サイバーメディアセンターを利用して

感本 広文(豊橋技術科学大学 工学部 機械システム工学系)

 私が大阪大学サイバーメディアセンターを初めて利用したのは、1998年だったと記憶しています(当時はまだ大阪大学大型計算機センターと言っていた)。それまでは、近いという事で名古屋大学の大型計算機センターを利用していましたが、ある時、上司から大阪大学に高性能で低料金の計算システムがあると資料を渡され、早速ホームページにアクセスしたのでした(後にそれは導入間も無いExemplerの事だと分かりました)。しかしながら、機器構成等を見ても理解不十分で、自分が行いたい計算がこのシステムで出来るのかどうかすら判断しかねる状態でした。そんな時に目に入ったのが講習会のお知らせで、利用者で無い人でも参加可能との事でしたので百聞は一見にしかずと、早速講習会に参加しました。通常、利用者でないと講習に参加出来ないと思われますが、利用しようかどうか迷っている人にとっては、講習を受けてみないと利用するかしないか判断出来ない所もあると思われるので、この柔軟性は大変ありがたかったです。また、「大型計算機センターなんて、導入されているスーパーコンピュータのメーカーが違うだけで、どこでも同じような物だろう」と思っていましたが、システムや運営方法が異なっていてそれぞれ特色がある事が分かりました。
 十数年前、私が所属している研究室にEWSが導入された時までは、自作のプログラムをスーパーコンピューターで計算させるのが、私の一般的な計算機の使い方でしたが、EWSの導入と共に、一時期はほとんど大型計算機を利用しなくなりました。しかし、汎用ソフトウエアを使用するようになり、再び、大型計算機センターを使用するようになりました。私共も学科単位でEWSにいくつかの汎用ソフトをインストールして使用しており、便利ではあるのですが、維持管理に加えてハード、ソフトの更新には非常に手間と経費がかかり大変だという事を実感しました。その点、サイバーメディアセンターを利用すれば、システムの維持管理・更新はセンターでやっておられて、不明な点の問合せにも迅速に回答してくださり、利用者に徹する事ができ非常に気が楽でした。また、料金面でも数種類の定額制が用意されていたので、年度の初めは安い定額制を申込んで、その年度の計算量を予測しつつ限度額に達したら、適当な料金の定額制に切替えるという事が可能で、SX4からSX5に機種更新された時も料金設定の決定が容易にできました。
 機種更新の話が出ましたが、やはりサイバーメディアセンター利用者として、SX4からSX5への移行時には多かれ少なかれ、それぞれの利用形態で不便、不具合があったかと思われます。私共でも更新に伴うディレクトリや実行環境の変更で修論提出間近の学生さんが頭を抱えていたのが思い出されます。一般的な使用方法のHP掲載やアナウンスはやや遅れ気味だったようですが、個々の質問には直ちに答えていただけるサポート体勢が整っていたので心強かったです。また機種更新に際して、SX5の無料試行期間を設けていただけたので、ソフトの動作チェックもできました。
 昨今のネットワーク環境の普及、充実によって、現在では直接センターを訪れる人は少なく、研究室の端末からアクセスするというのがむしろ一般的な使用法となっていますが、1998年当時、私の所属する大学ではATMネットワークを導入したばかりでネットワークのトラブルが絶えず、SINETの回線速度も岡崎-豊橋間が1.5Mbpsと貧弱だったため、まともにネットワークが繋がらない事が日常的でした。そのため、阪大のEWSにインストールされたポスト処理ソフトを使うために、リモートログインしてXウインドウを開く、などと言う事が殆ど不可能な状態でした(ポスト処理ソフトを起動するだけでも10分ぐらいかかった)。そ のような時に、センターに赴くと非常に快適にポスト処理が行えて、そのレスポンスは感動的ですらありました。しばらくの間は、先にまとめて計算をしておいてサイバーメディアセンターに赴き、まとめてデーターを処理するという状態が続きました。
 昨年末には私の所属する大学の回線も10Mbpsに拡大され、リモートでソフトが使えそうかと思った時にSXの移行が始まり、今春からは私の利用していたPost処理ソフトもPC版になり、各自のPCでソフトを起動する形式になりました。そのため、現在は、SX5になってSX4の数倍の速さで快適に計算が行えるようになりましたが、計算後、結果データーを自分のPCに転送しなければならず、転送に非常に時間がかかるようになりました。1つの計算で数百メガバイトに及ぶファイル群が吐出されるため、条件を変えていくつかの計算を行うと、数ギガバイトのデーターを転送しなければならず、転送に非常に時間がかかってしまい、転送途中でファイルが途切れてしまう事も有りました。そこで、サイバーメディアセンターを訪れ、データーをダウンロードすると、数ギガのデーターも素晴らしい早さで転送されて驚きと共に恵まれた環境をうらやましく思いました。現在は、サイバーメディアセンターに赴き、まとめて計算をしてデーターをダウンロードし、データーを持ち帰ってPCでポスト処理を行うというスタイルになりました。
 このような理由で私は、度々サイバーメディアセンターを訪れましたが、その際、センターの利用者旅費申請を利用させていただいて大変助かりました。また、当初、出張利用の際にセンターの端末が満員で利用できなかったらどうしようという心配もありましたが、インターネットで端末予約ができたので、予約しておくと確実にそのマシンを使う事が出来、安心できました。しかし、他の利用者の方はほとんど研究室の端末から利用されているためか、私が利用した日が幸運だったのか、センター内はすいている事が多く、恵まれた環境を存分に利用することが出来ました。さらに、ここ数年の間に、これまで郵便やFAXで送られていたセンター速報や各種申請用紙がセンターのホームページからダウンロード出来るようになり、非常に便利になったと思います。まさに、スーパーコンピュータをメインに据えた大型計算機センターから、サイバーメディアセンターという名称にふさわしいセンターに進化したという感じを受けました。欲を言うならセンターニュースのバックナンバーもpdf等でホームページにおいて頂ければと思いました。また、各種申請や、設備の使用方法等、分からない事があった時は職員の方の対応が非常に迅速かつ親切でスムーズに作業を進めることが出来たことに感謝しております。実際に職員の方とお話した際に、「こんな事はできませんか?」といった何気ない質問がきっかけで、もっと便利な使い方を教えていただいたり、当時導入を控えていた次期システムのお話なども聞かせていただく事ができ、出張利用ならではの体験もできました。
 これまで、SXにインストールされているLS-DYNAを使用して、衝突計算を行ってきました。SX4時代に自動車の衝突解析を行った時に比べると、SX5になって格段に早くなったと実感しました。ソフト面でも、私が使い始めた頃は、3次元動的有限要素解析ソフト、LS-DYNA3Dという名称でバージョンは936でしたが、その後、二次元解析機能が付加され、3DがとれてLS-DYNAと改名され、現在、サイバーメディアセンターにはバージョン950がインストールされています。これによって、私は球の衝突解析を行う際に、二次元軸対称要素が使えるようになり、ソフトの進歩によって研究に必要な計算が便利に行えるようになりました。
 利用者の声と言うことで原稿依頼をいただきましたが、私は大阪大学サイバーメディアセンターのシステム構成について熟知しているわけでもなく、私の所属する大学のネットワーク環境が貧弱なため、端末による遠隔利用が満足に出来なかった事など、他の利用者の方とはかなり異なった利用形態だと思います。そのため、大方のサイバーメディアセンター利用者の方とはかなり異なった見方になっているかもしれませんが、私がサイバーメディアセンターを利用して感じたことを思うままに書かせていただきました。取違えた部分もあると思いますが一利用者の感想として読み流していただければ幸いです。