特集

特集「情報倫理・工学倫理教育」を組むにあたって
中西 通雄 (サイバーメディアセンター)
広報委員会において、インターネット利用のエチケットの関連で特集記事を組んではどうかという提案がありました。インターネットが誰でも利用できるようになり、ネットワークエチケットが大切な問題であることは誰しも認めるところですが、すでに多くの本やWebサイトがあり、本誌で重ねて解説するまでもないと考えられます。そこで、情報倫理教育を中心とした特集を組むこととなりました。
生命倫理や工学倫理などは専門家としての倫理(professional ethics)ですが、情報倫理は、専門家としての倫理と一般利用者としての倫理という二つの面を含む用語です。田中規久雄先生は、「情報社会の法と倫理」と「情報社会の諸問題」という二つの全学共通教育科目を担当しておられ、情報倫理教育の研究も手がけておられるので、寄稿をお願いしました。利用者としての倫理と専門家としての倫理とのバランス、および、倫理と法との直行性について解説していただけました。
全学共通教育科目の中には、上記のほかに「情報社会と倫理」という科目があります。この科目は、利用者としての情報倫理を扱います。このシラバスを設計し、その一部を担当している私から、科目の紹介をさせて頂きました。この科目で倫理学に関する部分は、文学部の中岡成文先生に担当して頂いていますので、授業方法と倫理的考え方などについて寄稿いただきました。
専門家としての情報倫理を考える場合、コンピュータやネットワーク管理技術等に関連する情報倫理と、情報(コンテンツ)の取り扱いに関する情報倫理があります。後者は、理系の学生だけでなく、文系の学生諸君にも勉強してもらうのがよいかもしれません。齊藤了文先生が全学共通教育科目の「科学の哲学」で、理系だけでなく文系学生も対象として工学倫理の教育をしておられると伺いましたので、授業の方法や枠組みを参考にさせて頂きたいと考えて執筆をお願いしました。
最後に、専門家としての倫理教育の一例として、「工学倫理教育」をとりあげます。企業で活躍してこられた野田忠吉先生に寄稿していただきました。技術者として、経営者として、そして人間としての倫理観の重要性を述べておられます。
情報倫理とは何か、利用者としての倫理教育、専門家としての倫理教育では、何が重要なのか、どのような教材があるかなど、教職員のみならず学生の皆さんにとっても、読みごたえのある特集になったと思います。
- 情報倫理の視点 ---------------------------------------- 田中規久雄
- 情報倫理教育と「情報社会と倫理 -------------------------- 中西 通雄
- 「情報社会と倫理」を倫理学の立場で担当して --------------- 中岡 成文
- 「科学の哲学」という講義 --------------------------------- 齊藤 了文
- 「工学倫理」教育の必要性について ------------------------ 野田 忠吉