大阪大学中之島センターの遠隔講義システムについて


加藤 精一(サイバーメディアセンター・大阪大学中之島センター)

1. はじめに

図1: ロゴ
20数年にわたる議論の末、大阪大学中之島センターが大阪大学発祥の地中之島に文部科学省のキャンパス・イノベーションセンターとの合築で地上10階、地下2階建てのビルとして建設され(図2)、本年度4月にオープンしました。
図2: 中ノ島センター外観
中之島センター部分は2Fと7~10F部分となっており、1Fには大阪大学の情報コーナーが設けられています。本センターには先進的な遠隔講義システムが導入され、4月オープン時より社会人向け講義、一般向け公開講座、シンポジウム等の様々なイベントに役立てられていると共に、会議室、一般の方でもご利用可能なレストラン(2F、9F、リーガロイヤル直営)も完備されております。中之島センターに導入された遠隔講義システムは、その役割から大きく3つに分けることができ、(1)遠隔講義の核となるTV会議システム、(2)授業情報・資料の提示や、ディスカッション、小テスト、アンケート集計機能などを持つコースマネージメントシステム(WebCT)、(3)授業そのものの自動アーカイブやライブ配信を可能にする自動アーカイブ・授業配信システムからなっています。本稿では、本冊子で別途述べられるWebCT以外のシステムについて述べたいと思います。


2. TV会議システム

 中之島センターにはほとんどの部屋にTV会議システムが設置されています。特に講義室1(2F)、講義室2、3(7F) 、セミナー室(図3、模擬法廷、7F)、佐治敬三メモリアルホール(10F) には、TANDBERG6000が設置されIP(H.323、~3Mbps)、ISDN(H.320、~128kbps)混在で最大4地点(+音声電話1)を接続可能です。TANDBERGではDuoVideoという映像2ソースを同時に送信する機能があり、DuoVideoをサポートする機種間(TANDBERG770以上の機種、2004年7月現在)であれば、発表者の映像とプレゼン資料(XGA)を同時に送信し、2画面に分けて映し出すことも可能です。また他の部屋とのカスケード接続(~10地点)や、外部MCU(Multi Control Unit)であるRADVISION ViaIP400(現状ではIPのみ、~400地点)によりさらに多くの地点と接続できます。
図3: 模擬法廷
また、講義室2ではHDTVによる講義も可能です。TV会議システムは双方向でのやりとりが可能ですので、遠隔地でも実際に行われている授業にリアルタイムに参加することを可能にします。各講義室の収容人数と設置されているその他備品については別表の通りです。

3.自動アーカイブ・授業配信システム

図3: 中ノ島WebCT
中之島センターでは、遠隔講義をより効果的なものとするための支援システムも充実しております。実際の授業を自動的にアーカイブし、実際の授業そのままを配信することができる自動アーカイブ・授業配信システムと、ここでは詳しく触れませんが、授業の資料の提示など総合的に遠隔講義を支援するWebCT(図4)があります。
 授業は希望により自動アーカイブシステムによって蓄積されます。講義室からSTARBAK社のTorrent VCGにH.323で接続され、講演者の説明は動画(QuickTime)、PowerPointや書画カメラ、ホワイトボードなどの資料は静止画(JPEG)で自動アーカイブされていきます。これらのアーカイブはメタデータが付加され、授業の配信システムである富士ゼロックスのMediaDEPO(図5、図6)を介し授業さながらのコンテンツを再生することが可能になっています。動画はストリーミング再生されるので、待たされることもなく、再生には無料でダウンロードできる
図5: MediaDEPO コンテンツメニュー画面
図6: MediaDEPO 配信画面
QuickTime Playerさえお使いのPCにインストールされていれば、Webブラウザを用いて授業コンテンツを見ることができます。これから遠隔講義やコンテンツを広く配信してみたいと思っておられる教員の方々の負担もかなり軽減されるように考えられています。このようなコンテンツを一から全て作るのは非常に大変ですし、コストもかかりますが、中之島センターのシステムではこのようなコンテンツが授業を通常通り行うだけで、自動的に作成されます。またオムニバス形式で行われる授業など、先生が入れ替わるような場合には、その場面を自動的に抽出してマンガのコマ割のようにインデックスを作成して表示する機能(シーン自動検出)や、テキスト検索だけでなく、例えば受講者が「授業で聞いたあの言葉の説明がもう一度聞きたい」と思った場合に、動画の音声から音声検索をしてその言葉の説明の場面からコンテンツを再生する、といったこともMediaDEPOでは可能になっています。これらの機能は、自宅に帰ってからの復習や何かの理由で授業を欠席した場合、さらにTV会議システムはないが、遠隔地から授業を受講したい受講生の支援も行うことができます。もちろんライブ配信(QuickTime)も可能になっています。つまり、中之島センターの遠隔講義システムを用いれば、場所だけでなく時間も超越した教育環境を提供することが可能なのです。

