2002 年度の利用相談室から

武知英夫(サイバーメディアセンター利用相談員、
阿南高等専門学校機械工学科)


1.はじめに

 とにかく2002 年度の始まりは大変であった。サイバーメディアセンターがポータルやらssh を稼働させるし、勤務地でも同時期にファイアーウォールを導入してtelnet が全く使用出来きなくなった。全構成メンバーがmail とWeb しか知らない我がセキュリティーポリシー委員会に対して、login.hpc.cmc.osaka-u.ac.jp 宛ポート22をオープンしてもらう説得に一ヶ月を要した。次にXwindows のオープンでは、下りポート6000 に付いて理解を得るため更に二ヶ月を要したのは言うまでもない。いやはや、とにかく繋がってこそサイバーメディアセンターであるから、繋がらなくては全く話にもならない。さて、私的な愚痴はこのくらいにして、この一年間に相談室で取り扱ったトラブルや障害を振り返ってみよう。

2.SSHログにイン

 図1 はセンターを利用する際に使用する情報経路の概念図である。センターへのログインで従来使用されていたtelnet がssh 図1 の(1) に置き換えられている。このssh はRedHat Linux やTurbo Linux では標準装備であるのでパソコン側の発信では問題は生じない。問題は寧ろパソコン側LAN のゲートウェイで、登りと下りポート22 が開放しているかどうかである。

3.scp ファイルの送受信

 前述のように私が使用するLAN では、下り(内部向け) ftp ポート21 がclosed であるので、ssh と同じ22 ポートを利用するscp でファイル転送するしか方法はない。またゲートウェイルータでは、手元のパソコンexp110ec(202.231.44.209) からlogin.hpc.cmc.osakau.ac.jp(133.1.4.40) までの登りと下り方向の経路情報を設定する必要がある。従って、このマシンを現在のLAN
セグメントから取り外して別LAN セグメントに接続して使用したり、別マシンからscp 発信することは出来ない。
ファイルのアップロード図1 の(2) は、
scp -p file 1 file 2 x60602@login:/fs/user6/x60602/
を実行し、逆のダウンロードは、
scp -p x60602@login:/fs/user6/x60602/file 1
x60602@login:/fs/user6/x60602/file 2 ./
を実行する。アップロードの場合はファイルが複数個であってもパスワードは一回しか催促されないが、複数ファイルのダウンロードではファイル毎にパスワードを請求される。センターの全ファイルは図1 の(4) のようにNSF リンクされているので、login 宛アップロードすれば、即刻に別マシンからでも参照が可能になる。

4.X Windows コネクション

ia01 やsx5 やaplsv などのサーバー群へX Windows 接続しようとするとき、login 端末の接続メニューから図1の(3)[X] X Forwarding を選択する。続くサブメニューで、アプリケーションを運用する接続先マシン名を指定して接続が完了する。

5.PCWindows でのssh インストール

 サイバーメディアセンター(大規模計算機システム)がssh を運用する直前の2002 年の3 月にTurbo Linux を既に稼働させていたが、ssh を全く使用する機会がなかった。telnet やftp で十分に仕事ができていたから移行の必要など微塵もなく、4 月に入ってからtelnet とftpが全く動作しなくなってから、さあどうしようということになった。
インターネット検索でssh のサイトを探し当て蘊蓄を読み、何とか理解できたところでダウンロードとインストールを始めてみると、解凍とインストール先ディレクトリに関してPC Windows の知識を少々必要とすることに気が付いた。
 図2 は、センター利用者からも質問があったssh のインストール先ディレクトリを示す。ssh は,telnet を担うTeraTerm の情報経路を暗号化してポート22 で通過させる機能がある。TTSSH 1.5.4 をダウンロードして解凍すると、数個のファイルの中に隠しファイルが含まれるのが分かる。説明には、解凍したファイルを全てTeraTerm のディレクトリへコピーするように指示し
ているが、隠しファイルは通常表示されないから、このファイルを通常の手段(Windows Explorer 等) でコピーすることが出来ない。でssh が起動できないという問題が多発した。
 対策は、ダウンロードファイルを解凍する際に、解凍先ディレクトリとしてTeraTerm ディレクトリを指定すること。TeraTerm ディレクトリ内でファイルが少々混在する不都合が生じるが、ssh の起動が出来ない問題は解消する。

