 SX-5/128M8 SX-4/64M2
    ノード数 4倍
    プロセッサ数 128 64 2倍
    駆動周波数 312.5MHz 125MHz 2.5倍
    ピーク演算性能 総合 1280GFLOPS 128GFLOPS 10倍
    ノード 160GFLOPS 64GFLOPS 2.5倍
    プロセッサ 10GFLOPS 2GFLOPS 5倍
    主記憶容量 総合 1024GB 16GB 64倍
    ノード 128GB 8GB 16倍
    プロセッサへのデータ供給能力 総合 5120GB/s 1024GB/s 5倍
    ノード 640GB/s 512GB/s 1.25倍
    プロセッサ 40GB/s 16GB/s 2.5倍
  7. 流体解析アプリケーション:STREAM
  8. 衝撃解析アプリケーション:LS-DYNA
  9. 構造解析アプリケーション:MSC_Nastran
  10. 分子化学アプリケーション:Gaussian98
 新システムSX-5/128M8は、8 ノードからなる大規模システムであり(図1 参照)、旧システムSX-4/64M2の約4倍の設置面積を必要とします。従って、ノード#0 からノード#5 の6 ノードをサイバーメディアセンターへ設置し、これまでもスーパーコンピュータ・システムの共同運用を行ってきたレーザー核融合研究センターと核理研究センターへノード#6 とノード#7 を分散設置しました。
 各ノードの性能は、共有メモリ型コンピュータとしては世界最高の浮動小数点演算性能160GFLOPSのピーク性能を有し、キャッシュなどの階層構成を取らない128GBの大容量メモリを一様にアクセスできます。本センターのユーザは、各自のプログラムが必要とする処理容量に応じ、ノードのリソースの1/4,1/2、または最大能力を参照可能なバッチ・キューを選択して利用できます。
 また、HPF(High Performance Fortran)などでプログラミングを行うことにより、複数ノードを分散メモリ型システムとして利用することも可能であり、その場合、IXSという超高速ノード間接続装置を介して8GB/s の超高速かつ低遅延ネットワークを介してメッセージ交換が行われます。現時点では、4 ノード分の640GFLOPS,512GBという大規模プログラムを実行可能なバッチ・キューを常時提供していますが、ユーザの要求に応じて、6 ノード分の960GFLOPS,768GBを利用可能なバッチ・キューの提供も検討しています。
 さらに、定額利用制度の試行の延長として、ERS(Extended Resource Schedule)というフェアシェア型のリソース管理システムを導入しています。定額負担額と累積使用実績を加味した実行優先制御により、ユーザ側から見たリソース割り当ての公平性と、システム管理側から見たシステム利用効率の向上を狙っています。

3.ユーザサービス

 新スーパーコンピュータ・システムに関する主なユーザサービスとして、次に示す1)ヘルプディスク、2)コンサルテーション、3)スーパーコンピュータ利用に関するソフトウェアの配布、を行っています。
  1. ヘルプディスク(http://helpdesk.center.osaka-u.ac.jp/)
     ユーザはWebを用いてスーパーコンピュータ・システムに関する質問を行うことができます。質問に応じて担当者に質問内容が転送され、回答がなされます。質問と回答はデータベース化されていますので、過去の関連する情報を引き出すことや、FAQとしても利用することができます。
  2. コンサルテーション
     Fortran77 からFortran90 への移行支援、ユーザプログラムの性能チューニング支援、可視化支援などのコンサルティングを行っています。
  3. スーパーコンピュータ利用に関連するソフトウェアの配布
     Linux 用クロス開発環境の配布、アプリケーション操作用プリ/ポスト・アプリケーションの配布、可視化支援アプリケーションの配布を行っています。
 また、システムの稼動状況や負荷状況などもWeb を通じて提供しています(http://sxusers.center.osakau.ac.jp/sxusers/)。

図2:SX-5 の利用状況

4.おわりに

 新システムは、順調に稼動しており、新システムが旧システムに比べて10 倍もの処理能力を有するにも関わらず、導入以来4 週目にして8 割を越える利用率を記録し、3 月上旬を除き常に8 割から9 割程度の利用率を維持しています(図2 参照)。演算処理性能が研究成果に直結する研究領域において、いかに本システムの必要性が高かったかを示しており、導入後、早期に稼働率を高め安定して研究者にサービスを提供するという、本センターの責務を果たすことができ、ひとまず安堵しています。