"L'immeuble"「住居ブロック」
CALL授業における"グローバル・シミュレーション"


von Bertlinde Vögel(言語文化部 ドイツ語教育講座

はじめに

 私は今学期(2004年1学期)にはじめてCALL授業において "グローバル・シミュレーション"という授業方法を用いた。私にとっては、50人の学生をグループに分け小説を書かせるということは、ひとつの挑戦でもあった。
 もっとも、この試みは成果があったようであり、またコンピューターがシミュレーションを簡単かつ問題なく実行するための理想的な補助的ツールであることが実証された。

1. "グローバル・シミュレーション"とは?

 "グローバル・シミュレーション"の構想は70年代にフランスで成立したものである。当時は教材を避け、ほかの新たな可能性が求められた時代であり、"グローバル・シミュレーション"は当時の産物といえよう。
 "グローバル・シミュレーション"とは何かという問いについてはYaiche(1996, 10)が説明し、そのために必要な条件として次の点を提示している。

(筆者B. Voegelによるフランス語からドイツ語への訳)

 "グローバル・シミュレーション"を用いると、まずふたつの根本的な原則に行き当たる。"グローバル・シミュレーション"を実行するには次のことを行わなければならない。
‐出来事の時と場所を確定するため、小説の舞台となる土地を設定すること。
‐架空の登場人物を設定すること。(Yaiche 1996, 10)

 これらの架空の場所や人物が登場するシミュレーションを数週にわたって行う。架空人物はお互いに出会い、会話をし、恋愛をし、争い、共に問題を解決していく。この描写のためには、散文を書いたり、会話を作成し実演したり、他の記述方法を用いることができる。 "グローバル・シミュレーション"では、個々の設定がその後の文脈の中で影響を及ぼすことが可能である。このことにより、授業のために簡易化されたものではなく、生のコミュニケーションを体験することが可能になる。(Sippel 2003, 40)シミュレーションは、ドイツ語学習者に「活発で、積極的で、現実に近い、比較的複雑な外国語を用いた行動へのきっかけを与える(省略)。」(Ecke 2001, 159)

2. シミュレーションプロジェクト「住居ブロック」

 シミュレーションプロジェクト「住居ブロック」はすでに代表的な授業方法にまでなっている。このプロジェクトでは、まず住居となる建物やそれが建つ土地について説明される。さらに住人である登場人物が設定され舞台は活気付けられる。これらの人物は提示される共通の出来事へと準備する。しかし、突然これらの人物を巻き込む予期せぬ出来事が起こる。登場人物たちは問題を解決しようと努力する。最終的に学生は、シミュレーションの結末を考え出さなければならない。
 私にとってDebyser(1996)はこの授業の準備に重要な参考文献であった。この文献には、住居ブロックについてのシミュレーションプロジェクトを活気付け、遂行するための多くのヒントが記述されている。

3. 今学期における具体的な遂行

 まず、学生を8-9人のグループに分け、その後くじ引きによって各グループにドイツ語圏の国が設定された。それぞれの住居ブロックはその国の街に存在することになる。
 さらに、学生は住居のある土地について記述する。次の時間には登場人物を設定する。驚いたことに学習者に制限を与えると、逆に想像が働くようである。そこで、グループごとに登場人物の性別、年齢層、所有している物もしくはペットについて書かれたカードを配布し、引いたカードに書かれた特徴をもとに住居ブロックに住む30人が設定される。
 その後、登場人物は住居の階段や仮装パーティーで出会うことになる。また、突然金庫が盗まれ、犯人を見つけ出すことになる。登場人物の中の数名はキャンプをすることになり、そのための準備をする。最後にシミュレーションは登場人物もしくはこの住居自体の未来を予想することで終わる。
 7月には学生はそれぞれ作成した文章を小説として各章に編集し、自分のグループの小説と、他のグループが作成した小説の内容を要約した。

終わりに

 この試みは私にとって成功だったといえよう。二年生の学生は、二人もしくは小さなグループで文章を毎週規則正しく作成し、最終的には他のグループが読むことのできる小説を提示することができた。私にとって今回は、このシミュレーションプロジェクトを一学期間貫徹することが実際に可能であるかどうかが問題であったが、それは難題ではないことが示されただろう。
 今後のプロジェクトでは、文章作成やドイツ語圏の地誌(Landeskunde)を得るためにさらにインターネットを活用していくことを考えている。コンピューターは単語の習得のためのよい補助ツールとなり得るだろう。学生は、シミュレーションプロジェクトの中で、文章を共同で書くだけではなく単語の学習素材を共に作ることへの動機ともなるだろう。そのことで、学生はいわば教材を自分で作り出すのである。(Sippel 2003, 38-40)も参照)