4. おわりに

以上のように、中之島センターには中之島という立地を生かせる設備が整っております。利用はそれほど難しくありませんので、ぜひこれらの遠隔講義システムをフルに利用して頂き、講義・研究会など様々な活動に役立ててください。

中之島センター http://www.onc.osaka-u.ac.jp/
TANDBERG http://www.tandbergjapan.com/
RADVISION http://www.h323.jp/
Torrent VCG http://www.starbak.com/
MediaDEPO http://www.ubiquitous-media.com/

(別表) 大阪大学中之島センター 各部屋の備品について
利用に際しては利用申請が必要です。reservation@onc. に使用申請書を添付してお送り下さい。また、機器の使用方法については事前に説明を受けて下さい。

階 数 室 名 備 品 等
10F 佐治敬三メモリアルホール
(196席)
照明操作卓、スポットライト2、
AV操作卓、TV会議システム(TANDBERG 6000)

<入力装置>
書画カメラ、RGB(D-sub 15pin)入力
HDTV入力、マイク:有線4、無線2
ビデオコンポジット入力、天井カメラ1

<出力装置>
DVD、VHS、S-VHS再生専用装置、MD録音再生装置(MDLP対応)
プロジェクタ、200インチスクリーン
9F 特別会議室(12席)
会議室1(16席)
会議室2(16席)
プラズマディスプレイ、マイク2
TV会議システム(TANDBERG 550、IPのみ)
7F セミナー室(模擬法廷)
(48席)
AV操作卓、TV会議システム(TANDBERG 6000)、
模擬法廷セット、ホワイトボード(壁掛)

<入力装置>
書画カメラ、RGB(D-sub 15pin)入力、
マイク:有線4、無線2、
ビデオコンポジット入力、天井カメラ5

<出力装置>
DVD、VHS、S-VHS再生専用装置、
プロジェクタ(天吊り2)、スクリーン2

講義室3
(60席)
AV操作卓、TV会議システム(TANDBERG 6000)、
ホワイトボード(壁掛)

<入力装置>
書画カメラ、RGB(D-sub 15pin)入力、 マイク:有線、無線各2、 ビデオコンポジット入力、天井カメラ3

<出力装置> DVD、VHS、S-VHS再生専用装置、
プロジェクタ(天吊り2)、スクリーン2
7F 講義室2(高品位講義) (84席) AV操作卓、TV会議システム(TANDBERG 6000)、
ホワイトボード(壁掛)

<入力装置>
書画カメラ、RGB(D-sub 15pin)入力、
マイク:有線4、無線2、
ビデオコンポジット入力、天井カメラ3、
HDTV入力、HDTVカメラ

<出力装置> DVD、VHS、S-VHS再生専用装置、
LD再生専用装置、
プロジェクタ(天吊り2)、スクリーン2
2F 講義室1
(63席)
AV操作卓、TV会議システム(TANDBERG 6000)、
ホワイトボード(壁掛)

<入力装置> 書画カメラ、RGB(D-sub 15pin)入力、
マイク:有線、無線各2、 ビデオコンポジット入力、天井カメラ3

<出力装置> DVD、VHS、S-VHS再生専用装置、
プロジェクタ(天吊り2)、スクリーン2、
スライドプロジェクタ2、
ポータブルスクリーン2

(上記以外のシステム等) コンテンツ配信サーバ(Xserve)、
多地点接続装置(RADVISION ViaIP400)、
H.323ストリーミングゲートウェイ(STARBAK Torrent VCG)
コンテンツ編集用PC