6.Psuite は素晴らしい

 とにかくFortran プログラムをディバッグした経験があれば、ブレークポイントを設定して、実時間で配列の値を参照する事が如何に高度なプログラミング技術を必要とするか理解頂けると思う。で、それがPsuite では簡単にマウスでsource 行をクリックするだけで、プログラムの実行を該当行で停止し、次に参照したい配列をマウスでクリックすると、数値マトリクス表示もしくは3D プロットの表示が瞬時に得られる。
 世界広しと言えども、UNIX 系のVisual Fortran でこれほどのディバック機能を有するものは他にないと確信している。Psuite はfront01 で稼働しているが、Cross-Compiler をfront01 で実行し、ジョブはsx5 の超高速160GFLOPS のCPU で演算するので、それはもうwonderfullを遥かに越えるBril(liant) になる。

6.1 Psuite の起動の前に

 Psuite を起動する前に、クライアント側(ここではfront01) のユーザファイルを以下の要領で更新する必用がある。

6.2 Psuite の実行手順

 Psuite の起動に続いて、以下の順でサブメニューからコンパイル(Compile)、メイク(Make)& ビルド(Build)、ラン(Run) を実行する。図3 はPsuite のCompile Optionのサブメニュー画面を表示している。ディバッグオプション-D debug はディバッグの指定のみならず、sx5 での実行時に自動ベクトル化を抑制する働きがあり、別のスカラマシンでの結果と照合する必要のある場合は、必須オプションでもある。

6.3 Psuite のディバッグ実行

 図4 はディバッグモードでの実行例を表示している。Psuite のディバッグモードの特徴は、マウスカーソルでsource プログラム上の一時停止位置を指定出来ることや、プログラムの一定箇所で実行を停止し、特定配列が持つ値のマトリクス表示や、図5 のような配列要素の値を三次元プロットする処理を、全くソースプログラムの変更なしにマウスだけで処理出来る点にある。この二点だけを取っても、私のように長年にソースプログラムの万行を編集し直し、大型汎用機でディバッグ作業を行ってきた者に取って、Psuite は画期的な開発ツールである。

 図4 では、Source Browser の行番号をマウスで指定して、Break Point サブメニューの’ 手’ のアイコンで設定する。次にProcess Control のアイコンRUN で実行を起動すると、処理は先に指定したブレークポイントで停止する。Program Debugging Tool のサブメニュー中央に表示されたように、プログラムtrusman.f は現在行番号112 で停止中の状態にあることが分かる。
再度マウスで参照したい配列をData アイコンの中の3D 表示で確定する。暫くすると、ポップアップウィンドウが現れて配列の表示範囲(i,j) をマウスで指定する。表示の方法は二種類あり、数値で二次元マトリクスとして表示するか、3D プロットを選択する。
 図5 では、指定した配列の3D プロットが表示されている。画面左裏のDynamic Data Visualizer サブメニューでは、配列の表示範囲(i,j) をマウスで指定する。勿論、この配列の(i,j) の範囲は何度でも任意に変更できるので、3D プロットの小領域だけを拡大表示することも可能である。

7.おわりに

手元のLAN では学外のメールサーバを前述のゲートウェイルータがポートを閉じて使用できなく設定してあるため、直接にmail.hpc.cmc.osaka-u.ac.jp からメールを読めない。現在は.forward をhpc.cmc.osaka-u.ac.jp ファイルに置いて、全てのメールをローカルメールサーバ宛に転送し開封している。
 既にia01 マシンでは、mpif90 プログラミングによるMessage Passing Interface 実行の目処がたったことから、次はPsuite を積極的に使用するsx5 mpi に移行する準備をすすめている。前述のDynamic Data Visualizer 等の使用により、従来より遥かに効率的なディバッグ作業が
できると期待している。

 近年のセキュリティポリシー徹底キャンペーンの影響で全てのユーザが従来のネットワーク利用に対して大小の制限を被ったのが2002 年ではなかったかと思う。この結果、WAN を放棄してLAN に閉じこもるユーザーが増加するのではと危惧するが、コンピュータの歴史自身が物語るとおり、全てのIT の起源がHigh Performance Computing にあるということを私は信じて疑わない。

参考文献
[1] NEC. “fortran90/sx プログラミングの手引”. nec software Inc., 2000.
[2] NEC. “fortran90/sx 言語説明書”. nec software Inc., 2000.
[3] NEC. “言語支援機能利用の手引”. nec software Inc., 2000.
[4] NEC. “psuite 利用の手引き”. nec software Inc., 2002.